2018年1月12日金曜日

1/12 勉強会:平成30年度税制改正大綱のポイント 他

1.中小企業もターゲット簡易な移転価格調査とは

■税務当局が簡易な移転価格調査(簡易TP)に力を入れている
・独立企業間価格(ALP)
(1)原則:独立価格比準法、原価基準法等で算定
(2)金利事案及び本来の業務に付随して行われる役務提供=移転価格事務運営指針により簡便計算が可能
⇒(2)を移転価格調査(簡易TP)という

■簡易TP対象の金利事案とは
(1)無利息または低利率による金銭の貸付け
(2)高利率での金銭の借入れ
⇒簡易TPでは、借手が銀行等から借り入れたとした場合の利率、貸手が銀行等から借り入れたとした場合の利率、貸付金相当額を国債等で運用するとした場合の利率を使用可能
ただし算定した金利にスプレッドが加算される

■簡易TP対象の本来の業務に付随して行われる役務提供とは
・無償または低額な対価を受領している本来の業務に付随して行われる役務提供のうち、条件を満たすもの
⇒原則:比較対象取引が存在しない場合=総原価の額(直接費+間接費)が独立企業間価格
例外:役務提供に要した費用が、当該役務提供を行った事業年度の原価または費用の相当部分を占める場合または役務提供の際に無形資産を使用する場合等は、簡易TP使用可能


2.外国法人の法人税申告は別表一に注意

H28.4.1以後開始事業年度より、
外国法人が法人税申告を行う場合は、「別表一の三」を使用すること。
※外国法人は12月決算が多いため、H29年12月期の決算法人より注意する必要あり。

別表一の三には、新たに「恒久的施設の有無及び種類」欄が新設。
⇒恒久的施設がある場合は、支店・建設作業場・代理人のいすれかに○を記載する必要あり。

所得金額については、恒久的施設帰属所得とその他の国内源泉所得とに区分して税額を算定することになる。


3.自社株対価MA、非取得会社の課税無関係

■自社株対価M&A
TOBで売却に応じる株主に対価として自社株を交付すること
⇒譲渡益が生じると納税資金が必要になり、株主が資金繰りのためにTOBに反対するという懸念があり、日本ではあまり利用されていない

■30年度税制改正(措置法)
・要件
自社株対価を行う法人が、改正産業競争力強化法に基づく「特別事業再編計画(仮称)」による認定を受けた場合
・内容
被取得会社の株主における旧株式(被取得会社株式)の譲渡損益を繰り延べる

■狙い
自社株を対価としたTOBを活発にし、企業の内部留保を賃上げ・設備投資の原資として使用させることが狙い


4.最大ゼロの新固定資産税の特例措置

平成30年度の税制改正の1つ、中小企業へ向け償却資産税の特例措置

■実施要項
対象者:大企業の子会社を除き、資本金額1億円以下の法人、従業員数1000人以下の個人事業主のうち、計画の認定を受けた者
対象地域:各自治体が策定した導入基本計画の同意を受けた市町村(業種や地域などの制限なし)
対象設備:現行の特例措置とほぼ同じ
その他の要件:新品であること、生産・販売活動に直接使用されるものであること
固定資産税:課税標準を3年間ゼロ~1/2に軽減(現行法は3年間1/2に軽減)

■留意点
固定資産税は地方税であるため、そもそも条例が定められていなければ、特例措置の適用を受けることが出来ない。また条例が定められたとしても各市町村で異なっている可能性があることに留意


5.所得税 納期特例 承認取消しでも不納付加算税は課されず

■源泉所得税納期の特例
従業員(給与等の支払を受ける者)が常時10人未満の場合、源泉所得税の納期限を半年ごとと
することができる特例

■承認の取り消し
従業員(給与等の支払を受ける者)が常時10人未満でないことが判明した場合には承認が取り消される。
この場合、取り消しがあった日の属する月の翌月10日までに、特例により繰延べている源泉所得税全額の
納付が必要となる。

例:5/10に承認取り消し
⇒1/1~5/31までに支給した給与にかかる源泉所得税を6/10までに納付しなければならない

■不納付加算税との関係
上記の場合において、1/1~4/30までの支給給与にかかる源泉所得税は未納付の状況(たとえば1月支給給与にかかる源泉が2/10に納付されていない)となるが、6/10にまでに納付すれば不納付加算税は課されないこととされている。また、承認が過去に遡って取り消された場合でも源泉所得税そのものは納付済であるため、この場合も不納付加算税は課されない。


6.ウーバーについて

・日本では白タクは厳しく規制されているが、ロンドンのウーバー運転手(約5万人)はアフリカ・中東出身者が多く、カーナビ付き自家用車で送迎する自営業者のように見える
 ⇒生活費を稼ぎたい運転手と顧客ニーズを配車アプリで仲介するマッチング・ビジネス
・世界70カ国で配車サービスを展開するウーバー・テクノロジーズ社だが、最近はロンドンでは強い逆風にさらされている。
・運輸局がウーバーの免許更新申請を拒否した
・労働裁判所は「運転手を従業員として扱い、最低賃金と休日手当を保証すべし」との判決をだした
 ⇒顧客の割り振りも運賃もウーバーが決めているから実質的にウーバーの従業員と見なされた


7.M&A取引のクロージング前に生じた事態への対処ポイント:想定外の事態へ対処するための検討ポイント

■サイニング後クロージングまでの間に生じることが想定される事態
(1) サイニング時には想定されなかった事実の発生
・表明保証違反に該当するような新事実の発覚、発生
・第三者による重要な訴訟の提起 等
(2) 想定外の従業員の対応
・M&Aへの反対からの退職 等
(3) 想定外の当局の判断
(4) PMI作業の遅延
・思いのほか作業量が多い 等

■対応
問題解消に向けた努力をしたうえで、
・クロージング延期の要否の検討
・最終契約上の権利行使の検討
・修正契約の締結の検討


8.平成30年度税制改正大綱のポイント

■所得拡大促進税制の拡充
・賃上げと設備投資の要件を満たした場合、賃上げ額の15%の税額控除が認められる
・上記に加え教育関連費の増加を同時に満たした企業は控除率が20%に引き上げられる
・中小企業者は要件を緩和するとともに、最大で賃上げ額の25%の税額控除が認められる

■個人所得課税
・給与所得控除と公的年金等控除が10万円引き下げられ、代わりに基礎控除が同額増額される
・給与収入が850万円を超える場合の給与所得控除の上限額が195万円となる
・年金収入が1,000万円を超える場合に、公的年金等控除につき195.5万円の上限額が設けられる
・基礎控除について2,500万円超でゼロとなる
・2020年分以後の所得税、2021年分以後の個人住民税から適用

■新税の創設
・2019年1月7日以後に日本から出国する場合、国際観光旅客税が出国1回について1,000円課税される
・2024年度より森林環境税が新設される。一人年額1,000円として市町村が個人住民税と合わせて賦課徴収する

■納税環境整備
・2020年4月1日以後開始事業年度より、資本金1億円超の大法人の法人税等や消費税の申告について電子申告が義務化される
・年末調整につき、2020年10月1日以後に提出される保険料控除申告書からは、保険会社の電子署名が付されたデータ添付による電子申告が認められる
・年末調整につき、2020年10月1日以後に提出される住宅ローン控除申告書からは電子申告が認められる


9.M&A 最終契約前のポイント〜前提条件〜

通常のM&A取引において設けられることの多い主要な前提条件
(1)表明保証の正確性、相手方当事者の義務の遵守
(2)許認可の取得、当局への届出
(3)チェンジ・オブ・コントロール(※1)条項を含む契約に関する相手方の同意の取得
(4)重要な役職員の確保
(5)違法状態の是正
(6)MAC (※2)

(※1)取引先との契約などにおいて、対象会社の株主や代表者といった支配権が変更したときに、その契約に解除事由が発生したり、事前又は事後に、契約の相手方に対して、通知又は届出を行わなければならないとする規定
(※2)対象会社の経営状態に重大な悪影響を及ぼす事由が生じていないこと)


10.重要な税務上の欠損金が生じている場合のDTA回収可能性

当期において重要な税務上の欠損金発生した場合、基本的に分類4or5。

■分類4の場合
翌期の一時差異等加減算前課税所得(以後、加減算前所得)の見積額に基づいて、翌期の一時差異等のスケジューリングの結果、当期DTAを見積もれる場合は、回収可能。

■分類5の場合
原則としてDTAは回収不能。

■分類4&5共通
スケジューリングの結果、加算差異の解消見込額と相殺可能な減算差異の解消見込額があれば、回収可能。
⇒指針の分類は収益力に基づく加減算前所得により判断する指針。
⇒将来加算一時差異の十分性の観点から、DTAの回収可能性があると判断できるケースもありうる。


11.持分法適用関連会社にならない場合の会計上の留意点

・売却損益
連結子会社株式を全部売却した場合、子会社に対する支配を喪失し、連結財務諸表から除外される。
連結子会社後に獲得した利益剰余金を個別財務諸表の子会社株式売却損益に加減する。

・資本剰余金
追加取得による持分変動により生じた資本剰余金は、子会社が連結の範囲から除外されても、
その資本剰余金は連結財務諸表に計上され続ける。
⇒追加取得は親会社と子会社の非支配株主との間の取引であり、子会社に帰属しないため。

・取得関連費用
子会社株式の売却に際して、取得関連費用を売却損益の修正として処理する。


12.連結範囲の検討時における子会社判定

■子会社判定の位置づけ
・子会社であるか否かの判定後、一定の検討を経て連結の範囲が決定
・子会社と判定されなかった企業は、関連会社の判定を行い持分法の適用を検討

■子会社判定の枠組み
自己が所有する議決権割合の判定等を踏まえ、下記の様に判定を行う。
①50%以上所有
⇒支配
②40%以上50%以下所有
⇒緊密な者+同意する者=過半数or取締役会の直接的・間接的支配⇒支配
③40%未満
⇒緊密な者+同意する者=過半数and取締役会の直接的・間接的支配⇒支配


13.被相続人が施設に入居していた場合等の小規模宅地等の特例の適用

・ケース1 要介護認定を受けた被相続人が特別養護老人ホームへの入所前までに居住していた建物(相続開始直前まで空き家)は、相続開始直前に被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当し、特例の適用を受けられるか。
⇒ 受けられる。

・ケース2 ケース1で、生前要介護認定を申請していたものの、認定を受けたのが相続開始後の場合はどうなるか。
⇒ 要介護認定を受ければ、申請の日に遡って効力を発生するので、特例の適用を受けられる。

・ケース3 相続人は被相続人と同じ家に居住していたが、相続開始時点で海外支店に転勤していた。この場合、当該宅地は特定居住用宅地等である小規模宅地等の特例の適用対象に該当するか。
⇒ 転勤という特殊事情が解消した時は、起居を共にすることになると認められる場合は該当する。


14.MBO後の再上場時における上場審査

1.MBOと再上場の関連性
MBOと再上場はそれぞれ独立した行為であり、両者の間に必ずしも高い関連性があるとは限らない。
⇒上場審査では、主導者(経営者・株主)の同一性・連続性、MBOから再上場までの期間の長短などを確認。

2.プレミアム配分の適切性・MBO実施の合理性
(a)MBO時に株主の判断の前提となる手続きが公正に行われた上でMBOが成立していれば、問題なし。
⇒上場審査では、MBO時の手続きのMBO指針への準拠性などを確認。

(b)再上場時から見て、MBO時の計画とMBO後の進捗との間に乖離がある場合であっても、
再上場時にその理由について合理的に説明することができるのであれば、問題なし。
⇒上場審査では、当該説明が十分に説得力のあるものかどうかなどを確認。

■今週の新規上場会社
該当なし






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

0 件のコメント:

コメントを投稿