2018年4月13日金曜日

4/13 勉強会:軽減税率導入に伴うインボイス方式の詳細 他

1.平成30年度改正の政令公布

平成30年4月1日施行の政省令の主な改正点

■組織再編成に係る適格要件
・組織再編後に適格株式分配が見込まれている場合における、
 適格株式分配後の完全支配関係の継続を不要とする
・共同で事業を行うための組織再編成の適格要件について、
 当初の組織再編成の後に完全支配関係がある法人間で従業者又は事業を移転する見込みでも、
 従業者従事要件及び事業継続要件を満たすこととする

■連結納税
・連結子法人となる法人の連結納税の承認申請書を提出した旨の届出、
 連結完全支配関係を有しなくなった等の事由が生じた場合の書類の提出が不要になる
 (平成31年4月1日以後適用)




2.企業結合、比較財表の遡及修正を廃止へ

■検討依頼段階である
■現行基準
・暫定的な会計処理が翌年度に確定:比較年度のFSを遡及修正する必要あり
・大量の貸出金がある銀行業界では実務上の負荷が高い
⇒結果、買収案件の柔軟性が妨げられるなど、経営を阻害する要因になっているのでは…

■米国基準:すでに廃止
・日本基準においても廃止する方向で検討すべきという意見あり





3.業務労災に係る支給も賃金なら課税所得

■事例
・業務中に労災事故に遭った従業員に勤務先が給与名目で金員を支給
⇒給与(課税)or休業補償、損害賠償金(非課税)のどちらになるか裁判

■事実関係
・入院、自宅療養の約3か月間、事故前と同水準の金員の支給を受けていた
・勤務先復帰後約3か月間、午前中のみ勤務の際も事故前と同水準の金員の支給を受けていた
※雇用契約書なし、就業規則の定めなし

■賃金とは
・使用者が労働者に対して明示又は黙示の合意により支払い義務を負うとされるもの
・労務提供の対価or労働関係上の地位に対して支払われるという性質を有するもの

■判決
1.実際の勤務実態に関係なく、給与の名目で金員を支給していた
2.労災事故前と同水準の金員を支給していた
3.従業員が出勤しなくなった後も復帰前提で金員を支給していた
4.従業員は給与として受け取るものではないと明示的にしていなかった
⇒賃金に当たると判断




4.軽減税率導入に伴うインボイス方式の詳細

■軽減税率の導入(平成31年10月1日から10%へ) 
・酒、外食を除く飲食料品、週2回以上発行される新聞が軽減税率の対象
⇒上記の売上、仕入がある事業者は区分した経理処理が求められる

■区分記載請求書の保存(H31年10~H35.9までの経過措置)
・取引月日、内容、請求書の発行者名などの記載が必要
⇒上記に加え、軽減税率の対象品目・税率毎に計算した対価の額を記載

■適格請求書等保存方式(H35.10~)
・適格請求書発行業者:適格請求書を交付できる事業者として登録を受けたもの
・適格請求書:上記に加え、発行業者登録番号、税率毎の消費税額や適用税率
・適格請求書の保存=仕入税額控除が可能(なくした場合は仕入税額控除不可)
・請求書の発行が難しい取引:帳簿のみの保存(出張旅費や通勤手当は帳簿のみで可能)

■簡易課税制度の見直し
・農林水産業 みなし仕入率80%へ
売上は軽減税率だが仕入(農薬、農耕器具等)は10%
仕入税額控除が過少に計算されない為の見直し.




5.IFRS任意適用日本企業が計上している開発費(無形資産)

IFRS38号では、「研究」から生じた無形資産は認識してはならず、発生した時点で費用として認識するものの、「開発」から生じた無形資産については、一定の要件(6要件)を満たす場合には、無形資産として認識しなければならないとされている。

 (6要件)
1.使用又は売却できるように無形資産を完成させることの技術上の実行可能性
2.無形資産を完成させ、さらにそれを使用又は売却するという企業の意思
3.無形資産を使用又は売却できる能力
4.無形資産が可能性の高い将来の経済的便益を創出する方法。とりわけ、企業は、無形資産の産出物の、又は無形資産それ自体の市場の存在を、あるいは、無形資産を内部で使用する予定である場合には、無形資産の有用性を立証しなければならない
5.無形資産の開発を完成させ、さらにそれを使用又は売却するため必要となる、適切な技術上、財務上及びその他の資源の利用可能性
6.開発期間中の無形資産に起因する支出を、信頼性をもって測定できる能力

日本におけるIFRS適用企業の事例
■開発費を無形資産として計上している企業数について
 →22社(任意適用企業123社中)

■無形資産計上金額について
→本田技研工業:6,190億円(当期資産化率18%)が最大

■開発費の償却年数について
→償却年数は2~15年と様々である。
→2~5年としている事例が比較的多く

■開発費の資産化率について
→最大:コナミ78.4%、最小:デンソー0.4%




6.第一種特例経営承継贈与

「先代経営者」から後継者への株式贈与を指します。
先代経営者からの相続・遺贈による株式の取得が第一種特例承継相続です。
これに対し、「先代経営者以外の株主」から後継者への贈与は第二種特例経営承継贈与、相続・遺贈は第二種特例経営承継相続になります。

平成30年度税制改正において大きく改正され、10年間限定の特例措置で、税制の対象が一人の先代経営者から一人の後継者へ贈与・相続から親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象になりました。

■特例の適用受けるには
(1) 平成30年4月1日から平成35年3月31日までに、都道府県庁に「特例承継計画」を提出していること。
(2) 平成30年1月1日から平成39年12月31日までに、贈与・相続(遺贈を含む)により自社の株式を取得すること。
※平成29年12月31日までに贈与・相続により株式を取得した場合は、特例の認定を受ける(あるいは通常の認定から特例へ切替えを行う)ことはできない。



7.賃上げ・設備投資促進税制(旧所得拡大促進税制)における「継続雇用者」

■概要
・平成30年度改正により所得拡大促進税制が賃上げ・設備投資促進税制に改称
・「継続雇用者」の定義が変更された

■継続雇用者
<改正前>
前期及び当期において雇用保険一般被保険者として給与の支給を受けた者が該当
⇒前年中途入社や当年中途退職者も該当

<改正後>
前期及び当期の各月を通じて雇用保険一般被保険者として給与の支給を受けた者が該当
⇒前年中途入社や当年中途退職者は該当しない

■適用要件
(中小企業者等の場合)
上記継続雇用者の当年給与総額が前年給与総額より1.5%以上増加している場合に適用がある

※中小企業者等以外については別途設備投資増加要件がある



8.H30年度税制改正法が3/31に公布

主な概要
■所得課税
・給与所得者の特定支出控除の範囲の見直し
・生命保険料控除等に係る年末調整手続の電子化
■法人課税
・資産の販売等に係る収益の認識等
・給与等の引上げ及び設備投資を行った場合の特別税額控除
・情報連携投資等促進税制
■資産課税
・特定一般社団法人等に対する相続税の課税
・相続時精算課税適用者の特例
・非上場株式等に係る贈与税及び相続税の納税猶予の特例制度
■消費課税
・長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例
・適格請求書等保存方式の実施に伴う措置(インボイス制度の導入)



9.改正税効果会計基準の早期適用

・税効果基準の改正は2019年3月期(2018年4月~)から強制適用
・開示の取扱は2018年3月期末決算からの早期適用も認められている
 ※早期適用の場合は表示と注記はセットで適用。部分適用はNG
・表示は長短に分けず、
  DTA⇒投資その他の資産
  DTL⇒固定負債
 にまとめて表示する
 ⇒表示方法の変更として取り扱う⇒過去分も修正する
・注記に関しては下記が追加
  評価性引当額の内訳に関する事項
  税務上の繰越欠損金に関する事項
  ⇒初年度は表示方法の変更として取り扱う
  ⇒経過措置として、前連結会計年度分は比較情報に記載しないことができる。



10.株主総会に関する規律の見直し

■株主提案権
(1)提案できる議案の数
・現行法上、上限なしだが一人の株主より膨大な提案がなされるケースあり
⇒意思決定機関としての機能が害されたり、検討や招集通知の印刷コストが増加
⇒一定数の上限を設ける
(2)内容による制限
・現行法も制限はあるが充分ではない
⇒下記のような場合に制限する
・名誉を侵害、人を侮辱する目的
・人を困惑させる目的
・不正な利益を図る
・総会の運営を妨げ、株主共同の利益が著しく害される
(3)持株要件、行使要件の見直し
・300個以上の議決権
・総会の8週間前までとういう行使期限の見直し


11.子会社株式の追加取得・一部売却

(子会社株式の追加取得)
・追加取得持分と追加投資額の差額=資本剰余金
⇒この資本剰余金は連結の範囲から除外されても連結FSに計上され続ける
・資本剰余金が負の値となる場合=資本剰余金をゼロとし、利益剰余金から減額する

(子会社株式の一部売却/支配継続)
・親会社の持分の減少額と売却価額との差額=資本剰余金
・支配獲得時に計上したのれん=減額しない

(子会社株式の一部売却/持分法適用関連会社orそれ以外)
・のれん=売却持分に係るものを取り崩し



12.税効果会計基準の一部改正について

■会計処理の見直し
(1)個別上の子会社株式等に係る将来加算一時差異
従来:一律にDTL計上
改正:売却等を投資会社自身で決定、かつ予測可能な将来期間に、売却等を行う意思がない場合を除き、DTL計上(連結上の取扱いに合わせる)

(2)分類1の企業でのDTA回収可能性
「原則として」DTAの全額について回収可能性がある、と強調
⇒回収可能性がないとする判断が適切な場面があることを明示

■表示方法の見直し
従来:DTAとDTLは流固分類
改正:DTAは投資その他資産、DTLは固定負債

■注記の見直し(注記事項の追加)
(1)評価性引当額の内訳に関する数値情報
⇒税務上の繰越欠損金(以下、繰欠)に係る評価性引当額・その他の評価性引当額を区別して記載
(2)評価性引当額の内訳に関する定性情報
⇒評価性引当額の合計に重要な変動が生じている場合、その主な原因
(3)税務上の繰欠に関する数値情報
⇒繰欠全額を基礎に算出したDTA・評価性引当額・実際に算出した繰欠DTAを記載
(4)税務上の繰欠に関する定性情報
⇒繰欠DTAに関して、回収可能と判断した理由



13.改正「税効果会計基準」等の開示の実務ポイント

■適用時期
平成30年4月1日以後開始する年度から
※表示や注記の取いは、平成30年3月31日以後最初に終了する年度末から早期適用できる

■表示区分の見直し
・改正前
⇒繰延税金資産/負債は関連する資産/負債に基づき、流動又は固定区分で開示
・改正後
⇒繰延税金資産は投資その他、繰延税金負債は固定負債
⇒流動/固定区分に関する作業が省略

■注記事項の拡充
・評価性引当額の内訳に関する情報
⇒評価性引当額に重要な変動が生じた場合、主な変動内容について定性的な情報の開示が必要

・税務上の繰越欠損金に関する情報
⇒定量情報として繰越期限別に評価性引当額および繰越欠損金に係る繰延税金資産の額を注記 
⇒定性情報として繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由を注記

・重要性
⇒評価性引当額の内訳、税務上の繰越欠損金に関する情報に重要性がある場合に注記が必要
⇒重要性の判断についての基準は定められておらず、企業の状況に応じて判断
⇒評価性引当額:税前利益に対する評価性引当額の変動額の割合等
⇒税務上の繰越欠損金:純資産に対する税務上の繰越欠損金の割合等



14.適格合併の要件変更

■論点
・子会社の合併を検討。
・少数株主へは合併対価として現金を交付し、子会社が抱える土地の含み損の実現可能か。

■結論
 合併直前において合併法人が被合併法人の発行済株式等総数の2/3以上を有する場合
⇒合併法人以外の株主への金銭の交付がされたとしても、適格合併とされることになる
 (2017年10月1日以降に行われる合併より適用)
⇒子会社の土地は簿価で承継され、含み損の実現は不可

(参考)2017年10月1日以降の適格合併の要件(支配関係での合併)
(1)金銭等不交付要件
 (2/3以上の支配関係である場合の非支配株主への金銭交付は可能)
(2)従業者引継要件
(3)事業継続要件



15.平成29年度税制改正で、移転価格税制に係る文書化義務が拡大

・既存の文書について、「同時文書化」が義務化。
 ⇒ 前事業年度の国外関連取引が50億円以上の会社等が対象
 ⇒ ローカルファイル(国外関連取引に係る独立企業間価格の算定に必要とされる資料)を、確定申告書の提出期限までに作成が義務化
 (対象以外の会社は、作成自体は必要だが、提出期限の定めなし)

・新たな文書の作成義務が発生。
 ⇒ 国別報告事項(各国の事業活動の状況を記載した文書)
 ⇒ 事業概況報告事項(多国籍企業グループ活動の全体像に関する情報を報告)
 ⇒ 最終親会社等提出事項(最終親会社等に関する情報を記載)


16.関連当事者取引


・関連当事者
申請会社の親会社や子会社、役員やその親族、
主要株主、関連会社など

・営業取引
営業取引を行った経緯や取引条件の決定方法が他の取引と比較して歪められていないかの点で審査

・不動産賃貸借取引
その場所でしか営業できない、近隣相場と比べて合理的など、
関連当事者への利得行為としての余地が認められなければ、認められるケースあり

・金銭消費貸借取引
金銭の貸付、借入は合理性を説明することは難しい
金銭の貸借取引を行える相手先は多数存在するため、基本的に解消が必要

・役員のための住宅補助
役員に対してのみ行われる住宅補助は取引合理性が低いため、解消が必要
会社都合で地方へ単身赴任した場合に、会社の規程に従って、
従業員への条件と同等な条件で賃貸する場合、認められることもある












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