2018年8月27日月曜日

8/24 勉強会:タックスヘイブン対策税制における管理支配基準をめぐる裁決 他

1.一部の棚卸資産は時価会計基準の対象に

・企業会計基準委員会は現在、時価の定義及びガイダンスに関して、時価に関する会計基準及び適用指針を開発中。
・トレーディング目的で保有する棚卸資産については時価会計基準の対象範囲に含める方向。
・仮想通貨については時価会計基準の対象範囲に含めない方向。








2.低利益企業の高額役員報酬は許されるか

■ポイント
・投資家を意識した制度設計が必須に
⇒株主の納得感
・固定報酬のウエイトを減少、業績連動報酬や株式報酬のウエイトを増加
・業績連動報酬算定上のKPIは売上よりも利益を重視

■税務上との兼ね合い
・譲渡制限付き株式報酬の税制上の取扱の明確化
・業績連動給与の算定基礎となる指標に株か等が追加
⇒インセンティブ型報酬の導入促進に向け税制面でも環境整備がすすんだ
⇒損金参入要件を満たすように設計し、キャッシュが無駄に社外流出しないような配慮が必要






3.租税条約に基づく徴収共助の適用事例も

・国税局が滞納国税の取り立てを強化

事例1.国際徴収
滞納者が外国に預金等の金融資産を保有している場合、執行管轄権の問題から国税庁は差押できない
⇒外国税務当局に資産の差し押さえを依頼し、約8億円の滞納国税全額を徴収した事例あり

事例2.滞納処分免脱罪(滞納処分の執行を免れさせる目的で財産を隠ぺい等する罪)で起訴
税金を滞納している飲食店オーナーが従業員の退職金の支給を装って2,500万円を従業員の預金口座に振り込み、財産を隠ぺい
⇒オーナーに対して罰金50万円の有罪判決








4.タックスヘイブン対策税制における管理支配基準をめぐる裁決

■外国子会社合算(タックスヘイブン対策)税制とは
・国内企業が低税率の外国子会社に所得を移転する事により日本における税負担を不当に軽減する事を防ぐ目的
・一定の要件に該当する外国子会社の所得を、国内企業の所得と合算して日本で課税する税制をいう
・自ら独立した立場で事業活動を行う実体のある会社等に対してこの税制の適用を免除する「適用除外基準」が設けられている。(事業基準、実体基準、管理支配基準、所在地国基準又は非関連者基準の4つで判断される。)

■親会社から独立しているか否かで争われた例
税務署側:管理支配基準を満たしていない為、適用除外要件を満たしていないとして法人税等の更正処分
請求人側:当該外国子会社の業務執行が親会社から独立して行われているかどうかで判断すべきと主張

■裁決結果⇒請求人の敗訴
⇒企業の正常な海外投資を阻害する結果になってはいけないという趣旨から適用除外基準がある。
・管理支配基準は、株主総会の開催や役員の職務執行などの諸事情を総合的に勘案し、独立した企業として実体を備えて活動しているか否かで判断すべきであるとした
①株主総会が開催されていない。
②当該子会社の社長が常駐しておらず別の子会社に常駐していた。
③唯一常駐していた董事(代表取締役)は他の関連会社の業務を兼務しており、営業も関連会社を介して関与するにとどまっていた。
以上から、事業の管理、支配及び運営を独立した立場で自ら行っていたとはいえないと判断した。






5.「収益認識に関する会計基準等への対応」として平成30年度に行われた税法・通達改正の検証(3)

22条の2の各項について

■収益の計上時期について(第1~3項)
第1項
・収益認識の時期に関する原則を定めたもの。
→原則として収益計上時期は、目的物の引渡し役務の提供の日の属する事業年度
→従前の取扱いの明確化であり、基本的には従前どおりの取扱いとなるもの

第2項
・収益認識の時期に関する特例を定めるもの。
→一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って、引渡し等の日に「近接する日」に収益認識を行っている場合には、法人税法上もその日に収益認識をする。
→売上計算書到来日や検針日基準等

第3項
・申告調整によって2項の「近接する日」に収益認識できることを定めるもの

■収益の計上額に関する(第4~5項)
第4項
・収益の額に関する原則を定めたもの
→原則として時価 

第5項
・収益の額は、貸倒れや返品の可能性がある場合には、その影響を織り込むことはできない





6.質問応答記録書作成マニュアルの中身とは?

■作成方法と理由
・課税要件事実の立証手段の一つとして、質問応答記録書を書面で作成。
・調査担当者は2名。(質問者1名、記録者1名)
・作成後は回答者に対して読み上げ、閲読し、署名・押印をしてもらう。
・訂正や追加があれば追記する

■署名・押印
・回答者の代用はさせない。
・実印である必要はないが、シャチハタ印の使用はできない。
・印鑑を所持していない場合は、サイン(姓や姓名を書いてこれを○で囲む)、又は指印(原則は左手人差指)

■質問応答記録書の写しの交付
・記録書の写しは交付できない(撮影もNG)
・回答者等が開示請求を行うことはできるが、別手続が必要。





7.裁決例:通達の但し書きが適用できないとされたケース

■概要
消費税基本通達9-1-13
固定資産の譲渡の時期は別に定めるものを除き、その引渡しがあった日とする。
ただし,その固定資産が土地,建物その他これらに類する資産である場合において,
事業者が当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているときは,
これを認める。

請求人Aはいわゆる自販機スキームを利用するため建物の購入契約をしたが、自販機売上のみが
計上される期に引渡しを受けることができなかった。そのため、上記ただし書きを根拠として
契約の効力発生日の属する期において課税仕入れを計上し税額控除を受けた。

■審判所裁決
上記ただし書きは合理的な理由がある場合にのみ認められるものであり、消費税還付を受けることを
理由として適用することは租税負担の公平性を著しく害するものといえる。よって本件は原則通り
引渡しがあった日に課税仕入れを認識すべきである

⇒ただし書きを読む限り、適用するのに合理的理由が必要とは書いていないが裁決で否認された









8.成人年齢の引き下げと税法の年齢要件

2022年4月1日より、成人年齢が18歳に引き下げられることが決定。
上記施行に伴い、税法上「20歳」としている年齢要件も18歳に引き下げられる方向で検討。

■20歳を年齢要件としている主な制度
・相続税の未成年者控除
・相続税の相続時精算課税
・住宅取得等資金贈与の特例
・事業承継税制
・NISA

ただし、上記制度は「20歳」という年齢で規定されているため、
民法上の年齢が18歳に引き下げられても、税法上は改正されない可能性あり。
現在、制度ごとに経過措置等を含めた適用関係を検討中。

なお年齢を要件とする税制で、
所得税の「控除対象扶養親族(16歳以上)」や「特定扶養親族(19歳以上23歳未満)」は、
成人年齢の引き下げが施行されても、見直されることはならない模様







適時開示体制の概要

・コーポレート・ガバナンスに関する報告書(CG報告書)の記載事項に「適時開示体制の概要」がある。
・単なる開示の業務プロセスではなく、「重要な会社情報の適切な開示を可能とするための社内体制」と位置づけられている。
・サカタのタネの例
 適時開示に係る社内体制の状況を①決定事実②発生事実③決算に関する情報
 の3つに分けて開示している。
 ①決定事実:毎月の取締役会で決定&必要に応じて臨時取締役会
  ⇒決定した重要事項を管理部門責任者が開示が必要な否か検討する
 ②発生事実:事故・災害・訴訟等については事象が発生後、
   危機管理対策本部にて情報収集を行い管理部門の責任者を中心に情報開示の検討準備を行う







10.オペレーティングリース取引のオンバランス化に賛否両論

・ASBJで、オペレーティングリース取引のオンバランス化についての議論(IFRSとの整合性を図るかどうかの議論)がなされている。

・ASBJのサイトによると、先月の委員会において、主に以下の項目の議論がされた。
 ① すべてのリースに係る資産及び負債の認識
 ② リースの識別、および、リースとサービスの区分
 ③ 重要性に関する事項

・オペレーティングリース取引のオンバランス化については「賛否両論の意見があった」とのこと。

・財務諸表利用者からは、
(1) 注記情報で示されていたオペレーティング・リース取引に係る資産及び負債が、統一された基準でオンバランスされると、正確な財務分析が可能となる
(2) 使用権の移転の有無からすべてのリース契約から生じる資産及び負債がオンバランスされることは企業活動の実態が財務諸表によりよく反映される
といった賛成意見もある。

・他方、
(1) サービス部分についても資産及び負債が認識される可能性があるとの懸念や、
(2) リース期間が短いレンタルのようなものまで資産及び負債を認識することについての懸念、
も聞かれる。

・リース業協会は『わが国リース会計基準の検討に対する見解』という文書を公表し(7月18日付)、「IFRS等と整合性を図る必要性はない」との見解を示している。






11.直近のIPO銘柄の株価

・7月以降、11銘柄がIPO
・そのうちの2銘柄(GAテクノロジーズ、プロレドパートナーズ)については、株価は公開初値を上回っているが、それ以外の銘柄は下回っている
・IPO時は概ね、どの銘柄も過大な評価がなされがち
・大型IPOのメルカリの株価下落も悪影響しているとのこと
・IPO前に出した業績見通しを達成できず、下方修正をすると投資家の評価を大きく下げ、売りが行われることが多いとのこと



















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