2018年10月26日金曜日

10/26 勉強会:給与と外注費の区分 他

1.役員報酬や政策保有株式の開示、平成31年3月期から適用へ

内閣府令を改正し、役員報酬や政策保有株式の開示の充実を図る予定。
金融庁では平成31年3月期決算からの適用を目指しているとのこと。






2.当期純利益は業績連動指標として適切か

■次回の税制改正(平成31年度税制改正)
・業績連動給与の要件緩和が盛り込まれる予定
⇒ただ、いくら要件緩和されてもインセンティブ効果がなければ普及しない

■当期純利益
・過去の経営者の失敗も含まれる(例:減損損失等)
→前任者の意思決定の失敗により現役員の報酬額が下がる…インセンティブ効果は損なわれる。
・当期純利益を業績連動指標にする場合には営業利益もセットにしている企業が見受けられる。






3.再確認!施行日をまたぐ消費税の適用税率

■工事の請負等
・平成31年4月1日前に建築・工事等の請負契約を行っている場合は、10月1日以降の引き渡しでも8%
・4月1日以後に工事の額が増額された場合は増額された部分は10%

■資産の貸付け
・平成31年4月1日前に契約し、9月30日までに貸付けが行われている場合は8%
・4月1日以後に賃借料の額が変更された場合は新たな契約の締結とみなされ、全額が10%

■予約販売に係る書籍等(週刊誌、月刊誌、文学全集等)
・平成31年4月1日前に契約した不特定多数に定期的に発行される書籍は9月30日までに対価を領収していれば8%

■通信販売(カタログ、インターネット等)
・平成31年4月1日前に条件提示を行い、9月30日までに申し込みを受けて、10月1日以後に販売した場合は8%。
・4月1日以降に商品内容や価格等の条件が変更された場合は10%

■有料老人ホームの入居一時金
・平成31年4月1日前に契約し、9月30日までに入居している場合は10月1日以後も消費税は8%
・10月1日以後に入居した場合は10%

■旅客運賃等(運賃、映画、競馬場、遊園地等への入場料)
・平成31年10月1日前に購入されたものは、10月1日以後の使用でも8%

■水道光熱費、電気通信役務の提供
・平成31年10月1日前から契約しており、10月1日~11月30日までの間に料金が確定したものは8%

■特定新聞
・平成31年9月30日までに発売される特定新聞は10月1日以降に販売しても8%
※雑誌は対象外。普通の新聞は軽減税率の対象。

■家電リサイクル料金
・平成31年10月1日前までにリサイクル料金を領収し、10月1日以後に家電を引き渡す場合は8%






4.賃貸料収入の帰属先をめぐり納税者側が勝訴

賃貸料収入の帰属先が争われた裁決で、所得税更正処分等及び重加算税が取消

■概要
・納税者側:元妻名義の不動産収入の入金口座を管理しており、自身の所得税の確定申告において元妻名義の不動産収入を含めずに申告を行っていた。
・税務署側:上記の不動産収入は納税者の収入であるとして、所得税の更正処分&重加算税の賦課決定
⇒請求人はこの処分を不服として審査請求を行った。

■争点(税務署側の主張)
①納税者は物件の取得、管理にかかる手続きを自ら行っていた。
②賃貸料が入金されていた元妻名義の口座が納税者に帰属=その賃貸料は納税者に帰属する
⇒本件の不動産収入は誰に帰属するものか?

■裁決
納税者側の勝訴:所得税更正処分等及び重加算税が取消
①賃貸借契約の名義人は元妻であり、物件の取得資金は元妻の借入れた資金が元手となっている。
経済活動の経験が少ない元妻に代わって事実上の管理者になっていた可能性も否定できない。
②入金された賃貸料が銀行融資の返済資金に充てられており、納税者本人が自身の浪費の為に
引出した事実もない事から口座の帰属をもって納税者側に帰属するとは認められない。とした
尚、仮装隠ぺいした事実もない為、上記処分の取消に加え、重加算税の賦課処分を取り消した








5.日本企業がIFRS移行時に認識した会計基準の差異(認識・測定に関するもの)の分析①

以下は、IFRSへの移行時に作成される調整表において、会計基準差異として説明されている項目の調査結果である。調査対象は、IFRS任意適用会社163社(日本基準からの移行のみ)。

調整表で基準間の差異として説明している企業が多かった項目は以下のとおりである。
■差異項目(上位5項目)
・有給休暇引当金の計上:125社
・のれんの非償却:121社
・為替換算差額のゼロリセット:117社
・退職給付債務における数理計算上の差異の処理方法:92社
・非上場株式の公正価値評価:75社
なお為替換算差額のゼロリセットとは、全ての在外活動体に係る累積換算差額を、IFRS移行日現在でゼロとみなす措置である。





6.高齢者グループホーム敷地で固定資産税の評価ミス

高齢者グループホームの敷地に対して「住宅用地の特例」の適用を怠ったとして、納税者が東京都に固定資産税等の過大納付額等の損害賠償を求めた裁判。
 高裁は東京都に対して過大納付額等の損害賠償として約352万円を命じた。
ただし、納税者に過失割合は3割として、7割相当額の賠償請求を命じている。

■概要
・納税者は平成17年6月に高齢者グループホームを新築。
・不動産登記簿には建物の種類は「養護所」、地目は「畑」から「宅地」に変更。
・都税事務所職員は、不動産登記簿の調査などを踏まえて、「住宅用地の特例」の適用はないと判断。
・平成18年度から平成27年度まで特例の適用がないことを前提として算定された固定資産税等を支払った。
・都税事務所職員は、平成28年1月に行った実地調査などにより特例の適用があることを把握。
・平成28年2月、平成23年度から平成27年度までの課題納付額約460万円を還付。
・平成18年度から平成22年度までの過納付額約460万円の還付は応じてない。
・納税者は国賠訴訟を提起したものの、東京地裁が全部棄却したことから、判決を不服として控訴した。

■判決
特例の適用を怠った都税事務所職員の行為は国賠法上の違法性が認められる。
⇒不動産登記簿から土地上に居住用の建物が建築された可能性があることを推認できた。
⇒建物の外観から移住用建物であることを推認することができた。
⇒都税事務所職員が建物が新築当時、適切な現地調査を実施していれば、土地に特例の適用があることは容易に認定することができた。








7.減損判定、月中平均価額の使用はOK

・時価会計基準等において、その他有価証券の貸借対照表価額については月中平均価額の使用を認めない方針。
・また、外貨建てその他有価証券の換算に用いる為替相場としての期末前1か月間の平均相場の使用も認めない。

⇒一方、その他有価証券の減損処理の「著しく下落した」の判定に関しては月中平均価額の使用を認める方向。
⇒ただし、これらを認めた場合であっても減損損失の算定に関しては期末日における新しい時価に関する会計基準に基づく時価による




8.給与と外注費の区分_1

■判断基準について
・契約の有無
請負契約であれば(一般的に)外注費、雇用契約であれば給与
⇒契約内容で判定のため請負契約であっても給与とされる可能性がある

・代替性の有無
代替性があれば外注費、なければ給与
⇒たとえば講師等が自らの判断により代行者に役務提供を行わせることができる場合は代替性ありとなる

・拘束性の有無
拘束性があれば給与、なければ外注費
⇒業務時間や業務場所の決定について裁量がなければ拘束性ありとなる

・指揮監督の有無
指揮監督があれば給与、なければ外注費
⇒直接的・間接的を問わず委託者の監督下に置かれていれば指揮監督ありとなる

・危険負担の有無
危険負担をしていれば外注費、していなければ給与
⇒時間数でなく内容の優劣、成果に応じて金員が支払われていれば危険負担ありとなる

・用具供与の有無
業務遂行に必要な用具を自前で用意していれば外注費、していなければ給与
⇒たとえばPCを委託者が用意していれば用具供与ありとなる







軽減税率対策補助金 来年12月16日が申請期限

2019年10月1日からの消費税率引き上げに伴い、
中小企業・小規模事業者向けに国の補助金制度(軽減税率対策補助金)が利用可能。

■補助金の内訳 ※補助金はすべて上限
(1)複数税率対応のレジを導入した場合
・レジ1台あたり20万円
・複数台購入した場合、1事業者あたり200万円

(2)電子受注発注システム(EOS)を改修・入替した場合
・小売業者の発注システム ⇒ 1,000万円
・卸売業者の受注システム ⇒  150万円
・双方の改修・入替を行う  ⇒ 1,000万円

■申請期限
(1)のケース
⇒2019年12月16日まで(事後申請)
(2)のケース
・指定業者に依頼した場合
⇒2019年12月16日まで(事後申請)
・自ら改修等を行った場合
⇒2019年9月30日までに改修等が完了することを前提に、
2019年6月28日までに交付申請を完了させる必要あり。
完了報告書は2019年12月16日までに提出する。

すでに10万件を超す申請があるため、飲食料品を扱う事業者は早めの対応が必要。







10.IFRS16号「リース」適用 不動産の借手のケース

・不動産賃貸借取引は、新基準適用でもっとも影響を受ける領域の一つ。
 ⇒ オンバランスとなる可能性が高い。

・リース期間はどのように考えるか
 ⇒ 「解約不能期間」+「合理的に確実に行使すると見込まれる延長オプション期間等」

・リース負債に含まれるリース料の範囲
 ⇒ 固定リース料、または物価指数に連動するリース料はリース負債を構成する。
 ⇒ 一方で、「売上高に連動する店舗の家賃」はリース負債には含まれず、発生時に費用処理する。

:割引率
 ⇒ 原則、「貸手によるリースの計算利子率」。入手困難な場合は「借手の追加借入利子率」。






11.会社計算規則が改正され、「収益認識に関する注記」を追加

・法務省が10月15日に「会社計算規則の一部を改正する省令」を公表。
⇒注記表の項目に「収益認識に関する注記」が追加

・連結注記表に当該項目の記載がある場合は、個別注記表は記載不要。

・財務諸表等規則にも同様の注記規定が新設。

・収益認識基準で返品調整引当金が認められなくなったことに伴い、会社計算規則から当該項目を削除。

・2022年3月期から適用開始。
⇒2019年3月期から早期適用も可。





12連結パッケージの作成講座Ⅰ・Ⅱ

■連結PKGをめぐる実務上の問題
・子会社の入力に関する問題
⇒一概に子会社側のレベルの問題とは言えない
 入力に関する説明不足、不必要な情報シートがある等入力対象の過多
・複雑化(属人化)している問題
⇒複雑な条件付書式や関数の使用、マクロの使用は厳禁
・会計基準改正等に合わせて更新されていない問題

■連結PKG作成方法
・構成を作成
⇒アウトプット(有報など)に必要な情報を得るための構成とする
⇒目次を定める
⇒分冊する(子会社用or持分会社用、四半期用or年度決算用 等)
 ※ただしできる限り少なくする
・共通フォーマットを作成(フォント、レイアウト、ヘッダー情報、シートコード等)
・連結PKGのシートを作成 ※下記は特に重要
⇒表紙(PKG名称、会計期間、報告通貨、入力担当者に関する情報、シート一覧)
⇒財務諸表シート(特記事項等を記載する欄を付けるとよい)
⇒内部取引用シート(科目別・取引先別のグループ内取引金額、科目別のグループ外取引金額)
⇒CF用シート(科目別当期増減額、科目別・取引先別のグループ内取引増減額、科目別グループ外取引増減額)
⇒注記用シート(各科目の明細情報、特定の取引の該当の有無)






13.連結パッケージの運用・管理のポイント

■事前~経理間の効率的なコミュニケーションルートを整えておく~
・最新の関係会社の入力担当者を把握しておく
⇒グループ会社であっても、親法人の経理は現地経理の体制を分かっていないことが多い
⇒現地経理の担当者が異動していた、ということもよくある

■PKG受領時~連結PKGのチェックの重点を意識~
・数値分析や定性分析に時間をかける
⇒形式的なチェックは自動化(システム化、入力フォーマットの関数化)

■決算後~フィードバック~
・次の決算で同じミスを防ぐように、現地経理を教育する
⇒連結決算の一過程にすぎないことから、小さな問題は看過されやすい
⇒「現地経理Aは締を守らないので進捗を注意する」「B現地経理の担当者はミスが多いので注意する」「この欄のミスは親会社経理で修正する」といった諸問題や例外を多く抱えることが、連結決算の業務に精通していると満足する社風はNG






14.収益認識「時期」の判断ポイント

収益認識は5つのステップを踏む。
最終ステップとして履行義務を充足したタイミングで収益認識する。
履行義務には①一定の期間にわたり充足されるものと②一時点で充足されるものの2つがある。

①一定の期間にわたり充足される履行義務
・義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受するもの
⇒清掃サービスのような日常的または反復的なサービス
⇒サービス提供を受けたタイミングで収益認識をする
・履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積できることが収益認識の条件


②一時点で充足される履行義務
・資産に対する支配を顧客に移転した時点で収益認識
⇒顧客が資産を検収したこと、法的/物理的に所有権を有する等を考慮する







15.完全子会社を清算した場合の子会社の繰越欠損金の取扱い

 完全子会社を清算し残余財産が確定した場合、繰越欠損金の引き継ぎが可能。
 ただし、支配関係が一定期間継続していない場合は、引き継げる額に制限措置がある。

(1)引き継げる欠損金
 残余財産確定の日の翌日前10年以内(※)に開始した各事業年度において生じた欠損金額は原則親会社に引き継がれる。
※平成30年4月1日以前に開始した事業年度において生じた欠損金については9年

(2)引継制限がされる場合
 次の①~③のうち最も遅い日から残余財産確定の日まで継続して支配関係がない場合制限あり
 ①残余財産確定の日の翌日の属する事業年度開始の日の5年前の日
 ②完全親会社の設立の日
 ③完全子会社の設立の日
 ※引継制限判定の場合の支配関係は、50%超の支配関係があることで足りる。

(3)引継ぎが制限される欠損金
 ①支配関係が生じた日の属する事業年度前に生じた欠損金の額
 ②支配関係事業年度以降の欠損金額のうち、特定資産譲渡等損失に相当する金額
 ※支配関係事業年度=完全子会社の最後に支配関係があることとなった日の属する事業年度

(3)引継制限の内容
 支配関係事業年度の前事業年度終了時における時価純資産額と簿価純資産額の金額により判定
 ①(時価純資産額-簿価純資産額)≧支配関係前未処理欠損金額
  ⇒引き継ぎ制限なし
 ②(時価純資産額-簿価純資産額)<支配関係前未処理欠損金額
  ⇒含み益相当額分までは引き継ぎが可能
 ③(簿価純資産額-時価純資産額)<支配関係事業年度以後の特定資産譲渡等損失額
  ⇒支配関係前未処理欠損金の全額が引継ぎ制限の対象。
   しかし、支配関係以後の未処理欠損金額のうち、特定資産譲渡等損失相当額からなる部分については含み損相当額分を超える金額について引き継ぎ可能




15.ショートレビュー

監査法人が、株式公開を目指す企業と監査契約を締結する前に行う、経営や財務に関する短期間の調査
株式公開に向けた問題点やその解決の方向性などを明らかにするもの

■調査内容
1.過年度の損益状況と今後の利益計画
2.経営管理体制の整備状況
・組織的経営を可能とする管理体制の確立の状況
・内部監査制度の確立と運用状況
・規程の整備状況
3.予算管理・中期事業計画
・投資家に信頼性のある業績見通しを公表できる体制にあるか
・経営管理目的のための月次決算
・部門別予算実績差異分析
4.内部管理状況
・販売、購買、在庫管理などの基幹業務の流れと管理状況
・資金管理、固定資産管理などの状況
5.会計制度の整備状況
・会計方針、決算内容の検討
・原価計算システム
・タイムリーディスクロージャー要請への対応
6.資本政策
・株式公開までの資本政策の留意点
7.関係会社や特別利害関係者の状況
・関係会社等の存続の合理性
・会社と関係会社、役員等との取引の状況
8.株式公開までの準備作業のスケジュール

















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