2019年4月17日水曜日

3/29 勉強会:取締役報酬として発行する株式無償発行の会計基準開発へ 他

1.税理士業務をめぐる最近の訴訟トラブル1

■事例
多額の固定資産売却益を計上した事業年度に役員退職金を計上していれば節税ができたとして、
顧問先会社が税理士法人に対して損害賠償を求めたもの。

⇒役員の退職及びその退職時期を決定するのはその会社の役員自身の意思決定に委ねられるため、
税理士法人は必要な税務上の情報(過大役員退職金として否認されるリスク)を十分提供していたとして、
債務不履行があるとは認められないと地裁は判断した(第一審では税理士法人勝訴。顧問先控訴)。





2.取締役報酬として発行する株式無償発行の会計基準開発へ

■会社法改正
・現行、募集株式を無償発行不可
・取締役に無償発行する場合は、一度金銭で報酬支払→有償発行した募集株式をその金銭で引受、という形をとる
・今回の会社法改正で、無償で株式又は新株予約権を報酬として交付できるようになる

■会計処理(現在開発中)
・SO基準がベースになるものと考えられている
⇒交付された株式の公正な評価額のうち、合理的な方法に基づき当期に発生したと認められる額を当期の費用に計上



3.プロラタで賃貸料対応部分以外も是認も

・居住用マンションに係る消費税の仕入税額控除の否認のされ方がバラバラ
1.全額が共通対応とされ否認
2.仕入税額を賃貸収入と販売収入によりプロラタ計算し、賃貸収入の割合に対応する仕入税額のみ否認
3.賃貸期間が短期間だった場合については否認なし
4.調査で議論になったものの、全く否認なし
⇒通達が定められていないため、取扱いが異なっている
・エーディーワークスは、憲法上の平等取扱原則に違反するとして係争中


4.軽減税率制度について

■飲食料品に該当する食品添加物
・金箔の販売 ⇒ 食品添加物として販売する場合は8%が適用
・重曹の販売 ⇒ 上記と同じ扱いになるが、洗剤・清掃用に販売する場合は10%が適用される。

■酒類とその関連商品
酒類:酒税法上アルコール分1度以上の飲料をいう。
・みりんの販売 ⇒ 酒税法に規定する酒類に該当すれば10% 
・料理酒の販売 ⇒ ソース・ジャムなどを作る為に使うワインなど料理酒でも酒類に該当すれば10%
・ノンアルコール飲料 ⇒ アルコール度数1度未満であれば8%

■医薬品・医薬部外品とその関連商品
・栄養ドリンクの販売 ⇒ 医薬品等に該当するものは10%
・健康、美容食品の販売 ⇒ 特定保健用食品、栄養機能食品は医薬品等に該当しないので8%




5.店舗併用住宅の敷地で固定試案評価ミス

併用住宅の固定資産税等を減免する住宅用地の特例の適用を怠った東京都との国賠訴訟

■特例の適用対象
居住部分の床面積が家屋の総床面積の25%以上を占める家屋(併用住宅)の敷地に、一定の割合(居住部分が50%未満は0.5、50%以上は1.0)を乗じた敷地面積が住宅用地

■事例
問題となっている建物は4階建て
・1階及び2階の大部分は店舗又は事務所
・3階4階部分は納税者とその親が居住の用に供していた(玄関は1階)
1階及び2階部分に居住者専用の階段等があった。
都税事務所は階段等考慮せずに50%未満と認定。
その後、都税事務所の調査により50%以上であることが発覚
都税事務所は過去5年分の固定資産税等の過納付額を還付
納税者はそれ以前の15年分の過納付額の支払を求め国賠訴訟を提起。

■判決
都税事務所の注意義務違反を認め、15年分の過納付額全額(過失相殺なし)の支払いを命じた。
⇒3階及び4階に行くためには階段等を使用する必要があることを容易に認識できた。
⇒建物のうち1階及び2階の床面積の一部は居住部分の面積に含まれる可能性があると考えるのが合理的。




6.電子的な資金調達(ICO)も金融商品取引法規制の対象に

・政府は3月15日「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、国会に提出した。今通常国会で法案が成立した場合は、来年6月頃までには施行される予定。

■内容
・「仮想通貨」については、資金決済法などの法令上の呼称を「暗号資産」に変更する。
・暗号資産を対価としてトークン(電子的な記録・記号)を発行する行為に金融商品取引法が適用されることを明確化する。
・有価証券と同様、暗号資産についても風説の流布や相場操縦などの不公正な行為を禁止する。
・金融商品取引法の犯則調査に電磁的記録等の差押えを可能にする規定を導入する。



7.消費税:ワゴンセールと軽減税率

■ワゴンセールによる商品の販売
⇒複数税率の商品をセットとする一括譲渡とされる
(食料品とそれ以外がセットで販売されるケースなど)

■消費税率の求め方
個々の商品の金額が合理的に区分されていない場合
(食料品とそれ以外がセットで販売されるケースなど)
⇒「仕入原価」または「通常売値」の比で税率を確定する

なお、ワゴンの中から食料品のみを選択した場合には個々の
単価が区分されていなくても軽減税率8%で計算できる




8.大法人の間接的な100%子法人も大規模法人に該当

■みなし大企業の判定における「大規模法人」の範囲が見直し
・資本金1億円超の法人
・大法人の100%子法人
・100%グループ内の複数の大法人に株式の全部を保有されている法人

■中小企業者等の判定
資本金1億円以下の法人ではあるが、
(1)株式の2分の1以上を同一の大規模法人に所有されている法人
(2)株式の3分の2以上を大規模法人に所有されている法人

■例
大法人A社(資本金5億円)
↓100%保有
法人B社(資本金5千万円) ∴みなし大企業(大規模法人)
↓100%保有
法人C社(資本金5千万円) ∴みなし大企業(大規模法人)
↓50%保有
法人D社(資本金1千万円) ∴中小企業者?

法人Dはみなし大企業に該当する。
・判定の対象となる法人C社がみなし大企業(大規模法人)であるため
⇒大法人A社による間接的な完全支配関係がある会社であるため。

つまり、中小企業者の判定において、
判定を行う法人の直接の株主である法人(B社)の資本金のみならず、
その法人の株主である法人の支配関係及び資本金も確認する必要があり。




「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱」の概要

■概要
・2月14日の法制審議会総会で上記要綱案が採択。
⇒今後は要綱の内容に基づいて会社法改正法案が国会に提出される予定。

■株主総会関連
・株主総会資料(事業報告・連結計算書類等)について、株主の個別承諾なしでウェブサイトに掲載する等の電子提供を可能とし、上場会社には義務付ける。ただし、株主から請求があった場合は、書面で提供する。

・株主提案権の議案数を10に制限
⇒濫用的な行使を防ぐため。内容面でも、人の名誉を侵害する等の不利益を図る目的の議案を制限。

■取締役等関連
・「監査役会設置会社(公開会社かつ大会社に限る)であって、有報提出会社」及び「監査等委員会設置会社」では、取締役会は報酬等の決定方針を決定しなければならない。

・「監査役会設置会社(公開会社かつ大会社に限る)であって、有報提出会社」では、社外取締役の設置を義務付け。

■その他
・社債管理補助者制度を創設。
⇒社債管理者より限定された権限を有する社債管理補助者に、社債の管理の補助を委託できる。




10.平成31年3月期の税務申告チェックポイント

「Ⅹ消費税関係」
・課税売上高(免税売上高含む)5億円超の場合、課税売上割合が95%以上でも個別対応方式or一括比例配分方式を採用しているか
・一括比例配分方式を採用する場合、2年間強制適用となることを考慮しているか
・有価証券の譲渡を行った場合、課税売上割合の分母に譲渡対価の5%を含めたか
 ただし自己株式の場合は不課税取引のため含めない
・社宅の貸付がある場合、収受する賃借料を非課税売上としているか

「ⅩⅠ事業税(外形標準課税)」
・報酬給与額は損金不算入額を除外しているか
・通勤手当等の所得税が非課税となる部分を報酬給与額から除いているか
・事業主が支出した確定給付年金などの掛金は報酬給与額に含めているか
・個人の開業医へ産業医報酬を支払った場合、報酬給与額に含めているか
・還付加算金は受取利子に含めているか
・契約上、賃借料と明確かつ合理的に区分されている共益費を支払賃借料から除外しているか
・ウィークリーマンション等を1日、1週間単位で賃借していても、結果的に賃借期間が連続して1ヶ月以上になっている場合、支払賃借料に含めているか




11.賃上げ・投資促進税制の要点整理
■概要
・一定の賃上げ等を実施した場合、法人税の計算において税額控除するもの
・対象年度:2018年4月~2021年3月末までに開始する事業年度
・税額控除額:対前年度の給与等支給額増加額の一定割合(法人税額の20%を上限)
・中小企業者等(資本金1億円以下&常時使用人1,000人以下)か否かで条件が異なる
・給与等:賞与・現物給与を含む、退職金は除く

■中小企業等
・適用条件:賃上げ率が前年度比1.5%以上
・税額控除額:給与等支給額増加額×(15%+上乗せ割合(10%)※)
※上乗せ割合の適用条件
①給与等支給額増加額が前年度比2.5%以上
②当期の教育訓練費が前期の1.1倍以上等

■中小企業等以外
・適用条件:賃上げ率が前年度比3%以上、かつ、国内設備投資額が償却費※の90%以上
・税額控除額:給与等支給額増加額×(15%+上乗せ割合(5%)※)
※償却費:会計上の減価償却費+剰余金の処分により特別償却準備金に積立てた額
※上乗せ割合の適用条件

①当期の教育訓練費が、前期・前々期の教育訓練費の平均の1.2倍以上


12.平成31年3月期の税務申告チェックポイント:Ⅳ 役員給与、Ⅴ 交際費

■役員給与
・月次の役員給与は定期に同額支給されているか。
⇒支給ベースだけではなく、手取ベースや外貨ベース等も同額であれば定期同額に該当。
・期中の改定は期首から3ヶ月を経過するまでに行われているか。
・減額改定は、業績悪化等の改定事由に該当するか
・事前確定届出給与に該当する役員給与がある場合、必要な届け出は行われているか。

■交際費
・交際費以外の科目で処理されていない確認。
⇒福利厚生費や会議費に含まれていないか

・5,000円以下の少額飲食費は交際費から除外
⇒社内飲食費は除外されないので注意

・1人あたり5,000円超の飲食費について50%損金算入可能
⇒中小法人の特例(800万円定額控除)を適用している場合は、上記適用はない。




13.税効果会計の注記

■注記事項
(1)繰延税金資産および繰延税金負債の発生原因別の主な内訳
(2)税引前当期純利益または税金等調整前当期純利益に対する法人税等(法人税等調整額を含む)の比率と法定実効税率との間に重要な差異があるときは、当該差異の原因となった主要な項目別の内訳
(3)税率の変更により繰延税金資産および繰延税金負債の金額が修正された時は、その旨および修正額
(4)決算日後に税率の変更があった場合には、その内容およびその影響

■税務上の繰越決算金に関する繰越期限別の数値情報
 繰越税金資産の発生原因別の主な内訳として税務上の繰越欠損金を記載している場合、当該金額が重要であるときは、以下の事項についても記載することとされている。
・当該繰越欠損金の額に納税主体ごとの法定実効税率を乗じた額
・当該繰越欠損金に係る繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)
・当該繰越欠損金に係る繰延税金資産の額
※繰越外国税額控除や繰越可能な租税特別措置法上の法人税額の特別控除等を将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額の区分に含めて記載が必要。

なお、連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表において記載することを要さない。

■税務上の繰越欠損金に関する定性的な情報
税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を計上している場合、当該繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由の記載が必要となる。

■適用時期等
・税効果会計基準一部改正は、平成30年4月1日以後開始する事業年度期首から適用
⇒3月決算法人は、平成31年3月期決算から適用されるため、上記の数値情報や定性的な情報の開示が必要になる場合がある。
・摘用初年度においては、税効果会計基準一部改正で追加された注記事項に関する比較情報を記載しない取り扱いがある。




14.市場変更基準(マザーズから一部)


1.マザーズ⇒一部
主に以下の(A)又は(B)に適合すること。
(A)
・株主数:2,200人以上
・流通株式:数⇒2万単位以上、かつ時価総額⇒20億円以上、かつ比率⇒35%以上
・時価総額⇒40億円以上
・純資産額⇒(連結)10億円以上、かつ、単体純資産の額がマイナスでないこと
・利益の額⇒直近2年間の利益の額の総額が5億円以上
・虚偽記載又は不適正意見等⇒直近5年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし、直近5年間「無限定適正」または「除外事項を付した限定付適正」



15.IFRS導入プロジェクトの進め方②



フェーズ1:影響度調査
フェーズ2:導入計画の策定
フェーズ3:対応策の検討と立案

フェーズ3は会計方針の策定と開示の検討から構成される。

・会計方針の策定(会計方針の検討と文書化)
影響度調査等で得た情報をもとに会計方針の見直し方針を決定する
→会計方針を見直しした後、実際に会計処理できるよう対応策を検討
→手またはシステム対応するか否かは導入コストと時間を考慮して検討する必要がある

経理規程はIFRS改訂の都度更新する必要があるため、更新を念頭に作成を進める
→条文の引用箇所を明示等
→海外子会社用の経理規程作成時には、IFRS条文引用で作成することも効率的

・開示の検討
IFRSの開示ボリュームは多く、会計方針の策定以上に導入プロジェクトの比重を占める
→十分な準備期間が必要となる
IFRSベースでの連結パッケージが必要となる
→日本基準の連結パッケージにIFRS項目を追加またはゼロから作成するケースがある
→導入計画策定時に子会社からのIFRS情報の吸い上げ方法を整理しておくことが重要
→運用時にはIFRSの連結パッケージを作成する子会社にパッケージ作成を説明して効率的に進める必要がある












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