2019年5月19日日曜日

5/17 勉強会:飲食代の交際費計上めぐり重加を取消す 他

1.取締役の報酬や解任をめぐる会社法の訴訟トラブル

■事例1
入院による長期欠勤により定められた取締役報酬を減額された元取締役が会社に対して減額分の支給を請求した事例。

⇒地裁は、減額支給には取締役本人の同意がなかったとして、被告会社に対して減額分の支払いを命じた。
・定められた報酬額は会社と取締役の双方を拘束するため、取締役が変更に同意しない限り、取締役は報酬請求権を失わない。

■事例2
任期途中で解任された元取締役が会社に対して残存任期中の取締役報酬相当額の損害賠償を請求した事例。

⇒地裁は、取締役としての職務遂行能力や適性に著しく欠けるところがあったとして解任には正当な理由があったと判断。
解任の正当な理由は下記の通り。
・原告が代取に就任した会社の事業が被告会社との関係で競合に当たらないことなどに関して被告会社に十分な説明を行っていない。
・秘密保持誓約の締結拒否。





2.リース会計の単体適用、中小に影響も

■リース会計の基準改訂
・まだまだ着手段階
■単体財務諸表の取扱いが大きな論点
・税務上の取扱いへの影響
・適用上、管理上のニーズ
・投資家のニーズ
・単体にも適用とした場合には結果的に中小企業にも影響しかねない
⇒コストベネフィットを考慮し総合的に判断すべき





3.平成9年事案は仮に存在しても「誤り」

■平成7年と9年の事案(国税庁に寄せられた質問への回答)
・分譲用住宅を分譲までの数年間、賃貸した場合の取扱い
⇒取得の目的が分譲であれば課のみに該当する、という回答文書あり

■国税庁の主張
・平成7年事案は、マンション購入時に入居者なし
⇒課税仕入時に入居者がいなければ課のみで差し支えない

・平成9年事案は、マンション購入時に入居者あり
⇒回答文書の存否を確認できない
⇒仮に文書があったとしても回答が間違っている個別事案に過ぎない
⇒本来は共通対応とすべき

■係争中の裁判への影響
・更正処分が行われた事案は入居者あり
⇒平成7年事案との違いを明確にし、平成9年事案を否定することで、更正処分の正当性を主張




4.飲食代の交際費計上めぐり重加を取消す

■事案
・請求人の代表取締役の個人名義のクレジットカードで、支払った飲食代等代金を交際費勘定等の費用に計上。
・税務調査で、個人的な飲食等に係る金額であることから損金に算入できないことを指摘され、法人税修正申告書を提出。
・修正申告に対し、原処分庁は、個人的な飲食等代金を損金に算入したことが仮想隠ぺいに該当すると判断して、請求人に重加算税を賦課した。
⇒個人名義のクレジットカードを利用し、飲食等代金を費用に計上できないことを認識しながら損金算入したと主張。

■判決
仮装隠ぺいの事実は認められないと判断し、重加算税を取消。
⇒個人名義のクレジットカードを使用したからといって個人的な飲食等代金とはいえない。
⇒請求人が、個人で飲食等をした代金であると申述しているが、概括的に述べたものであり、具体性が乏しいうえにその内容を裏付ける客観的な証拠が認められない。





5.継続企業の前提の判断基準、会計基準の原案が明らかに

・企業会計基準委員会が検討している財務諸表を継続企業の前提に基づき作成することが適切であるかどうかの判断基準に関する会計基準の原案が明らかになった。

■適切である場合
・経営者は財務諸表の作成に当たって継続企業の前提に関する評価を行うこととし、当該企業の清算や事業停止の意図などある場合を除き、継続企業の前提に基づき財務諸表を作成しなければならない。

■適切でない場合
・更生手続開始決定の取消しや破産開始手続きの申し立て、行政機関による事業停止命令等





6.償却資産における申告制度の見直しの行方

■現在検討中の申告制度「見直し案」
※現行方式 ⇒ 新方式
・賦課期日:1月1日 ⇒ 1月1日
・申告期限:1月末 ⇒ 賦課期日直後に到来する決算日から2か月以内 
・申告内容:賦課期日時点の資産状況 ⇒ 決算日時点の資産状況(除却資産及び除却時期を付記)
・申告方法:書面又は電子申告 ⇒ 電子申告に限る
・納期  :4、7、12、2月 ⇒ 決算期により納期数が変動

■懸念事項
・課税事務量の増加、煩雑化
・基幹システムの改修コスト
・新方式を希望する法人数とシステム改修費用の費用対効果

⇒電子申告のメリットが十分活用できるように、課税庁の受入態勢を整えることが望まれる
 下記システムの導入も検討されている
 (1)複数地方団体への固定資産税(償却資産)の一括電子申告システム
 (2)共通電子納税システム







7.仮想通貨の譲渡原価等の計算方法

31年度税制改正政令で仮想通貨の評価方法等につき下記が定められた

■譲渡原価の評価方法
⇒総平均法、移動平均法
※法定評価方法:総平均法
⇒取得日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに,選んだ評価の方法を書面で
納税地の所轄税務署に届け出なければならない。
届出がない場合は法定評価方法である総平均法で計算する

当初は「移動平均法で計算するのが相当」とされていたが、計算が煩雑になるため
「総平均法」が法定評価方法として採用されることとなった

■所得区分
原則は雑所得(事業と認められる場合,事業所得)





8.申告書関係:法人税等の申告書に係る電子申告義務化

2020年4月1日以降、大企業が行う申告書の提出方法が、
電磁的方式により提出することが原則となる。

■対象税目
・法人税及び地方法人税
・消費税及び地方消費税
・法人住民税及び法人事業税
■対象法人
・内国法人のうち資本金の額等が1億円を超える法人
・相互会社、投資法人及び特定目的会社など
■対象となる申告書
・確定申告書
・中間(予定)申告書、仮決算の中間申告書
・修正申告書、還付申告書
※添付すべき書類のすべてをe-taxにて提出
■適用日
2020年4月1日以後に開始する事業年度から適用。
※消費税の中間納付につき毎月納付が適用されている会社は、
2020年4月30日申告・納付期限分より電子申告が必須。
■その他
・電子署名の簡素化
・勘定科目内訳明細書の記載内容の簡素化
・CSV形式による提出







(新収益認識基準)「一定期間にわたり充足される履行義務」

・「一定の期間に充足される履行義務」の場合、履行義務の充足に応じて収益も認識する。

・(1)清掃サービス、輸送サービスなど
 ⇒ 「仮に他の企業に交代した場合、完了済のサービスについて大幅にやり直す必要がない」場合、一定の期間にわたり収益認識。
・(2)顧客の土地の上に建物を建設など
・(3)コンサルティングサービス、個別受注製造契約など
 ⇒「顧客仕様など、他の顧客用に転用できない」かつ「完了した部分について対価を受け取れることが契約に定められている」場合、一定の期間にわたり収益認識。

・従来の会計基準で使われていた「工事完成基準」「工事進行基準」という用語は新会計基準では使われなくなる。

・履行義務の充足に係る進捗度が見積もれる場合 ⇒ 従来の「工事進行基準」と同様に収益認識。
・見積もれない場合 ⇒ 「原価回収基準」で一定の期間にわたり収益認識(★ここが従来と大きく異なる)。
・原価回収基準とは、「かかった原価のうち、回収可能な部分を収益として認識」する方法。
 ⇒ 通常、収益と原価が同額となり、利益ゼロとなる。
 ⇒ 見積もりが出来るようになった会計期間に利益が集中するため、早めに見積もりを固めることが重要となる。







10.時価算定会計基準は6月の最終化を目指す。

・ASBJは4月19日、1月18日に公表した公開草案「時価の算定に関する会計基準(案)」のコメントを紹介・審議。

・時価に算定方法について
公開草案では、インプットと評価技法を用いて時価を算定することを提案(IFRS13号と同様)。
⇒「インプット」、「評価技法」、「時価のレベル」という概念に馴染みがない。
⇒定義を明確化すべき。

・投資信託の経過措置について
⇒何が時価評価の対象で、何がそうではないのか。実務的にも議論あり。
⇒6月の最終化を目指し、引き続き議論。

・LIBBOR対応の検討開始時期は未定
⇒検討開始時期は、国際的な基準の動向や、制度改正の状況を踏まえ、判断。





11.ウーバー株が大幅安

・配車サービスのウーバー・テクノロジーズは続落し、IPO価格を20%近く下回る水準に落ち込んだ。
・アナリストは、同社株が危険水域に急速に接近している可能性を指摘した。
・同業のリフトも下がっている。
・配車サービス業界を巡っては懐疑的な見方が多いが、米中貿易摩擦の激化で株式相場全体が大きく下げたことも要因とのこと。
・日本株市場でも、ウーバーの筆頭株主であるソフトバンクグループの株価も下落。


 



12.新たな収益認識基準が消費材産業に与える影響
消費財産業では販売先に対して販売奨励金を支給することが多。
販売奨励金には、販促目的に金銭や資産を交付することをいい、代表時なものとしてリベートがある。
その他、販売委託料の支払、景品等の支給、サンプル・試供品の提供、マネキン(スーパーの試食販売員)代、販促物品の支給も該当してくる。

<リベートの計上区分>
収益認識基準で、リベートは変動対価に含まれるとされている。
リベートが財またはサービスに対する支払か取引価格の減額、あるいその両方であるのか判断することが必要。
→一般的にリベートは販売側が提供する財またはサービスとの交換ではないため、取引価格の減額=売上のマイナスとして処理される。
→一方、企業のチラシやマネキン代は販売品とは異なる財またはサービスとの交換によるものであるため、販管費として処理される。

<取引価格の減額の認識時期>
収益認識会計基準では、
・財またはサービスの移転に対する収益を認識する時点
・対価を支払うかまたは支払を約束するとき
のいずれか遅い時点で取引価格を減額することになる。
→リベートは通常販売前に契約等するのが一般的であり、販売時点で取引価格の減額をする

<変動対価の見積方法>
期待値法または最頻値法のいずれかで金額を見積することが必要
→収益認識時点でリベート債務を認識し、差額を収益計上する

→見積金額は各決算日に見直す必要がある。































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