2019年6月25日火曜日

5/24 勉強会:SRLYルール 他

1.LIBORの公表停止、ヘッジ会計が継続適用できるか

・LIBORは不正操作問題を端緒に2021年12月末に恒久的な公表停止となる可能性が高まっている。
・現状、貸出やデリバティブ等の相対契約において異なる後継指標が用いられることが考えられる。
・契約途中で参照する金利指標が変更することになるが、ヘッジ会計を継続適用することができるかが問題になる。
・企業会計基準委員会は、国際的な歩調と合わせるスタンス。






2.米国会計基準からIFRSに移行した日本企業が作成した調整表の項目②

■差異の内容を調整
・米国会計基準vsIFRS 両基準の差による違い
⇒「認識・測定項目における重要な差異」について調整表を作成

■主な差異の内容
・減損会計(非金融資産≒固定資産)
(米国基準)3ステップ=日本基準に類似する方法(兆候⇒認識⇒測定)
(IFRS)兆候があったら直ちに減損
・DTA、DTL
(1) 関係会社に対する投資に係る将来減算一時差異の取扱い
(2) 過去にその他包括利益で認識したDTADTLに関して税率が変更された場合の取扱い
・市場性のない資本性金融商品(≒非上場株式)
(米国基準)取得原価で評価。一時的でない公正価値の下落が生じている場合はそこまで減損(日本基準に類似する方法)
(IFRS)すべて公正価値で評価
・連結会計
(1) 子会社の範囲
(2) 決算日の統一(IFRSでは実務上不可能な場合を除き、決算日の統一が必須)






3.フォールバック

・LIBORの恒久的な公表停止後に参照する金利を契約当事者間であらかじめ合意しておくこと
・後継指標としては、無担保コールO/N物レートにもとづくターム物金利やTIBOR(東京銀行間取引金利)が挙がっている




4.顧問先の横領で税理士の責任めぐり判決

■事案
・納税者の経理担当者が約2,000万円を横領していたことが発覚。
・経理担当者は当座預金口座から他の口座に振込方法で横領していた。
・税理士が当座勘定照合表を確認していれば横領を防げたとして損害賠償を求めた。
⇒税理士は平成26年2月分までは月次試算表の作成にあたって当座勘定照合表との突合せを行っていた。
⇒横領していた経理担当者から当座勘定照合表を示されなくなった。

■判決
記帳代行を受任した税理士に当座勘定照合表の確認義務があるとは認められないと判断し税理側が勝訴。
⇒納税者の主張は税理士に求めた内部的な期待とどまる。
⇒明示的な合意がなく、納税者と税理士との間で当座勘定照合表を確認する義務が黙示的に合意されていたとも認められない。




5.米国に組成のキャプティブに合算課税

■キャプティブ保険(自家保険)とは
自社(自社グループ)のリスクを専門に引き受ける保険。キャプティブ保険子会社の設立を伴う。

■日本での現況
法制上、国内にキャプティブ子会社を設立するのは困難。また、専門的な保険業務を自前で担うことは現実的ではない。通常は再保険のかたちがとられる。
再保険・・・一旦国内保険会社に保険料を支払いリスクを移転した上で海外に設立したキャプティブ子会社に当該国内保険会社が保険料を支払いリスクを移転する仕組み。

■事例
日本企業がキャプティブ子会社を設立することが多い米国税法では、一定の条件下で課税投資所得にのみ課税する優遇措置がある。これを利用して米国に組成されたキャプティブ子会社を巡り、CFC税制により更正処分を受ける事例が発生。





6.破産会社の過年度損失に係る更正の請求の可否

■概要
最高裁平成18年判決を契機として消費者金融会社が相次いで破綻することになったが、それによって確定した過年度損失について更正の請求が認められるべきかが争われた事案

■前期損益修正に係る更正の請求
・前期損益修正に係る更正の請求については、法人税法基本通達2-2-16「前期損益修正」の取扱いによって厳しく制限され、従前の裁判例はその取扱いを容認してきた。
・本事案における一審判決も従前の裁判例に従って更正の請求を認めなかった。
しかし、控訴審判決においては従前の裁判例の考え方を否定して、本件更正の請求を容認している。

■継続企業の原則(ゴーイングコンサーン)
・前期損益修正に係る更正の請求は、ゴーイングコンサーンを理論的根拠
・本件の控訴審判決はゴーイングコンサーンが断たれた破産会社の更正の請求を認めており、今後の判例に与える影響が注目される。





7.SRLYルール

■SRLY(サーリー)ルールとは
連結子会社の繰越欠損金のうち、連結加入前に生じた一定の欠損金について
その子会社の個別所得金額を上限に利用できるという制限のこと

■経緯
連結納税導入時⇒連結加入前の子会社の欠損金は切捨て
平成22年改正⇒SRLYルールの導入により一定金額の繰越控除が認められることとなった

(例)
連結加入前の欠損金
親法人A:0
子法人B:▲50
子法人C:▲130

連結初年度の所得
親法人A:200
子法人B:100
子法人C:100

損益通算後の所得
親法人A:200
子法人B:50
子法人C:0(▲30は繰越)←子会社の所得を上限に控除

※現行では親会社の欠損金はグループ内で損益通算可能
⇒先日の税調専門家会議で「親会社へのSRLYルール導入」が検討された
(導入されるかは未定)




8.消費税:軽減税率の事例

■学校等の給食
有料老人ホームや小中学校で提供される食事は、
ケータリングサービスには該当せず、「飲食料品の譲渡」として軽減税率の対象となる。
⇒あくまでも入居者や児童・生徒のみ
⇒職員等が食べる場合は軽減税率の対象外

■お菓子の容器
・飲食料品の販売時に使用される容器
⇒その商品に付帯して必要とされるものであれば、
「飲食料品の譲渡」として容器も含め軽減税率の対象

・陶磁器やキャラクターが装飾された容器で、飲食後食器や装飾品と利用できるもの
⇒「一体資産」に該当し標準税率(10%)が適用される
ただし、「一体資産」が以下用件を満たす場合は軽減税率が適用される
(1)一体資産の譲渡対価の額(税抜)が1万円以下
(2)一体資産の譲渡対価の額のうち、食品部分の価額の占める割合が3分の2以上








IFRS16号「リース」 IFRS任意適用33社の事例

・(楽天)適用によって、使用権資産が86,833百万円増加、その他の金融負債に含まれるリース負債が91,420百万円増加。
・33社中29社が短期リース債務と少額リースのオンバランス免除規定適用を開示。
⇒(中外製薬)「当社グループは、基準が認める実務上の便法を採用しております。既存の契約についてリースを含んだものかどうか再判定しない便法、短期リース及び原資産が少額であるリースに対する認識の免除であります」
・全社が修正遡及アプローチの経過措置を適用。
⇒比較情報の修正再表示を行わず、累積的影響を適用開始日の利益剰余金期首残高として認識。




10.平成最後の2018年度のM&A件数・金額は過去最高

・2018年度のM&A(企業の合併・買収)件数は830件、金額は12兆7,069億円で過去10年間で最高。
⇒1,000億円を超える案件も18件と過去10年間で最高。
⇒クロスボーダーのM&Aが活発。
⇒事業戦略としてのM&Aが日本でも定着。

①武田薬品によるアイルランドの製薬会社シャイアーの買収
⇒日本企業が行ったM&Aとしては過去最高(6兆7,900億円)
⇒武田薬品は製品化に近い新規候補物質が少ない一方、シャイアーは開発の中期や後期段階のものが多い。

②ルネサスエレクトロニクスによる米半導体メーカー、インテグレーテッド・デバイス・テクノロジーの買収
⇒日本の半導体メーカーとしては過去最高(7,330億円)
⇒車載向けの通信用半導体の需要拡大を見込む。

③日立製作所によるスイスABBの送配電事業の買収
⇒投資額は7,140億円
⇒再生可能エネルギー市場や、新興国の送配電事業の拡大を目指す。






11.2019年金融庁「有報レビュー」の対応ポイント

■金融庁から19年3月期以降の事業年度に係る有報の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有報レビューの実施概要について公表されている。
 また毎年金融庁は、特定のテーマに着目し審査対象となる会社へ、個別の質問事項を送付する。
■2019年3月期の審査内容
(法令改正関係審査)
・「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」による改正
・「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」等の公表を踏まえた財務諸表等規則等の改正
(重点テーマ審査)
・関連当事者に関する開示
・SO等に関する会計処理及び開示
・従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する会計処理及び開示
(情報等活用審査)
・適時開示や報道、提供された情報等を勘案し、審査対象会社を選定
 



12.東証一部見直し論

■概要
東証一部の上場企業数が多すぎることから、見直し論が出ている。
上場企業数は以下のとおりであり、
東証一部の企業数が、他のカテゴリーと比較して多い状況となっている。
・東証一部:2,131社
・東証二部:493社
・マザーズ:279社
・JASDAQ:725社

また以下のように、時価総額の逆転現象が生じている。
・東証一部の時価総額100億円未満の企業は約260社
・東証二部の時価総額100億円以上の企業が150社
⇒一部への上場基準は時価総額だけでなく、一度上場すると降格しづらいためである。

また東証一部では、時価総額上位100社が全体の時価総額の約6割を占めており、
時価総額下位1,000社の時価総額の割合は2.35%程度である。
⇒これは、トヨタ1社(3.23%)よりも少ない。

この様な状況から、カテゴリー分けをする意義が見えなくなってきており、
現状では時価総額で市場を区分する案が有力となっている。





13.役員への株式交付信託

■株式交付信託の概要
・インセンティブ付与を促進するため、自社の株式を付与する制度において、信託を活用するもの。
・導入企業を委託者、信託銀行等を受託者、導入企業の役員を受益者として、信託契約を締結する。
・企業は信託会社に対して金銭の信託を行い、信託会社はその資金で市場からその企業の株式を取得する。
 また、その企業が保有する自己株式を信託会社が取得する場合もある。
・企業は信託期間中に、役員の地位・役職、在任期間、業績達成等に応じて、役員にポイントを付与する。
 ポイントに応じた株式が、一定年数経過時または退任時に一定の受益要件を満たした役員に対して付与される。
 例外的に、株式交付信託内で株式を換価して金銭で交付することもある。

■採用メリット
・役員報酬と会社の業績及び株式価値との連動性が明確になり、役員の中長期的な業績の向上と企業価値の増大に貢献する意識が高まることが期待される。
・SOを利用した場合等に比べて、株式の希薄化が生じず、株価水準によっては費用対効果がより高い。
・平成29年度改正では、役員の在任時に株式を交付する方法(在任時交付型)についても、税務上の事前確定給与または業績連動給与の要件を満たすものについては、損金算入を認められるようになりました。







14.コーポレートガバナンスの上場審査場の要請

1.取締役会の開催頻度
取締役会は毎月開催し、適時に経営判断が下せる体制が求められる。

2.取締役会決議事項
経営上の重要な事項について取締役会規程に基づき取締役会で決定されており、取締役会で決定された経営方針に基づいた経営が行われていることが必要となる。
取締役会が関連当事者との取引を他の取引と比して、取引価格、取引条件において妥当であると判断を下せる状況にあることが必要となる。
また、月次決算について報告がされて検証がされていることも必要である。

3.取締役会の役員構成
・取締役
常勤取締役が過半数いることが求められる。
同族関係で役員の過半数を占めることは望ましくなく、非同族が過半数を占めることが望まれる。
また、代表者のほかの企業の役員の兼任などは、基本的には上場審査上の大きなハードルとなる。

・監査役
監査役は監査の実効性を確保するため、名目だけの監査役では不適当で、監査役に相応しい能力及び経験を有する方を選任する必要がある。
監査役は役員と同族関係にないことが求められる。
監査役の監査の実施状況は審査上重点項目のひとつ。
監査役会の設置が求められる。






15.IFRS16号適用企業の財務諸表への影響

Air France-KLM S.A.
エール・フランス。航空会社。

航空機はリースで調達していることからIFRS16号適用後はリース資産として認識
その他、ハブ空港で借りている輸送機器や整備事業の建物、オフィスビル等に関するリース契約を識別している。
→IFRS16号を適用した結果、総資産は使用権資産の認識により23%増加、負債はリース負債の認識により29%増加していた。
→減価償却が増加することでEBITDAが増加している。
→事業で使用する資産をリースで調達している会社がIFRS16号を適用した場合、BSが膨らむ
→PL面ではリース料が減価償却費と支払利息に振替されるため、それぞれが関係する指標に影響を与える。







16.インボイス制度~その1~

■区分記載請求書保存方式(2019年10月~2023年9月)
現行の請求書等保存方式から軽減税率制度の実施に伴い導入される。
請求書等に記載する事項に下記事項が追加
①軽減税率対象資産の譲渡である旨 ⇒ ※や☆等の記号で軽減税率対象である事を記載
②税率毎に区分して合計した課税資産の譲渡等の対価の額 ⇒ 10%、8%ごとに集計して記載

■適格請求書保存方式(2023年9月~)
いわゆる「インボイス制度」、仕入税額控除の要件として適格請求書の保存が必要
○適格請求書発行に必要な事項
⇒区分記載請求書の必要事項に加え、適格請求書発行事業者登録番号を記載する
(適格請求書発行事業者の登録申請書を所轄の税務署長に提出し登録を受ける必要がある)


























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