2019年11月28日木曜日

9/13 勉強会:施行日をまたぐ消費税の適用税率 他

1.施行日をまたぐ消費税の適用税率

■売上計上方法により適用税率が異なる場合
・9月末に販売した商品を10月1日以降に発送した場合
 ⇒販売時に継続的に売上を計上している場合は、発送が10月1日でも旧税率が適用される。
 ⇒発送時に売上を計上している場合は、10%が適用される。

■売手と買手で計上基準が異なる場合
・出荷基準で売上計上している事業者と検収基準で仕入計上している事業者の取引で、
 商品出荷日が9月中、納品日が10月1日以降の場合、売手が8%で請求しても買手は10%で仕入税額控除できるのか。
 ⇒請求書等でその取引に係る消費税率が明らかな場合は、買手側は8%で仕入税額控除を行う。
 ⇒不明確な場合は買手側の会計処理により算出した仕入税額控除をすることが認められている。




2.会社法改正で株対価M&Aが本則化も

■今度の税制改正要望(令和2年度税制改正)
・株対価M&Aにおける買主株主の株式譲渡益について課税繰り延べ措置を講ずる

■会社法の「株式交付」定義
・株式会社が他の株式会社をその子会社とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対して当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付するもの
⇒三角株式交換はダメ??
⇒税法上の「株式交付」をどう定義するかは今後議論





3.通達評価額に乗じた節税策に警鐘を鳴らす

不動産等を相続した相続人らが、取得した財産の価格を評価通達が定める評価方法によって算出、相続税を申告。相続財産の一部の土地及び建物の価額につき評価通達の定めにより評価することが著しく不適当と認めれらるとして、評価通達によらない評価方法での評価を行った更正処分の取り消しが求められた事案。

【判決】
評価通達6項を適用し、通達評価額ではなく鑑定評価額を相続税法上の時価と結論。
⇒通達評価額と鑑定評価額ではほぼ4倍の乖離が生じる
⇒節税や租税回避の意図があった

■評価通達6項とは
「この通達の定めによって評価すること が著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価 する」




4.監査報告書に限定付意見の理由を記載

■概要
監査基準が改訂され、限定付意見とする場合、意見の根拠の区分の記載事項として以下を記載することを明確化される。
「除外した不適切な事項及び財務諸表に与えている影響」
「これらを踏まえて除外事項を付した限定付適正意見とした理由」

■背景
現行の監査基準では、意見の除外により限定付適正意見を表明する場合には、監査報告書の意見の根拠の区分において、「除外した不適切な事項及び財務諸表に与えている影響」を記載する中で、不適正意見ではなく限定付適正意見と判断した理由についても説明がされることを想定しているが、実際には説明が不十分な事例が見受けられ、財務諸表利用者にも分かりやすい説明することが求められている。




5.賃上げ税制 継続雇用者と休職

■概要
いわゆる賃上げ税制では「継続雇用者」への給与等支給額が対前年比で一定割合増加
していることが適用要件の一つとされている。

■継続雇用者とは
法人の適用年度及び当該適用年度開始の日の前日を含む事業年度の期間内の各月において
当該法人の給与等の支給を受けた国内雇用者として政令で定めるもの
⇒簡単にいうと前期と今期のすべての月に給与等の支給を受けている者

■休職者の扱い
休職中に給与の支給がない場合:継続雇用者に該当しない
休職中にたとえば産休手当や育休手当の支給がある場合:継続雇用者に該当する

⇒休職中であっても1円以上の給与等支給があれば継続雇用者に該当する




6.罰金:不納付加算税について

■不納付加算税とは
源泉所得税の納付漏れがあったことに伴い発生する税金の罰金
・1日でも遅れた場合発生する。
・自主的に納付した ⇒ 源泉所得税×5%
・税務署からの指摘 ⇒ 源泉所得税×10%
ただし、計算後不納付加算税が5,000円未満となる場合は納付は不要

なお延滞税は別途発生。(少額の場合はなし)

■正当な理由がある場合
次のケースは「正当な理由」とのことで不納付加算税は発生しない
・従業員が提出したマル扶に誤りがあり、源泉所得税が少額となっていた。
・直近1年内に源泉所得税の納付漏れがなく、法定期限後1月以内納付。
・災害等による納付の遅延。

■裁判事例
・賃貸人である個人へ賃借料を支払う。
・賃貸人が居住者から非居住者になった。
・源泉徴収せずに賃借料を支払い。

賃借人は賃貸人と接触した事実がない。
契約締結時以降、一貫して賃貸人の口座に自動振替されており、
賃貸人からの請求書等は一切発行されなかった。
⇒賃借人は賃貸人の実態を「知る得る状況になかった」と判断をし、
納付しなかった源泉所得税に伴う不納付加算税は発生しなかった



7.金融庁、継続監査期間の算定方法を確認

・提出会社が有価証券届出書提出前から同一の監査法人から監査を受けている場合
 ⇒ 提出前の監査期間も含める

・提出会社が合併等している場合
 ⇒ 取得企業の過去の監査期間を含める
 ⇒ 被取得企業の過去の監査期間は含めない

・監査法人が合併等している場合
 ⇒ 合併前の監査期間を含める

例)PwCあらたの監査を受けている会社で、継続監査期間を「2006年以降」と開示した会社があるが、
 前身の中央青山監査法人による監査期間を含める必要がある可能性あり。

・監査業務を執行していた会計士が異なる監査法人に異動し、異動後の監査法人でも継続して監査を行った場合
 ⇒ 異動前の監査期間を含める

・なお、継続監査期間の算定が著しく困難な場合、注記にその旨をコメントする。




8.監査役としてKAMに期待すること ~花王㈱常勤監査役インタビュー~

・KAM
⇒「監査上の主要な検討事項」
 2021年3月期から適用、2020年3月期から早期適用可。
 監査役等が会計監査人と協議した事項の中から選定され、監査報告書に記載される。

・同業のグローバル企業はすでに導入済み。
 花王も外国人持ち株比率が45%以上と大きいため、早めに対応すべき。
⇒2019年12月期の監査計画の中では、会計監査人と議論しつつ試行している状況。

・KAMの記載をすることになった目的を意識しつつ、企業価値の継続的増加に結び付けていくことが重要。

・KAMの記載によって、監査する側がどのような点を注視しているか、がより明確になる。
⇒今までは監査の方針しか記載がなかった。

・監査報告書が企業価値の増大と投資家の信頼性向上につながってほしい。




インセンティブ報酬の税務上の留意点

■役員給与の区分と税務上の取り扱い
A=BおよびC以外の給与
⇒3類型のいずれかに該当する=損金算入
⇒3類型のいずれにも該当しない=損金不算入
B=業績連動給与以外の退職給与、使用人兼務役員の使用人分給与
⇒損金算入
C=不正経理による給与
⇒損金不算入
※ただし不相当に高額な部分の金額は損金不算入となる
※3類型とは
 定期同額給与/事前確定届出給与/一定の業績連動給与
■損金算入できる役員給与
a=事前確定届出、b=業績連動給与(退職給与含む)、c=退職給与(業績連動給与以外)
(1)新株予約権(非適格SO)=a,b,c
(2)特定譲渡制限付株式(事前交付型リスクテッドストック)=a,c
(3)事後交付型エクイティ報酬(株式報酬/株式交付信託等)=a,b,c
■事前確定届出給与の対象となるエクイティ報酬
・特定譲渡制限付株式(いわゆる事前交付型リスクテッドストック)
・特定新株予約権
・事後交付型エクイティ報酬
・株式交付信託
■業績連動給与の対象となるエクイティ報酬
・特定新株予約権
・事後交付型エクイティ報酬
・株式交付信託




10.のれんと減損に関する審議状況~IASB&FASB~

■共通認識
のれんの減損テストの費用と便益のバランスに問題あり

■IASB(日本)
・減損テストの手続きは煩雑であり、測定しても減損損失が適切に認識されない
⇒but手続を変更することによる改善は不可能
⇒so手続を維持しつつも、企業結合に関する開示を充実させたい

■FASB(米国)
減損テストの簡素化を目指す
⇒非公開企業にはのれんの償却を容認している
⇒今後は公開企業にも簡便な処理の選択肢を与えるか、意見を集めている





11.「時価の算定に関する会計基準」等の解説

■主な変更点
・金融商品における時価の定義が国際的に整合的なものとなるように変更
→時価は、算定日における価格、市場参加者目線、出口価格とされた。

・その他有価証券の月中平均価額に関する取扱い
→時価の定義を算定日における価格としたことに伴い削除。

・第三者から入手した相場価額の利用にあたり、当該価格の検証を要求
→各企業が状況に応じて、適切な手続きを行うことが必要である。

・時価を把握することが極めて困難なものの取扱いの削除
→観察可能なインプットを入手できない場合でも、入手できる最良の情報に基づく、観察できないインプット基づき時価を算定する必要がある。



12.収益認識基準適用後の有償支給取引

■従来の実務
ほぼ全量を加工後に売り戻すことが予定されており、有償支給材料等の価格変動リスクを負っていない場合は、リスク負担の観点から加工代相当額のみを純額で収益として表示

■収益認識基準適用後の会計処理
 買戻し義務の有無にかかわらず、支給品の譲渡に係る収益を認識することはできない。

■支給先が買い戻す義務を負っていない場合
・企業は支給先への支給時に当該支給品の消滅を認識し、棚卸資産の帳簿価額をマイナスする。
・支給品の譲渡にかかる収益は認識することはできず、有償支給取引に係る負債を認識する。

■支給元が買い戻す義務を負っている場合
・支給品の譲渡にかかる収益を認識することはできない。
・原則として、当該支給品の消滅を認識することはできず、棚卸資産に計上したままになる。
・代替的に、個別財務諸表では支給品の譲渡時に支給品の消滅を認識することが認められている
・連結財務諸表では、原則どおり、支給品のオフバランスは不可。
⇒連結修正仕訳において、借方計上し、棚卸資産の帳簿価額と同額の有償支給取引に係る負債を計上する。



13.ソフトバンクG、WeWorkに上場延期要請

・ソフトバンクグループが投資先の米シェアオフィス大手ウィーカンパニーに対し、
9月予定の新規株式公開を延期するよう求めているとのこと。
・投資家がウィーの事業モデルや企業統治に懸念を示し、上場時の想定時価総額が1月時点から半減する見通し。
上場後の株価低迷を回避する狙いと
・ソフトバンクGは傘下の「ビジョンファンド」を通じて累計100億ドル(約1兆円)超を投資している。
・ウィーの主幹事が投資家への聞き取りをもとに条件決定時の想定時価総額を算定したところ、200億ドル程度にとどまる見通しとなった。
・ソフトバンクGが1月に出資した際に見積もった評価額は470億ドル




14.のれんの会計処理に関する国際的な議論の動向

国際会計基準審議会(IASB)はのれんに関する議論に取り組んでおり、「識別可能な無形資産とのれんの事後の会計処理」に関するコメント募集を公表した
→のれんの償却を導入すべきか、のれん減損テストを修正すべきか等が論点となっている

米国会計基準ではのれんは非償却/減損テストのみとなっている
→当該論点について、①現行を維持する見解と②償却及び減損モデルへの移行する見解の双方が上げられている
→①の見解は、のれんの価値は規則的に下落しないことや減損は投資の失敗を示すものであり、償却により当該情報提供の可能性が低下する等
→②の見解は、企業結合のコストは、便益を認識する期間に配分すべき点や償却により企業および監査人のコスト節減となる可能性ある等

コメントリサーチの結果をディスカッション・ペーパーで2019年第4四半期に公表予定。
→IASB会議では減損のみとする見解となったが、僅差(14票のうち8賛成、6反対)のため両モデルを支持する主張を記載予定となっている


15自社ポイント_施行日前の売上に係るポイントも使用時の税率で処理

■売上返還時の自社ポイントの取扱い
売上対価の返還等の処理は、売上時の税率によることとされているが、事業者は当初の売上時である自社ポイント「付与時」の税率で売上対価の返還等を行う必要があるか。
⇒仮にそうであった場合、10月1日前の8%時に付与されたポイントについては、8%で売上対価の返還等の処理を行わなくてはならない。

■結論
自社ポイントの使用については、当初の売上時である自社ポイント「付与時」の税率ではなく、ポイント「使用時」の税率で売上対価の返還等の処理を行うことになる。
⇒国税庁が公表した仕訳例によると、自社ポイントの使用は、「課税売上げの対価1,000円(消費税額80円)」、「対価の返還等1,000円(消費税額80円)」の両建てで処理されており、ポイント「使用時」に売上計上と対価返還が同時に行われたものとして取り扱われている。
⇒そのため、ポイントごとに付与時の税率を把握しておくといった厳格な管理は不要。















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