2019年9月13日金曜日

9/6 勉強会:日本基準とIFRSの違い_引当金 他

1.海外子会社役員への株式報酬にニーズ

海外子会社の外国人役員に日本の親会社の株式報酬を付与したいというニーズがある。

■問題
・付与するには証券会社に常任代理人業務を引き受けてもらう必要があるが、手間やコンプラリスクがあるため、証券会社は引受けに消極的。
・企業側でも海外税制、証券規制、為替規制等について高額な調査費用がかかる。

■解決策
・ストック・アドミニストレーション※というサービスを提供する企業が日本に進出して来ている。
このサービスにより企業は低コストでの情報収集とリスク管理が可能。
※タックスヘイブンに信託を創って日本の親会社の株式をプールし、そこからグローバルに株式報酬を付与するスキーム。





2.経済合理性が認められた組織再編等スキームとは

■事例
・国内、海外合わせて9社あまりの組織再編(うち、国内法人5社を合併)
・同族会社である海外法人から対象会社(日本法人)が多額の借入(合計1361億円)
・当該借入は、対象会社以外の日本法人株式(他のグループ会社が保有)を買い受けるための資金
・海外法人に対する支払利息を損金算入
⇒株の買付資金として多額の借金したが、グループ内での株の売買にあてられ、最終的には合併
⇒支払利息の負担が、法人税額を不当に減らす行為として、行為計算否認。更正処分を受けた。
⇒ただし、違法な処分として訴えたところ、東京地裁では請求が認容された。

■経済合理性の説明
・一つ一つの行為が、組織再編の目的と整合しているか
・組織再編の目的(複数)を同時に達成しようとすることの合理性と原告から見た経済合理性を考慮
(例)本件組織再編では以下のような目的があった
(1) 日本における会社関係を1つの会社の傘下にまとめること
(2) 日本における当該事業の会社を1つの法人にまとめること
(3) 日本の資本構造に借入金を発生させること
(4) 米国税制の観点から柔軟性を有する日本の企業体を活用すること など、8つの目的が掲げられていた。





3.消費税率引上げ後の不正還付に強い懸念

■東京国税局長、美並氏のインタビュー
重点施策の1つとして調査事務を掲げた。
⇒消費税担当者の増員し、情報収集・分析、調査企画の量的な面での向上を図る。
⇒国際的な取引はCRS(共通報告基準)に基づく金融口座情報を有効活用することにより、海外取引や資産を的確に把握し、税務調査等を実施していく。
⇒シェアリングエコノミーなどの新分野の経済活動への対応は、お尋ね文書を送付するなど、取引内容を確認し、厳正な調査を実施する。





4.相続開始=地位の継承事実を知った時

・民法において、「相続人は相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、単純もしくは限定承認又は放棄しなければならない」と規定されている。

・再転相続においても、「相続の開始があったことを知った時」から起算される。
⇒具体的には、相続の承認または放棄をしないで死亡した者の相続人が当該死亡した者からの相続により、相続人としての地位を自己が継承した事実を知った時である。





5.収益認識基準、2021年4月1日から適用へ

■概要
収益認識会計基準の注記事項、表示の取扱いに関して、ASBJにて検討を行っており、2020年3月末までに公表する予定である。その前提で、これらの注記事項等の取扱いを盛り込んだ改正後の収益認識会計基準がいつ適用開始となるか。

■結論
注記事項等を定めた改正後の収益認識に関する会計基準は、2021年4月1日以後開始する事業年度等の期首から適用する方針。2020年4月1日以後開始する事業年度等の期首から早期適用可能。



6.裁決例 財産評価通達6項の適用による節税防止

■財産評価通達6項
評価通達の定めにより評価することが著しく不適当な場合に国税庁長官の
指示で評価する定め

■概要
・被相続人Aは銀行借入(8億円)により不動産Bを8.3億円で購入
・相続時における不動産Bの評価通達による評価額は2億円
・借入金8億円を債務控除して申告、納税0
⇒不動産Bの通達評価額(2億)と借入金(8億)の差額を利用した節税スキーム

国は不動産Bの評価が著しく低いとして<財産評価通達6項>のよる評価を求めて争った

■結果
東京地裁は<財産評価通達6項>の適用を認め、不動産Bの評価額を鑑定評価額の
7.5億円として国側の主張を認めた。




7.消費税:簡易課税制度届出の「特例」に属する期間

軽減税率制度適用に伴い、
特例として進行年度中の届出で簡易課税制度を適用することが可能となる。

■原則
適用を受けようとする課税期間の前課税期間の末日までに提出

■軽減税率に伴う特例
以下適用対象期間において簡易課税の届出を行ったとしても、
提出した事業年度より簡易課税制度が適用可能

適用対象期間:2019/10/1-2020/9/30を含む期間

■例
・3月決算法人
⇒2事業年度分において簡易課税が適用可能
・9月決算法人
⇒1事業年度のみ適用

■留意点
・1度提出してしまうと2年間は継続適用とする規定にかわりはない
・上記の特例を使用できるケースは、
業務上標準税率(10%)と軽減税率(8%)に区分することに「困難な事情」がある場合に限る



8.内部監査の高度化(信頼されるアドバイザー)

・金融庁が、「金融機関の内部監査の高度化に向けた現状と課題」を公表。

・内部監査を4つの水準で評価。
第一段階:事務不備や規定違反等の発見を通じた営業店への牽制機能の発揮
第二段階:高リスク領域の業務プロセスに対する問題提起
第三段階:内外の環境変化等に対応した経営に資する保証を提供
第四段階:保証やそれに伴う課題解決にと止まらず、信頼されるアドバイザーとして、経営戦略に資する助言を提供

・大手金融機関は第二段階~第三段階に位置する企業が多いと評価。
⇒内部監査部門にマネー・ロンダリング、サイバーセキュリティといった高リスクの専門分野におけるチームを設置など

・地域金融機関においては人員削減が進展している中、経営陣の関与の度合いによって内部監査の水準に大きな差が生じていると指摘。


監査法人の「継続監査期間」の開示状況

・2018年公表の金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループ(DWG)報告では、「情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組み」の一例として、「監査人の継続監査期間」の開示が挙げられている。
⇒監査法人のローテーション制度が導入されていない中、継続監査期間は、監査人の独立性を判断する観点から重要な情報である。

・2020年3月期の有報から、「監査の状況」欄において、監査法人の「継続監査期間」の開示が求められる。
2019年3月期から早期適用可(83社)。
 (内訳)
1~5年 :16社(3社:IPO、13社:監査人の交代)
6~15年:29社
16年~ :38社
⇒監査法人交代後、15年以内の会社が多い。

・継続監査期間の記載方法は複数あり
⇒「○年間」が最も多い。特に決まりなし。



10.IPO後のテンバガー銘柄(※)

(※)株価が10倍に跳ね上がった銘柄

1.ZOZO
2007年初値100円、2018年4,875円、約49倍
2.カカクコム
2003年初値174円、2018年2,664円、約15倍
3.エン・ジャパン
2001年初値226円、2019年4,605円、約20倍

■2018年に新規上場したIPO銘柄は1年後どうなったか
・テンバガー銘柄はなし
1.ファイバーゲート(商業施設やマンション向けにWi-Fiを提供)
2018年3月初値1,194円、2019年5月4400円、3.7倍
2.ラスクル(WEBから印刷物を注文できる印刷通販サイト)
2018年5月初値1,645円、2019年3月5,340円、3.2倍

・初値から7割、8割下げている銘柄が多い。
・2018年1月~6月でIPOは36件であるが、30以上の銘柄はマイナス

※初値は調整後、その後の価格は高値



11.日本基準とIFRSの違い_引当金

■認識要件
日本基準:4要件をすべて満たす場合に認識する
IFRS:3要件をみたす場合に認識する
→IFRSの方が要件が少なく(範囲が狭い)、現在の債務か否か等で日本基準とIFRSで差が生じている
→設備等の大規模修繕等に備えて計上する修繕引当金について、日本基準では引当金の4要件を満たすため、引当金を計上するが、IFRSでは回避可能な債務(設備売却等で修繕不要となる)であるため、引当金を計上しない。
→有給休暇引当金はIFRSでは企業の債務と考えられるため引当金計上するが、日本基準では明確な規定がないことや実務慣行から引当金計上していない。


日本基準の4要件
・将来の特定の費用または損失であること
・その発生が当期以前の事象に起因すること
・発生の可能性が高いこと
・金額と合理的に見積もることができること
IFRSの3要件
・企業が過去の事象の結果として現在の債務(法的または推定的)を有している
・債務の決済のために経済的便益を有する資源の流出が必要となる可能性が高い
・債務の金額について信頼性のある見積ができる




12.税率差額の別途請求でも区分記載への対応が必要

2019年10月1日をまたぐ取引に係る対価を施工日前に請求する場合に、10月1日以後の期間を含む全期間分の消費税額を税率8%で請求し、施工日以後に差額2%相当額を請求するケースがある。
10月1日以後に行われた課税仕入から区分記載請求書等の保存が仕入税額控除の要件となるため、注意が必要となる。

■区分記載請求書等保存方式は10月以後の課税仕入れから
・区分記載請求書等保存方式は、2019年10月1日以後に行われた課税仕入れから適用
・一つの請求書において旧税率と新税率が混在するときは、旧・新税率ごとに合計した税込対価の額が記載されたものでなければ、区分記載請求書等の要件を満たさない。

■税率差相当額を請求する場合の対応
・契約期間が2019年10月1日をまたぐことにより旧税率8%と新税率10%が混在する取引について、
①施工日前に全期間分の消費税額を8%で算出して請求し、②施工日以後に差額2%相当額を請求する場合
⇒差額請求の際に、既請求内容を踏まえた区分記載請求書等を交付する方法
⇒既請求内容のうち2019年10月1日以降分の請求金額が変わるということで、新税率10%に基づく2019年10月以降の期間に係る請求書(明細書等)を交付する方法
この場合、仕入側は、既請求書と新たに交付された請求書(明細書等)を合わせて保存することで仕入税額控除の要件を満たす。















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