2017年2月4日土曜日

2/3 勉強会:税制非適格SOの損金算入について 他

1.平成28年中における会計監査人の交代企業一覧

・平成28年度中に144社が監査人の交代(うち42社は新日本監査法人が交代)

(主な交代理由)
・任期満了に伴うもの
・監査継続年数を考慮したもの
※欧州では監査法人のローテーションが義務付け(原則として最長10年)

※平成27年度1社当たり監査報酬
連結財務諸表提出会社=約4,706万円(前年度4,580万円)
連結売上高が100億円以上500億円未満の会社=2,899万円(前年度2,892万円)


2.CFC税制、株譲渡損と配当等の通算不可

CFC税制とは
Controlled Foreign Company税制の略
⇒タックスヘイブン対策税制のこと

H29年度税制改正におけるCFC税制改正に伴い、受動的所得※(資産性所得)の範囲も見直されている
※積極的に努力を行うことなく得られる収入のこと

■変更点
(1)現行は、配当・利子など金額が「プラス」の項目のみ
(2)変更後は、有価証券譲渡損益、デリバティブ取引、為替差損益など「プラス」「マイナス」両方の可能性がある項目を追加
(3)(1)のプラス金額と(2)のマイナス金額は、通算不可
(4)マイナス金額は、翌期に繰越可


3.税務申告期限の延長で株主総会の7月開催も現実に

29年度税制改正で法人税の申告期限の見直しが行われる
・決算日から最大で6ヶ月まで申告期限が延長可能となる
 ()3月末決算の会社⇒9月末まで申告期限を延長可能
・定款により決算日以外で基準日を定めておく必要はあるものの、税務上のハードルがなくなることで株主総会の後ろ倒しする環境が整う

■効果等
・株主総会期日の分散化を促せる
・有価証券報告書の提出期限が事業年度経過3月以内とされているため、株主総会前に有報を提出することになる
⇒株主は十分情報を検討したうえで株主総会に臨むことが出来る

※有報等に記載する「大株主の状況」に関しては課題が残る
⇒決算日と議決権行使基準日にズレが生じるため


4.回収可能性の合理的説明は不開示の方向

■企業会計基準委員会が税効果に関する開示項目を検討中

■開示項目
1.DTA,DTLの発生原因別の主な内訳
2.税率差異の注記
3.決算日後に税法の改正があった場合、その内容及びその影響
4.評価性引当額の内訳
5.税務上の繰欠に関する注記(税務上の繰欠及びDTAの繰越期限別の金額)
6.税法の改正によりDTA,DTLの金額を修正した場合、その旨及び修正額

1.-3.:現行制度上、要求されている項目
4.-6.:追加を検討している項目

■回収可能性の合理的説明は不開示の方向
DTAの回収可能性に関する適用指針」では、「合理的な根拠をもって説明」できる場合、一部、原則と異なる取り扱いを容認しているが、「合理的な説明」の内容については、開示項目としない方向

「合理的な説明」の内容のみを開示しても有用とはならないという理由で開示項目としていないが、一方で、DTAの金額に重要性がある場合、開示項目とすべきという反対意見もあり
⇒今後、企業や監査人からも意見聴取する方向


5.所得税の仮装隠ぺいをめぐる最近の採決事例

過少申告行為等を仮装隠ぺいと断定した重加算税の賦課決定が、国税不服審判所によって取り消しされた事例

■事例
・給与収入以外に派遣業による収入あり
・給与所得のみ確定申告し、事業収入は申告しなかった。
・原処分庁は意図的に事業所得を申告に含めないと判断し、重加算税の賦課決定を行った

■不服審判所の判断
過少申告行為があったと認定も、以下理由により重加算税を賦課することはできないと判断した

契約書や請求書を破棄することなくパソコンで保存し、パソコン上で収入金額や経費、利益を把握していた。
⇒これらを秘匿目的で帳簿を作成しなかったとは断定し難い。また外部からうかがいできる特段の行動があったと評価できないため、意図的に「仮装隠ぺい」を行ったと判断できないとのことにより重加算税の処分を取り消した。


6.税制非適格SOの損金算入について

■現行
事前確定給与や利益連動給与等に該当しなくても損金算入可
→法人税法341項から「新株予約権」による給与が除外されているため。なお、ここでいう新株予約権とは「税制非適格SO」を言う。

29101日以後決議分
事前確定届出給与または利益連動給与に該当しない場合には損金算入不可

(1)事前確定届出給与の場合の留意点
取締役会で○月○日に○株を交付する旨を定め、その定めどおりに支給する必要がある

(2)利益連動給与の場合の留意点
現行の税制非適格SOは導入の決議等から数か月後に交付される仕組みが一般的。
⇒「数か月間の業績」を指標としているものとみなされると「利益(業績)連動」給与とならない可能性がある。新たな制度設計を行う必要も。

■その他(現行と同じ)
損金算入額:発行時の時価
損金算入時期:権利行使日の属する事業年度


7.確定申告書の送付と発信主義

・「郵便物」又は「信書便物」…定形郵便、レターパックなど
⇒税務署への提出日は通信日付印により表示された日=「発信主義」

・上記以外…ゆうパック、ゆうメール等
⇒税務署への提出日は到達した日=「到達主義」

到達主義では、いくら期限内に送付手続が完了したとしても、税務署への到着が期限後となれば、期限後の提出となってしまうため留意。


8.条件付取得対価の会計処理(アーンアウト)

・条件付き対価の取り決めは、将来の業績等の不確実性に係るリスクを分担するために契約に織り込まれる。
 ※事業計画の利益達成率で対価が変動するような契約
・取得時に支払った対価の一部が返還された場合の処理については会計処理が明確化されていない。
 ※将来業績が目標未達で当初対価の一部を返還するケース
 ⇒今後、企業会計基準委員会で取り上げられるとのこと。
・追加で支払う場合の処理
 ⇒のれんを追加認識。のれん償却は当初取得時に遡って実施。


9.小売業の上場審査

1)出店政策
・出店エリアや出店形態の方針や出店基準の設定などにより、継続的に出店し経営活動が安定的に遂行できるか確認される。
⇒立地場所の選定から開店に至るまでの社内手続が規程に基づき行われているか
⇒新規出店・改装・退店などを決定するときの売上基準・利益基準が明確か、
⇒新規出店の収益予測・投下資本の回収予測方法はどのように行われているか、など

2)販促政策
・過剰な販売促進活動が会社の収益性を圧迫していないかどうか確認される。
⇒定期的なセール期間と売上効果はどのくらいか、
⇒販売価格の変更基準は何か、
⇒価格変更の社内手続が規程に基づき組織的に行われているか、など

3)在庫管理
・適正在庫基準の考え方や品目別在庫月数、長期滞留品の評価基準など確認される。
・実地棚卸状況、棚卸差異の発生状況などの内部管理体制の運用状況も確認される。

4)店舗資金管理
・現金過不足の発生状況や着服の有無、不正防止策などにより、内部牽制制度の構築・運用が確認される。
・店舗資金の保有限度額の設定状況や、売上代金の管理方法、本社や内部監査によるチェック方法なども確認される。

5)労務の状況

・他の業界に比べ臨時従業員の比率が高く、正社員の離職率が高い傾向にあるため、正社員と臨時従業員の構成比やその方針などにより、必要な人員が確保されているかが確認される。









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2017年1月28日土曜日

1/27 勉強会:平成29年度税制改正について 他

1.平成29年度税制改正について①

■所得拡大税制(法人税)
・大企業は要件が一部変更
 改正前:平均給与等支給額が前事業年度を上回ること
 改正後:平均給与等支給額が前事業年度より2%以上増加すること
・中小企業は要件の変更なし
 ただし、平均給与等の支給額が前事業年度より2%以上増加した場合は控除額が大きく拡充
 10%+12%=22%を控除(10%は通常分、12%は上乗せ分)

■中小企業税制(法人税)
・中小企業のうち大企業なみに売上、利益がある企業については、中小企業向けの租税特別措置法の適用を停止する
 前3事業年度の所得金額の平均が年15億円を超えるとき

■仮装通貨の消費税非課税化(消費税)
・仮想通貨の取引について消費税を非課税とすることとした

■積立NISAの創設(金融)
・中長期にわたる投資を支援するため創設
・対象商品は投資信託に限定、投資方法は契約に基づき定期かつ継続的な方法による買い付け
・現行NISAとは選択適用

■タワーマンションにかかる課税の見直し
・高層階と低層階に実勢価格に差がある実態があるなか、固定資産税、不動産取得税の負担は平等
 ⇒高層階になるにつれ固定資産税等の負担が大きくなるように見直す
・平成30年度から新たに課税されることとなる新築のタワーマンションについて適用される


2.平成29年度税制改正について②

■配偶者控除制度の見直し
・配偶者の収入の上限103万円⇒150万円
・納税者本人の所得制限1,120万円から逓減し、1,220万円で消失

■株主総会時期の見直し
・株主総会の集中を緩和させるため、法人税等の申告期限の延長可能月数を拡大
・会計監査人設置会社において、定款の定めにより決算日より3ヶ月を越えて株主総会期日を設定
⇒決算日から最大6ヶ月まで延長可能(※株主総会開催月まで)


3.財産評価を巡る災害に関する判決事例

地盤の液状化、雑損控除は適用できる?
⇒事例ではできないと判断されている。

■雑損失控除
・生活に必要な資産が災害等により損失を被った場合に、その損失による担税力の低下を課税上、考慮しようという趣旨のもの。
・損失の有無は、資産の物理的被害の有無によって判断。
■今回の請求人は
災害後の宅地に係る固定資産税評価額の下落額を雑損控除の対象としたかった。
■審判所の判断
生活に通常必要な資産の毀損と認められるものではないため、雑損失控除の規定を適用することはできない。


4.小規模住宅用地特例の適用ミスで都敗訴

■概要
・相続により納税者が土地を取得
・建物を建て、法人へ賃貸 ※介護付き有料老人ホームとして使用

・都税事務所は小規模宅地の特例を適用せずに、固定資産税評価
⇒納税者が平成17年~平成26年まで固定資産税等を過大に納付

・都税事務所は平成22年~平成26年度分の過納付額966万円を還付
⇒平成21年度以前分は還付を拒否
⇒訴訟へ

■判決
・固定資産税等の過大な賦課徴収行為は違法であると判断
・一方で、納税者が住宅用宅地の申告を怠っていた過失もあったと指摘
⇒過納付額のうち2割を過失相殺し、8割を都税へ損害賠償を命じた


5.マイナス金利で実務対応報告を策定へ

企業会計基準委員会は3月期決算に向け、マイナス金利における退職給付債務等の計算の割引率に関する実務対応報告を策定へ

割引率を「マイナスの利回り」又は「ゼロ」として適用することも可

実務対応報告の適用は、平成293月期から1年間に限定される方向
今後、金利動向等を踏まえて恒久的な取扱いを設けるか検討


6.二次・三次再編の税制適格要件を見直し

H29年度税制改正で組織再編税制の大幅な見直しがあり、税制適格要件の緩和がキーワードとなる。
■二次再編
・主要な資産負債の移転を適格要件から除外
・移転事業の従業員の80%が移転先に残れば適格要件に該当
・株式交換完全親会社の100%保有関係の継続が、直接保有から間接保有でも適格要件に該当
■三次再編
・三次再編が適格合併である場合は、主要事業が三次再編に係る合併法人で継続していれば要件に該当。

<遺産分割の効力とは>
■遺産分割とは
被相続人が遺書を残さず死亡した場合に、相続人全員の共有財産となったものを、各相続人間の協議により分配すること。
■遺産分割の効力(民法909)
・相続開始時まで遡って効力が発生する。
・ただし第三者の権利を害することはできない。つまり相続開始時は相続財産が共有状態であるが、分割後は所有権を単独、かつ、相続開始時から相続していた扱いとなる。ただしその単独で所有していた所有権に、相続人とは関係のない第三者がからんでいる場合は、第三者の権利は保護される。


7.固定資産の取得後に国庫補助金等を分割して受けた場合の圧縮記帳の取扱い及び国庫補助金等の範囲について

【事前照会事例】
・国&県から取得資金支援が受けられる物流施設を取得
・国からは、補助金が交付決定通知後「5年間」で分割してもらえる
・県からは、「助成金」が一括でもらえる

⇒国庫補助金等の圧縮記帳を適用できるか?

⇒「5年間」の分割収入であっても、交付決定通知を受けた事業年度において一括して圧縮記帳が可能
(通知を受けた時点で、収入すべき権利が確定するため)
⇒「助成金」の名称であっても、圧縮記帳を適用できる
(交付目的が制度趣旨に合っていれば名称は関係ない)


8.株式交付信託と役員給与

■株式交付信託とは
会社が役員等に対して信託を利用して自社株式を交付する仕組み

■株式交付信託の種類
(1)在任時交付型株式交付信託:在任時に株式を交付する
(2)退任時交付型株式交付信託:退任時に株式を交付する

29年改正前後の役員給与に関する取扱い
(1)在任時交付型
改正前:定期同額給与・事前確定届出給与・利益連動給与のいずれにも該当しない⇒損金不算入
改正後:利益連動給与に該当する⇒損金算入可

(2)退任時交付型
改正前:役員退職給与として損金算入可
改正後:利益連動給与としての損金算入要件を満たす場合に限り(退職給与として)損金算入可

■施行
(1)在任時交付型→2941日以後の決議分より
(2)退任時交付型→29101日以後の決議分より


9.東京地裁 収用等の5,000万円特別控除特例の適用可否を巡り国側勝訴

■収用等の5,000万円特別控除の特例
 ”最初に”買取り等の申出があった日から6か月で土地建物を売却等の要件(買取り等の申出証明書が必要)

■事案
 S市は収用の対象資産Aの所有者Bに買取の申し出⇒S市は新たな価格を提示して買取りの申出⇒Bは申し出に応じなかった
 ⇒収用等裁決⇒S市はBの口座に補償金を送金⇒Bは収用代替特例で確定申告
 ⇒修正申告で収用等の5,000万円特別控除特例⇒認められず

■論点
 1.最初に買取り等の申出があった日はいつか(買取価格変更ありのため)
 2.修正申告書に買取り等の申出証明書等を添付していなくても収用等の5,000万円特別控除は適用できるのか否か

■結論
 1.買取価格変更ありでも、収用等裁決があっても、当初の申し出が最初に該当する
 2.申出証明書が必須


10.クロスボーダーM&Aの苦労話

・時差の問題が大きい
 ⇒UKの案件に関与した場合、夕方から深夜にかけてやり取りが増える
 ⇒欧州、西海岸と複数ある場合は担当者を変えないと寝る時間が無くなる
・現地カレンダー
 スケジュールを立てる上で、現地のスケジュールを把握することが肝要。
 欧州の夏休み、米国のクリスマス、イスラム圏のラマダン、中国の春節休暇等。
 ⇒これらの期間に対応してもらうのは至難の業。
・クロスボーダー案件では高値づかみも多い(成長国オークション)。
・早期に減損するケースや早期撤退も多い。


11.スキャナ保存制度の留意点

1.スキャナ保存制度改正の概要
⇒ハンディスキャナの利用が可能になるなど、スキャナ保存の要件が緩和
2.適用するための要件
⇒事務処理体制の整備等
・相互けん制
※事務に係る職責を分け、相互にけん制できる体制の構築
・定期的チェック
※最低、1年に一度は運用状況を確認しているか。
・再発防止策
※問題が生じた場合には、即座に経営者等に報告され、改善策を取っているか。


12.将来キャッシュ・フローの見積期間

・将来キャッシュ・フローの見積期間=主要な資産の残存使用年数を基礎として決定
・経済的残存耐用年数と税務上の残存耐用年数に著しい差異がない限り、税務上の耐用年数を使用可能
・主要な資産=将来キャッシュ・フロー精製能力にもっとも重要な構成資産かどうかが判断基準(残高に占める帳簿価額の割合で安易に決定しないこと)
・仮に将来キャッシュ・フローに一番寄与するものであっても償却済みの資産は主要な資産とならない
・主要な資産の大規模修繕等が計画されている場合は将来キャッシュ・フロー見積もりに織り込む
・大規模修繕により残存耐用年数が延長する場合は、延長後の残存期間を見積期間とする


13.期ズレ子会社の決算日後の減損損失は連結計上?

子会社の決算日後、連結決算日までに子会社で計上された減損損失を連結計上すべきか?
⇒修正後発事象の場合は連結計上する。関連会社の場合も考え方は同様。


14.執行役員制度について

■執行役員の定義
会社法上の概念ではない事から、各社の考え方によりそれぞれ定義がある。一般的には、上級使用人(上級管理職)と解され、目的による要素を勘案して定義が可能
→目的として、監督と執行の分離、上級使用人の処遇施策
■執行役員と会社の関係
自由度が高いゆえに、権限や義務は契約で定める必要がある
(1)雇用契約→使用人であることが前提+労働法の適用
(2)委任契約→取締役に近い
(3)混合契約→雇用契約の性質と委任契約の性質を包含、執行役員制度を創設する契約を締結


15.減損会計:使用価値に使用する割引率について

■減損会計(概要)
固定資産の収益性が低下して当初の投資の回収ができない場合回収可能価額※まで帳簿価額を減額し、減額分を減損損失計上
※回収可能価額:以下のうち金額が大きい方
・正味売却価額(資産を今処分した場合の価値)
・使用価値(資産を使用継続した場合の価値)⇒将来CFの割引現在価値、本論はここでの割引率について

■論点(1)~どのようなリスクを考慮して決定するか~:4方法
⇒貨幣の時間価値+将来CFが見積値から乖離するリスクを反映する必要
・企業に固有のリスクを反映した割引率
WACC
・合理的な市場平均収益率
・当該資産・資産グループのみを裏付けとして資金調達を行った場合の利率
※リスクの組み込み方法
将来CFと割引率のいずれかに反映する必要があるが、実務上、後者の方法が多い

■論点(2)~いつ時点の割引率か~
・減損損失の認識時点
⇒現在から将来に渡る回収可能性を反映させる必要

■論点(3)~税引前か後の割引率のどちらか~
・税引前
⇒割引く将来CFが税引前(法人税等の支払/還付は資産の使用から直接的に発生しないため考慮しない)

■論点(4)~子会社で採用した割引率の連結上の取扱い~
・連結の観点で資産グループを見直さない限り(資産の収益性が異なる可能性)、基本的に見直さない
・親会社の資本コストを用いる場合は簡便的にOK、明らかに不合理でない限り


16.粉飾法人で黒字申告していた場合

 ⇒ 修正経理を行い、更正の請求を行うことが出来る。ただし過去5年分まで。
 ⇒ 減額更正によって生じた過大申告に伴う法人税額は、すぐには還付されない。
 ⇒ 翌年以降5年間の納付すべき法人税額から控除。控除しきれない場合還付される。


17.情報システム整備

1)情報システム整備の時期
・上場審査では、内部管理体制について、1年以上の運用実績を要求
・大規模なシステム導入や見直しなどは、時間がかかるため、早期に着手する必要あり

2)情報システムの整備範囲
・どの範囲のシステムの見直しを行うか検討、目的に合致するように要件定義を明確化
Ex.販売部門)
売上計上、売掛金回収などの記録計算にとどまらず、得意先別、地域別、製品別等の経営陣のマネジメントに必要な資料を分析報告できるようシステム設計

3)内部統制報告制度
IT評価は不可欠な要素
1.全社的な内部統制に関する評価項目の1つとして
ITに関する適切な戦略、計画等の策定
IT環境に対する方針の設定
など、ITに対する適切な対応を図っているか評価

2.評価対象となったIT業務処理プロセス(例:販売管理)に係るIT基盤に係る全般統制として
・システムの開発、保守
・システムの運用・管理
・アクセス管理
などに関する整備・運用状況について評価

3.評価対象となった業務処理プロセスに係るIT業務処理統制として
・入力情報の完全性や正確性の確保
・エラーデータの修正と再処理の機能の確保
・マスタ・データの正確性の確保
などに関する整備・運用状況について評価

2.のIT全般統制は、3.の評価対象となったIT業務処理統制に対するIT基盤に対して実施
IT全般統制は、IT業務処理統制が有効に機能するための前提であり、両者が一体となって機能することが重要

IT全般統制に不備がある場合、虚偽記載に直接的に結びつくわけではない。しかし、IT業務処理統制が有効に機能しない可能性あり、そのため、虚偽記載のリスクが高まる

その場合には、不備を解消するようなIT全般統制の整備を図る、もしくは、IT業務処理統制に代替する業務処理統制(手統制など)の構築を図る必要あり

・当制度に関する留意点
1.制度が従業員に周知されていること
2.通報を受け付ける部署または外部機関が適切であること
3.通報があった場合には、放置せずに対応がなされていること
4.通報者が公益通報者保護規程(※)等に基づき保護されていること


(※)通報を理由とする解雇の無効や不利益な取り扱いの禁止などを規程









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2017年1月21日土曜日

1/20 勉強会:役員給与税制改正Q&A(平成29年度税制改正) 他

1.有利発行事件確定なら再び課税拡大も

・グループ法人税制外しの事例で、132条の適用
IBM事件判決を受けて?

・行為計算否認は
「租税回避以外に正当な理由等が存在しないと認められること」という通説から「行為または計算が純粋経済人として不合理、不自然なもの、すなわち経済的合理性を欠く」が適用要件へ。


2.役員給与税制改正Q&A(平成29年度税制改正)

・改正の適用開始日
 利益連動給与の指標拡大など課税緩和となる改正=平成2941日以降の付与決議等から
 譲渡制限付株式報酬、新株予約権、退職給与に係る課税強化措置=平成29101日以降の付与決議等から

(1)株式交付信託を利益連動給与の一つと位置付け、損金算入を認める。
⇒利益連動給与の指標に「株価」や「売上高」を加え、複数年度を対象とする指標を用いることが可能に
⇒ただし「売上高」のみを指標とした場合は、損金不算入、株価や利益との併用が必要

(2)複数年度を対象とする指標とは?
⇒例:「3事業年度後の利益」、「将来のある時点のROE」、「一定期間の利益の平均額」など

(3)税制大綱の注書き「損金経理要件の見直し」とは?
⇒「引当金」の計上を指す
 利益連動給与の対象期間が複数年にわたる以上、これと整合して引当金の計上も認められる

(4)譲渡制限付株式報酬は利益連動給与に該当し得るか?
⇒利益連動給与に該当しない

(5)業績未達で"全て"没収の譲渡制限付株式は事前確定届出給与に該当するか?
⇒事前確定届出給与に該当する余地あり
 業績により没収数が変動するものは事前確定届出給与に該当しえない

(6)税制非適格の新株予約権の損金算入
⇒従来=税制非適格であれば損金算入可
 改正=「事前確定届出給与」or「利益連動給与」の損金算入要件を満たさない限り、損金不算入

(7)在任年数に応じて支給される退職給与の損金算入は可能か?
⇒従来通り損金算入できる(不相当に高額な場合を除く)


3.為替差損益の算定は総平均法が合理的

・預入が随時可能な(異なる為替相場での預け入れが混在している)外貨預金の為替差損益の算定
⇒「総平均法に準ずる方法」が最も合理的

・該当年度分の雑所得に加算すべき外貨預金の金額
⇒該当年度(1年間)中の為替取引で預金口座から払い出した時に生じた為替差損益の合計額


4.仮装経理(売上過大、原価過大)

(設例)
・前期において、売上過大300、原価過大200の計500の利益過大の粉飾経理
・過年度遡及会計基準の適用により、当期の期首利益剰余金を500減額処理した
⇒当期の申告調整はどうするか

(答)
・別表四は申告調整不要
・前期の減額更正をし、別表4500の減算調整
・当期で別表5(1)の期首現在利益積立金額が相殺されて0となる


5.有償新株予約権の会計処理案、射程範囲は典型的な取引のみ

■有償新株予約権の会計処理に関する実務対応報告案
・現在、企業会計基準委員会が検討中
・実務対応報告案の内容は、下記の通り
有償新株予約権は、SO会計基準に定めるSOに該当すると整理
会計処理や開示は、SO会計基準を基本的に踏襲
SOの付与に伴って、企業が従業員等から提供を受けるサービスについて費用計上
※費用計上額=SOの公正な評価額-払込金額

■有償新株予約権の会計処理
・現状:実務上、適用指針第17号※を適用しているケースが多いと想定される。
※払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理
⇒現預金×××/新株予約権×××(費用処理しない)

・今後:実務対応報告を適用
⇒株式報酬費用×××/新株予約権×××(費用処理する)
※処理内容が大きく変更され、企業の実務や損益に大きな影響を与える為、経過的な取扱いあり

■実務対応報告における経過的な取扱い
・公表日より前に付与したものは、従来通り費用処理可
※以下の注記が要件
・有償新株予約権の概要及びその変動状況
・採用している会計処理の概要

■実務対応報告の対象範囲
・従業員等(役員も対象)に対して付与した権利確定条件付き有償新株予約権
※昨今、役員向けのインセンティブ・プランとして開発されているスキーム(ex.時価発行新株予約権信託)は対象外


6.平成28年分所得税確定申告のチェックポイント

・無記名公社債の利子等の帰属
H28.3.31以前:元本の所有者が利子等の支払いを受けたとみなす
H28.4.1以降 :実際に利子等の支払いを受けたものの帰属に

・建物付属設備、構築物の定率法廃止
H28.4.1以後取得分から適用

・通勤手当の非課税限度額が拡大
-月額10万円が限度⇒月額15万円が限度
H28.1.1以後適用

・給与所得控除上限の引下げ
245万が上限⇒230万が上限
H28.1.1以後適用

NISAの拡大
-年間100万円限度⇒年間120万円限度
H28.1.1以後適用


7.税制改正ポイントチェック

■法人税率
中小法人
<年800万以下部分>
29331日までに開始する事業年度⇒15
2941日以後に開始する事業年度⇒19

中小以外の法人
30331日までに開始する事業年度⇒23.4
3041日以後開始事業年度⇒23.2

■欠損金の控除限度額(中小以外の法人)
2841日~29331日の間に開始する事業年度⇒控除前所得の60%(繰越期間9年)
2941日~30331日の間に開始する事業年度⇒控除前所得の55%(繰越期間9年)
3041日以後開始事業年度⇒50%(繰越期間10年)


8.29年度税制改正 事業承継税制の雇用確保要件を緩和

非上場株式等の相続税の納税猶予制度について
■雇用確保要件(要件の内の1)
・申告期限後5年間の平均で、相続開始時の雇用の8割の維持が必要
⇒この維持すべき常時使用従業員数の算定方法が改正
 (現行)端数切り上げ
 (改正)端数切り捨て
⇒改正により小規模企業の実質100%維持要件を解消

(判定例)4名が3名になったケース
 (現行)4×0.8=3.24(切り上げ)>3名⇒NG 4名の維持が必要
 (改正)4×0.8=3.23(切り捨て)3名⇒OK 3名の維持でOK

■平成2911日以後の相続等に適用


9.決算短信を293月期から合理化へ

・東京証券取引所が改正案を公表

①監査・レビューが不要であることを明確化
②記載項目を削減
 経営方針等は有報へ
③項目の限定
 ※投資判断を誤らせるおそれがない場合には短信開示時点で連結不要。

日本証券アナリスト協会
・様式の使用義務撤廃に懸念表明
・連結財務諸表を開示しないことを容認する点にも懸念表明

上場会社の開示担当者
・様式の使用義務が撤廃されても様式を使用する予定
・経営方針等の件は時間的余裕ができて助かる


10.事業承継ガイドラインの改正

・早期、計画的な取り組みを促す(60歳を着手の目安に)
・地域に密着した支援機関のネットワークを構築。
 ⇒ 行政、商工会議所、地銀、専門家(会計士、税理士、弁護士、M&A仲介業者など)
 ⇒ 事業引継支援センターを設置。
2020年に数十万人の団塊経営者が引退時期にさしかかる
 ⇒ 60歳以上の経営者のうち、50%が廃業予定。
・廃業予定の経営者のうち4割が、「事業を続ければ少なくとも現状維持は可能」との認識。


11.内部・外部通報制度

上場にあたっては、不正や不祥事の早期発見や防止を目的として、全社的な内部統制の観点から、内部・外部通報の設置が望まれる(絶対ではない)。

・当制度に関する留意点
1.制度が従業員に周知されていること
2.通報を受け付ける部署または外部機関が適切であること
3.通報があった場合には、放置せずに対応がなされていること
4.通報者が公益通報者保護規程(※)等に基づき保護されていること


(※)通報を理由とする解雇の無効や不利益な取り扱いの禁止などを規程









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