2015年5月16日土曜日

5/15 勉強会:国内事業者のための電子商取引に係る消費税Q&A 他

1.事前照会の事実が異なれば課税も

■経緯
・大手製薬会社が英国子会社への現物出資について国税局に事前照会を行い、「適格現物出資」の確認を取った
・その後の税務調査で否認された
 ⇒「税制非適格」に該当するとして課税処分
・大手製薬会社が異議申し立てを行ったが棄却となった
・現在、国税不服審判所に不服申し立てしている

■異議申し立ての背景
・事前照会で「適格現物出資」の確認を取っていたにもかかわらず国税局は合理的な説明をしないまま、その結論を覆したため
 ⇒信義誠実の原則に反すると主張

■棄却となった理由
・事前照会は、照会文書に記載された事実を前提としてなされているが税務調査で把握した事実とは相違点があった
・会社が作成した文書に誤りがあったため、事前照会の回答と異なる結果となった
 ⇒信義誠実の原則は適用されない


2.虚偽記載の認定と株価値下がりの損害賠償減額で注目判決

・造船・重機大手のIHIが有価証券報告書を虚偽記載
⇒株価値下がり損失について株主が訴えた

判決は・・・
⇒株主の損害を認めた
 ただし虚偽記載を認める一方、虚偽記載以外に値下がり要因を認め損害賠償額は減額された※

推定損害額=(虚偽記載公表前1ヶ月の市場価額の平均額)-(公表後1ヶ月の市場価額の平均価格)
虚偽記載の公表と同時に業績予想の下方修正が開示され、50%は下方修正による値下がりとされた


3.登録国外事業者

・国内に事業所がある等一定の要件を満たす国外事業者のうち税務署に申請書を出して登録を受けた事業者のこと

(1)今までは国外に事業所がある会社は、
  日本国内でサービスを提供しても消費税は課税されていなかった

(2)27101日以降、消費税の内外判定は「役務提供を受ける側」で判定

(3)事業者向け取引の課税方式
  …リバースチャージ方式(源泉徴収のように支払い側が納税)

(4)消費者向け取引の課税方式
  …国外事業者納税方式 (登録した国外事業者が納税する)


4.事前照会と税務調査での事実が異なれば信義則違反なし

【事例】
 ・大手製薬会社が国税局へ事前照会
 ・海外子会社に対して行った現物出資について、適格現物出資に該当すると確認
 ・その後の税務調査により否認

【要旨】
  照会文書と税務調査で把握した事実が異なる場合、照会文書で確認した税法上の関係も否認され得る。


5.3月購入の5%超保有株の売り急ぎに注意

H27年度改正における、受取配当益金不算入の規定見直し
基準日において
(1)株保有割合100(=完全子法人株式等)  100/100益金不算入
(2)株保有割合1/3(=関連法人株式等)   100/100益金不算入
(3)その他の株式              50/100益金不算入
(4)株保有割合5%以下(=非支配目的株式等)  20/100益金不算入

(2)(4)が新たに新設された。
H2741日以後の事業年度で適用される。

3月決算法人から配当を受ける場合の留意点
(2)の適用を受ける場合
 継続保有要件(6か月以上保有)があるため不可能

(3)の適用を受ける場合
 (4)に該当する株式を買い増しして、(3)の適用を受けることが可能

■注意点
・買い増しして(3)の適用を受ける場合
 ⇒基準日において株式保有の割合を判定するが、短期的に保有した株式は保有割合に含まれない。
 
 短期保有株式とは基準日前1月以内に保有し、基準日後2カ月以内に売却した株式をいう。

 ∴(3)の「その他の株式」に該当させるために、買い増しした株式は基準日後2カ月以後に売却しないと、(3)の益金不算入の適用を受けられない。 


6.国内事業者のための電子商取引に係る消費税QA

【改正概要】
H2710月以降、国外事業者が提供する電気書籍等が課税対象に。
 ⇒国内事業者向け:国内事業者が代理で申告納付
 ⇒国内消費者向け:国外事業者自身が申告納付

(1)消費税の課税対象「電気通信利用役務の提供」
 ⇒電気通信回線を介して行われる著作物、サービスの提供
 例)電子書籍、音楽等の配信、クラウドサービス、ネット広告、ショッピングサイト、オークション、ネット英会話教室 等

(2) 「電気通信利用役務の提供」に該当しない取引
 ⇒通信を媒介するサービスそのもの
 例)電話、FAX、電報、データ送信、インターネット回線利用 等

(3)国内事業者が申告納税を行う「事業者向け取引」
 ⇒サービスを受ける者が事業者に限定されるもの
 例)ネット広告配信、個別契約で事業者がサービスを受けるクラウドサービス等

(4)国外事業者が申告納税を行う「消費者向け取引」
 ⇒「事業者向け取引」以外のもの
 例)電子書籍、電子新聞、音楽、映像配信 等

(5)「事業者向け取引」の仕入税額控除
 ⇒国内事業者に納税義務あるため、支払対価の額(特定課税仕入という)を消費税課税標準に加算
 ⇒同時に、特定課税仕入について仕入税額控除を適用
 ※帳簿に特定課税仕入であることの明記が必要(摘要欄に「特定」など)
 ※請求書の保存は不要

(6)「消費者向け取引」の仕入税額控除
 ⇒国外事業者が直接国へ消費税を納付するため、国内事業者での処理不要(仕入税額控除不可)
 ⇒ただし、登録国外事業者から受けるサービスで、一定の要件を満たせば可能

(7)請求書への納税義務の記載
 ⇒「事業者向け取引」の請求書には、国内事業者に納税義務がある旨の記載がされていなければならない
 ⇒ただ、記載がなくても、納税義務はなくならない

(8)簡易課税適用事業者、課税売上割合95%以上の国内事業者
 ⇒「事業者向け取引」であっても納税義務なし


7.相続税:配偶者のみの相続と税額軽減措置

<ケース1>相続人が配偶者のみの場合
・法定相続人は配偶者のみ
・法定相続分は1
・算式の(B)/(C)1となるため税額負担なし

<ケース2> 相続人が配偶者と子で子が相続を放棄した場合
・法定相続人は配偶者と子
・法定相続分は1/2
・算式により法定相続分を超える財産を取得した場合には税負担が生じる
⇒ケース1同様、配偶者のみが財産を取得しているが計算結果が異なるので相続の放棄があった場合には注意が必要

(補足)
<配偶者の税額軽減措置>
(1)次の算式により計算した金額が控除される

『相続税の総額(A)×【(1)課税価格の合計額×配偶者の法定相続分 (2)配偶者が取得した相続財産の金額】
のいずれか小さい金額」(B/課税価格の合計額(C)
⇒配偶者が取得した財産が法定相続分以下であれば税負担なしにしますよという意味

(2)相続の放棄があった場合にはその放棄がなかったものとして法定相続分を計算する。


8.法人税:渡切交際費と定期同額給与

期の中途から追加で役員に支給する金銭を役員給与とするか渡切交際費とするかにより、法人税の所得計算上の取り扱いに差が生じる。

■定期同額給与となる給与
 (1)1ヶ月以内の一定の期間ごとに支給され、その事業年度中の各支給額が同額の給与
 (2)事業年度開始後3月以内の改定等、一定の要件を満たす改定の前後の支給額が同額の給与
 (3)継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの

(1)(2)は給与として支給される場合に適用される
 ⇒ 給与として増額支給を開始する場合には、(2)の要件を満たさないと損金算入できない。

(3)は経済的利益が供与される場合に適用される
 ⇒ 渡切交際費(経済的利益)として新たに追加の支給を開始する場合には、(2)の要件の充足は不要。
 従って、『3ヶ月以内の改定』等の要件は課されていない。


9.法人税:下請企業の従業員等に支給する記念品等

■原則
 取引先等の関係者に対する接待、供応、慰安、贈答等の行為のために支出する費用は、交際費に該当する。
 もっぱら自社の従業員のために行われるものに通常要する費用は交際費から除かれ、福利厚生費とされる。

■特例
自己の工場内,工事現場等において従事している『下請企業の従業員等』のために支給した見舞金品,表彰金品又は運動会,演芸会,旅行等の費用の負担額については、交際費等に該当しない。
実態として自社の従業員等と同様の事情にある者に対するものであるため。


10.監査人の報酬

・会計監査人の報酬は監査役の同意が必要。

下記の同意が必要
同意した場合、事業報告に同意した理由を記載することとなった(H28.3期から)。
 監査役会設置会社  ⇒監査役会
 監査等委員会設置会社⇒監査等委員会
 指名委員会等設置会社⇒監査委員会

(記載例)
当社監査役会は、日本監査役協会が公表する「会計監査人との連携に関する実務指針」を踏まえ、◯◯などを確認し、検討した結果、会計監査人の報酬等につき、会社法第399号第1項の同意を行っております。


11.法人税関係の改正2

1. 研究開発税制の見直し
(1) 試験研究費の総額に係る税額控除
 ・控除しきれなかった税額控除の繰越制度の廃止
 ・控除税額の上限の引き下げ
   ※法人税額の30%まで ⇒ 25%まで
(2) 特別試験研究費の税額控除
 ・税額控除率の引き上げ(控除額の増加)
   ※特別試験研究費 … 試験研究費のうち、国の試験研究機関等と共同して行う試験研究等

2. 所得拡大税制の見直し
 ・適用要件の緩和 (給与等支給額の増加割合要件の緩和)
 ・外形標準課税・付加価値割の報酬給与等の額から、一定の給与増額分を控除
   ⇒ 付加価値割の税額が減少

3. 地方拠点強化税制の創設
 ・地方で、一定の規模以上の建物等を取得
 ⇒ 特別償却、又は税額控除を受けれる。
  ※適用には、地域特定業務施設整備計画について認定を受けることが必要。

4. ヘッジの有効性判定
(1) 判定方法
 ・原則 … デリバティブ損益   ÷ ヘッジ対象資産の時価変動
 ・特例 … ヘッジ手段の時価変動 ÷ ヘッジ対象資産の時価変動
  ※特例で判定する場合には、適用事業度より前に申請が必要
(2) 改正点
 ・特例で有効性判定するための申請時期
  適用事業年度より前に申請 ⇒ 申告書の提出期限までに申請


12.法人税関係の改正・その1(法人税改革関連)

■法人税率の引き下げ
(大法人または中小法人所得の800万円超の部分)
 25.5% → 23.9%(地方法人税含むと24.95%)

■法人事業税(外形標準課税)の改正
 ・所得割↓、付加価値割、資本割↑
 ・外形標準課税の資本割の課税標準の見直し
  「資本金等の額」が「資本金と資本準備金の合計額」を下回る場合は、「資本金と資本準備金の合計額」を課税標準とすることに【住民税均等割も同じ】
   ⇒平成2741日以後に開始する事業年度より適用

■欠損金の繰越控除制度の見直し
(大法人)
 ・平成2741日~平成29331日までの間に開始する事業年度
   控除限度割合  :65
   欠損金の繰越期間:9年
 ・平成2941日以後に開始する事業年度
   控除限度割合  :50
   欠損金の繰越期間:10年(平成2941日以後に開始する事業年度で生じた欠損金について適用)

■受取配当等の益金不算入制度の見直し
 ・持株割合 25%~33%(1/3)および、5%未満の場合に影響あり
   100%    :変更なし(配当等の全額)
    33%~100%:変更なし(配当等の額-負債利子)
    25%~ 33%:【 変更 】(配当等の額×50%)※
     5%~ 25%:変更なし(配当等の額×50%)※
     0%~  5%:【 変更 】(配当等の額×20%)※
   ※33%(1/3)以下の場合で、負債利子の控除がなくなった

 ・証券投資信託等の取扱も変更
   ・特定株式投資信託   (配当等の額)×20%(改正前:50%)
   ・それ以外の証券投資信託【全額益金算入】(改正前:50%)


13.買収提案を受けた際の一連の対応

 ・取締役会を開催し報告、対策を協議
 ・対策チーム編成、専門家起用、情報管理体制整備
 ・買収者の調査、買収提案の検討
 ・NDAを結び一次開示情報受領検討、意向表明、入札、基本条件交渉、基本合意書締結など
 ・DD実施
 ・最終条件交渉、買収契約書の締結
IRサイトで経緯、内容などを開示
・株主総会で買収提案の経緯、日時、内容等を説明し株主の理解と協力を得る


14.コーポレート・ガバナンス・コードと改正会社法の比較

3月決算の会社は、平成276月の定時株主総会後、12月末までに、「コーポレート・ガバナンス報告書」の提出が必要。

(1)特徴
・コンプライ・オア・エクスプレイン=原則を実施するか、しない場合はその理由説明をする

2)独立社外取締役
A:改正会社法
1名以上
・社外取締役設置なし、かつ大会社で有報提出会社は、定時総会で置くことが相当でない理由を説明
・社外取締役の選任議案を出さない場合は、総会参考書類に置くことが相当でない理由を記載

B:コーポレート・ガバナンス・コード
2名以上
・自主的判断により、独立社外取締役を取締役の3分の1以上


15.内部通報で、取締役が不利な取扱いを受けないことを確保するための体制整備についても決議

・そもそも取締役が受ける不利な取り扱いとは?
 ⇒雇用契約はないが、「役付を解かれる」「情報から隔離され業務執行が難しくなる」などが考えられる

・どのような「体制」が考えられるか?
 ⇒監査役(会)を不正報告の窓口に定める
 ⇒外部の弁護士事務所を窓口にして監査役に通報する

 ⇒不正疑惑の証拠書類を匿名で提出する








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