2015年5月1日金曜日

5/1 勉強会:有価証券報告書作成にあたっての留意点(H27年3月期提出用) 他

1.検証・IBM事件高裁判決[1]

IBM事件の高裁判決
・地裁に続き、納税者勝訴

■法人税法132条についての朝長先生の解説
・大正9年に、一定の条件のもとで持株会社を設立するとグループ全体の税負担が軽減できる税制改正があった
・財閥系の会社がその改正を使用して税負担の軽減を図っていた
・これに対処するために、132条は大正12年に創設された
132条の創設の趣旨、目的を踏まえるとIBM事件のようなケースが適用対象となるケースと思われる

・ヤフー事件では法律の設立趣旨や目的に踏み込んで判決を出しているがIBM事件の判決はそういう観点が中途半端である
・「目的」はどうあれ「結果」で判断すべきでは?

■一定の条件、税負担の軽減とは
・法人の株式を持っている個人が持株会社を創設する
・個人が保有する株式を時価で法人に譲渡する
 ⇒当時の税制では個人の譲渡益に課税がなかった
  税負担の軽減その1
・株式を譲り受けた法人は配当金を収受し、配当落ちした株式を時価で個人に売り戻す
 ⇒法人は株式の譲渡損が計上できる
  税負担の軽減その2


2.税効果適用指針の適用は会計方針の変更

■企業会計基準委員会が5月中にも「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」の公開草案を公表へ
・企業側が主張する「会計上の見積りの変更」には該当せず、「会計方針の変更」として取り扱う方向
→損益に計上できないため企業側の反発は必至
・摘要初年度の期首時点の差額は利益剰余金に加減する(※遡及適用は行わない)

(適用年度)
・平成2841日以後開始する事業年度の期首から
 また平成28331日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表からの早期適用も可


3.貸引き避ける目的の債権放棄で寄附金認定

■事例
・親会社が多額の純損失を計上
・子会社の経営状況が悪化していた
 ⇒子会社に対する債権放棄をし、費用処理
…この債権放棄について、費用が認められず寄附金認定された事例

■論点:債権放棄は経済的合理性があるかどうか
【親会社の主張する合理性】
 ・監査法人に貸引計上しないと適正意見が出せないと指摘
 ・貸引を計上したら金融機関からの信用が失う事が想定された
 ・余剰金が枯渇することで投資家の信用を失う恐れがあった
 ⇒貸引を計上しないために債権放棄をした

【審判所の判断】
 ・金融機関との契約書に貸引はマイナスとしない、という文言有り
 ・投資家の信用喪失回避は経済的合理性と捉えるのは適正でない


4.有価証券報告書作成にあたっての留意点(H273月期提出用)

■退職給付会計基準等の改正に関する留意点
(1)退職給付債務及び勤務費用の計算方法の見直し(H273月期期首より原則適用)
 (a)連結S/Sにおける開示
  ・期首残高に期首時点における適用による影響額を反映
  ・当期変動額に当年度影響額を区分表示

 (b)会計方針の変更に関する注記
  例えば、退職給付見込額の期間帰属方法を期間定額基準⇒給付算定基準へ変更した場合
  
(2)複数事業主制度に基づく退職給付に関する注記の表示方法の変更(H273月期より原則適用)
 (a)表示方法の変更に関する注記
  組替の内容と主な項目に係る前期の金額を記載

■企業結合会計基準等の改正に関する留意点
(1) 早期適用
 ()支配が継続している場合の子会社に対する親会社の持分変動に関する会計処理の見直し
 ()取得関連費用の取扱い
 ()暫定的な会計処理の確定の取扱い
 をすべて同時に適用する場合のみ、平成273月期より早期適用可

(2)会計方針に変更に関する注記
 (1)()及び()について、新たな会計方針を
 (a)過去の期間に遡及適用した場合
  期首残高に反映させた期首時点における累積的影響額を記載
 (b)期首より将来にわたって適用した場合
  当期における影響額を記載
 
(3)企業結合に関する注記
 (a)取得関連費用について、取得原価及び対価の種類ごとの内訳の注記不要
  (改正により取得関連費用は連結上費用処理となったため)
 (b)少数株主との取引に係る親会社の持分変動に関する事項を注記

■税効果会計に関する注記における留意点
 平成27年度税制改正(税率変更)を受け、DTADTLの金額修正した場合、
 (a)その旨及び修正額を記載
 (b)税率差異の内訳として記載することを検討 

■単体開示簡素化における留意点
(1)会計方針の変更に伴う1株当たり情報は省略不可
 (連結F/S1株当たり注記を記載している場合、単体F/Sでは記載不要) 
 
(2)「初めて改正後財規を適用する場合」のみ、表示方法の変更に関する注記における前期数値の省略可
 例えば、前期より一部の注記のみ簡素化(省略)し、当期より本表も簡素化(新様式を採用)する場合、
 当期は「初めて改正後財規を適用する場合」に該当せず、注記において前期数値の省略不可

■非財務情報に関する留意点
(1)役員の状況
 男女別人数と女性比率を記載

(2)会社法の改正に伴う開示府令の改正
 委員会設置会社⇒監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社へ


5.外国子会社への支払いを寄付金と認めず

■事例
・外国子会社へ業務委託費の支払い
・他企業との兼ね合いにより設定した価格あり
・支払った金額△価格設定額の差額が、外国子会社への寄附金であると認定された

■原処分庁
・子会社の損失を負担するため支払いではない
⇒単なる利益供与のための支払いであるので、寄附金に該当すると主張

()法人税法基本通達9-4-1
法人が子会社の損失負担を被るために支払った損失負担金は、寄附金に該当しない

■審判所
・利益移転を解消するための支払いと認定。
 ただし、親子間での利益移転は一般的であること、また金額算定も妥当性があり、対価性もある。

・原処分庁が主張する「子会社への損失補てん」ではなく、通常の海外子会社への支払い。

以上のことから、
経済的合理性があるので寄附金には該当しないと判断した。


6.現物給与を考慮で寄付金課税回避も

・国内親会社(出向元)⇒海外子会社(出向先)への出向者へ支払う
「給与較差補填金」が寄付金認定されるリスクが高まっている
※給与較差補填金・・・出向元と出向先の給与水準の差額を埋めるため、出向元が支払う補填金

【理由】
・出向先である東南アジアや中国での給与水準が上昇傾向
⇒出向先が負担すべき給与を、親会社が補填していると見られるリスク拡大

【回避策】
(1)出向先で給与を増加し、出向元の補填金を減少させる
(2)出向先の給与範囲に、現地のセキュリティコスト(高級住宅の手配、複数台の車支給など)を含める
⇒これらのコストを現物給与扱いすることにより、出向先は適正な給与を支払っていると主張できる可能性あり


7.裁決事例:個別対応方式の用途区分判定時期について

■概要
・不動産業のA社(8月決算)は81日に10階建てマンションを購入した。
1階~3階を事務所用(課税売上)、4階~10階を居住用(非課税売上)として貸し付ける予定だったが、8月中に貸付を開始できたのは1階~3階の事務所用部分だけであった。
・「事業年度末の現況」により、マンション建物仕入を「課税対応」として税額控除を行った。
・課税庁は「課税仕入れの日の現況」により、「共通対応」が正しいとして増額更正処分とした。

A社の主張
課税仕入れに係る用途区分の判定時は「事業年度終了時点」である。
事業年度終了時においては課税売上しか生じていないため「課税対応」として税額控除を行うのが正しい。

■課税庁の主張
課税仕入れに係る用途区分の判定時は「課税仕入れの日」である。
購入時点において事務所用及び居住用として貸し付けることを想定していたのであるから「共通対応」として税額控除を行うのが正しい。

■名古屋地裁の判断
消費税法34条(非課税業務用への転用)及び35条(課税業務用への転用)において「取得の日」から3年以内の転用につき一定の調整を行う旨が規定されていることから、起算が「課税仕入れの日」であることは明らかである。
⇒共通対応が正しいとした。


8.東証、改正会社法対応で上場規程等を改正

201551日から施行
1.特別支配株主の株式等売渡請求(90%以上保有株主によるキャッシュアウト)
 ・一定の場合に適時開示を求める
  ※会社が承認、不承認を意思決定した際に、IRが必要
 ・実行して100%となる場合には上場廃止

2.10年以上前に上場会社or子会社の業務執行者であったものを
 独立役員に指定できる(概要等の開示が必要)

 ・10年間が経過すれば、会社との関係が希薄となり、社外役員の機能を実効的に果たすことが期待できるとのことで社外性が認められた。同時に独立役員としてもOKに。
 ・ただし、概要の開示が必要。


9.過大支払利子税制

 ・資本関係のあるA社とB社
 ・A社は黒字企業、B社は欠損金のある企業
 ・A社がB社から借入れをして、A社からB社に利息を支払った場合
 ・A社の所得を不当に消して、B社の欠損金を使用することができてしまう
   ⇒A社グループでみた場合、税負担が軽減されることになる。
   ⇒一定の基準を設けてA社での支払利息の損金算入を制限する制度


10.グローバル節税 「日本の相続税の課税対象者は誰か?」

無制限納税義務者:国内財産、国外財産いずれについても相続税が発生

制限納税義務者:国内財産のみ相続税が発生

制限納税義務者の条件
⇒取得時点で日本に住所をもっていない
⇒日本国籍でない

201341日以降更に条件が追加

相続人、被相続人が共に5年以上日本に住んでいない








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