2017年10月8日日曜日

10/6 勉強会:自社株対価TOB、会社法上の規制緩和へ 他

1.平成29年3月期における会計方針の変更

■固定資産の減価償却の方法を定率法から定額法へ変更 38社
■(事例)会計方針の変更に関する注記の強調事項
・北日本紡績/太陽
有償支給材料に係る代金を純額表示へ
⇒取引実態を適切に反映するため

・ニコン/トーマツ
FPD露光装置の海外向け販売について、船積基準ないし顧客指定場所引渡し基準から据付完了基準へ
⇒当該装置の据付は長期化および高度化が見込まれるため

・ハリマ共和物産/トーマツ
仕入代金の現金決済時に受け取る対価を「営業外収益の仕入割引」から「売上原価の仕入割引」へ
⇒従来は現金決済による金利の性格があったが、近年は取引条件の取り決め時に仕入価格の調整項目となっているため

・ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング/あずさ
委託研究機関からの助成金の対象となる費用について、委託研究完了まで資産計上する方法へ


2.自社株対価TOB、会社法上の規制緩和へ

■自社株対価TOB
現行会社法上、被買収企業の株式を現物出資財産とする買収企業の株式の引き受けの募集に該当し、通常の新株発行と同様、同法199条に基づく募集手続を行う必要あり
⇒その場合、現物出資財産に対する検査役の調査が求められるとともに(同法207条)、被買収企業の株主等及び買収企業の取締役は財産価額補填責任を負う可能性あり(同法213条)

■産業競争力強化法上の取り扱い
産業競争力強化法に基づく事業再編計画について国の認定を受けた場合、会社法上の有利発行・現物出資規制を適用せず、株式交換と類似の規律を適用する旨の特例あり
⇒株主への課税(譲渡所得)がネックとなり、特例の適用事例は1件も出ていない

■会社法の改正検討
法務省の会社法制部会は、同法199条に基づく募集手続を不要とする(株式交換と同様の会社法上の規律を適用する)ことを検討
⇒経済産業省に、「株主に生じる譲渡所得への課税を繰り延べる仕組みを租税特別措置法ではなく法人税法本法で組織再編税制の一部として措置したい」意向がある為、会社法改正が実現すれば、法人税法本法での課税繰延措置導入にも追い風となる



3.サービス研究全委託も親会社で税額控除可

平成29年度税制改正で研究開発税制の見直しあり。

ビッグデータや人工知能(AI)等を活用した新たなビジネス開発を想定。
これらを利用して「観測」、「分析」、「設計」、「適用」のプロセスを得た研究開発費は、すべて税額控除の対象となる。

■親会社が子会社に4プロセスをすべて委託した場合
最終的に親会社が新たな役務提供をするのであれば、税額控除の対象。

■4プロセスを子会社4社で分業した場合
分業であっても、サービス研究開発の成果が各社に共有されるのであれば、税額控除の対象。
ただし1社のみ独占して成果を得る場合は対象外。


4.固定資産税の農地評価

土地の価格はその土地から得られる収益性で判断される
⇒農地は転用規制があり、宅地と比べて収益性が低いため、土地の評価額が低くなる
⇒農地の固定資産税は安くなる

■評価および課税方法
(1)一般農地(いわゆる農村部の農地)
・農地評価:農地利用を目的とした売買実例価格を基準として評価する方法
・固定資産税は300坪で平均1,000円程度

(2)市街地区域農地(既に市街化されているか、概ね10年以内に市街化が図られる地域)
・宅地並み評価:宅地の売買実例価格を基準として評価した価格から、宅地化するための仮想的な造成費を控除する評価方法
・固定資産税は300坪で平均6万円程度
・ただし市街化区域農地のうち生産緑地地区は、営農の継続が条件であるため、農地評価を行う


5.個人事業主の接待交際費、否認されるも審査請求にて必要経費と認められた事例

■納税者は紹介事業(玄関マットのレンタルや事務用品販売業者へ顧客を紹介する事業)を営んでいた。
・税務署側は、交際費は事業をするうえでの必要経費と認めず納税者側は不服として審査請求を行っていた。
⇒結果:交際費の一部は必要経費として認められた。
◎認められた部分(以下3つ)
・顧客先が参加したゴルフコンペにかかる費用、ディナーショーにかかる経費、顧客先の開店祝いの花代
⇒ゴルフコンペは契約先担当者やその上長が参加していたことで関係強化が目的と認定、ディナーショーはショーにおいて取扱商品が紹介された事から新規開拓目的等であると認定、開店祝いの花代も顧客先との関係強化が目的と認定された。
 上記の共通点「客観的にみて、事業に直接関連し業務遂行上必要な費用であると認められた」点
●認められなかった部分(以下4つ)
・取引先との懇親会参加費、顧客先との飲食費、前職へOBとして参加した際の飲食費、顧客先の子供が通う学校へ寄贈した制服
⇒懇親会費は領収書の提出がなく支払の事実がないので否認、飲食費は業務遂行上必要で必要経費の部分を明確にできないので否認、制服代金も同様に否認された。


6.配偶者控除、配偶者特別控除の29年度改正

(注)適用は平成30年度分から

■配偶者控除 
改正前は居住者の合計所得金額に関わらず一律38万円の控除であったが平成30年度分より下記の通り改正となった。
(1)合計所得金額が1,000万円を超える居住者⇒適用なし
(2)合計所得金額900万円超~950万円以下の居住者⇒26万円の控除(2/3に減額)
(3)合計所得金額950万円超~1,000万円以下の居住者⇒13万円の控除(1/3に減額)

■配偶者特別控除(配偶者の合計所得金額が38万円を超える場合の控除制度)
改正前:38万円の特別控除を受けられる配偶者の合計所得金額⇒40万円未満(給与収入105万円未満)
改正後:同⇒85万円未満(給与収入150万円未満)
なお、居住者の合計所得金額が900万円を超える場合には配偶者控除同様、一定の減額調整がされる

(まとめ)
配偶者の給与収入が150万円未満であれば配偶者控除または配偶者特別控除のいずれかで38万円の控除を受けることが可能。ただし、居住者の合計所得金額が900万円を超えると一定の減額調整がされ、1,000万円を超えると控除額は0(適用なし)となる。

(参考)
合計所得金額900万円=給与収入1,120万円
合計所得金額1,000万円=給与収入1,220万円


7.仮想通貨の不正送金と雑損控除

・仮想通貨の売買取引等で得た利益⇒原則として雑所得に該当
・不正送金で損害を受けたケースは基本的には雑損控除の対象
⇒所得税法上、震災等の災害や盗難、横領等で損害を受けた場合、一定金額の所得控除を受けられる
ただし、別荘などの生活に通常必要でない資産等は対象外⇒本制度の適否を巡りよく争点になる
・本件の考え方
インターネットバンキングの不正送金の損害も盗難に該当
資産は金銭であるため「生活に通常必要でない資産」には該当しない
⇒よって仮想通貨も同様と考えられる
・雑損控除の対象となる損害金額
不正送金時の日本円レートで換算
業者により損失補てんされた場合には、その金額は損害金額から控除


8.本人か代理人か

・収益認識基準案では、履行義務を識別する際(ステップ2)、商品やサービスが顧客に提供される前に、当該商品やサービスを企業が支配しているかどうかが論点になる
・自らの商品を売る「本人(当事者)」なのか第三者の商品を売る「代理人」なのかによって収益の表示が変わる
  本人 ⇒総額表示
  代理人⇒純額表示
・本人か代理人かの判断の指標
 ①契約履行の主たる責任
 ②在庫リスク
 ③価格設定の裁量権
※一時的な法的所有権の移転等ではなく、販売した商品などに対する責任を有しているかどうかで決まる
⇒百貨店の消化仕入(売上計上時に同時に仕入計上)などに影響あり


9.経理・財務面でのPMIのポイント

■買い手側の要対応事項の例(主なもの)
・組織・ガバナンス
(1) 窓口や報告ラインの明確化
(2) アウトソースする業務の選別・委託先の決定
(3) 内部統制の整備(J-SOX対応)

・決算スケジュール
(1) 月次・四半期・年次決算スケジュールの調整
(2) 連結グループ会社間債権債務等調整プロセスの導入
(3) 対象会社内における締め処理日変更要否の検討

・制度会計
(1) 制度会計数値に対する責任者の明確化
(2) 連結財務報告に必要な情報とその定義の明確化
(3) 会計方針・会計処理の変更要否の決定

・その他
(1) 管理会計制度の整備・変更
(2) 事業計画・予算策定
(3) 連結システムの調整
(4) 指定銀行口座の開設
(5) CMSの導入検討 等


10.関係会社株式の追加取得

■子会社株式の追加取得
【借方】
非支配株主持分:追加取得した株式に対応する持分)
資本剰余金:差額
【貸方】
関係会社株式:追加投資額

■関係会社株式の追加取得(関係会社のまま)
【借方】
持分法損益:のれん(追加投資額△追加取得した株式に対応する持分)÷のれん償却期間
【貸方】
関係会社株式:同額

⇒負ののれんの場合は発生した事業年度の利益


11.海外子会社PMIの事例

■A社の事例(ソフト面重視型)
買収企業の被買収企業への尊重というもとに信頼感を集めた
・早くから20もの作業分科会を立ち上げ、クロージングを待たずして何度も足を運んだ
・海外子会社と日本語での挨拶を日常化し、共通言語を持つという結束を深めた
・トラブルが発生した際に、優先順位は犯人捜しでもなく、生産計画の遅延でもなく、従業員の安全
■B社の事例(ハード面重視型)
強力なリーダーシップを発揮する事で信頼を集めた
・B社は何度もMAの経験があり
・統一に向けたPMIプロセスを体系化したマニュアルを作成
・効率がいい一方で反発を食らう可能性もある


12.新収益基準に対応したシステム構築

■ポイント
「履行義務」を基にした処理が必要のため、債権管理と請求管理が連動しないケースが生じる
現行システムは債権管理と請求管理が連動する前提であり、その機能に限界あり
⇒2つのシステムの具備が必要
(1)請求管理用のシステム⇒これまでと同じでOK
(2)債権管理用のシステム⇒新たに構築する必要あり

■業務プロセスの見直し
従来:契約単位での収益管理⇒今後:細分化した「履行義務」単位の管理が必要に
従来:収益の「単位」が変わる⇒今後:原価の「単位」も変わるため、原価管理体制を見直し

■システム構築上のポイント※会社にが大きな負荷がかかることを認識しておく
(1)単一仕訳にする(貸方と借方を1対1)⇒自動仕訳にできるものを洗い出しやすい。

(2)仕訳パターンを揃える⇒勘定の相手勘定を決め、自動仕訳のパターンを少なくする
例:入金時には履行義務別に消込を行う必要があるため、預金の相手勘定は(債権ではなく)負債とする。

(3)履行義務単位で債権管理



13.新収益基準案にみる現行実務へのインパクト

新収益認識基準では管理面からパラレルアカウンティング(2つの会計基準に基づいて帳簿作成)が必要となる。

■新収益認識基準の特徴
以下の5ステップを経て収益認識する
①契約の識別
②履行義務の識別
③取引価格の算定
④履行義務への取引価格の配分
⑤収益の認識

■会計上/契約上の債権管理
・会計上の債権管理
履行義務の単位で売上認識/売掛金や契約資産を計上
・契約上の債権管理
契約単位で売上/売掛金を計上
⇒「単位」「金額」「タイミング」が異なってくる。

■設例①
・前提
1つの契約(100円)に2つの履行義務(財の販売A(80円)とその後のサービスB(20円))が含まれている。
Aの販売は4月30日に完了し、Bは2ヶ月後の6月30日に提供完了。
現行実務では4月30日に請求/売上計上。
売上代金100円は5月31日に入金。

・会計上の債権管理
4月30日
⇒売掛金80円を計上(Aの履行義務提供による売上)
5月31日
⇒売掛金10円を計上(Bの履行義務提供(1/2ヶ月)による売上)
⇒売掛金90円消込、契約負債10円を計上(代金入金による消込)
6月30日
⇒売掛金10円を計上(Bの履行義務提供(1/2ヶ月)による売上)
⇒売掛金10円と契約負債10円を相殺(入金済み分と売掛金の相殺)
※契約負債=財やサービス提供前に代金を受け取った場合に生じる(≒前受金)

・契約上の管理
4月30日
⇒売上代金の請求
5月31日
⇒売上代金の回収
6月30日
⇒特になし

■設例②
・前提
1つの契約(100円)に2つの履行義務(財の販売A(80円)とその後のサービスB(20円))が含まれている。
Aの販売は4月30日に完了し、Bは2ヶ月後の6月30日に提供完了(設例①と同様)
現行実務では6月30日売上計上
売上代金100円は7月31日入金。

・会計上の債権管理
4月30日
⇒契約資産80円を計上(Aの履行義務提供による売上)
※契約資産=期限到来以外に回収するための条件が付いている債権。当該設例の場合、Bの提供完了がその他条件に該当。
5月31日
⇒契約資産10円を計上(Bの履行義務提供(1/2ヶ月)による売上)
6月30日
⇒契約資産10円を計上(Bの履行義務提供(1/2ヶ月)による売上)
⇒契約資産100円を取崩し、売掛金100円を計上(期限到来すれば債権が回収できる状態になったため、売掛金に振替)
7月31日
⇒売掛金100円の取崩

・契約上の管理
4月30日
⇒特になし
5月31日
⇒特になし
6月30日
⇒売上代金の請求
7月31日
⇒売上代金の回収



14.太陽監査法人と優成監査法人が合併

・監査先の上場企業数は約200社、抱える公認会計士は500人超。
・来年7月をめどに合併。
・存続会社及び社名は太陽監査法人。
・上場企業の監査数で太陽は144社(6月末時点)と既にあらた(122社)を抜き業界4位。

以下、太陽・山田総括代表社員と優成・小松統括代表社員へのインタビューより

・売上高は5年後をめどに合併時の90億円強から150億円を目指す。
・海外拠点は現在の約20拠点から倍増させたい。中南米やアフリカも視野に入っている。
・企業側に四大法人以外の選択肢を提供できるようにしたい。会計士の数は5年後をめどに800人規模に増やしたい。
・売上高2兆円以上の企業も監査できる体制を目指す。
・(東芝の監査について)東芝側から接触があり、前向きに検討した。ただ人員の問題などから難しいと判断した。
・東芝は(四大法人とは利害関係が多く)変更できない状況に陥っていた。企業側の選択肢を広げることが社会にとって有益だ。
・(さらなる中堅監査法人の合併や再編について)門戸は常に開いている。志が同じであればいつでも歓迎だ
・一定の規模は拡大するものの、四大法人並みになろうとは考えてはいない


15.日本企業の海外進出

海外において、国内のみで事業展開している時には想定できないリスクが発生することがある。
このようなカントリーリスクは企業努力では回避できない。
上場会社は有報の「事業等のリスク」で当該リスクの詳細を開示

(1)上場審査上のポイント
・事業計画において、カントリーリスクが実際に生じた場合に備えての対応策を明確しておくことが必要。
Ex:工場建設の地域分散化
・海外展開によりグループ売上増加を計画している会社は、事業継続性を検討し、想定通りにならなかった場合に備えたリスクヘッジ手段を説明できるようにする必要あり。
・連結グループ経営の観点から、親会社から海外子会社の情報が適時に入手できるような管理体制を構築する必要あり。

(2)海外進出のメリット
・企業の知名度の向上
・現地通貨での資金調達

(3)海外進出のデメリット
・異なる会計基準かつ日本語以外の言語でFSを作成










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