2018年6月3日日曜日

6/1 勉強会:消費税率10%、8%の価格表示の具体例 他

1.保険委託先代理店変更で第二次納税義務

■事例
A社:国税滞納会社。生命保険の代理店業を営んでいた。
B社:請求人。代理店たる契約上の地位をA社より無償で取得した。

⇒B社はA社の国税滞納金の第二次納税義務があるか?

■原処分庁の主張
請求人は滞納会社から、将来にわたる一切の代理店手数料を受け取る権利を引き継いでおり、
第二次納税義務がある。

■請求人の主張
代理店手数料の受領権は請求人自身が生命保険会社と代理店契約を締結することで
別個新たに獲得したものであるため、原処分庁の主張は不当である。

■審判所の判断
・請求人は通常では得ることができない代理店手数料を受領することができることになったことから、
契約上の地位には財産的価値がある。
・請求人は契約上の地位の譲受に際し滞納会社に金銭等の対価を支払っていないことから、無償で取得したものと認定。

⇒請求人は契約上の地位の評価額に相当する金額の利益を受けたことが認められることから、
委託先代理店の変更は「第三者に利益を与える処分(国税徴収法39条)」に該当するため、
請求人に対する第二次納税義務の適用を認めた。






2.新承継税制適用後の特例後継者変更不可

■平成30年度税制改正
・従来、先代経営者から一人の後継者への贈与・相続が行われる場合のみ事業承継税制の対象
・改正により、親族外を含む複数の株主から代表者である後継者(最大3名)への承継も対象とされた
・ただし、適用を受けられる者は、特例承継計画に氏名を記載されたものに限定

■特例承継者
・変更申請書にて変更することが可能
・しかし、事業承継税制の適用を受けた後は変更不可
・逆に言うと、株式の贈与・相続を受けていない特例後継者は、変更申請書を提出することが可能






3.「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」の解釈(第2回)

■過去の事例
・H7年、国税庁への質疑応答事例
譲渡用住宅を一時期賃貸用に供する場合の仕入税額控除をどのように行えばよいか?
⇒課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに該当するものとして取り扱って差し支えない

・H9年、税務調査の事例
賃貸マンションを転売目的で取得
⇒課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに該当すると判断し、減額更正

■H24.1/19 大阪国税不服審判所の裁決
・不動産販売業者が販売目的で建物を取得
・取得時において住宅の貸付けの用に供している
⇒建物が棚卸資産で販売目的資産であるという事実を認定した上で、課のみ仕入に該当しないという結論
⇒本裁決を受けて、不動産業者への追徴課税が多発

■H24.9/7 東京地裁の判決
・事業者が公共設備の整備等を受注
・代金の支払い方法が割賦になっており、金利(非課税売上)が発生
⇒課税仕入れが割賦金利と対応していると判断され共通と判定

(問題点)
・本判決の中で、課税仕入れの区分をどのように行うのかということに関して、「客観的」に判断と判示
・契約内容が事業の本質を表しているという納税者の主張を排斥するために、契約内容(主観)に関わらず「客観的」に判断しなければならないという文脈で使用
⇒H25年のさいたま地裁の判決でも「客観的」という用語が用いられている
⇒何の「目的」で仕入先と契約を締結したかという事業者の「主観」が無視されることにつながる恐れ






4.消費税率10%、8%の価格表示の具体例

【消費税の改正の開始日と税率】
・消費税率の引き上げ:平成31年10月1日より(軽減税率制度も同時に開始)
・税率:標準税率は10%(国7.8%、地方2.2%)、軽減税率は8%(国6.24%、地方1.76%)

【対象品目】
・酒類、外食を除く飲食料品 & 週2回以上発行される刊行物(定期購読契約に基づくもの)
・外食はから外れるがテイクアウト、出前は軽減税率が適用される。

【価格の表示は?】
・店内飲食の場合と出前の場合の価格を表示する
・どちらか一方(売上に占める割合が殆ど1種類の場合)の価格のみ表示(有利誤認に該当するおそれ)
・テイクアウト、店内飲食価格を統一しても差支えない。

【消費税転嫁対策特別措置法、景品表示法違反となるもの】
・「全て軽減税率が適用されます」や「消費税は8%しか頂きません」などの表示






5.今週の専門用語

■準備書面
民事訴訟で提出される書面であり、以下1~2のことが記載される。
1.攻撃又は防御の方法
2.相手方の請求及び攻撃又は防御の方法に対する陳述
→民事訴訟では当事者が口頭で主張するのが建前だが、現実には困難である。
そこで民事訴訟法では、「口頭弁論は、書面で準備しなければならない」とし、相手方が在廷していない口頭弁論においては、準備書面に記載した事実しか主張できないこととしている。

■税抜価格
商品などの価格は、消費税額等を含めた価格を表示しなければならない。
→消費税率引き上げに伴う負担軽減のため、表示価格が税込価格と誤認されないための措置を講じれば、特例として税込み価格を表示しなくてもよいとされている。

■取消判決の拘束力
行政事件訴訟法における判決の効力の1つである。
→行政処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について行政処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。
→取消判決確定後の再度の審判手続きにおいて取消判決の認定判断に抵触する認定判断をすることは許されないとされている。







6.免税(1)

■輸出取引等の範囲
関税法の定義:内国貨物を外国に向けておくりだすこと
(1)典型的な輸出
・国内からの輸出として行われる資産の譲渡・貸付
(2)外国貨物に関するもの
・外国貨物の譲渡・貸付け
・外国貨物に係る荷役、運送、保管、検数、鑑定等のサービス
(3)役務の提供に関するもの
・国際運輸、国際通信、国際郵便
(4)非居住者に対するもの
・無形固定資産等の譲渡、貸付け
・広告宣伝、情報提供などの特定のサービス

■輸出免税制度の適用者の摘用要件
⇒輸出したことを証する所定の書類(輸出許可書や契約書類等)を保存すること。
⇒実際の輸出者は、輸出申告などの原本を保存するとともに、名義貸しに係る事業者に対して輸出免税制度の摘用がない旨を連絡するための消費税輸出免税不適用連絡一覧表などの書類を交付する。

■仕入税額控除における取扱い
・非課税と免税で消費税の仕入控除額の計算において取扱いが異なる。
個別対応方式・・・
非課税⇒非課税売上対応分の課税仕入れ等の税額は控除対象とならない
免税⇒免税売上対応分の課税仕入れ等の税額は、その全額が仕入額控除の対象となる。

課税売上割合の計算・・・
非課税⇒非課税売上高は分母にのみ算入される。
免税⇒免税売上高は分母と分子の両方に算入される。





7.自販機スキームと通算課税売上割合

(改正前のスキーム)
■課税売上割合が著しく変動した場合
調整対象固定資産にかかる課税仕入れを行った場合に、その後3年間の通算課税
売上割合が著しく減少したときは、3期目において還付税額の一部取戻しが行われる
⇒3期目が免税であれば調整不要

■自販機スキームとの関係
①1期目に建物を購入+自販機売上計上(課税売上割合100%)+課税事業者選択
⇒建物にかかる消費税が全額還付
②2期目は居住用の賃貸収入のみ(非課税)で納税なし
③3期目は免税事業者として調整計算を回避

⇒租税回避が横行したためH22、H28の税制改正で規制
(通算課税売上割合の計算が強制されることになった)

通算課税売上割合が減少しないよう、3期目に金地金の売買を繰り返して
課税売上割合を調整するケースが出てきているため、更なる規制が検討されている







8.税務署での本人確認によるID・パスワードでe-Taxが可能に

H30年分の所得税の確定申告より、
マイナンバーカードを取得していなくてもe-taxが利用できるようになる。

現状マイナンバーカードを所有しているとe-taxによる申告が可能だが、
来年より導入されるスマートフォンによる所得税の申告にあわせて、
ID及びパスワードのみでの申告も可能となる。

ID・パスワードの取得手続きは以下のとおり
・税務署に行き、税務署のPCで氏名等を入力
・税務署職員に本人確認をしてもらう(免許証等が必須)
・ID・パスワードが付与される
※無料であり、約10分程度で手続きが終了。

ただし、あくまでもマイナンバーカードによるe-taxでの申告が原則であるため、
マイナンバーカードの普及状況等を鑑みて、一時的に認められる申告となる模様。





仮想通貨実務対応報告の早期適用

・仮想通貨の会計処理に関する実務対応報告の適用時期は2018年4月1日以降開始の事業年度から
・ただし、2018年3月14日以後終了する事業年度および四半期期間から早期適用できる
・GMOインターネット、GMOフィナンシャルHD、Eストアー、ピクセルカンパニーズの
 4社が早期適用表明。
・BSの表示科目については定めがない
 ⇒Eストアーは現預金に含めず、「繰延税金資産」の後、「その他」の前に仮想通貨として表示
・リミックスポイントは「現預金」「売掛金」「商品」に続いて、「仮想通貨」を表示





10.契約締結

契約は契約当事者の自由な意思によって成立
口約束で条件を取り決めることも法律上問題ないが、会計処理の証拠書類として位置付けられるほか、
下記のような効果が期待できるため、取引基本契約書を締結することが望ましい。

1.契約成立の有無を明確にする
2.契約の内容、特に権利・義務を明確にする※
3.トラブル発生時に契約内容・条件を立証する

※自社契約書のひな型通りに契約締結出来ない(取引相手が優位な立場にあり、先方の雛型に合わせざるを得ない)ケースでは、
契約内容については顧問弁護士と相談しながら対応することが必要。

取引基本契約書を作成するときは、双方で合意した事項を簡潔明瞭に条文化し、抽象的な表現は極力避けることが重要。
契約書に盛り込む主な事項としては、主に下記がある。

1.取引の対象
2.債権回収条件
3.契約期間
4.契約解除または違約の場合の条件
5.暴力団排除条項




















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