2018年6月15日金曜日

6/15 勉強会:資本連結指針見直し、会計士協会に依頼 他

1.メルカリの仕入税額控除否認理由が判明

メルカリが平成27年6月期、平成28年6月期について、
消費税の仕入税額控除の一部を否認する更正処分を受けた

■取引事例
・10,000円の物品売買が成立
・購入者が10,000円の購入対価のうち、100円をポイントで支払った
【仕訳】
現金預金9,900/預り金10,000
×××100
⇒×××は何で処理すべき?

■東京国税局の判断
(1)100円のポイントが「購入金額に応じて購入者に付与したポイント」である場合
⇒売上値引(マーケットに参加してもらうために負担したものであって対価性がある)

(2)100円のポイントが「無料で付与したポイント」である場合
⇒寄付(対価性はなく、消費税法の課税仕入れにならないため不課税)







2.資本連結指針見直し、会計士協会に依頼

■のれんの減損/現行の取扱
・のれんの減損の考え方:超過収益力が失われたときに評価減
・時価のない子会社株式=事業価値に基づいて超過収益力で判断(使用価値的な考え方)
・時価のある子会社株式=使用価値を考慮することなく時価に基づいて減損処理を強制
⇒単体BSで時価あり子株の減損処理を行った場合、親会社持分+のれんの金額が単体簿価の金額となるまでのれんの額を減損
⇒時価ありケースは必ずしも原則的な会計処理の考え方と整合していない

■改正案
・時価に基づく単体簿価まで一律切り下げる処理の記述を削除

■適用時期
2019年4月1日以後開始する連結年度の期首から適用される予定







3.「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」の解釈(第3回)

■H25.6/16 さいたま地裁の判決
・販売用の目的で建物を取得し、棚卸資産として計上
・取得時点では住宅の貸付け等の用に供している
⇒取得時点で賃貸契約を結んでいたため共通仕入と判定され、納税者敗訴

■判決文(抜粋)
(1)仕入を行った日の状況等に基づき、事業者の目的、意図等を勘案し、どのような取引に要するものであるかを客観的に判断すべき
(2)「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」とは、その対価の額が最終的に課税資産の譲渡等のコストに入るような課税仕入れ等だけをいう

■問題点
【ポイント1】判決文の順番
・(2)は解釈、(1)は解釈の当てはめとなっている
・本来は、解釈→当てはめの順で判決を述べるべき
⇒解釈の部分の「最終的に」という部分に事実の当てはめを行った場合、納税者有利になるため判決文の順番を逆転させたと考えられる

【ポイント2】「客観的に」の意味
・通達で「合理的に」だった部分が「客観的に」に変えられている
・通達は、最終的な事業者の目的の如何によって用途区分を行うのが合理的という趣旨
⇒最終的な目的によって用途区分を行うべきという機論を避けるために都合よく変更している







4.役員給与は非居住者でも国内源泉所得に

「国外」に勤務する役員に対して支払った役員給与は「国内源泉所得」に該当するか
で争われた事例

■非居住者に対する課税
非居住者とは、国内に住所がある、又は現在まで引続いて1年以上「居所」がある個
人以外の者をいう
課税される範囲は日本国内にて稼得した国内源泉所得のみに対して課税される。

■東京地裁平成29年の裁決
・原処分庁は請求人の役員に対して支払った給与は非居住者に対する国内源泉所得と
なる為、
源泉徴収に係る所得税を納めるよう告知処分を下した。
・請求人は当該役員は非居住者ではなく居住者であると主張
理由として日本に住居を構えている、住民税も払っているので非居住者ではない

【裁決:本件は国内源泉所得となる】
理由:役員の国内滞在日数は過去3年間で合計180日程度であり1年以上居所を有して
いない
また、国外法人の代表者として活動しているため非居住者であり内国法人の役員とし
て勤務に起因する給与はその勤務が国内外に関わらず原則として国内源泉所得に該当
するとした。

所得税基本通達161-43の適用は?
内国法人の役員が国外にあるその法人の子会社に常時勤務する場合において、次に掲
げる要件のいずれをも備えているときは、その者の勤務は、内国法人の役員としての
勤務に該当するものとする。
⇒要件を満たしていないため適用できず







5.収益認識会計基準で法人税と消費税に差

■国税庁が収益認識に関する会計基準に対応した改正法人税基本通達を公表
→原則として収益認識会計基準の考え方を取り込む
→ただし自社ポイントに付与や割戻し(変動対価)等では、収益認識皆生基準と法人税の取扱いが一致するが、消費税の取り扱いは異なる点に注意が必要。
→法人税では認められ、消費税では認められない。








6.法人税基本通達等の主要改正項目について

■「収益認識に関する会計基準」の導入に伴い、法人税における収益の認識時期等についての改正
(1)資産の販売等に係る収益の認識時期について
原則:目的物の引き渡し又は役務の提供の日に属する事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入する。
例外:一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って目的物の引渡し又は役務の提供の日に近接する日の事業年度の収益の額として経理した場合には、当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入する。

(2)資産の販売等に係る収益の計上額について
原則:販売若しくは譲渡をした資産の引き渡しの時における価格又はその提供をした役務につき通常得るべき対価の額に相当する金額とする。
貸倒れ(回収不能)又は買戻し(返品)の可能性がある場合においても、その可能性がないものとした場合における価格とする

(3)返品調整引当金制度及び長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例の廃止
・返品調整引当金制度
⇒経過措置として平成33年4月1日から平成42年3月31日までに開始する事業年度については、損金算入限度額を10%ずつ縮小した引当金計上が認められる。
・長期割賦販売等に係る延払基準(※ファイナンス・リース取引に係る部分は除く)
⇒経過措置として平成30年4月1日前に割賦販売を行っている場合は平成35年3月31日までに開始する事業年度まで延払基準の選択が認められる。また。延払基準の適用をやめた場合、繰り延べた利益を10年均等で収益計上することになる。

■施行時期
平成30年4月1日以後終了する事業年度から適用






7.税理士の代理申告と自署押印

■自分で申告する場合
法人税申告書:従来「自署」が求められてきたが、平成30年度税制改正により
消費税などと同様に「記名」で済むことになった。

■代理申告の場合
税理士だけでなく、代表者の自署を求める規定は従来どおり存置
⇒自署押印を通じて納税者に書類の意味や内容を十分認識してもらうのが趣旨

■自署押印がない場合
その有無によって申告書等の「効力に影響を及ぼすものと解してはならない」とされている
⇒申告書の提出は有効と取り扱われる

ただし、税務署からその署名押印を求められる可能性はあり、税理士としてその義務を全うすべきと言える








8.政府 2018年度版骨太の方針の原案のとりまとめ

2019年10月に予定されている消費税10%への引き上げにつき、
引き上げに伴う駆け込み需要や反動減といった経済変動を抑制するため以下制度を実施予定。
・軽減税率制度の実施
・駆け込み・反動減の平準化策
・個人所得課税・資産課税の効果の検討
・租税特別措置法の必要な見直し
・グローバルな国際課税の再構築
・電子化関係の推進






資本コスト

・2018年6月1日に改定されたコーポレート・ガバナンスでは新たに下記が求められている。
 ★自社の資本コストを適格に把握する
 ★政策保有株式の保有について、資本コストに見合っているのか等を具体的に精査
⇒資本コストは、株主資本コストなのか?加重平均資本コストなのか?
⇒「株主資本コストやWACC」が用いられることが多い。






10.従業員に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引

■前提
・1名あたり40千個で20名に付与=800千個
・付与を決議した日の株価@600円
・行使時の払込金額は@600
・権利確定日:4年3月期
・行使期間:4年3月期~6年3月期
・付与日の公正な評価単価は100/個、払込金額は3,200,000円
・払込金額は3,200,000(=100/個×(800千個―768千個))
※この時点では768千個が失効と見積もり

■付与日(1年11月1日)
現預金 3,200,000/新株予約権 3,200,000

■4年3月期
株式報酬費用 76,800,000/新株予約権 76,800,000

・失効数の見積りの見直し。これに伴い権利確定条件付き有償SOを見直す。
・株式報酬費用=76,800,000=[(公正な評価単価100/個×権利確定すると見込まれる数量800千個)-本新株予約権の払込金額3,200,000)]-3年3月期までの費用計上額0

■6年3月期(権利行使)
現預金 480,000,000/資本金 560,000,000
新株予約権 80,000,000







11.30年6月期1Q決算の直前対策(セグメント変更時の開示ポイント)

■セグメントを変更する際の留意点
3パターンあり
(1)組織変更等による報告セグメント区分の変更
(2)量的重要性の変化による開示セグメントの範囲の変更
(3)セグメント利益(損失)の測定方法の変更

(1)補足
四半期の取り扱い
・変更の旨、前年四半期累計期間について「変更後の区分方法」による開示が原則
 上記が実務上困難な場合は、「前年度の区分方法」による当四半期累計期間の情報を開示もできる

年度の取り扱い
・変更の旨、前年度について「変更後の区分方法」による開示が原則
 上記が実務上困難な場合は、「前年度の区分方法」による当年度の情報を開示もできる

(2)補足
四半期の取り扱い
・変更を行った四半期会計期間以後、その旨および当該変更が期首から累積期間に係る報告セグメントの利益(損失)および売上高に与える影響を記載

年度の取り扱い
・(1)と同様に、変更の旨、前年度について「変更後の区分方法」による開示が原則
 上記が実務上困難な場合は、セグメント情報に与える影響を開示することが容認

(3)補足
四半期の取り扱い
・変更を行った四半期会計期間以後、その旨、変更理由および当該変更が期首から累積期間に係る報告セグメントの利益(損失)および売上高に与える影響を記載

年度の取り扱い
・その旨、変更の理由と当該変更がセグメント情報に与える影響を記載
 影響が重要である場合、前記に代えて、前年度のセグメント情報を「変更後のセグメント利益の測定方法」で作り直した情報を開示するのが望ましい







12改正税効果会計基準について

■会計処理の見直し
(1)個別上の子会社株式等に係る将来加算一時差異
従来:一律にDTL計上
改正:売却等を投資会社自身で決定、かつ予測可能な将来期間に、売却等を行う意思がない場合を除き、DTL計上(連結上の取扱いに合わせる)

(2)分類1の企業でのDTA回収可能性
「原則として」DTAの全額について回収可能性がある、と強調
⇒回収可能性がないとする判断が適切な場面があることを明示

■表示方法の見直し
従来:DTAとDTLは流固分類
改正:DTAは投資その他資産、DTLは固定負債

■注記の見直し(注記事項の追加)※四半期報告書には注記は求められていない
(1)評価性引当額の内訳に関する数値情報
⇒税務上の繰越欠損金(以下、繰欠)に係る評価性引当額・その他の評価性引当額を区別して記載
(2)評価性引当額の内訳に関する定性情報
⇒評価性引当額の合計に重要な変動が生じている場合、その主な原因
(3)税務上の繰欠に関する数値情報
⇒繰欠全額を基礎に算出したDTA・評価性引当額・実際に算出した繰欠DTAを記載
(4)税務上の繰欠に関する定性情報
⇒繰欠DTAに関して、回収可能と判断した理由






13.収益認識基準の早期適用上の留意ポイント

■適用スケジュール(3月末決算会社)
強制適用:2021年4月1日以後(2022年3月期)
早期適用:2018年4月1日以後(2019年3月期)

■適用時の取扱
・原則的な取扱
前年度以前:新基準(遡及適用)、適用初年度:新基準
・ただし書きの取扱
前年度以前:旧基準、適用初年度:新基準(累積的影響額を期首の利益剰余金に加減)
⇒会計方針の変更として取り扱われるため、原則として遡及適用が必要になる

■開示
・契約資産と債権を区分表示が求められるが、早期適用時は区分表示しないことができる
・収益の表示科目は検討中のため、現在の表示科目を継続適用できる
・主な履行義務の内容と履行義務を充足する時点の注記が必要






14.のれん含みで取得した子会社株式の評価

■事例
・P社はS社(純資産50)の発行済株式100%を120で現金購入
・現時点でS社の資産・負債に含み損益なし、また新たな識別はされなかったため、のれん70を計上
・計上されたのれん70は、現時点で償却済み(償却期間:5年間)
・S社は獲得利益の全額を配当する方針としていることから、S社の純資産は依然として50
 (連結上簿価:50、個別上簿価:120)
⇒S社株式評価について留意すべき事項とは

■株式の実質価額の算定方法
 原則、資産等の時価評価に基づく評価額等を加味して算定した1株当たり純資産額となる。
⇒当事例については、含み損はないが、土地を有している場合は、特に留意が必要

■実質価額が著しく低下した場合
 実質価額が著しく低下した場合=実質価額が取得原価に比べ50%程度以上低下した場合
⇒当事例については、実質価額が低下しているわけではないが、純資産50のS社に対して120の子会社株式簿価が付されていており、簿価純資産に基づく実質価格が取得原価の50%を下回っているため、その解釈に検討を要する。

■超過収益力を反映した実質価額
・取得価額算定の基礎となった事業計画と、その後の実績額とを比較し乖離状況に基づき、超過収益力の毀損の有無を判断
⇒実質価額の低下が懸念される場合は、企業価値評価ガイドライン等を参考に回収可能性のテストを行う
・自己創設のれんを含めて判断するか
⇒本質的な事業投資として位置付けている点から、売却を予定しない子会社株式の時価変動は投資の成果を表すものではないため、株式取得時点の評価方法や選定条件等と平仄を合わせ、過度に自己創設のれんが混入する余地を増やさないように配慮する必要がある。






15.期首に組織再編した場合の第1四半期の会計処理のポイント(合併・会社分割)

■合併(取得)が期首に行われる場合
①繰延税金資産の回収可能性
取得企業における繰延税金資産の回収可能性は、取得企業の収益力に基づく一時差異等加減算課税所得等により判断。また、将来年度の課税所得の見積もり額によって回収可能性を判断する場合には、被取得企業の過年度の実績等も加味する。
 税金費用の計算を四半期特有の会計処理によっている場合、回収可能性の判断の影響は見積実効税率に反映される。
②固定資産の減損
 グルーピングの見直しを行い、減損の兆候を判定する。
③退職給付引当金
 被取得企業における未認識項目は取得企業に引き継がれない。
④注記
 重要性が乏しい場合を除き、企業結合の概要等を開示。

■合併(共通支配下の取引)が期首に行われた場合(例.親会社が子会社を合併する場合)
①繰延税金資産の回収可能性
 子会社の繰延税金資産を簿価で引き継ぐ。
②固定資産の減損
 グルーピングの見直しに加え、将来キャッシュフローを見積もる場合に、「合併が行われていないものと仮定した場合の経済的残存使用年数」を用いる。
③退職給付に係る負債
 未認識項目を含め、簿価で引き継ぐ。親会社と子会社の退職給付制度を、過去の勤務期間も引き継いで統合する場合には、過去勤務費用は退職金規定等の改訂日から認識・測定する。また、退職給付制度統合後の人員が増加し、平均残存勤務期間が大幅に変動する場合には、当該期間の再計算が必要。

■会社分割(投資は継続)が期首に行われた場合
①繰延税金資産の回収可能性
 ・移転事業
 →事業分離を考慮しない将来年度の収益力に基づく一時差異等加減前課税所得により判断。
 ・残存事業
 →事業分離を考慮した将来年度の収益力に基づき一時差異等加減前課税所得により判断。
②固定資産の減損
 グルーピングの見直しに加え、将来キャッシュフローを見積もる場合に、「会社分割が行われていないものと仮定した場合の経済的残存使用年数」を用いる。
③退職給付に係る負債
 退職給付制度の終了の例外として、未認識項目も含め、簿価で引き継ぐ。










16.東証は6月8日、2018年3月期決算会社に係る定時株主総会開催日の集計を実施

・3月期決算会社の定時株主総会の開催は、例年「6月最終営業日の前営業日」(当該日が月曜日である場合には、その前週の金曜日)に集中。

・2018年も「6月最終営業日の前営業日」にあたる6月28日(木)が最も集中する日となっており、2,342社中、725社(30.9%)が開催を予定。

・集中日の開催率は前年比で1.3ポイント増加。

・1995年の96.2%をピークに分散化傾向にあり、ここ数年30%前後で推移。 





16.ベンチャーキャピタルの投資プロセス

(1)調査分析
市場動向・業界情報等を調査し、事業計画の実現可能性を含め事業の将来性を検討。
また、公認会計士による財務調査が行われる場合もあり。

(2)投資条件決定
会社とベンチャーキャピタルとの間で各種の投資条件を交渉して取り決める。
株価決定やシェア率(資本政策)の詳細を決定。

(3)投資実行
ベンチャーキャピタル内の投資委員会の審査(1~2ヶ月程度)を通り、承認されれば投資が実行。

(4)投資先支援
取引先・提携先紹介や経営陣・管理部門の人材紹介などが行われる場合あり。

(5)投資回収
対象会社が上場した場合、経営者が買い取るか、一部は売却するか市場に影響を与えない形で少しずつ売却するかの方法で、ベンチャーキャピタルはキャピタルゲインを獲得。
(資本政策で、上場時に流動化する株主比率の把握と対策が経営者に求められる)



























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