2019年1月30日水曜日

1/25 勉強会:収益認識基準に伴う法人税と消費税の相違点 他

1.相続開始直前の現金引出し、当局は「故意の隠蔽」に照準

■重加算税の賦課要件
・当初から所得を過少に申告することを意図
・その意図を外部からも伺い得る特段の行動をしている
・その意図に基づく過少申告をしたような場合

■東京高裁平成30年7月11日判決
(1)事件の概要
 納税者は、被相続人名義の各預金口座から相続開始前に現金を引出した。
納税者は誤解して出金したものであると主張。これは隠蔽に該当するか?
(2)裁判所の判断
 一連の行為は、下記のような故意に課税標準又は税額の計算の基礎となる事実の一部を隠す行為であり、
隠蔽に該当すると認められる。
・納税者は、預貯金を被相続人の相続財産として申告する必要があることを認識していた
・納税者は、相続税課税の対象となるのは相続開始時の被相続人名義の預貯金であって、
それ以前に引き出してしまえば相続税を軽減できるという単純な考えを有していた








2.条件付き取得対価の返還の会計処理が決定

■来期(今年)の組織再編から適用
・2019年4月1日以後開始する事業年度の期首以後実施される組織再編から
・遡及適用はなし

■業績に応じて対価の一部が返還されるときの会計処理
・条件付き対価の返還が確実となり、時価が合理的に決定可能となった時点で、取得原価から減額
・追加的に認識するのれん又は負ののれんは企業結合日時点で認識又は減額されたものと仮定
⇒返還があった期首以前の期に係る償却額・減損額は当期の損益として処理






3.マンション仕入税額控除否認の学術的・理論的検証(1)

■超消費税の問題
超消費税:仕入税額控除が制限されることにより摩擦的に発生する税

例)税額控除ができず、販売価格に転嫁されていくケース
(A社⇒B社⇒C社⇒消費者と商品が販売されていく場合)
A社:仕入40、売上60、利益20、納税額4.8
B社:仕入60、売上84.8、利益20、納税額6.8
C社:仕入84.8、売上111.6、利益20、納税額8.9
消費者:仕入120.5

・消費税の合計額は最終的に20.5になり、本来の消費税は8なので差額の12.5は消費税とは言い得ない
⇒超消費税
・マンション仕入税額控除否認問題でもこれと同様のことが起きている





4.税理士に対する資料不提示で秘匿認定

~確定的な脱税の意志に基づきあえて不提示の場合は重加算税の対象と判断~

■概要
納税者:不動産収入を得ており、毎年税理士に確定申告手続きをお願いしていた。
税務当局:税務調査にて申告していない不動産収入を指摘、重加算税の処分を下す。
賦課理由:申告すべき不動産収入を「仮装又は隠ぺい」したと判断
→これに対して納税者は「申告漏れであり、意図したものではない」と主張

■裁決(納税者側敗訴)
・税理士に対する資料の不提示(所得の秘匿):過少申告を意図して行動したものかどうかを検討

・納税者は指摘された不動産収入の土地建物は自己名義ではなく、納税者の母親であった。
・収入そのものがある事実を税理士に相談もしていなかった。
→以上の事から所得を秘匿する意図をもって「外部からもうかがい得る特段の行動」をとったと結論
 重加算税の処分は適法とされた







5.時価算定基準案が決定、現行実務に一定の配慮も

■概要
・ASBJは「時価の算定に関する会計基準(案)」を公表
・公正価値測定に関するガイダンス及び開示を定めるもの
・適用は平成2020年4月1日以後に開始する事業年度等の期首から
・IFRS13号「公正価値」の内容を全て取り入れる
→現行実務に一定の配慮有り

■求められる開示項目
・時価レベル(Lv1~3)毎の残高
・時価算定に用いた評価技法及びインプットの説明(Lv2~3)
・レベル3に関する各種情報

■その他
・期末前1ヶ月の市場価格の平均価額は使用できなくなる
・市場価格のない株式等の従来通り取得原価(現行実務に配慮)






6.個別対応方式の用途区分、仕入日で判断

居住用建物の仕入税額控除否認問題、平成26年10月23日の名古屋地裁の判決

■事例
・本件建物は事務所及び住宅と有する建物
・課税期間の終期であるH23年8月31日時点では、事業用賃貸に係る賃料収入あり。
・居住用賃貸に係る賃料収入はなし(契約の締結はあったものの、賃貸借の始期は同年9月1日より)
・納税者は「課税仕入れの日が属する課税期間の終了時点」で判断。
・賃料収入の課税売上しか生じてなかったので、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」として申告。

■判決
事務所及び住宅を有する建物として設計・建設され、貸し付けられることが予定されていたことから「共通対応」に該当
⇒個別対応方式の適用上の用途区分の判定時点を「課税仕入れの日」と判断。






7.今週の専門用語

■売上税(取引高税)
・製造、卸、小売りといった複数の取引段階の各段階ごとの売上金額を課税標準として課される消費税のこと。
⇒多段階消費税という点では、付加価値税である日本の消費税と同じ。しかし、売上税には仕入税額控除の仕組みがないため、後の段階になるほど税負担が重くなり、各取引段階の企業に不公平が生じるといった問題がある。

■インプット
・市場参加者が資産、負債の時価を算定するときに用いる仮定のこと。例えばボラティリティやリスクに関する調整が該当する。
・時価のレベルはレベルに応じて決定する
⇒レベル1のインプット(時価の算定日に企業が入手できる活発な市場で、同一の資産(負債)に関する相場価格で調整されていないもの)
レベル2のインプット(観察可能なインプットの内相場価格以外のもの)
レベル3のインプット(観察できないインプット)




8.管理組合とアンテナ収入

■概要
マンション管理組合Aは携帯電話会社Bとの賃貸借契約に基づき
マンション屋上の一部を賃貸し、設置料収入を得ていた。

■争点
(1)マンション管理組合Aは法人税法上の「人格のない社団等」に該当するか
(2)マンション管理組合Aの設置料収入は「収益事業」に該当するか
※「人格のない社団等」については「収益事業」を営む場合に限り法人税の
納付義務を負う

■東京高裁判断
(1)について
管理組合Aは団体としての組織を備えており、総会の議事は組合員の議決権の過半数で決する
とされていることなどから、法人税法上の「人格のない社団等」に該当する
(2)について
設置料収入を管理組合Aの予算案・決算に加味して総会で承認されていること、区分所有者に分配
されていないことなどから、本件貸付事業は管理組合Aが主体となって行った収益事業に該当する

■ポイント
本件は、マンション管理組合がアンテナ設置のために行った賃貸が法人税法上の収益事業として
課税対象となることが判断された初めての事例である。
⇒今後、管理組合に対する注意喚起がされていくものとみられる






「中小企業者」の見直しは2019年4月開始事業年度の見込み

平成31年度税制改正大綱において、中小企業者の判定の一部が変更となる。

■中小企業者の判定
・資本金1億円以下の法人
・下記みなし大企業に該当しない法人

■みなし大企業(=中小企業者に該当しない)
資本金1億円以下の法人ではあるが、
(1)株式の2分の1以上を同一の大規模法人に所有されている法人
(2)株式の3分の2以上を大規模法人に所有されている法人
※大規模法人とは資本金1億円超の法人
⇒大規模法人に50%以上株式を保有されている法人は「中小企業者の特例」を受けられない

■大規模法人の範囲が改正
・現行⇒資本金1億円超の法人
・改正後:
⇒資本金1億円超の法人
⇒大法人の100%子法人
⇒100%グループ内の複数の大法人に株式の全部を保有されている法人

■中小企業者に該当しなくなった例
A社:大法人(資本金5億円超)
B社:A社の100%子会社(資本金1億円以下)
C社:B社の100%子会社(資本金1億円以下)

・現行:C社は中小企業者に該当
⇒B社の資本金が1億円超でないため

・改正後:C社は中小企業者に該当しない
⇒B社がA社(大法人)の100%子法人に該当するから。

適用年度は2019年4月1日以後開始事業年度からスタート予定








10.IFRS適用(クボタ)

■前提

・クボタは1976年から米国会計基準を適用
・エンロン事件以降、米国会計基準の適用を疑問視。
・2013年にSEC登録廃止。

■IFRS適用に向けた主なスケジュール

・2015年~
海外子会社に合わせる形で決算期を12月に統一
差異が明確な項目についての検討開始(減価償却を定額法に変更、無形資産、退職給付)

・2016年~
監査法人との打ち合わせ、論点洗い出し

・2018年12月期第1四半期より任意適用開始

■重要な論点

①工期が短い工事案件の収益
⇒短くても、完成基準から進行基準へ

②工事契約における履行義務の識別
⇒義務を個々に識別できるか検討した結果、「統合的なサービス」である旨を監査法人と確認

③変動対価の見積もり方法
⇒ 値引き等の変動対価は収益に織り込む。見積もり方法をIFRSに合うように見直し。





11.時価の算定に関する会計基準等の公開草案を公表

■時価の算定に関する会計基準(案)
・企業会計基準委員会(ASBJ)が1月11日に「時価の算定に関する会計基準(案)」を公表
⇒金融商品の時価のガイダンス及び開示に関して、国際的な会計基準等との整合性を図る。
⇒適用は2020年4月1日以降開始する事業年度。早期適用も可。

・現行の基準では、金融商品会計基準等で時価の算定は求められているが、算定方法の詳細な記載なし。
⇒国際的な比較可能性が損なわれている。

・基本的な方針は、IFRS第13号の定めをすべて取り入れる。
⇒統一的な方法を用いることで、国内外の企業の財務諸表の比較可能性を向上させる。

・時価の算定にあたって使用された評価技法は毎期継続して適用。
⇒変更する場合は「会計上の見積りの変更」として処理。






12収益認識基準に伴う法人税と消費税の相違点

■収益認識をめぐる法人税と消費税の改正点の相違
(従来)
・会計、法人税、消費税ともに収益は、原則として取引単位で計上
(収益認識基準)
・履行義務単位で計上、法人税もおおむね容認
・消費税は原則として取引単位で計上
⇒会計、法人税および消費税で収益計上が同一でない可能性あり
※例①商品販売と2年間の保守サービスを一体で契約した場合の収益計上
 会計及び法人税=当期11,000、翌期1,000
 消費税=当期12,000、翌期0
※例②自社ポイントの付与による収益計上
 会計及び法人税=当期9,000、※ポイント1,000を繰延べ
 消費税=当期10,000






13.新収益基準下における契約実務上のポイント

①ステップ2(履行義務の識別)でのポイント
⇒黙示の約束がある場合は、明示して契約書に盛り込む。
※履行義務(約束)には、取引慣行等も含まれるため、契約書から全ての約束を識別できるようにする。

⇒複数の約束を区分したくない場合は、それぞれの付随性・関連性を強化した文言とする。
※基準上、一つの契約の中であっても、ある約束が他の約束と区分して識別される場合は、収益の認識をそれぞれで認識することになるため、会社の戦略に応じて、契約内容をアレンジすることを検討する。
例:パソコンの販売契約の中には、パソコンを引渡す約束の他、保守の約束が含まれる。

②ステップ5(履行義務の充足)でのポイント
~収益を一時点で認識する場合~
⇒顧客がいつ資産に対する法的所有権を有するかを明示する
※資産に対する支配を顧客に移転した時点で収益を認識するため、法的所有権がいつ顧客に生じるか、契約に明示させることが必要となる。
※検収規定や買戻し規定を設ける場合は、特に注意が必要





14.収益認識基準対応で契約を見直す際の留意点

・契約見直しの検討ステップ
現在の契約内容を精査し、新収益認識基準での収益認識の考え方を整理する
→自社の希望する収益認識タイミングとならない場合、契約内容を検討する
→契約内容を変更する場合、相手方と契約変更を交渉する
→変更後の契約内容を経理担当者、営業担当者等と会計処理方法を周知・共有する

・検討の見直し時期
2021年4月1日以降に開始する事業年度からのため、約2年間の時間的猶予あり
→ただし、契約内容の変更は相手方を巻き込む話となり、簡単に変更できない可能性がある
→早期に自社の収益認識整理+希望する計上タイミングが整理し、交渉を進める必要がある







15インセンティブ報酬と期間の計算

■インセンティブ報酬の計算期間
(1)事前確定届出不要の譲渡制限付株式の交付時期
 決議の日から1月を経過する日まで
(2)業績連動給与に係る株式の交付期間
 業績連動指数の数値が確定した日の翌日から2月を経過する日まで
(3)税制適格ストックオプションに係る行使可能期間
 付与決議の日後2年を経過した日から、当該付与決議の日後10年を経過する日まで

■具体例(決議の日を6/28とする)
(1) 「…日から1月を経過する日まで」について
 ・「…日から」という言い回しの場合、起算点が午前零時でない限り、初日は算入されない
 ⇒6/28の翌日である6/29を起算日して1ヶ月の期間をカウント
 ・「経過する日(満了日)」は、7/28の午後12時となる
⇒月の途中から期間計算する場合、最後の月における起算日の応当日の前日をもって期間が満了するため

(2)「…日の翌日から2月を経過する日まで」について
 ・「翌日」は午前零時から始まるものと考えられるため、6/29を起算日とする
 ・「経過する日」は上記(1)と一緒
 ⇒2ヶ月を経過する日は、8月の応当日(8/29)の前日である8/28となる

(3)「日後2年を経過した日」「日後10年を経過する日まで」について
 ・「決議の日後」は「決議の日」(X1/6/28)は含まず、X1/6/29を起算日として2年をカウント
 ・「経過した日」については、「経過する日」の翌日を指す
 ⇒X1/6/29を起算日として2年を経過した日となるのは、経過する日(X3/6/28)の翌日であるX3/6/29となる






15.システムによる情報セキュリティ

1.ソフトウェア資産管理
・主な運用プロセスは、管理対象となるソフトウェアを選定し、それを管理台帳に登録、対象コンピューターやソフトウェアの紐付けを実施。
・ソフトウェアに関するライセンス情報なども同時に記録する。
・利用状態の把握が重要で、場合によってはこれらソフトウェアの利用申請や承認までできるシステムもあり。

2.デバイス管理
・USBメモリや外付けハードディスクドライブなどの外部記憶媒体、
タブレット、スマートフォンなど、Wi-Fiなどの無線ネットワークに接続して利用する端末などが対象。
・USBメモリなどは手軽である一方、簡単にデータを持ち運べたり、紛失の問題があり。
・情報漏洩を防止するため、システムとして多くはUSBメモリを端末に装着した段階で「どの端末がアクセスし、重要機密にアクセスしたか」がわかるようになっている。

3.ログ管理
・障害が発生した場合などに早期解決ができるだけではなく、「いつ・誰が・何を」したのかわかるようにすることが可能。
・そのため、システム障害が起きた場合にその問題点を発見することができるようになる。
・社内イントラだけでなく、外部サービスに対するインターネットに関しても、ログを保管し管理していくことが必要。

4.セキュリティ管理
・業務上関係のないソフトウェアを使用したり、サイトに書き込んだり、企業のセキュリティポリシーに反する行為が行われた場合にアラートを発信して知らせる機能がある。
・上場企業の多くが、不適切な操作に関するポリシー規約を作っており、場合によっては操作そのものを禁止することも可能。
・登録にない端末の接続や許可IPアドレス以外への通信行為、メール送信制限、指定ファイルの操作など、
社内のセキュリティを脅かす行為に関して管理できるようにする必要あり。


























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