2019年1月30日水曜日

1/18 勉強会:ファイナンスの手法 他

1.平成30年度末で期限到来する法人税関係の租税特別措置は?

主な項目は下記の通り。
■延長
・中小企業者等の法人税率の特例(800万円以下15%) ⇒2年延長
・研究開発税制 ⇒2年延長
・中小企業投資促進税制  ⇒2年延長
・特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却等 ⇒2年延長
・中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却等 ⇒2年延長

■廃止(平成31年3月末までで)
・中小企業等の貸倒引当金の特例(公益法人等や協同組合等の繰入限度額の割増措置)
 ※平成35年3月末までの間は経過措置あり








2.時価算定、平成33年3月末の適用も可能

■公開草案が近く開示
・現在の日本基準において、時価(公正価値)の開示基準は定められていない。
・国際基準との整合性の観点から公正価値についての算定方法をまとめた基準
・2019年1月中に公開草案が開示予定

■適用時期
・2021年3月末から早期適用が可能になる見通し(早期に国際基準との整合性を図りたい趣旨)




3.ムゲンエステート社裁判、雲行きに変化

■居住用建物に係る消費税の仕入税額控除に関する裁判
・販売用の賃貸マンションの仕入が課のみ仕入になるか、共通仕入になるか
・昨年9月時点では同社の敗訴が濃厚だった
・課税当局の消費税法の解釈の変更は租税平等主義に反する旨を主張し、弁論続行が決定
・以前に却下された「課税売上割合に準ずる割合」も別の方法で申請したところ承認
・準ずる割合を用いれば追徴税額は減少するが、同社は全額控除を求めて裁判続行






4.個人版事業承継税制での小規模宅地特例の適用は

■個人版事業承継税制
・個人事業者の集中的な事業承継を促すため後継者が事業用資産を先代から承継した際に課される
 贈与税、相続税の負担を10年間(H31,1/1~H40,12/31)の限定で大幅に軽減する制度

■小規模宅地の特例
・個人が相続または遺贈により取得した財産の内、事業に供されていた宅地等の一定の面積部分
について相続税の課税価格を最大で80%減額できる計算の特例
→相続開始前3年以内に贈与により取得した場合、相続時精算課税に係る贈与により取得した場合は対象外 

■上記2つの税制の適用は選択制
・事業の用に供している宅地の事業承継税制による納税猶予を受けた場合、特定事業用宅地等に係る小規模宅地特例は併用不可だが居住用宅地であれば併用が可能となる見通し







5.収益認識など、改正法人税基本通達の趣旨説明が公表

■概要
・平成29年度及び平成30年度の税制改正を踏まえた「法人税基本通達等の一部改正について」の趣旨説明のHPを平成30年12月26日に公表
・平成29年度改正では、役員給与等や中小企業経営強化税制等を解説
・平成30年度改正では、収益認識会計基準の導入に関して解説





6.老人ホームに入居中に自宅を相続した場合の小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(租税特別措置法第69条の4)の適用について

【事例】夫婦が亡くなるまで老人ホームに入居していたケース
・被相続人甲は亡くなるまで有料老人ホームに入居。介護保険法第19条≪市町村の認定≫第1項に規定する要介護認定を受けている。
・家屋を所有していた配偶者乙が亡くなった後、被相続人甲が相続している。
・本件家屋は被相続人甲が有料老人ホームに入居した後は、空家となっていた。

【特例を受ける要件】
■本件宅地等を居住の用に供していて、空家であったこと。
■被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、老人ホーム等に入所していた。
■被相続人が有料老人ホーム等に入居して居住の用に供されなくなった直前の利用状況で判断する。
⇒本件家屋及び本件宅地等を長男が相続する場合、特例の適用を受けることができる。




7.平成31年度税制改正大綱で明らかとなった「過大支払利子税制」の改正内容と実務への影響

・過大支払利子税制とは、所得に比して過大な利子の損金算入により法人の課税所得を圧縮させることを防止することを目的とした税制。

■改正の概要
・国外の関連者等への利子の支払いに加えて、国外の第三者への利子の支払いも対象に
・調整所得金額から配当等の益金不算入額等を除外
・損金算入限度額を調整所得金額の50%→20%へ
※調整所得金額は法人課税所得に減価償却費、国外関連者に関する純支払利子、益金不算入の受取配当等の額の加算等の調整を加えた金額

■実務への影響
・借入に関しては、適用対象となる利子等からは受領者において日本の課税所得となる利子等が除外された。新たに適用対象に含まれるのは、グループ外の外国法人、非居住者からの借入に対する支払利子等となる。
・社債に関しては、国内債についてみなし課税対象利子等の額により対象外支払利子等の額を算定する場合に、支払利子等の5%が適用対象になる。







8.国税庁照会 雇用契約の終了と従業者引継要件

■概要
・A社がB社を合併
・A社とB社には資本関係なし
(適格合併の要件として従業者の80%以上の引継が必要)
・合併前日においてB社従業員全員が雇用契約を終了し、退職金を支給、合併日付で
 A社と新たに雇用契約を締結

■照会内容
上記のように,被合併法人の雇用契約が合併法人に承継されていない場合でも,本件合併は
従業者引継要件を満たすと考えて良いか?

■回答
従業者引継要件は,おおむね80%以上に相当する数の者が「合併後に合併法人の業務に従事することが
見込まれていることのみ」規定している。

このことを踏まえれば,雇用契約が必ずしも合併法人に承継されることまでをその要件とはしていないものと考えられる。

よって,本件は被合併法人とその従業者との間の雇用契約は合併前日に終了するものの従業者の80%以上が新たな雇用契約を締結し
引き続き合併法人の業務に従事することが見込まれていることから、従業者引継要件を満たす。






医療費控除の明細書と医療費通知

H29年度分の所得税の確定申告より、
医療費控除の適用を受ける場合、2つのやり方で申告が可能となった。

■医療費控除の明細書の添付
・領収書の添付に代え、「医療費控除の明細書」の添付で申告可能
・領収書は提出不要となったが、5年間保存する必要あり

■医療費通知の添付
・健保組合等が発行する「医療費通知」の添付で申告可能。
・「医療費控除の明細書」の添付及び領収書の保存が不要

■併用
「医療費控除の明細書」と「医療費通知」を併用して申告することも可能







10.監査人の交代理由の開示

・監査人交代の際、交代理由を記載した臨時報告書の提出が求められる。
・2008年から2017年の交代959件のうち、687件が「任期満了」。
・監査人は毎年任期が満了するため、「任期満了」では理由にならない。
・「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」では、より踏み込んだ交代理由の記載を強制する仕組みを議論中。
・「監査報酬や会計処理に関する見解の相違」があった場合、具体的な対立点を記載するようが求められる、としている。





11.収益認識基準に対応した法人税基本通達のポイント

■収益の帰属時期
・法人税22条の2(平成30年度改正)
⇒原則:資産の販売等に係る目的物の引渡し、又は役務の提供の日
  容認:一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に準拠、かつ近接日

・棚卸資産の販売等に係る収益の帰属時期
⇒原則:引渡日
⇒引渡日の例示列挙として新たに「着荷日」「船積日」を追加(他の例示列挙は「出荷日」「検収日」)。
  逆に「検針等により販売数量を確認した日」は削除され、「近接日」として取り扱う。

・固定資産の譲渡に係る収益の帰属時期
⇒棚卸資産の販売等と同様、法人税法22条の2の適用対象となる。







12固定資産の減損に対する監査対応ポイント

■概要
・減損検討プロセスは非常に重要
・減損の評価ルールを整備し、将来CFの算定のもとになる情報については根拠を整理する
・監査法人と減損に関して、何をどこまで対応すべきか事前に協議しておくことが必要
■グルーピングの決定
・グル―ピングは非常に重要(原則、毎期継続)
・事業セグメントより大きくなることはないといわれている
・グルーピングの単位が大=減損の影響が広範囲
・監査においては、減損の判定単位を決めた根拠を明示しておくことが必要
■減損の兆候の識別
・監査においては、減損の兆候を社内で具体的にルール化しておくことが必要
 例:2期連続赤字であるが翌期が黒字見込みの場合、経営環境や社内の指標をもとに独自に減損の兆候判断指標とする場合等
■減損損失を認識するかどうかの判定
・将来キャッシュ・フローのベースである事業計画の妥当性や合理性が重要視される
・事業計画に関する根拠を明確にする必要がある
■減損損失の測定
・回収可能価額、特に使用価値の算定にあたり、監査法人と使用する割引率を協議する
・事後的に見積りで使用した事業計画について実績と比較する





13.収益認識基準~「契約」の意義から読み解く~

■前提
基準の適用範囲⇒顧客との「契約」から生じる収益

■「契約」とは
定義:法的な(A)権利及び義務を生じさせる当事者間における取り決め(B)(一部略)
⇒法的な概念に基づくことが前提(A)
⇒書面、口頭、取引慣行等により成立する(B)

■契約の5要件のうち「契約に経済的実質がある」とは
定義:企業の将来CF(C)のリスク、時期または金額が変動すると見込まれること
⇒契約に基づく義務の履行の対価が現金であることを前提

■契約」の5要件のうち「対価を回収する可能性が高い」とは
定義:回収できない可能性よりも回収できる可能性が高い場合
※(参考)IFRS・USGAAPとの可能性についての比較
IFRS(50%)<JGAAP(51%)<USGAAP(70%)





14.棚卸資産の評価に対する監査対応ポイント

収益性が低下した場合、棚卸資産の評価(帳簿価額)に反映する必要があるため、
会社は棚卸資産の評価ルールを作成する。

■棚卸資産評価の基礎
・評価単位
評価単位が大きくなると評価減が適切に判定できない可能性がある。
→原則品目単位で評価を実施する。
→投資の成果を適切に締めることができる場合はグルーピングして評価可
→複数のA製品専用部品がある場合、A製品として採算管理等をする場合はグルーピング可

・評価方法
棚卸資産の評価として、1-正味売却価額、2-滞留または処分見込み、3-再調達原価が挙げられている。

■監査対応ポイント
・棚卸資産評価資料の網羅性、正確性
評価資料と試算表の一致確認や棚卸資産集計プロセスを監査人と事前合意しておく

・正味売却価額の妥当性
時価がない場合、期末日前後の販売実績等を用いることが多い
→販売実績がない場合等、判定用いる売価が時価を反映していない可能性がある
→今後の販売見込等も含めて売価(時価)を決定する必要があり、監査人と事前合意をしておく

・事後的な確認
近年、時価として採用した売価が実績とどれだけ乖離していたか検討することを監査人から厳しく求められる
→見積と実績し、見積の精度を確認し、評価ルール見直しの可否を検討する必要がある。

■IFRSのポイント
原価と正味実現可能価額のいずれか低い額で評価
→正味実現可能価額=日本基準の正味売却価額
→2年超滞留した棚卸資産を50%評価減するといった規則的に評価減する方法は認められていない。









15会計上の見積もりの監査への対応ポイント

(1)会計上の見積もりのために使用した仮定の合理性、不確実性
・見積もりのために使用した仮定や会社としての判断根拠を明確にしておく必要がある。
・見積もり時に将来の事業計画等を使用する場合、過去の事業計画との実績の比較等による事業計画の実現性等も明確にしておく必要がある。

(2)会社としての見積もり方法の確立
・会計基準に記載さている条件等に沿って、可能な限りルールとして見積もり方法を具体的に定めておく必要がある。

(3)会計上の見積もりに使用するデータの性格性および網羅性
・見積もりにあたって使用したデータがそもそも正確かどうかを確認するとともに、必要なデータが全て網羅的に見積もりの範囲に含まれているかどうかを確認する必要がある。

(4)事後的な確認
・事後的な確認として、行った見積もりとその後の実績との比較を行い、見積もり実施時点にといて見積もった情報が実績とどれだけ乖離しているかを確認する必要がある。
・見積もりと実績に差異があったとしても、最善の見積もりを実施した場合、誤謬として過去の数値の訂正にはならない。

(5)外部の専門家の利用
・外部の専門家を利用したとしても、見積もりに対する責任は経営者にある。
⇒実際にどのような見積もりを行ったか等を会社が把握しておく必要がある。
 また、使用する外部の専門家の詳細を監査法人と事前に共有しておくことも重要。

(6)監査法人とのコミュニケーション
・監査法人と定期的にコミュニケーションをとることが重要。
⇒決算前には、継続監査において毎期求めてくるような事項は事前に準備しておく必要がある。
 (例)事業計画は年度の期末決算前には固まっていると思われるので、決算前に事業計画について、妥当性を示して合意を得ておく必要がある等





15.ファイナンスの手法

ファイナンス手法/持分比率の変動/資金調達/発行済株式数の増加
1.株主割当増資/×/○/○
2.第三者割当増資/○/○/○
3.株式分割/×/×/○
4.株式併合/×/×/×(減少)
5.株式無償割当/×/×/○
6.株式売買等による移動/○/×/×(変動なし)
7.新株予約権/権利行使前:×、権利行使後○/○/○
8.DES/○/×/○

1.株主割当増資
株主間の不利益がないため、上場前規制は特になし。

2.第三者割当増資
持分比率が変動するため、上場前規制あり(継続保有要件など)。

3.株式分割、4.株式併合
外部株主を入れる前に、実行されることが多い。

5.株式無償割当
3.株式分割との相違点は以下。
・株式分割は同一の種類の株式数が増加、株式無償割当は同一または異種の株式の交付が可能
・株式分割は自己株式も増加、株式無償割当は自己株式に割当が生じない。
・株式分割は自己株式の交付は生じない、株式無償割当は自己株式の交付が可能

8.DES(デット・エクイティ・スワップ)
金銭債権の現物出資
短期間に実行可能、債権者側も事業再生を目的として活用























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