2019年3月25日月曜日

3/1 勉強会:IFRS16号(不動産リース)の借手の会計処理-リース料 他

1.贈与税の納税猶予における相続時精算課税のメリットとデメリット

■相続時精算課税のメリット
・暦年課税を選択した場合、期限確定事由に該当すると、相続税より税率が高い贈与税の納付が必要。
・相続時精算課税を選択した場合、納付した贈与税額は贈与者の死亡時に相続税と精算できる。

■相続時精算課税のデメリット
・相続時精算課税のみなし相続規定の適用を受ける結果、
贈与時の価額で適用対象株式を相続したものとして相続税が課せられることにより、
事業承継税制の救済措置の効果が減殺される。

■平成31年度改正法案
相続時精算課税を選択すると不利になるデメリットが解消される予定。
(相続時精算課税のみなし相続規定を適用しないこととする調整規定がおかれる)




2.返戻率50%超の定期保険の取扱い

■節税保険の見直し
・3月1日までに全保険会社が実質的に販売を停止
⇒3月決算法人であっても現時点で提案を受けていない場合は駆け込みでの契約困難

■見直し対象
・全額損金される一定期間災害保障重視型定期保険のみならず、
・「ピーク時の解約返戻率が50%超の法人向け定期保険」が対象とされている

■見直し時期(国税庁)
・具体的には不明(近い将来見直されるということだけが確定)




3.資産保有型会社に該当も一定の弾力措置

・事業承継税制では、資産保有型会社に該当した場合、事業承継税制の納税猶予は取り消される
⇒31年度税制改正で「一定のやむを得ない事情」に該当する場合は、納税猶予は取り消されないように手当て

■資産保有型会社
・特定資産の価額の総額が、資産総額の70%以上を占める会社

■特定資産
・有価証券
・現に自ら使用していない不動産(第三者へ賃貸しているものも含む)
・ゴルフ会員権、絵画、貴金属等
・現預金
・代表者や同族関係者に対する貸付金、未収金

■一定のやむを得ない事情
・経営者死亡により多額の保険金が入った場合
・特定資産への設備投資をするために借り入れを行う場合
※6月以内に資産保有型会社等に該当しなくなることが条件




4.軽減税率制度について

■H31.10月からの税率(消費税/地方消費税)
・標準税率:10%=7.8%/2.2%  軽減税率:8%=6.24%/1.76%

■消費税軽減税率が適用されるもの「飲食料品」とは
・食品表示法に規定する食品(食品添加物を含むすべての食品)
⇒人の飲食用に供されるものは軽減税率が適用されるが、人の飲食用以外の用途で販売するものは適用されない

Q.生きた畜産物の販売 
A.食肉用の家畜は販売時点において人の飲食用に供されるものではないので10%。
Q.水産物の販売
A.人の飲食用に供される活魚は食品に該当し8%が適用されるが、観賞用は適用されず10%

Q.水の販売
A.人の飲食用に供されるミネラルウォーターは軽減税率が適用されるが、生活用水の販売は適用されない。
  尚、ウォーターサーバーレンタル代は資産の貸なので10%、使用する水は8%となる。
Q.氷の販売
A.かき氷など人の飲食用に供される氷は8%、保冷用氷のドライアイスは食品ではないので10%。

Q.賞味期限切れ食品の販売
A.賞味期限切れの食品は当然に人の飲食用に供されないため10%。




5.譲渡特例の不正で税理士業務の停止処分

【事例】
・税理士は戸建住宅とマンションを所有
・マンションを譲渡した際の譲渡特例適用し、1500万円を圧縮
・マンションの譲渡直税に住民票をマンションの所在地に異動、その住民票を添付して提出。
・税理士法(信用失墜行為の禁止)に違反し、過少申告行為が自己脱税に該当と判断され、業務停止処分を受けた。
・税理士は懲戒処分取消のほか、違法な処分により名誉等を侵害されたとして国に対して損害賠償責任を請求する訴訟を提起した。

【判決】
マンションを主たる住居に該当しない。また、特例の適用を受けることができないこと認識していたにもかかわらず、税理士が行った行為は仮装行為に当たると判断。
⇒妻が戸建住宅を主たる生活の拠点としている
⇒戸建住宅の電気使用量がマンションの約5倍
⇒マンションの購入から売却までの8年弱のうち約6年半は戸建住宅地に夫妻の住民票上の住所が置かれていた
⇒税理士登録上の住所等も戸建住宅の所在地とされていた



6.裁判事例で確認する土地の相続税評価額

■農地、生産緑地、宅地のそれぞれが評価単位に
・例としては納税者は土地が4つに分かれているが、その形状から切り分けて個別に評価するのは不当、一体として評価すべきと主張。
⇒裁判所は、土地の2つは生産緑地として一体利用されているが、土地の1つは生産緑地でない農地である。またもう1つの土地は宅地であり、一体として利用されていたとは認められないから一体として評価することはできない。

■駐車場として隣接も利用形態等が異なれば個別に評価
・例としては納税者は2つの土地を駐車場敷地として利用、フェンス等で境界も分けていないことから利用形態からも一体として評価するべきと主張。
⇒裁判所は2つの土地はいずれも雑種地で、駐車場として利用されているものの経営者及び利用形態が異なる(1つの土地は駐車場利用者に月極駐車場として利用させている、もう1つは会社に土地を貸し付け、会社側で設備を整え駐車場経営を行っている)ことから同一目的に供されている雑種地とは言えず、個別に評価するのが相当。





7.所得税法違反 告発例

■私設ファンクラブを運営する個人の事例
・告発事実の要旨
平成28年分の所得が約1億2,100万円で、これに対する所得税が4,900万円で
あったにも関わらず、所得税の確定申告書を提出しないで法定納期限を徒過させ、
同年の所得税を免れた(単純無申告ほ脱犯⇒5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金またはその併科)

■飲食店を営む法人及び経営者の事例
・告発事実の要旨
従業員の給与にかかる源泉徴収税額6,400万円を徴収していながら納付してなかった。
(源泉所得税不納付犯⇒10年以下の懲役若しく100万円以下の罰金又はその併科)
また、売上の一部を除外するほか、課税仕入れにならない給料手当を課税仕入れとなる
外注費に科目仮装し消費税3,600万円を免れた(過少申告ほ脱犯)



8.相続税:特別寄与者の支払う相続税は2割加算の対象

■事例
・父の療養介護等を息子の妻が無償で行っていた。息子は特に行わず。
・父が死亡、息子が相続人、息子の妻は相続人ではない
・父の死亡後、息子の妻が介護等に伴う労働の対価を請求したい

■2019年度改正
・現行:息子の妻は相続人でないため、相続財産の分与を受けられない
・改正:相続人以外の親族(息子の妻)が無償で介護等を行っていた場合、
その労働の対価として、相続人(息子)へ金銭の請求が可能
⇒2019/7/1以後の相続より適用

■労働の対価の相続税の取扱い
・相続人:支払った額を相続税の課税価格から控除することが可能
・相続人以外の親族:支払いを受けた額を取得したものとみなす。
⇒近しい親族ではないため相続税額の2割加算の対象





自己株式取得に関する開示

・自己株式の取得
 → 金額に関わらず、「決定事実」として適時開示が必要。

・自己株式の処分
 → 1億円以上の場合に適時開示

・開示資料の記載する事項
 → 法令上の根拠条文、取得の理由、自己株式の内容、取得期間、その他投資家が必要とする事項

・2月だけでも、自己株式の取得に関する適時開示は300件以上。

・2月6日にはソフトバンクグループが6,000億円を上限とする自己株式取得をリリース。
「株主還元の充実のため」




10.基本財務諸表プロジェクトの最近の動向

■概要
・IASBで、基本財務諸表(財務業績計算書)にどのような小計を設けるべきか、議論されている。
・小計の種類(今回の焦点は①)
①IFRS基準で定義された小計⇒比較可能性
②経営者により定義された小計⇒柔軟性

■ボトムアップ・アプローチによる小計の定義
・小計そのものを定義するのではなく、各区分の収益・費用を定義した上で純損益に加減算し、各小計を定義する。
・純損益と営業利益の間の収益・費用は以下の3つに区分される。
 ①財務収益・費用
 ②投資から生じる収益・費用
 ③不可分の持分法投資損益

<ひな形の例示>
売上高
 売上原価
売上総利益
 販管費
営業利益
 ③不可分の持分法投資損益
営業利益並びに不可分の持分法投資損益
 ②投資から生じる収益・費用
財務及び法人所得税前利益
 ①財務収益・費用
税前利益
 税金費用
当期純利益




11.ポイント制度の税務処理上の留意点
■自己発行ポイントの税務処理
・会計上「引当金による取扱い」のケース
⇒引当金処理時に加算調整
 ポイント行使時に引当金を取り崩す場合に減算

・会計上「契約負債として認識する取扱い」のケース
⇒会計上はポイント付与に伴う対価部分を収益認識しない
⇒税務上も益金計上不要のため企業側にメリットあり
 ポイント使用時に益金処理
 未行使の場合は、付与から10年経過日の属する事業年度に益金算入

⇒消費税はグロス処理(ポイント分を含めた売上に対して課税)




12ポイント制度の会計処理

■ポイントの会計処理
・別個の履行義務として識別するもの
→対価の一部をポイントにも配分し、ポイントが使用されるか失効するまで繰り延べる。
→現行実務と比較して、収益の一部の認識時点が後ろ倒しになる。
・別個の履行義務として識別しないもの
→別個の履行義務でないものは、引当金として対応する必要がある。

■別個の履行義務としての判断基準
以下の2点を満たす場合には、別個の履行義務となる。
・顧客が企業と契約を締結しなければ得られないもの
・顧客に重要な権利を提供するもの





13.連結決算日と子会社の決算日が異なる場合の連結会社間取引の相殺消去

連結子会社の決算日が連結決算日と異なる場合には、原則として連結子会社は、連結決算日に正規の決算に準ずる合理的な手続きにより決算を行う必要がある。

■連結子会社の決算日と連結決算日の差異が3ヶ月を超えない場合
・連結子会社の正規の決算を基礎として連結決算を行うことができる。
・連結会社間の取引がある場合、相殺消去時に消去差額が生じてしまうため、会計記録の不一致を整理が必要。
 ⇒連結会社間の取引高および債権債務については、連結財務諸表上重要な差異を解消した後に相殺消去を行う。



14.暴排チェック

・IPO準備の一環として、取引先との契約書において、「反社会的勢力の排除」の記載があるかの確認が必要。
・記載がない先については、記載ありの契約書を締結するか、覚書を締結する。
・ただし、相手先によっては、業種の特性上の理由により締結できない先もある。
・その場合には理由を聞いて、社内でドキュメントとして残しておく。
(例)金融機関の場合、口座開設時において反社かどうかをその場で判明することは困難。
開設後に判明することが多いが、すぐに口座を凍結することはできない。
そのため、金融機関との契約書においては、契約の種類によるが、「反社会的勢力の排除」を記載できないことが多い。






15IFRS16号(不動産リース)の借手の会計処理-リース料

・借手はリース料の現在価値でリース負債を測定
→リース料の内容整理が必要となる

・固定リース料
実質的な固定リース料も含まれる
→開始日以後のある時点で固定化される場合、実質的な固定リース料となった時点でリース負債を再測定する
→①契約1~4年までは売上の5%を変動家賃として支払
②5年目以降は売上の5%を変動家賃(ただし、4年間の平均リース料を最低額とする)場合
→①の契約では固定リース料はないため、リース負債の認識はしない。
→②の場合、4年間の平均リース料は実質的な固定リース料になるため、リース負債を認識する

・変動リース料
①指数またはレートに基づいて算定されるものと②売上や資産の使用状況に応じて算定されるものが想定される
→①はリース負債を認識し、指数変動等で前提が変更された場合はリース負債を再測定
→消費者物価指数やベンチマーク金利などに連動するものであり、該当契約は少ないと想定される
→②はリース負債として計上しない。
→契約時点では、借手は当該支払を回避することが可能であり、支払義務がないことから負債計上しない
→発生時に費用処理。小売店やホテル店舗等、テナントとして入っている場合に設定されることが多いと想定される。

















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