2019年3月25日月曜日

3/22 勉強会:IFRS導入プロジェクトの進め方 他

1.継続企業の前提の判断規準が新規テーマ

⇒財務会計基準機構の基準諮問会議が、継続企業の前提の判断規準について、
企業会計基準委員会に検討すべき新規テーマとするよう提言することを決定した。

・昨年7月に公表された改訂監査基準では、監査報告書の「経営者及び監査役等の責任」区分において、
経営者は継続企業の前提に関する評価を行い必要な開示を行う責任があることを新たに記載することを求めている。

・日本の会計基準において、経営者に継続企業の前提に基づき財務諸表を作成することについて評価する責任があり、
どのような場合に継続企業が前提として財務諸表を作成すべきかについて明文規定がないため、
会計基準を開発することについて有用性が認められると判断した。






2.国際会計基準と解釈指針

■用語の整理
・国際会計基準(IAS)と国際財務報告基準(IFRS)
⇒設定時期・設定主体の違いだけで優先順位はなし。今後はIFRSのみが作成。IASは増えない。
・国際会計基準(IAS)と同解釈指針(SIC)
・国際財務報告基準(IFRS)と同解釈指針(IFRIC)
⇒最近公表のIFRSは基準書+結論の根拠で構成、記載内容が充実している。
⇒IFRIC(解釈指針)は、基準書の中に盛り込まれてしまうケースが多いため、多くが廃止されている



3.仕入先が価格増拒否でも"買い叩き"か

■改正転嫁対策ガイドライン
取引先からの対価引上げの要請がないことを理由として「対価を据え置く」場合も「買い叩き」に該当

■問題点
・企業が個人の地主から駐車場を税込5万円で借りている
・10月以降、税込50,926円に価格の引き上げを申し入れ
・地主が端数を面倒がり、価格の変更に応じない
⇒ガイドラインによると、この場合も「買い叩き」に該当するように読める



4.軽減税率対策補助金、対応レジの導入期限が迫る

■9月30日までに導入し、12月16日までに申請
補助率は、2/3以内とされていたが、3/4以内に拡充。
早めにレジを導入したものの、改修が必要になった場合は再度補助金の申請が可能。

■軽減税率対象の補助金はA~C型に分かれる
A型:小売業におけるBtoC向けのレジ導入、機器の入替等。
B型:電子受発注システムの改修など 卸売業者等BtoB向けのもの
C型:区分記載請求書等へのシステム等の導入費用





5.年金振込後の預金差押えを適法と判断

■事例
・年金生活者である納税者は固定資産税2,000円を滞納
・前橋市はH28年4月15日に納税者名義の預金残高約9万円のうち2,000円の払戻請求権(預金債権)の差押処分を行った。
・同日14日の預金残高は465円だったが、年金が降込まれたことにより約9万円となった。
・納税者は、差押処分は年金の差押えを禁止した国税徴収法の趣旨に実質的に反する違法なものとして取り消しを求めた。

■判決
・前橋市は直近に確認したH27年6月までの納税者名義預金の取引履歴をみると預金残高が常に2,000円(滞納額)を下回っていたわけでは必ずしもないから、差押処分の直前に預金残高が2,000円を下回っていることを認識していたとまで言えない。
・預金残高2,000円が差し押さえられたからといって、その額が直ちに納税者が困窮に陥るおそれがある額であったということはできない。
⇒納税者の請求を棄却。



6.海外取引調査で着目、アンダー・オーバーバリュー

■アンダーバリュー
真実の取引価額より低い価額で税関へ申告して輸出(輸入)を行う取引。例えば、真実の取引価額100のところ税関への申告は70というように過小額で輸出したように装うこと。
主に輸出相手先側で高い関税を課されることを回避するために行われることがある。

■オーバーバリュー
真実の取引価額よりも高い価額で税関へ申告して輸出(輸入)を行う取引。例えば、日本の輸入法人が海外の取引相手から輸入する際に真実の取引価額100のところ、税関への申告は130という過大価額で輸入したように装うこと。
主に特定品目の輸入関税(差額関税制度)を回避する目的で行われることがある。




7.消費税:工事進行基準の適用

■長期大規模工事の工事進行基準適用
法人税:強制(請負対価10億円以上の工事など)
消費税:任意適用

■新税率との関係(経過措置あり)
前提:契約は2019年9月30日以前、完成引渡しは同年10月1日以後

(1)工事完成基準による場合
10月1日以後売上計上のため10%
(2)工事進行基準による場合
9月30日以前の売上計上分:8%
10月1日以後の売上計上分:10%

なお、同経過措置を適用した場合には,相手方に対して,経過措置を適用した旨や経過措置の適用を受けた
部分の対価の額を書面で通知することが必要





8.消費税の経過措置:3月までの契約で税理士報酬も対象

・月額顧問報酬 ⇒ 経過措置の対象外
・申告書作成報酬 ⇒ 経過措置の対象
・上記が区分されていない ⇒ 経過措置の対象外

■月額顧問報酬
役務提供時期が
・9月分まで ⇒ 8%
・10月分から ⇒ 10%

■申告書作成報酬、スポット業務
役務提供時期が
・9月分まで ⇒ 8%
・10月分から ⇒ 10%
ただし、2019/3/31以前に契約した分で10月以降納品は8%が適用される
※自動更新も同様

(例)12月決算法人、3月中に契約期間の自動更新
⇒2019年12月決算の申告書作成報酬は8%で請求すること。

■経過措置の対象となる主な取引
・乗車券や入場料金の販売取引
・電気・ガス・水道・通信サービス料金の継続供給取引
・工事や製造、ソフトウエア等の請負契約
・賃貸借契約やリース契約
・冠婚葬祭に関するサービスの売買取引
・書籍や物品の予約販売に関する取引
・通信販売による取引
・特定新聞の販売取引
・有料老人ホームに関する介護サービスの提供取引
・家電リサイクルの再商品化に関する取引
※5%⇒8%に増税した際の経過措置とほぼ変わらず。





収益認識基準 返金が不要な顧客からの支払い

たとえば、スポーツクラブの入会手数料はいつ収益認識するか?

(会計)
・基本的には「将来の財またはサービスに対する前払いと考えられ、当該財またはサービスが提供された時に収益を認識する」
・入会時に教材やスポーツ用品を支給するようなケースでは、入会時に収益認識するが、
 それ以外の場合は、たとえば年間契約であれば1年間にわたって収益認識する。

(法人税)
・原則は入会時に収益認識。
・「加入の継続期間、利用する頻度」等、対応する収益期間を明確に説明できる場合は、その期間に亘って収益認識することが認められる。

(消費税)
・支払いを受けた時点で認識。





10.ASBJが「すべてのリース資産・負債を認識する基準」開発を提案

・ASBJ(企業会計基準委員会)は3月8日、「すべてのリース資産・負債を認識する会計基準の開発に着手する」旨の提案を行った。
⇒「IFRS16号」、「US-GAAPTopic 842」では原則すべてのリース資産・負債を認識する。
⇒これらとの国際的な比較可能性、財務諸表利用者のニーズ、J-GAAPに対する信頼性を確保するため。

・基本的には借手の会計処理を改正する方向(下記を中心に審議)。
 ①サービスを含むリースに関して対象とする取引の範囲
 ②延長オプションがある場合の比較可能性を担保する方策
 ③重要性に関する定め
 ④連結財務諸表と単体財務諸表の関係

・一部、貸手の会計処理についても検討
 ①収益認識会計基準との整合性
 ②IFRS16号等において改正された、借手・貸手に共通のもの





11.IFRS導入プロジェクトの進め方

IFRS導入プロジェクトは長期間に渡るため、いくつかのフェーズにわけて進める
⇛各社の導入目的や事業環境を考慮した内容で進めることが重要
⇛経理部門以外も巻き込むため、プロジェクトの全体管理、関係者間のコミュニケーションも重要

2010年前後に将来の強制適用を見据えてIFRS導入準備を進めた会社が多かった
⇛改めて導入プロジェクトを進める場合は導入目的、基本方針を明確にする
⇛プロジェクト中止時と現時点では事業環境やIFRSの会計基準も変化しているため、再度調査することが必要
⇛リースは2010年前後と比べると大幅に改訂されており、過去の判断が適切ではなくなっているケースもありうる
⇛現状とIFRSの差異洗い出しが重要となる

フェーズ1:影響度調査
現行会計処理とIFRSとの差異が財務数値、業務プロセス、ITに与える影響度合いを把握する
⇛業務プロセスやITに与える影響が大きい場合、経理以外の協力が不可欠となる
⇛影響を受ける部署の範囲や対応に要する時間を考慮して課題の優先付けをしていく
⇛影響が多岐に渡る場合、IFRS導入の社内コンセンサスを得ることもが重要














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