2019年3月25日月曜日

3/15 勉強会:軽減税率 店内飲食の一部持ち帰りの判断方法の続報 他

1.減損損失するか否かの見積り開示も

・ASBJは、見積りの不確実性の発生要因の開示の充実に向けて会計基準開発の検討を行っている。
・会計上の見積りの範囲に、不確実性の程度が高い会計上の見積りも含めるかが論点となる。

■資産及び負債や収益及び費用等をF/Sに計上するか否かを判断する際に行う見積り
Ex.固定資産について減損の兆候があるものの、認識の判定の結果、減損損失を計上しないと判断した場合
⇒F/S利用者のニーズがあると考えられることから、当該見積りが含まれる旨を明確化する方向で検討。

■注記を作成する過程において行われる見積り
Ex.金融商品や賃貸等不動産の時価に関する開示を作成する際において行われる見積り
⇒F/Sに影響を及ぼさないことから、当該見積りは含めない方向で検討。





2.米国会計基準を適用している日本企業(のれんと耐用年数を確定できない無形資産の計上と減損テスト

■米国基準を適用して連結財務諸表を作成している日本企業
・2018年12月末時点で13社(うち9社が時価総額トップ100に入っている)

■非償却となる無形資産
・のれん
・耐用年数を確定できない無形資産(商標権等)

■開示:減損テストの方法の事例
(1) のれん
・定性分析により、公正価値が帳簿価額を下回っている可能性が50%超である場合は定量判断
・定量判断は2つのステップで判断
・1.報告単位全体で、公正価値と帳簿価額とを比較し、潜在的な減損の把握
・2.営業権の暗示された公正価値と帳簿価額とを比較し、公正価値が下回る場合は公正価値まで評価減

(2) 耐用年数を確定できない無形資産
・定性分析により、減損している可能性が50%超である場合は定量判断
・定量分析:無形資産簿価と公正価値を比較して、公正価値が下回る場合は公正価値まで評価減



3.理事長への貸付金処理めぐり法人敗訴

■事例
・税務調査で指摘された使途不明金を理事長に対する貸付金として計上
・貸付金に係る金銭消費賃借契約は締結済
・会社と理事長間で退職慰労金を貸付金の返済に充てることが同意(契約書に記載なし)
・退職金規程を作成後、理事長は現金を受領し、それを貸付金の返済として会社に送金

■争点
・税務署は現金支給が理事長の給与等に該当するとして、源泉税の支払いを命じる
・会社は、現金支給は退職慰労金を担保とした貸付けのため、給与所得ではないと主張

■判決
・給与所得(臨時賞与)に該当し、源泉税の納付義務あり
(理由)
・会社と理事長間で「退職慰労金を担保として貸付けをする」旨の契約がない
・退職慰労金の他に理事長には貸付金の返済をする資力がなかった
⇒返済のために退職金の前払いを受けたと考えるのが適当





4.個人番号照会スキームが今国会で実現へ

■31年度税制改正
マイナンバー法:行政手続きにおける、特定の個人を識別するための番号の利用に関する法律
住民基本台帳法(住基法):外国人住民にも住民票が作成しやすくするために改正
⇒上記の改正案の成立を前提に「ほふり」が本人からではなく直接、住基ネットから個人番号を提供できるようにする仕組みが導入される予定。

■税務署も個人番号収集可能に
前述の改正に合わせ、税務当局もほふりを経由して個人番号を共有する事が出来るようになる。
しかしながら、「税制改正」と「マイナンバー法&住基法の改正」は別物である為、今国会での成立が危ぶまれていたが、マイナンバー法及び住基法の改正は、今回の税制改正に組み込まれており、成立すれば個人番号照会スキームが完成する。

施行開始日:平成32年4月1日より





5.全商法の犯則調査でもサーバ等を差押え

・国税通則法や刑事訴訟法等と同様、証拠収集・分析手続きに関する規定を導入。
⇒金融商品取引法には同様の規定はなし
⇒電磁的記録等(サーバ等)の必要なデータの確実な取得等のため

具体的には・・・・
①電磁的記録に係る差押えの執行方法柔軟化
②パソコン接続サーバ保管の自己作成データ等の差押え
③電磁的記録保管者への記録命令付の差押え
④差押え等を受ける者への協力要請
⑤通信履歴の電磁的記録の保全要請
⑥館手等の嘱託の木手を導入



6.未払役員報酬の解決金に係る源泉税の求償権行使を認めず

■概要
・未払役員報酬請求訴訟における和解により支払った解決金について、税務署から役員給与と認定された上で源泉所得税の納税告知処分を受けた原告会社が被告元役員に対して、所得税法規定による求償金の支払いを求めた裁判。

■判決
・東京地裁は原告会社の請求を棄却した。
・理由としては和解に弁護士が訴訟代理人として関与し、税務処理全般に関与する税理士も当然存在していたことから解決金という名目にとらわれず、実質的に賞与と認定される可能性があることは予期しうると指摘。また、別件訴訟における和解は内容的に解決金の支払いをもって役員報酬に係る一連の紛争を終局的に解決するものとしてその後の一切の清算はしないという双方の合理的な意思が前提になっていたものというべきであると指摘した。




7.簡易課税:事後選択特例

■提出期限
(原則)
適用を受けようとする課税期間の初日の前日
(軽減税率導入にともなう特例)
2019年10月1日から2020年9月30日までの日の属する課税期間においては
その期間中に提出すれば簡易課税の適用が受けられる

⇒この特例はあくまでも軽減税率制度導入後1年間に限った時限措置
⇒簡易課税選択届出書の事後選択特例の適用を受けようとする事業者は、
本年7月1日からその届出書の提出が可能





8.軽減税率 店内飲食の一部持ち帰りの判断方法の続報

2019年10月1日より消費税が10%へ
飲食料品等の販売は、
・店内飲食(外食) ⇒ 標準税率の10%
・自宅に持ち帰る ⇒ 軽減税率8%

消費税の納税義務は、「譲渡等をした時」に確定する。
⇒販売時の目的で標準税率か軽減税率か決まる。
⇒販売後に、消費者の目的が変わっても税率変更はされない

■適用税率の判断基準は
一取引ごとに判断する。
例1 A,B,Cを個別に販売 ⇒ 個々で適用税率を判定
例2 A,B,Cをセットで販売 ⇒ 全体で適用税率を判定

ただし、セット販売時に顧客が一部を店内で飲食したいと意思表示があった場合、
純粋な持ち帰りとは異なるので、標準税率(10%)が適用される

■例
・たこ焼き屋で8個入りのたこ焼きを購入
・購入時に1個だけ店内で食べる
⇒店内飲食のため標準税率(10%)が適用
⇒たとえ残りの7個を持ち帰るとしても、
持ち帰り分と店内飲食分の個数の利率などで判断しない





株式の保有状況の改正(開示府令)

・2019年3月期から株式の保有状況について下記を開示。
(1)政策保有株式の保有の合理性の検証方法
(2)個別開示の銘柄数 30 ⇒ 60

・(1)の詳細
⇒ 保有目的、保有の効果、取締役会等における検証の内容
⇒ 純投資と政策投資の区分の基準や考え方





10.監査人の交代 3年連続の増加

・2018年の監査人交代件数は175件
⇒対象は2018年1月1日~2018年12月31日までに監査人を交代した全上場会社

・監査法人の合併等の除外事項を除くと114件(3年連続の増加)
⇒業種別では下記の通り(()内は全体に占める割合)。
 ①卸売業     15件(13.2%)
 ②情報・通信業 14件(12.3%)
 ③サービス業   14件(12.3%)

・東証一部、JASDAQでの交代が多く、大手監査法人から中小監査法人への移行も多い。
⇒市場別では下記の通り(()内は全体に占める割合)。
 ①東証一部     37件(32.5%)
 ②JASDAQ      30件(26.3%)
 ③マザーズ     20件(17.5%)

⇒2018年7月に太陽有限責任監査法人と優生監査法人が合併した影響から、東証一部での交代が多かった。

・主な交代理由は「任期満了」が大半。
⇒より具体的に記載している事例では、「監査期間の長期化」、「監査報酬等の契約の折り合いが合わず」というケースが多い。

・東証は2019年1月に「会社情報適時開示ガイドブック」を改訂。
⇒監査人の異動理由について、実質的な内容を開示することが求められている。





11.事業報告等と有報の一体的開示のポイント

■H30/12/28に関係省庁より、一体的開示にあたっての記載例が2つ公表
・現在の有価証券報告書をベースにしたものが1つ、事業報告書をベースにしたものが1つ
⇒有価証券報告書をベースにしたものが主流になる見込み
■記載例(有価証券報告書ベース)
・有報の項目に事業報告等のみで記載していた内容を追加した有価証券報告書を作成
⇒総会提出の事業報告等としても有報としても使用可能なもの
・株主総会招集通知の発送期限までに開示
 ※有報の一部事項が完了しない場合、一旦事業報告等として開示し、別途有報の全項目を満たした上で有報として開示することも考えられる

(有報へ追加すべきと考えられる主な事項)
・経営指標等の「営業利益」
・経営成績等の状況の概要において、「主要な借入先の状況」、「資金調達手段」
・役員の状況へ「会社役員の担当や重要な兼職」
・コーポレートガバナンスの「内部統制の運用状況」、「社外役員の主な活動状況」、「社外取締役及び社外監査役の報酬を区分して記載」




12経過措置の適用時やIFRS任意適用時の新収益基準上のポイント

■(経過措置)遡及適用しなくてもOK、ただし注記が必要
①新収益基準の適用=会計方針の変更なので、原則として遡及適用が必要
②経過措置として、遡及適用した影響額を期首利益剰余金に加減することでもOK
③その場合、比較情報について期間比較可能性が確保するため、変更前の会計方針によった場合の、当期における影響額の注記が必要

■(IFRS)個別上は新基準、連結上はIFRS(15号)が適用されるため、基準差に注意
例1:金融商品の取得時等に受取る手数料⇒IFRS上は適用範囲、新基準上は範囲外
例2:リース判別の詳細なガイダンス⇒IFRS上はあり、新基準上はなし※
※リース基準が適用されるリース取引を、各収益基準の適用範囲から除外することは共通





13.改正税効果会計基準の会計処理ポイント

■会計処理の変更点
・個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異の取扱い
→連結財務諸表における子会社株式等に対する投資に係る将来加算一時差異の取扱いに合わせ、繰延税金負債を計上する取扱いに見直された。

・(分類1)に該当する企業における繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い
→「原則として回収可能性がある」と、「原則」が追加されている。
→将来において税務上の損金に算入される蓋然性が低いときに、当該子会社株式の評価損に係る繰延税金資産の回収可能性はないと判断することも考えられることを明確にするもの

■開示
・流動固定分類を行わず、繰延税金資産は投資その他の資産の区分に表示し、繰延税金負債は固定負債の区分に表示することに変更

■注記事項の追加
・評価性引当額の内訳に関する情報
→内訳に関する数値情報、および定性的な情報の開示
・税務上の繰越欠損金に関する情報
→繰越期限別の数値情報、定性的な情報の開示
・連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における注記事項



14.税率差異分析の考え方

有価証券報告書を作成する際、法定実効税率と税効果会計適用後の法人税等の負担率との間に重要な差異がある時には、当該差異の原因となった主要な項目別の内訳を注記しなければならない。

■税率差異が出る原因となる項目の例
①永久差異
⇒税効果会計の調整対象とならない。
②住民税均等割
⇒均等割は実効税率に関係なく均等にかかる税金であり、税効果会計で調整できない項目。
③評価性引当金
⇒スケジューリング不能であり、一時差異だが繰延税金資産を計上しないため。
④適用している実効税率の違い
⇒税率差異の注記において基準とする法定実効税率は当期の法定実効税率。
 一方、税効果会計においては、一時差異が解消・消滅する将来の法定実効税率を使用するため。
⑤親会社と子会社の実効税率が違う
⇒親会社が外形標準課税適用会社だが、子会社は適用されない場合等
⑥連結決算でののれん償却額
⇒連結決算上は、費用で計上されるが、税金が減っていないということになるため。
⑦特別控除
⇒均等割りと同様に、法人税の課税所得と連動しないため。

上記等の税率差異が出る項目を網羅的に収集するためには、法人税等の総勘定元帳を精査し、期末の税金計算以外で計上されている項目を洗い出すことが有用。





15子会社上場時の親会社からの独立性

・上場審査に関する取扱い
子会社上場においては、通常の審査項目に加えて、親会社からの独立性確保の状況について、
以下の4項目に適合しているか否かを確認する。

確認趣旨としては、親会社の利益を優先させ、
申請会社(子会社)の株主(親会社以外の株主)の利益が阻害される
危険性がないかを確認するため。

1.申請会社または親会社等が一方の不利益となる取引行為を強制し、または誘引していないこと
2.申請会社と親会社等の間で、通常の取引条件と著しく異なる条件で、営業取引を行っていないこと
3.申請会社が事実上、親会社等の一部門と認められないこと
⇒営業活動を申請会社自ら行っているか、事業活動が親会社等に大きく依存していないか
4.親会社等の企業内容開示の状況
⇒親会社等が未上場会社である場合、「親会社等状況報告書(親会社等のF/Sや事業報告)」等の開示が求められる。




16IFRSの特徴

■考え方
IFRS:原理・原則を明らかにし、例外規定は極力認めていない。解釈や運用は企業判断による。
⇛原則主義。企業がIFRSの原理・原則を踏まえた上で判断していく必要があり、採用根拠や判断基準を合理的に説明する必要がある。
日本基準:具体的な規定や数値基準を設けている
⇛細則主義。企業が実務対応報告や適用指針などのガイダンスにそって判断していくので、会計処理の説明責任は小さい

■重視する指標
IFRS:財産価値(純資産)
⇛期首から期末までに増加した財産価値を重視(資産・負債アプローチ)し、包括利益を重視。BS重視
⇛時価が重視されるため、公正価値アプローチが採用されている
日本基準:純利益
⇛収益から費用を差し引いた純利益を重視。PL重視
⇛取得原価主義が考え方の根本にあるが、時価評価概念も取り入れらており、IFRSに近づいている










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