2019年9月2日月曜日

8/23 勉強会:完全子会社の合併による繰越欠損金の引継ぎ 他

1.地裁判決で問われる個別否認規定の意義

・東京地裁は,自動車部品の製造・販売を行う会社(原告)と国との間で, 法人税法132条の2 (組織再編成に係る行為又は計算の否認)の適用の是非を巡り争われた事件について,原告の請求を棄却。
・通常想定されない組織再編成の手順や方法に基づくもの・不自然なものであること等に加えて,未処理欠損金の引継ぎによる税負担の減少以外に合併を行うことの合理的な理由となる事業目的等もないため,組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図したもので,未処理欠損金の引継ぎ規定の趣旨や目的を逸脱する態様であると認定。

⇒「法人の行為・計算が不自然」「租税回避以外に合理的な理由となる事業目的等が存在しない場合」の要件について懸念の意見がある。






2.純資産価額方式を適用する場合における決算日

■相続税評価(純資産価額方式)

■いつの資産負債をベースに算定するか
・直前期末日の【税務上の資産負債】
・税務上の資産負債差額から法人税等相当額(左記差額の37%)を差し引いた額=相続税評価上の純資産価額

■留意点
・直前期末の資産負債による計算が認められない場合の純資産価額の計算
⇒直前期末から課税時期までに資産負債に著しい増減があるケース:課税時期の資産負債により計算
(仮決算を組むのが原則)
・直後決算の数値によることも事実上一定の条件で可能
⇒課税時期が直後期末に非常に近く、課税時期から直後期末までに著しく増減しないと認められる場合




3.商品売買仲介めぐり仕入税額控除認めず

■香港移住の個人事業主が、海外事業者から委託により国内事業者から買い付けたとする本件取引が課税仕入れに該当するか否かが問題となった税務訴訟。

【判決】
個人事業者と国内事業者との間に売買契約はなく、納税者が売買契約の当事者とは認められない。
⇒国内事業者と海外事業者との間で売買契約等を締結している。
⇒発注する商品の内容や数量の決定に関与しているのは海外事業者であり、商品代金の決定に個人事業主の意思の介在はなくそ実質は立替払いである。



4.軽減税率QA改訂で一体資産の取扱いの疑問を解消

■一体資産と一括譲渡
・一体資産
食品と食品以外の資産があらかじめ一体となっている資産。全体が軽減税率。
・一括譲渡
課税関係の異なる2以上の資産を同一の者に同時に譲渡すること。それぞれの税率適用。

■軽減税率の該当有無
Ex)ファストフード
・ハンバーガー、ドリンク450円、おもちゃ50円の場合
⇒450円軽減税率、50円標準税率
・セット価格500円(単品ハンバーガー300円、ドリンク250円)、おもちゃ0円
⇒全体の500円に軽減税率。ただし、レシートに0円の表示が必要。

他にも販売促進を目的に非売品のおもちゃをつけたペットボトル飲料等おもちゃを非売品(0円)にすることで、全体を軽減税率の対象にできる。




5.改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処
理に関する当面の取扱い」の概要


■概要
2018年に公表された実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」の改正において、2006年から2018年の間に新規に公表又は改正されたIFRSまたは米国会計基準を対象に修正項目として追加する項目の有無について検討を行った。
一方でIFRS第16号、ASC842のリースについて検討の対象から除かれていた。

■論点
実務対応報告第18号にリースの修正項目を追加するか

■結論
リースは実務対応報告第18号においては新たな修正項目の追加は行わないこととした。




6.部分完成基準と課税売上げ

■部分完成基準
建設工事等について次の(1)(2)のような事実がある場合、
<完成した部分の引渡しを行った日>に収益計上を行う
(1)一の契約により同種の建設工事等を多量に請け負ったような場合で
その引渡し量にしたがって工事代金を収入する旨の特約等があるとき
(2)その建設工事等の一部が完成し、その完成した部分を引渡した都度
その割合に応じて工事代金を収入する旨の特約等があるとき

■注意点
部分完成基準は<強制適用>であり、選択適用はできない

■消費税率
経過措置がない場合、9/30までの引渡し分は8%、10/1以降引渡し分は10%の
税率が適用される




7.消費税:自社ポイントの利用

自社でのみ利用可能なポイントを付与して、そのポイントに応じた代金が減額される場合
⇒消費税法上の「値引き」に該当する。
・値引きされる額を税率ごとに合理的に区分して処理する必要あり
・会計上「販売促進費」として処理した場合、
消費税の申告計算においては、売上返還等へ振替処理をする

■「販売促進費」として処理した場合、なぜ課税仕入れとして処理できないか
自社ポイントが使用されたとしても、
販売店は顧客からの販売促進等に伴う役務提供を受けていないため、課税仕入れとならない

■売上返還等として処理しなかった場合
申告税額を誤る可能性あり




8.連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取り扱い

・子会社が国際財務報告基準または米国会計基準に準拠して作成された場合、連結の際、一部(※)を除いて修正不要。

※のれんの償却、退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理、研究開発費の支出時費用処理等。

・今回、IFRS第16号「リース」について、この「一部」に該当するかどうかが検討され、該当しない(つまり、修正なしで連結する)こととなった。




出荷基準の代替的取扱い

・従来、日本では収益を認識するにあたって出荷基準が用いられてきた。
・新収益基準では、資産に対する支配を顧客に移転することにより、履行義務が充足されるときに収益を認識する。
・比較可能性を損なわない範囲で、代替的取扱いが認められている。

※.出荷基準
⇒出荷時に収益を認識しても、支配が他に移転される時(検収時等)と比べ、金額的な重要性は乏しいと想定されるため、比較可能性を損なわないと考えられている。




10.「公正なM&Aの指針の在り方に関する指針」の概要

■経産省は本年6/28に「公正なM&Aの在り方に関する指針」を策定
⇒これまでのMBOに加えて、支配株主による従属会社の買収も対象に追加
■本指針の対象取引
・MBO及び支配株主による従属会社の買収
※対象会社が上場会社である場合に限定
■M&Aにおいて尊重されるべき原則
(1)企業価値の向上
(2)公正な手続きを通じた一般株主利益の確保
※一般株主が本来享受すべき利益を買収者が享受しているのではないかという懸念を払拭する
■実務上の具体的対応
・独立した特別委員会の設置が望ましい
⇒対象会社・一般株主の利益を図る立場から、当該M&Aの是非、取引条件の妥当性、手続きの公正性について検討・判断
 「外部専門家の専門的助言等、マーケット・チェック、マジョリティ・オブ・マイノリティ条件、強圧性排除」の必要性・実施方法等を検討




11.2019年6月総会の特徴

■株主からの質問(増加率が高かったもの)
(1)リストラ・人事・労務(前年度+5ポイント)
⇒男性社員の育児休暇、パイトテロ対策、外国人労働者の取扱いについて

(2)環境問題・CSR(前年度+4.2ポイント)
⇒コーポレートガバナンスコード改訂により、非財務情報に関心

■株主提案権の行使
政策保有株式の売却、資本コストの開示、株主還元強化策といった、資本効率を問うものが多かった



12.完全子会社の合併による繰越欠損金の引継ぎ

■完全子会社の繰越欠損金の引継ぎ
・適格合併が行われた場合、一定の場合を除き、被合併法人が有していた合併事業年度前10年以内に生じた繰越欠損金は、合併法人の各事業年度に生じたものとして引き継ぐことができる。
■引継ぎが認められない場合
・グループ内で行われる適格合併については、合併事業年度開始の日において、支配関係が生じてから5年を経過していない場合で、共同事業を行う合併としての一定の要件を満たさない場合には、支配関係が生じた事業年度の前に生じた繰越欠損金の引き継ぎは認められない。
■組織再編に係る行為または計算の否認
・適格合併の要件や繰越欠損金の引継要件を満たしていても、これを容認した場合には、合併法人等の法人税額の負担を不当に減少させる結果となると認められるような租税回避行為がある時は、法人税額等を税務署長の判断により計算ができるとする規定が置かれている。




13.初めて連結決算に携わる際の勉強法

① 全体像を理解し、各論は形から
・まずは、連結決算全体の流れを理解する。
・仕訳は形から覚え、細かい論点を理解するのはその次。
② 連結精算表を作ってみる
・連結会計システムを導入している場合は、連結精算表をExcelで作成してみることで理解が深まる。
・連結BSと連結PLのつながり(利益剰余金)を理解しておくことが重要。
③ 会計基準等を読む
・基準には、連結財務諸表作成に関しての用語の定義から連結の範囲、連結決算日の考え方、作成の手続きについて網羅的に記載されている。
・結論の背景を読むことで、理解が深まる。
・実務指針を読むことで具体的な処理内容を確認する。
 初学者である場合、ある程度全体を理解してから読むことをお勧め。




14.ウーバー上場以来の最安値

・5月10日のニューヨーク証券取引所に上場以来、最安値を記録
・初日終値41.57ドル⇒32.92ドル
・新規事業(ウーバーエアなど)の開拓に取り組んでいるが、アナリストや投資家は同社の事業モデルの収益性に懸念あり
・四半期決算の発表後に同社が新規雇用の凍結を決めたとの報道もあり

・当2Qの純損失は△52憶4000万ドル(当1Qは△10億1000万ドル)
・今年実施したIPOの関連費用39億ドルが含まれる

・一方、ウーバーと競合するリフトは四半期決算で市場の予測を上回る収益を計上
・同社はウーバーと違って本業の配車サービスに特化し、市場も北米に限定している




15.IFRS適用会社は予定も含め225社に

東証は2018年4月から2019年3月期決算の会社(3,639社)を対象にIFRS適用状況等を分析
→IFRS適用済(198社)、適用決定(16社)、適用予定(11社)の会社数は225社(時価合計220兆円)となった。
→社数割合は6%程度であるが、東証の時価総額(605兆円)に占める割合は36%となっていた
→IFRS適用を検討している会社は189社あり、検討事項として、「マニュアル・指針の整備」を上げている会社が最も多かった
→上記は「会計基準の選択に関する基本的な考え方」を分析し、各上場企業のIFRS適用状況の周知を図るために公表している。



16.請求書方式の変更

■区分記載請求書等保存方式(2019年10月1日から2023年9月30日まで)
現行の請求書等への記載事項に加え、下記2点を追加
①軽減税率の対象品目である旨
②税率ごとに区分して合計した税込対価の額

※帳簿への記載事項としては、「軽減税率の対象品目である旨」の記載が新たに必要
※「軽減税率の対象品目である旨」「税率ごとに区分して合計した税込対価の額」の記載がない請求書等を交付された場合
⇒その取引の事実に基づき追記し、保存することで、仕入税額控除を行うことが可能

■適格請求書等保存?式(インボイス制度)(2023年10月1日から)
・仕入税額控除の要件
⇒「適格請求書」等の保存
・適格請求書
⇒発行は適格請求書発行事業者に限られる
⇒2023年10月1日から適格請求書発行事業者となるためには、「適格請求書発行事業者の登録申請書」(2021年10月1日から申請が可能)を提出し、登録を受ける必要がある。
 登録は課税事業者が対象。免税事業者が登録を受けるためには課税事業者を選択する必要がある。













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