2019年9月2日月曜日

8/16 勉強会:消費税 飲食料品の譲渡を行わない事業者の対応 他

1.ADW裁判、過去事例の位置付けに注目

ADW裁判について、7月30日の進行協議期日で過去の事例の位置付けなどについて裁判所の考え方が明らかにされる可能性がある。

⇒課税当局は、ADWへの課税処分は「不動産の仕入は、保有期間中に住宅貸付の賃料(非課税売上)が発生しているから共通仕入であると主張。
⇒ADWは、課税当局はかつて「不動産の仕入の最終目的は販売であり賃貸ではないから、課のみ仕入である」との解釈を示しており、この解釈は平成7年と9年の事案として課税当局の内部資料に書かれていたとし、当該内部資料を裁判所に証拠として提出。
⇒国は上記資料は「課税当局内部でその存否が確認できない」としている。





2.非上場会社における株主総会、訴訟で決議取消となった理由は

■特定の株主に招集通知が送付されなかった事例
・全株主のうち、16%を保有する株主一名(以下、原告)に対してのみ招集通知が送付されなかった(意図的)
・決議内容:死亡代表取締役の死亡慰労金。慰労金の額を取締役会に一任する旨の決議
・原告:亡代表取締役の配偶者
・裁判所の判断:16%の大株主+決議内容に利害関係が深い株主に招集通知を送付しないのは重大な瑕疵。決議を取り消した






3.記帳代行に係る税理士の注意義務を示す

税理士が毎月の当座勘定照合表を確認する義務を怠ったことにより横領の発見が遅れたとして、協同組合が顧問税理士に賠償請求を求めた裁判。
一審の東京地裁では、会計帳簿の記帳代行の際に原資料等と突合する義務があるとまでは言えないなどと判断して、協同組合の請求を棄却。

■東京高裁の判決
経理担当者に当座勘定照合表の提示を求めることで注意義務を履行したもとの認めるとし、協同組合の控訴を棄却。税理士側の勝訴。
⇒経理担当者が作成した振替伝票の基礎となった原資料等と照合するなど、妥当性・正確性を確認する義務はあると判断。遂行するにあたり、経理担当者から資料が提供されないときは提出を促すことをもって注意義務を尽くした。




4.飲食料品のリベートの軽減税率適用可否

・「売上に係る対価の返還」⇒軽減税率
・「役務の提供に係る対価の返還」⇒標準税率
課税資産の譲渡等が軽減税率の対象であっても、販売数量等に応じて支払われる奨励金は軽減税率、早期に生産したこと等役務に応じて支払われる奨励金は標準税率となる。
⇒リベートを支払う理由、受け取る理由を十分に確認する必要がある。また、当事者間で認識を共有しておくことも肝心であり、契約書等でその旨を明らかにしておくことがひとつの方法である。





5.譲渡制限期間の満了日を「退職日」とする場合の特定譲渡制限付株式の該当性及び税務上の取扱いについて

■論点
①譲渡制限付株式割当契約の内容として、譲渡制限期間満了日を〇月〇日と確定日とするのではなく、取締役の退任日とした場合でも、特定譲渡制限付株式に該当するか。
②役員個人の所得は”退職所得”で良いか。
③法人税上は退任日の属する日の退職給与として損金として処理できるか

■結論
①確定日だけではなく、退職日等など客観的な事由に基づき定まる日でもOK
②退職に起因して譲渡制限が解除される場合は退職所得でOK
(”退任と同時に再任する場合は譲渡制限解除されない”などの設計は必要)
③退任日の属する日の退職給与として損金として処理





6.消費税:会費の取扱い

■支払った会費が税額控除の対象となるか
⇒対価性があるかないかで判定

■対価性ありの例
税務研究会の会費:税務通信の配布や会員限定WEBサービスの提供がある
⇒明らかに対価性があるため税額控除の対象となる

■対価性なしの例
同業者団体の通常会費:単に団体の存立を図るための費用
⇒対価性がないため不課税(税額控除不可)

■不明な場合
会費が不課税扱いになる場合にはその団体が構成員にその旨を通知する義務があるが
運用されていないケースも多い。その場合は個別に問い合わせて確認する必要がある。



7.消費税:フィットネスクラブなどのスポーツ施設における飲食料品の提供

ジムなどのスポーツ施設内で販売されている飲食料品の消費税の税率は?

■軽減税率制度の整理
飲食料品の譲渡:軽減税率の対象
ただし、「食事の提供(外食)」は軽減税率の対象とならない
・外食とは飲食設備(テーブルや椅子)を設置した場所で行う食事の提供。
・双方該当する場合は、販売時に消費者へ「持ち帰り(8%)」か「店内飲食(10%)」か確認する

■ジムなどのフィットネスクラブでの販売は
・休憩スペース(テーブル・椅子あり)
⇒消費者にテーブル等で飲食するかの意思確認をして判断する
・トレーニングエリアのベンチ
⇒フィットネスクラブそのものが飲食目的外施設のため、軽減税率が適用
飲食をするかの意思確認も不要
・マシンやサウナの椅子など
⇒通常飲食として使用しない設備のため軽減税率が適用
・自販機等の販売
⇒飲食させるための役務の提供は行っていない
⇒単に飲料水等を販売しているため、そばにテーブル等が設置されていても軽減税率が適用






8.(IFRS)クラウド・コンピューティング契約における顧客側の会計処理

・クラウド・コンピューティングのサービスモデルはいかに分類される
IaaS=ネットワーク等の基盤となる設備(インフラ)のみサプライヤーが提供
PaaS=インフラに加えてハードウェアやOS等のプラットフォームまでサプライヤーが提供。
SaaS=インフラ、プラットフォームに加えて、アプリケーションソフトまでサプライヤーが提供。

・SaaS契約に基づく支払いを、「サービス契約として費用処理」するか、「ソフトウェア資産を受け取る契約として資産計上」するか。

・資産計上の要件は下記いずれか。
(1)契約がソフトウェアのリースを含んでいる場合
(2)顧客がリース以外で契約開始日にソフトウェアに対する支配を獲得する場合

・(1)は単にソフトウェアにアクセスする権利のみでは足りず、顧客が、「使用方法・使用目的に関する意思決定権」を有する必要がある。
 ⇒ 具体的には、「ソフトウェアの更新時期や更新方法、あるいはハードウェアやインフラを選択する決定権を有していること」。

・(2)は特定にインフラ、ハード、ソフトについて、他者のアクセスを制限できること。
 ⇒ 要は、当該顧客専用になっていること



2019年上期M&A件数、10年ぶりの高水準

■日本企業によるM&A(合併・買収)が活発化。
・2019年上期は394件で、前年同期を67件上回り、2009年以来の高水準。
・日本企業における海外企業買収も66件と、前年同期より19件増え、海外M&Aも活発。
・上期の取引金額トップは、ソフトバンクのヤフー子会社化で4,565億円。
・M&A総額は2兆1,000億円で、前年同期(8兆9,000億円)より減。
・前年は、武田薬品工業がアイルランド大手製薬会社シャイアーを約6兆円で買収した影響。

■M&Aの目的
・少子高齢化に伴う国内市場の縮小や人手不足を背景に、シェア拡大や労働力の確保、海外事業展開が狙い。





10.第2章 自社株取引に関する税務上の留意点

■発行法人が株主から自己株式を取得
⇒利益を原資として支払った部分=みなし配当(20.42%源泉徴収)=利益積立金を減少させる
■取得後の自己株式
⇒そのまま保有し続けることも可能
⇒他社へ譲渡、買収対価として使用、役員及び従業員への報酬として使用も可能
⇒消却も可能
■高額譲渡のケース
・譲渡した株主への寄付
■低額譲渡のケース
・発行法人においてその株主からの受贈益を認識


「M&A対象企業の基礎的財務モデリング手法」
・財務モデルを作成⇒M&Aの際の妥当な価格目線を推計
・買収対象候補会社の予測FS作成⇒各期のFCFを計算
・各期のFCFからDCF法により事業価値を計算し、純有利子負債を控除⇒株主価値を計算
※上記の予測資料作成にあたり、直近のTBから仮定(ex;売上高成長率、償却費は売上に比例、回転期間は一定、運転資本の増減)をおいて計算
 これらの推計値はインタビュー等で得た情報により、各パラメーターを調整することで精緻化可能





11.米国税率引下げによるペーパーカンパニーの定義見直し

■これまでのペーパーカンパニー(PC)に関する課税
租税負担割合が30%未満のPCは、会社単位で合算課税※
※当該PCの所得を日本親会社の所得とみなして合算し、日本で課税

■出来事
米国連邦法人税率の引下げ(35%⇒21%)により、合算課税されるPCが増えてしまう懸念

■救済措置(PCの定義見直し)
以下の「現地で行われる実態のある事業の遂行上欠くことのできない機能」を担うPCは除外
(1)持株会社である一定のPC
(2)不動産を保有する一定のPC
(3)資源開発等プロジェクトに係る一定のPC




12.連結納税等摘要等の取扱いの改正ポイント
■外国子会社合算税制について
・外国関係会社ごとに適用されることから、適用計算については、外国関係会社ごとに行うのが基本的な枠組み。

⇒令和元年度税制改正において、現地で連結納税またはパススルー課税が行われている外国関係会社の適用対象金額、租税負担割合および外国税額控除等の計算について、企業集団等所得税規程を適用しないで各社別にするものと整備された。




13.連結における財務会計と管理会計の一致・不一致
■財務会計と管理会計の作成方針のパターン
(1)財管不一致型
 会計処理や勘定科目体系の違いから一致しないことを前提とする
(2)財管調整型
 不一致箇所を内容別に調査して説明する
(3)財管組替型
 元データや会計処理は一致しているが、レポート上の組替が異なる
(4)財管一致型
 財務会計と管理会計の数値が完全に一致する

⇒2014年~2015年に行われた調査では、約36%の企業が財管一致に取り組まれていた。

■どのようなしくみが効率的か?
下記のような個社―本社間および本社内の2軸で連携をとる運用ルールを構築することが、
差異把握の作業を最小化することにつながり、効率化するしくみになると考えられる。
・個社については、差異が発生する要因について都度報告する運用ルールとする
・本社については、四半期決算の頻度で部門間の定期的な共有会を開催して組織変更や財務ルール変更など影響のある内容を共有する

・差異要因ドキュメントを整備し共有管理する




14.仙台市、成長期待8社の上場支援 「未来創造企業」に認定
・仙台市は29日、株式上場を目指す仙台都市圏の8社を「仙台未来創造企業」に認定した。
・弁護士や税理士、社会保険労務士の協力を得て、上場要件となる労務、財務など内部管理体制の強化を集中支援する。
・東北では2014年以降、新規上場がなく、市はおおむね5年以内の実現を目指す。
・認定企業の8社は以下
ゼンシン/発達障害児向け放課後デイサービス
ビック・ママ/衣類補修
トーワ電機/コンピューター開発・製造・販売
トライポッドワークス/ソフトウエア開発・販売
ボールウェーブ/センサー開発・製造
ワイヤードビーンズ/ECサイト構築・雑貨企画販売
manaby/障害者就労支援

ワンテーブル/備蓄食料品製造・販売





15.無形資産
IFRSでの資産=企業が支配し、将来の経済的便益が企業に流入することが期待される資源
→無形資産は物理的実体のない、識別可能な非貨幣性資産
→物理的実体がないため、存在の立証や金額の測定が難しい

取得形態として、個別の取得、企業結合による取得、自己創設などがある
→個別の取得=ソフトウェアの取得等が該当
→企業結合による取得=のれん等
→自己創設=研究開発費等

自己創設の無形資産を認識するか否かは、支出発生のプロセスが①研究局面、②開発局面かに区分する
→①研究局面では、発生時の費用として処理
→②開発局面では下記の6要件をすべて満たした場合にのみ無形資産として認識しなければならない
・技術的に実現可能
・無形資産を完成させ、使用または売却する意図がある
・使用または売却する能力がある
・将来の経済的便益を創出する可能性が高い
・開発を完成させるための力(技術・資金面等)が十分である
・支出を信頼性をもって測定できる

→日本基準では、研究開発費はすべて発生時に費用処理するため、IFRSと日本基準のGAAP差の一つである




16.飲食料品の譲渡を行わない事業者の対応
今後は仕入についての適用税率の管理を業務フローに追加する必要がある。

■仕入(原価・経費)
①以下の勘定科目には、軽減税率が適用される課税仕入れがあるものと考えられる。
・新聞図書費 ⇒ 定期購読契約の新聞の購入(雑誌の定期購読契約については旧税率の適用に注意)
・会議費    ⇒ 会議用の弁当や菓子、飲料の購入
・接待交際費 ⇒ 中元や歳暮の贈答用の飲食品、お土産用に購入する飲食料品の購入
・広告宣伝費 ⇒ 景品として配布する飲食料品の購入
・福利厚生費 ⇒ コーヒーサーバー用のコーヒー豆やウォーターサーバー用の水の購入

②軽減税率対象品目の仕入について、請求書等に軽減税率対象品目にはその旨や税率の異なるごとに合計した税込金額の記載が
ないときは、仕入先に確認する等して追記する。

③仕入れを税率ごとに記帳する。

■申告
中小事業者は、軽減税率導入当初において、簡易課税制度の届出特例(事後選択)を利用することができる。

※課税期間の末日までの届出。申告期限ではないことに注意














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