2018年9月14日金曜日

9/14 勉強会:消費税 課税売上がない課税期間の仕入税額控除 他

1.個人事業者の事業承継税制を検討へ

■個人事業者の建物や設備等についても、小規模宅地特例と同様の特例を設ける
「個人事業者の事業承継税制」が31年改正で本格検討されている。

※小規模宅地特例
被相続人が住んでいた土地や事業をしていた土地について、一定の要件を満たす場合には、
80%又は50%まで評価額を減額して相続税を計算する特例。






2.非上場株式の低額譲渡課税で納税者勝訴の逆転判決

■事例
・個人から法人への株式の譲渡
・株価:配当還元方式だと@75円だが、類似業種比準方式だと@2,505円
・納税者側は75円を主張、国側は2,505円を主張
・第一審では納税者敗訴だったが、高裁で納税者勝訴となった
・個人の持分22%→14%
・法人の持分0%→8%

■条文(相続税/財産評価基本通達)
・30%以上保有する株主グループがいない場合、自己が属するグループが15%未満なら配当還元使用OK

評価通達188(配当還元法が使えるケースを列挙した条文)
「同族株主のいない会社の株主の内、譲渡時期において株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の15%未満である場合における【その株主の取得した株式】」…取得者を基準に判定

所得税基本通達59-6
「~株式を【譲渡又は贈与した個人の当該譲渡又は贈与直前の議決権の数により判定】すること」…譲渡人を基準に判定

⇒基準(評価通達188)を文面通りに読むと、評価方法の選択は【株式を取得した側】を基準に決定すべき
⇒本件でいうと、法人の株式譲受後の議決権割合で判断すべき…8%<15%⇒配当還元使用可






3.富裕層の管理体制を全体として強化

・藤井国税庁長官へのインタビュー

■富裕層対応
・一部の税務署で、重点管理富裕層以外の富裕層も同様の観点で管理する体制を試行的に運用
⇒国外財産調書、財産債務調書、共通報告基準に基づく非居住者に係る金融口座情報の自動的情報交換を積極的に活用

■電子申告の環境整備
・提出情報のスリム化、データ形式の柔軟化、提出方法の拡充、認証手続きの簡便化等の環境整備を進める予定







4.平成31年度における各省庁の税制改正要望は

■未婚のひとり親にも寡婦(夫)控除
・寡婦の要件
夫と死別し、若しくは夫と離婚した後、婚姻をしていない人、又は夫の生死が明らかでない一定の人で、
扶養親族がいる人又は生計を一にする子がいる人
⇒婚姻によらないで生まれた子を持つひとり親に対する税制上の支援措置、平成31年税制改正で検討する旨が盛り込まれた事を踏まえたもの

■住宅ローン減税の拡充&空き家対策
・住宅ローン減税の拡充
2019年10月の消費税率の引上げに際しての拡充措置(住まい給付金の制限の引上げと申請期限延長)

・空き家対策:相続税の特別控除(延長及び拡充の可能性)
⇒平成31年12月31日までの間に売却した場合、一定の要件のもと譲渡所得から3,000万円控除
空き家とは、居住その他の使用がされていないことが常態である建築物。
1年間を通して、人の出入りの有無、水道・電気・ガスの使用状況から判断され、「特定空き家」と認定されると固定資産税の優遇を受けることができない。







5.IFRS第16号「リース」:IFRS任意適用日本企業の事例

■IFRS16号の概要
・現行のIAS 17号が改訂され、IFRS 16号が公開
→2019年1月1日以降開始する事業年度から適用
・リースの借手及び貸手におけるリース契約の認識、測定、表示および開示の原則を定めた基準
・ファイナンスリースとオペレーティングリースを区分せず、単一の会計モデルを使用

■IFRS任意適用日本企業が行った開示
・LINE、本田技研工業、NTT、味の素等
→「未適用の公表済み基準書及び解釈指針」で開示した、IFRS第16号の適用による連結FSへの影響に関しては、各社概ね以下の内容が記載されている。
【記載内容】
・オペレーティングリースとしていた取引について、リースに係る使用権資産とリース負債が計上されるため、財政計算状態計算書の資産・負債残高が増加すること
・連結損益計算書に、リース費用に代わり、使用権資産の減価償却費とリースに関連する利息費用が計上されること





6.消費税不正還付、他局等と連携して対応

■藤代東京国税局長(7/27日付で就任)が免税制度を不正に利用し不正還付を受ける事案などの、不正還付事案が増加、多様化・複雑化している為、その対応について下記のとおり示した。

【平成30事務年度の対応】
・消費税担当の統括国税実査官を配置し、他の国税局等の課税総括課と連携
・消費税調査実の質的・量的な充実を図る
⇒消費税の視点から情報収集・分析や調査企画、ノウハウの開発共有が目的
・国際的な取引に関しては、租税条約等に基づく情報交換制度を活用し、各国の税務当局と連携しながら取引の実態解明に努める。
⇒今年から共通報告基準(CRS)に基づく自動的情報交換が開始。
・富裕層への執行体制の強化。
・仮想通貨取引に関しては、有効な資料の収集、必要性が高ければ重点的に税務調査を実施。





7.消費税:課税売上がない課税期間の仕入税額控除

■設立初年度で課税仕入れはあるが課税売上がない場合

ケース1:個別対応方式を採用している場合
個別対応方式の場合「課税売上にのみ要する課税仕入れ」に該当
するものは全額控除が可能、「共通して要する課税仕入れ」については税額控除できない(課税売上割合ゼロのため)

ケース2:一括比例配分方式を採用している場合
税額控除できない(課税売上割合ゼロのため)

⇒設立初年度で動きがない場合でも、課税売上割合ゼロを避けるために
何らかの課税売上が生じる取引をしておくのが無難







8.H30年分から仮想通貨の所得税申告を簡便化

昨年分の申告にて仮想通貨の所得計算が困難という声があがったため、
確定申告からの所得計算を簡易にできるよう申告環境を整える模様。

■提供情報の統一化
仮想通貨交換業者ごとに利用者(納税者)への取引情報が異なっていたため、
利用者が申告するにあたり煩雑になっていた。
⇒国税庁主導で申告環境の整備の一環として、
仮想通貨交換業者に対し、利用者に対する取引情報の統一化を検討中。
※あわせて仮想通貨を相続した場合の手続きも統一化される予定。

参考:仮想通貨取引にかかる所得計算方法(BTCを前提)
(1)仮想通貨の売却
所得金額=売却価額△1BTCあたりの取得価額×支払BTCの数
(2)仮想通貨での商品の購入
所得金額=商品価額△1BTCあたりの取得価額×支払BTCの数
(3)仮想通貨と仮想通貨の交換
所得金額=他の仮想通貨の時価(購入価額)△1BTCあたりの取得価額×支払BTCの数






評価性引当額の注記

・評価性引当額(DTAから控除された額)に重要な変動が生じている場合
 ⇒当該変動の主な内容を記載することとされている
・評価性引当額の合計額に重要な変動が生じている場合
 ⇒税負担率について重要な影響が生じていることが多い
 ⇒財務諸表利用者からは原因分析できない
 ⇒税負担率の実績と予測が大きく乖離することがあった
 ⇒当該変動の主な内容を注記事項として定めることとなった

税負担率と法定実効税率との間に重要な差異がなく、税率差異の注記省略している場合
⇒当該“変動の主な内容の注記は不要”との取扱が示されている
 (例)差異が法定実効税率の100分の5以下である場合






10.スクイーズ・アウトの改正ポイント

■会社法上の取り扱い
議決権保有要件:90%以上
議決権保有要件の算定方法:株式等売渡請求を行う者+その完全子会社の議決権の合計
株式等売却請求の対象外とできる者:株式等売渡請求を行う者の完全子会社、

※事業再編計画または特別事業再編計画の認定を受けることで下記のように緩和される

■改正産強法上の特例
議決権保有要件:三分の二以上
議決権保有要件の算定方法:支配株主たる認定事業者およびその他の共同認定事業者+それぞれの完全子会社の議決権の合計
株式等売却請求の対象外とできる者:株式等売渡請求を行う者の完全子会社、共同認定事業者およびその完全子会社





11.改正自社株対価M&Aの活用ポイント

■産業競争力強化法等の一部を改正する法律案が5月に成立、7/9施行
(会社法)
改正によって自社株対価M&Aに適用される会社法上の有利発行規制や現物出資規制は、大幅に緩和
・旧産業競争力強化法(以下、旧産強法)=TOBによって他の会社を「関係事業者」とする場合には、会社法の有利発行規制および現物出資規制が適用されない特例があった
・改正産業競争力強化法(以下、改正産強法)ではTOBOという要件が「譲渡」による取得で足りるように緩和
 また、既存の関係事業者たる対象会社の株式等を追加取得する場合でも要件を満たすこととなった
(税務上)
自社株対価M&Aが、実務的な観点からも十分利用できる選択肢へ
・改正産強法の下でH33年3/31までに行う自社株対価M&Aにについて、対象会社株主の株式譲渡損益の課税を繰り延べる規定が租税特別措置法に創設





12平成30年3月期有報分析による開示に関する論点

■改正税効果基準(の早期適用)に伴う開示への影響
(1)表示方法の見直し
従来:DTAとDTLは流固分類
改正:DTAは投資その他、DTLは固定負債

(2)注記事項の追加
・評価性引当額の内訳に関する数値情報
・評価性引当額の内訳に関する定性情報
・税務上の繰欠に関する数値情報
・税務上の繰欠に関する定性情報

■その他新基準等(の早期適用)に伴う開示への影響
(1)権利確定条件付き有償SO⇒当該SOの概要等を注記
(2)仮想通貨基準の適用⇒仮想通貨ごとの保有数量と簿価を注記

■米国税制改革法案に伴う開示への影響
(1)法案概要と影響
連邦法人税率の引下げ⇒米国に子会社・関連会社を保有する会社の税効果注記に影響

(2)影響する税効果注記
・法人税等の税率の変更によりDTAorDTLが修正された場合はその旨及び修正額
・要件を満たす公開企業は、SEC規則に基づく任意の注記あり






13.未適用の会計基準等の注記等

■未適用の会計基準等の注記
平成30年3月期の会社(232社)を対象に調査したところ、203社が収益認識会計基準等を未適用の会計基準等に注記
⇒会計基準への影響が大きいことが想定されるため、注記した会社が多い。

■非財務情報
「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」の開示会社は平成29年3月期:57社
⇒平成30年3月期:189社と増加
⇒パブリックコメントで開示内容を充実させる旨の記載がされたため。

■その他の主な項目
定率法から定額法に変更している会社は増加傾向にある。
⇒大型設備の新規導入、構造改革等のタイミングで変更を実施している。
⇒当該タイミングを逃すと減価償却方法変更の適時性が確保できないため、会計方針の変更ができない可能性が高い。

■会社法開示との比較
会社計算規則に個別に明記されていない注記事項でも、必要な場合には開示することができる。
⇒企業結合、減損、土地再評価に関する注記は計算書類でも開示する会社が多い。
⇒一方で資産除去債務、退職給付、税効果を開示する会社は少ない







14.正社員と有期労働者との間の労働条件の差別

■正社員と有期労働者の労働条件に相違がある場合の、実務対応

・前提
 それぞれの賃金の種類ごとに趣旨・性質、各労働者の職務内容の違いを整理し、相違が不合理といえるか否かを検討

・職務内容(業務内容、業務に伴う責任の程度)の違い
 皆勤手当や通勤手当等の手当に差異を設けることは不合理であると判断される可能性が高い。

・労働条件の差異が不合理と思われる場合
 職務内容の違い、職務内容・配置の変更範囲の違いを明確に整理し、労働条件の相違が不合理と言えない環境を整備する必要がある。

・現在の職務内容や配置範囲等を変更しようとする場合
 労働条件の不利益変更として無効とされる可能性があるため、労働者に対し、変更の理由や必要性等をしっかりと説明し、明確な合意を得ておく必要がある。







15.スピンオフの活用のポイント

■スピンオフの手続
・特定の事業部門を切り離す場合(分割型分割)
・子会社を切り離す場合(子会社株式の現物配当)
→いずれにしても子会社株式の現物配当が行われるが、会社法の規制を受ける。
→産強法の改正により、事業再編計画または特別事業再編計画の認定を受けた事業者については、子会社株式の現物配当を会社法上の金銭配当と同一の手続で行うことが可能となった。

■スピンオフ税制(平成29年度税制改正)
<支配株主が存在しない場合>
・支配株主が存在しない会社が行うスピンオフの適格組織再編要件が法人税法に創設。

<支配株主が存在する場合>
・支配株主が存在する場合(個人の場合を含む)の分割型分割の適格要件について、支配株主と分割法人との完全支配関係または支配関係の継続見込みを不要とする旨の改正がなされた。


15.【2019年税制改正】各府省庁からの要望が出そろう

法人税関連では、以下のような要望が出ている。

・試験研究を行った場合の法人税額等の特別控除の延長及び拡充(拡充、延長)
・事業用固定資産の減損損失に係る損金算入措置の創設(新設)
・個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入割合の引上げ(拡充)
・事業再編を円滑化するための組織再編税制における適格要件の見直し(新設)



15.労務管理

1.従業員の定着率
定着率が低い場合には、以下の対応が必要となる
・退職者の傾向について分析(退職者の所属する部署、職位、退職事由など)
・人事労務制度の見直しや労使関係の構築など、改善に向けた対策

2.人事労務関係書類
・就業規則作成、所轄の労働基準監督署に届け出
(変更があった際には、変更届を提出)
・労働者名簿、賃金台帳、雇入通知書などの労基法によって作成・保管する必要があるものは、
記載事項を網羅して作成・保管

3.労働保険及び社会保険
・一定の要件を満たす従業員は、労働保険及び社会保険に加入する必要あり
・パートタイマーなどの未加入には留意
・未払いや不払いに留意

4.時間外勤務手当
・時間外勤務手当の支給規程が明らかでない場合、支給規程を明確にする
・支給規程はあるが、支払がされていない場合には、過去から遡って精算する必要あり





















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