2019年2月25日月曜日

2/22 勉強会:税制改正と税効果会計 他

1.上場株式のクロス取引、法基通の適用可否で採決

■事案
・審査請求人が、保有する上場有価証券の売却及び再購入を行った。
・法人税の確定申告に際し、売却のうち当該再購入に係る部分については
法基通の適用によりその売却がなかったものとして取り扱い、当該部分の売却に係る有価証券売却益を
所得の計算上、益金の額に算入しなかった。
・原処分庁が当該売却益を所得の金額の計算上、益金の額に算入すべきであるとして更正処分を行った。
・請求人が、原処分の全部の取消しを求めた。

■事実
・本件売却及び本件購入に係る各委託契約について、クロス取引ではなく、別個独立の契約として取り扱っており、
請求人も、そのことを知ってたと認められる。
・よって、同時の契約がなかったと認められるから、本件売却について、通達規定本文の適用はない。

■裁決
・有価証券売却益は、売却をした日の属する本件事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入すべきである。





2.在外子会社等の会計処理「リース」は修正項目とならず

■子会社のFSの修正
・在外子会社の財務諸表の取扱い
⇒基本的にはそのまま連結
⇒ただし、基準で限定列挙した項目(のれんなど)は日本基準に修正して連結

■リースの取扱い(IFRS16号)
・IFRS16号「リース」…3月決算の会社では2019年6月の1Qより適用開始
・日本基準と大きく異なる(使用権資産として処理する点、FL・OLという区分が原則ない点など)
・が、今回の基準改正にあたって、リースは修正対象項目とはならなかった。

■影響
・業種業態によっては財務数値が大きく変わる可能性のある企業あり





3.仕入税額控除問題で別の回答文書が存在

・平成7年と9年に課税当局が同種事案で全額仕入税額控除を認めている文書あり
・平成12年付けでも同様の文書が存在することが判明

■内容
・A社は分譲用マンションを購入
・分譲完了までに数年を見込み、それまでの間は賃貸に供する
・宅建免許取得までは固定資産として計上し、免許取得後に棚卸資産に振替(必ず販売するので減価償却はしない)

■課税当局の回答
・課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れでOK
⇒分譲目的で仕入れているため、課税資産の譲渡等にのみ要するものに該当





4.山林の固定資産税評価を巡り納税者敗訴

・土地の形態などから判断、一般山林ではなく介在山林

■東京地裁判決(平成30年5月)
平成26年までは一般山林と評価されていたにも関わらず、27年には介在山林と評価され、納税者が不服として、固定資産税の評価審査請求を行う。※一般山林と評価された場合、介在山林に比べ評価額が大幅に下がる。

■納税者と課税局の主張
・納税者の主張
宅地に隣接している部分はあるものの、山肌に自生する山林として管理されており、介在山林には当たらない
・課税局の主張
・宅地に隣接している部分は神社が存在し、宅地も存在している。山林として機能している部分の方が少ない。

■判決:納税者側の敗訴
・一般、介在山林は、位置や形態・利用状況・価格事情及び宅地化の度合いなどで総合的に判断
①当該山林の3分の2は市街化区域に属しており、②実質的には三方を宅地に囲まれている。
③過去に立木伐採が行われ、介在山林とされた年は若干の幼木があるのみだった。

※一般山林と介在山林
・一般山林:一般的に山肌に自生する山林であり山林として生産力があるものとして評価されるもの。
・介在山林:一般山林の評価の方法によることが適当でないとされるもの。
⇒周辺一体が宅地および農地等で、立地条件等からみて単に林地としての形態をとどめているもの。





5.所得税・消費税の審理事例をチェック

【申告・更生の請求等】
Q相続人が準確申告書を提出した後に相続放棄した場合の取り扱い
・H28年4月28日 被相続人A死亡
・H28年8月26日 X及びYが、本件各準確定申告書を提出
・H28年9月1日 家裁は相続放棄の申請を受理

A準確定申告書は無効、納税もなし
⇒相続の開始があったことを知った日の4月を経過した日の前日までに、確定申告書を提出しなければならいが、放棄した者は、相続開始の時から相続人でなかったものとみなされる。

Q e-Taxにより更生の請求書を提出した場合における源泉徴収票の義務

A e-Taxにより所定の事項を入力し送信した場合は源泉徴収票を提出する義務はないが、税務署長等から提出を求められたら提出をしなければならない。

Q名義貸しをした者から提出された過去7年分の更生の請求書の取り扱い
・歯科医業を営むAは甲及び乙診療所から生ずる利益があった
・乙診療所から生じた利益をBに申告させ不正課税を免れていた
・政務調査で「偽りその他の不正の行為」に該当するとして、H23~29年分(7年分)の更生処分を行った。
・Bは過去7年間分の減額更正を行うこととなるのか。

A過去5年分の減額更正を行う
⇒更生決定等の期間制限の特例の対象に該当しない




6.今週の専門用語

■山林の固定資産税評価
・一般山林は、状況が類似する標準山林の時価を元に算定される。
・介在山林は、その山林付近の宅地等の価額に比準して算定される。

■株式交付信託
・株式報酬制度の一種。自社株式の取得資金を信託銀行に拠出し、信託銀行がこの資金を原資に、株式市場や企業から株式取得、業績に応じて取締役等に付与する。
・法人税法上、利益連動給与の要件満たせば損金算入可能




7.QRコードによる納付

本年1月4日より,“QRコード”を利用したコンビニ納付がスタートした
⇒コンビニの端末で納付書を出力すれば,その場で所得税等を納付できる

■QRコード発行方法
(1){確定申告書等作成コーナー」を利用して作成
(2) 国税庁ホームページの「コンビニ納付用QRコード作成専用画面」で作成

■対象税目
すべての国税に対応。ただし、源泉所得税は納付期限が過ぎて納税告知を受けたものに限る。
また、地方税は対象外

■限度額
30万円まで(現金納付に限る)




8.軽減税率 店内飲食の一部持ち帰りの判断方法

2019年10月1日より消費税が10%へ
飲食料品等の販売は、
・店内飲食(外食) ⇒ 標準税率の10%
・自宅に持ち帰る ⇒ 軽減税率8%

■適用税率の判断基準は
一取引ごとに判断する。
例1 A,B,Cを個別に販売 ⇒ 個々で適用税率を判定
例2 A,B,Cをセットで販売 ⇒ 全体で適用税率を判定

■軽減税率導入に伴い飲食店業がやるべきこと
顧客に対し、「店内飲食」か「持ち帰り」か確認する
・店内飲食を目的で購入したが持ち帰った ⇒ 10%
・持ち帰り目的で購入も一部を店内で食べた ⇒ 8%

なおQ&Aが国税庁のHPに掲載中






税制改正と税効果会計

・税効果会計に用いる法定実効税率は、「成立日」基準で決まる。
・平成31年度税制改正が、3月31日までに国会で成立すれば、3月決算の会社の実効税率計算に採用される。
・31年度税制改正で、関係する改正は下記の通り。
 → 地方法人税が上がり、法人住民税が下がる(財源が自治体から国に移る。結果、東京都など大都市を擁する自治体の収入は下がり、交付税によって地方の自体の収入は上がる見込み)。
 → 地方法人特別税が廃止、特別法人事業税の復元、事業税(所得割)が増加。
・上記の改正で、トータルでは実効税率への影響なし。
・ただし、連結納税適用の場合は、国税の法定実効税率と地方税の法定実効税率を分けて計算するため要変更。

・決算時点で、法律は改正したものの、条例が未改正の場合、地方税の超過税率の計算方法は下記2通りが認められている(税効果会計に係る会計基準の適用指針49項)。

(前提)
改正直前の地方税法等の標準税率 3.6%
決算日において成立している条例に規程されている超過課税による税率 3.78%
改正地方税法等に規定されている標準税率 1.0%

(認められている計算方法)
①1.0%+(3.78-3.6%)=1.18%
②1.0%✕3.78%÷3.6%=1.05%





10.改正税効果基準の早期適用事例

・改正税効果基準が2018年4月以降開始する事業年度で強制適用。
例)3月決算⇒2018年3月末は早期適用可、2018年4月以降強制適用
12月決算⇒2018年12月末は早期適用可、2019年1月以降強制適用

・早期適用を採用した場合の主な理由
 ⇒表示の簡素化、財務諸表利用者の明瞭性、管理上の簡便性等

・適用初年度においては、「表示方法の変更」として取り扱う。





11.第1章 在外子会社を連結する際の基本論点

・在外子会社が採用の会計基準及び会計処理を確認し、親会社と異なる会計処理の場合は、連結修正の可否を検討
・親会社と決算日が異なる場合、いつの財務諸表を取り込むのかあらかじめ決定しておく
・個別財務諸表の円換算(支配獲得時のレート等を確認しておく)
・のれんの発生額は株式取得日の為替レートで換算、償却額はAR、期末残高はCR

「第2章 在外子会社の個別財務諸表換算ポイント」
・収益及び費用=AR
・資産及び負債=CR
・株主資本=株式取得日レート及び発生日のレート
・その他包括利益累計額=CR
・換算差額=為替換算調整勘定






12新収益基準の考察~ステップ5~

■一時に収益認識できない業種を考慮している
・企業は~~履行義務を充足した時に又は「充足するにつれて」収益を認識
⇒(一時に収益認識を基本とする)支配の概念を、サービスや建設業に適用することが難しい
⇒履行義務が一定の期間に渡り充足されるか、一旦ステップを置くこととした

■交換取引の原則も取り入れている
・次の要件のいずれも満たせば、一定期間に渡り収益認識可
①企業が~~義務を履行することにより、別の用途に転用できない資産が生じる
②企業が~義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有す
⇒①だけでは支配の要件として十分でないので②を追加した
⇒一般的な交換取引における、顧客が支配を獲得(①)すると、顧客が支払義務を負う(=②)ことに整合






13.在外子会社との連結のポイント

■在外子会社の資本連結・修正仕訳のポイント
・株式取得日の資本は取得日レートで換算する。
・投資と資本の消去で生じたのれんは外貨で把握する。
・非支配株主が存在する場合、他の資本項目と同様に「為替換算調整勘定」も親会社持分以外を非支配株主に按分する。
・期中平均レートで換算し、期末残高は決算日レートで換算する。
・外貨建のれんの換算差額は「為替換算調整勘定」で調整する。

■在外子会社の連結消去・修正仕訳のポイント
・内部取引の換算レートの違いによる差額は「為替差損益」で調整する。
・在外子会社との間で生じた未実現損益は、原則は発生日または取得日レートで換算する。



14.持分法適用会社が欠損(債務超過)となった場合の会計処理

■一般的な処理順序
①投資勘定をゼロになるまで減額
②持分法適用会社に対して貸付金がある場合にはこれを減額
③投資会社が負担すべき損失額がその投資勘定の金額および貸付金等の金額を超える場合、超過部分について「持分法適用に伴う負債」等の適切な勘定科目をもって負債の部に計上する

■債務超過の持分法適用会社が関連会社である場合
(1)損失分担契約が存在しない場合
 持分法適用関連会社の欠損を負担する責任は、投資額の範囲に限られる。
⇒投資会社は、持分法による投資価額がゼロとなるところまで負担し、それ以上の欠損は負担しない。

(2)損失分担契約が存在する場合
 次の場合には投資者がその投資額の範囲を超えて損失を負担することとなる。
①その他の株主との間で損失分担契約がある場合
②持分法適用関連会社に対して貸付金がある場合
③持分法適用関連会社に対して契約上または事実上の債務保証がある場合
⇒事実上負担することになると考えられる割合に相当する金額や貸付金等の金額のうち回収不能と見込まれる金額について、投資会社の損失として、投資会社の持ち分に負担させる必要がある。

■債務超過の持分法適用会社が非連結子会社である場合
 親会社である投資会社は、
・原則、その損失の全額を負担する。
・例外として、株主間での損失負担割合が契約書等で明らかとなっている場合、その他の株主が負担する金額を除いた金額のみを負担する。






15監査役監査(主幹事が野村證券を前提)

・中間審査(N-1期)では、常勤監査役による監査が一通り終わっている状況を示す必要あり
・そのため、監査開始から最低でも3ヶ月程度の実績が必要
・選任が遅れた場合はその月数だけ中間審査の開始が遅れる
・複数名での監査役監査も開始する必要があり、少なくとも中間審査開始までに選任する必要あり。



















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