1.新たな収益認識基準導入で税負担増も
・「収益認識に関する会計基準」では返品調整引当金は計上されない
・新会計基準では、返品が見込まれる部分は収益に計上しない
⇒法人税法上の返品調整引当金が求める損金経理要件が満たせなくなる恐れ
⇒法人税法上の売上は返品見込み分を含めて計上のため、税負担増の可能性あり
※参考:下記の法人については、返品調整引当金を損金算入することが認められている
A:出版業
B:出版に関する取次業
C:医薬品・農薬・化粧品・既製服・蓄音機用レコード・磁気音声再生機用レコード又はデジタル式の音声再生機用レコードの製造業
D:Cに規定する物品の卸売業を営む法人
2.再調査手続きの適法性、寄付金課税めぐり争い
・登場人物⇒A社とa社
・a社の概要
⇒A社の代表取締役が、代表取締役で株を100%保有
⇒A社の子会社から分割され設立。A社と同じ所在地
1.再調査手続きの適法性について
関係会社a社に調査に入った際に見つかったA社の資料を根拠に行った
A社に対する再調査、更正処分は違法か?
⇒違法ではない
※関係法人から得られた資料であっても「新たに得られた情報」に該当
2.寄付金課税について
下記の賃借料は、寄付金に該当するか?
・A社は、a社に対し賃借料の免除を行った
・a社の設立から5か月後に上記免除が実施
・a社は一定の事業収入を得ていた
・a社の借入は代表者からのもののみであった
⇒寄付金に該当する(債務免除に経済合理性なし)
※a社は、直ちに債務の返済を求められる状況であったとは考え難い判断
3.四半期報告書での経営方針記載で留意点
従来、決算短信で記載していた経営方針等について、有価証券報告書の記載内容にも追加されることとなった。
適用時期…29年3月31日以降終了の事業年度に係る分より
なお、期末の有価証券報告書に変更が記載されている場合は、第一四半期報告書において変更の記載は不要。
(例)3月決算法人で4月中に経営方針等の変更があった場合
⇒6月中に提出する有価証券報告書に変更内容を記載
⇒6月の第一四半期報告書では変更内容の記載不要
4.収益認識、平成30年12月期の早期適用可
■最終基準化の時期と早期適用時期
・収益認識に関する会計基準の公開草案が7月に公表される予定
⇒最終基準化は平成30年以降になりそう
・仮に、最終基準化が平成30年1月1日以後に開始する事業年度の期中に最終化された場合、平成30年12月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結F/S及び個別F/Sから早期適用を認める方向
∴IFRSを連結F/Sにおいて任意適用している12月決算法人においては、連単一致させる為にIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」等と同様、平成30年1月以降の早期適用を認めるニーズあり
■強制適用時期
・平成33年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用
∴システム改修等の準備時間、経営管理の変更、開示への対応等を考慮
■企業への配慮
・収益認識基準は個別F/Sにも適用される為、企業にとっては少なからず実務負担が生じる
⇒IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」等と同様の経過措置を設ける方針
・収益認識会計基準を遡及適用する方法の他、適用初年度の期首の利益剰余金に加減する方法も認める
・早期適用した際の注記は必要最低限にとどめる(ex.収益を認識する通常の時点を注記)
5.直接審査請求が急増、改正前の4倍に
H28年4月から新たな国税不服申立制度がスタート。
課税処分後、再調査の請求(異議申立て)を経ず、国税不服審判所に対し、直接審査請求をすることができるようになった。
・従前
課税処分 ⇒ 異議申立て ⇒ 審査請求
・改正後
課税処分 ⇒ 審査請求
H28年度中における直接審査請求は、前年度の約4倍増。
再調査の請求の件数は前年度から大幅(47.5%)減。
6.特例有限会社から大会社に、監査役は業務監査まで必要か?
■事案(安愚楽牧場事件)
・安愚楽牧場の出資者が会社と元役員に損害賠償請求請求を起こした裁判
⇒税理士の元監査役にも連帯責任があるかどうか?
■ポイント
・元監査役は税理士で「会計限定監査役」として契約
・特例有限会社から株式会社に商号変更し、大会社に該当(負債200億円以上)していたが、会計監査人と業務監査を行う通常監査役(公認会計士又は監査法人)を設置してなかった。
■地裁判決
元監査役に約7,000万円の損害賠償請求
⇒会計監査の場合より厳密な調査を行う義務と任務があったと判断
■高裁判決
責任なし
⇒取締役の選任懈怠であり、元監査役に業務監査の責任はないと判断
7.所得拡大税制 29年度 ポイント
■中小企業以外
(通常分)
平均給与が前年の平均給与より2%以上増加していない場合には適用されないこととされた。
➡増加率が計算できない場合も適用なしとされた。
つまり、新設法人や前年が役員のみの法人には適用がない。
(上乗せ分)
通常分の適用がある場合にはプラスアルファの税額控除あり
=通常分と上乗せ分はセットで適用となる。
■中小企業
(通常分)
平均給与が前年より増加していれば従来通り適用がある。
➡増加率が計算できない場合でも適用あり(新設法人でも適用あり)
(上乗せ分)
前年平均より2%以上増加していればプラスアルファの税額控除あり。
ただし、増加率が計算できない場合は適用なし。
(=新設法人は上乗せなし)
8.小規模宅地等の特例の実務(第4回)二世帯住宅②-持家のない子が相続した場合
■事案
被相続人甲、相続人乙(別生計)、丙(家なき子)
相続前 土地(330㎡)⇒甲2/3 乙1/3、建物1階(220㎡)⇒乙1/1、建物2階(180㎡)⇒甲1/1
相続後 土地(330㎡)⇒甲2/3分を乙2/6、丙2/6相続、建物2階(180㎡)⇒丙1/1相続
特定居住用宅地等に該当する部分は?
■区分所有建物の登記がされている場合
丙⇒相続した敷地のうち2階に対応する部分49.5㎡が特例対象
330×2/6×(180+220)×180=49.5㎡
⇒区分所有登記がある場合、生計別の居住の用に供されていた部分(建物1階)は特例対象外
■区分所有建物の登記がされていない場合
乙⇒相続した敷地全体の110㎡が特例対象
⇒全体が被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の部分に含まれる
丙⇒相続した敷地全体の110㎡が特例対象
⇒まず全体が被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の部分に該当
プラスで他の要件を充たせば特例の適用対象
・甲の居住の用に供されていた部分に甲と共に起居していた親族がいない
・相続開始前3年以内に、丙又はその配偶者の所有する家屋に居住したことがない
9.ROA
・コーポレートガバナンス改革における新たなKPI(重要業績評価指標)としてROAが採用された
・ROAはROEと異なりレバレッジの影響を受けない指標
・今後はROAが重視されそう
・ROA=負債も含めた総資産から、どれだけ効率的に利益を生み出せたかを示す指標
・何を「利益」とするかは企業ごとに異なる
日立製作所:当期利益
グンゼ:営業利益
JFEホールディングス:経常利益+支払利息
10.公共施設等運営事業に関する財務諸表等規則等の改正について
■BS表示
・無形固定資産に区分表示「公共施設等運営権」
⇒単体での取扱い:金額の多寡にかかわらず区分表示
⇒連結での取扱い:資産総額の1/100以下である場合には、その他の資産としてOK
・運営権対価を分割で支払う場合に計上する負債も区分表示「公共施設等運営権に係る負債」
⇒1年基準で流動負債と固定負債に分ける
⇒単体と連結で異なる扱いはされていない(「その他」表示不可?)
・更新投資に係る資産及び負債:上記とは別の取扱いとなる。
⇒資産:その他の無形固定資産に含まれる。ただし、資産総額の5/100超の場合には区分表示
⇒負債:同様に、純資産の5/100を超える場合に区分表示(金額は現在価値により算出)
■注記
・公共施設運営権の概要
・公共施設運営権の減価償却の方法
11.外貨建取引等の換算方法の変更の留意事項
■TTB(債権)、TTS(債務)による換算からTTMによる換算への変更
・会計方針の変更に該当するか
⇒該当しない(いずれも直物為替相場の枠内の為)
・税務上問題があるか
⇒法人税上は原則TTMなので問題ない(継続適用を条件としてTTB、TTSの適用OK)
■在外子会社の収益及び費用の換算方法変更(CRからARへ)
・会計方針の変更に該当するか
⇒正当な理由による会計方針の変更に該当する(原則AR、CR容認)
⇒原則、過去の期間のすべてについて遡及適用する
12.決算短信等の様式に関する自由度の向上を踏まえた上場企業の対応
■サマリー情報における所定様式の使用義務の撤廃
・サマリー情報の使用強制を取りやめ
⇒ただし事務に定着していることから、参考様式として位置づけ、使用を引き続き要請
⇒指標としてEBITを開示した会社もある
■業績予想について多様かる柔軟な開示が可能であることの明確化
⇒3月期決算の会社の96.6%が開示(表形式または記述形式)
⇒半期予想を非開示とする会社は増加傾向にある
⇒従来の表形式に加え、定性情報も盛り込んだケースもあり
13.「阿吽の呼吸」ではうまくいかない 海外子会社の経理業務体制の現状と課題
■経理業務体制の現状
・グループの統一方針の整備や業務プロセスやシステムの共通化・標準化に着手できていない。
⇒子会社の自主性を尊重するマネジメントスタイルを採用するケースが多く、駐在員が本社と海外子会社の間をつなぎとめることが多い。
■経理業務体制の課題
海外子会社ごとに業務や報告情報のレベルにバラつきがあるため、日本本社の経理部門の機能が情報の精査や情報の検証・調整にリソースがさかれている。
⇒グループ共通のルールや会計システム、業務報告システムなど業務プラットフォームを構築することで、共通化・標準化された手順に従った均質なオペレーション体制とし、グループ全体の経理業務のリソース軽減や新たな付加価値を提供する経理機能への移行にリソースをさくことができるようになる。
14.債券の利回りがマイナスになる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取り扱い
・安全性の高い債権の利回りがマイナスとなる場合、退職給付債務の計算で使う割引率をマイナスにできるか。
→ 以下(1)、(2)いずれの取り扱いも可とされた。
(1)割引率をゼロとする。
(2)マイナスの割引率を利用する。
・本議論は、欧州でも統一的な見解は出ておらず、今後も議論が必要とされている。
・今回の取り扱いは平成30年3月末までの一時的な取り扱いで、以後については未定。
15.契約締結
契約は契約当事者の自由な意思によって成立
口約束で条件を取り決めることも法律上問題ないが、会計処理の証拠書類として位置付けられるほか、下記のような効果が期待できるため、取引基本契約書を締結することが望ましい。
1.契約成立の有無を明確にする
2.契約の内容、特に権利・義務を明確にする※
3.トラブル発生時に契約内容・条件を立証する
※自社契約書のひな型通りに契約締結出来ない(取引相手が優位な立場にあり、先方の雛型に合わせざるを得ない)ケースでは、契約内容については顧問弁護士と相談しながら対応することが必要。
取引基本契約書を作成するときは、双方で合意した事項を簡潔明瞭に条文化し、抽象的な表現は極力避けることが重要。
契約書に盛り込む主な事項としては、主に下記がある。
1.取引の対象
2.債権回収条件
3.契約期間
4.契約解除または違約の場合の条件
5.暴力団排除条項
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決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
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