2017年6月30日金曜日

6/30 勉強会:直接審査請求が急増、改正前の4倍に 他

1.新たな収益認識基準導入で税負担増も

・「収益認識に関する会計基準」では返品調整引当金は計上されない
・新会計基準では、返品が見込まれる部分は収益に計上しない
⇒法人税法上の返品調整引当金が求める損金経理要件が満たせなくなる恐れ
⇒法人税法上の売上は返品見込み分を含めて計上のため、税負担増の可能性あり
※参考:下記の法人については、返品調整引当金を損金算入することが認められている
A:出版業
B:出版に関する取次業
C:医薬品・農薬・化粧品・既製服・蓄音機用レコード・磁気音声再生機用レコード又はデジタル式の音声再生機用レコードの製造業
DCに規定する物品の卸売業を営む法人


2.再調査手続きの適法性、寄付金課税めぐり争い

・登場人物⇒A社とa
a社の概要
A社の代表取締役が、代表取締役で株を100%保有
A社の子会社から分割され設立。A社と同じ所在地

1.再調査手続きの適法性について
関係会社a社に調査に入った際に見つかったA社の資料を根拠に行った
A社に対する再調査、更正処分は違法か?
 ⇒違法ではない
※関係法人から得られた資料であっても「新たに得られた情報」に該当
 
2.寄付金課税について
下記の賃借料は、寄付金に該当するか?
A社は、a社に対し賃借料の免除を行った
a社の設立から5か月後に上記免除が実施
a社は一定の事業収入を得ていた
a社の借入は代表者からのもののみであった
 ⇒寄付金に該当する(債務免除に経済合理性なし)
a社は、直ちに債務の返済を求められる状況であったとは考え難い判断


3.四半期報告書での経営方針記載で留意点

従来、決算短信で記載していた経営方針等について、有価証券報告書の記載内容にも追加されることとなった。

適用時期…29331日以降終了の事業年度に係る分より

なお、期末の有価証券報告書に変更が記載されている場合は、第一四半期報告書において変更の記載は不要。

()3月決算法人で4月中に経営方針等の変更があった場合
6月中に提出する有価証券報告書に変更内容を記載
6月の第一四半期報告書では変更内容の記載不要


4.収益認識、平成30年12月期の早期適用可

■最終基準化の時期と早期適用時期
・収益認識に関する会計基準の公開草案が7月に公表される予定
⇒最終基準化は平成30年以降になりそう

・仮に、最終基準化が平成3011日以後に開始する事業年度の期中に最終化された場合、平成301231日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結F/S及び個別F/Sから早期適用を認める方向
IFRSを連結F/Sにおいて任意適用している12月決算法人においては、連単一致させる為にIFRS15号「顧客との契約から生じる収益」等と同様、平成301月以降の早期適用を認めるニーズあり

■強制適用時期
・平成3341日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用
∴システム改修等の準備時間、経営管理の変更、開示への対応等を考慮

■企業への配慮
・収益認識基準は個別F/Sにも適用される為、企業にとっては少なからず実務負担が生じる
IFRS15号「顧客との契約から生じる収益」等と同様の経過措置を設ける方針
・収益認識会計基準を遡及適用する方法の他、適用初年度の期首の利益剰余金に加減する方法も認める
・早期適用した際の注記は必要最低限にとどめる(ex.収益を認識する通常の時点を注記)


5.直接審査請求が急増、改正前の4倍に

H284月から新たな国税不服申立制度がスタート。
課税処分後、再調査の請求(異議申立て)を経ず、国税不服審判所に対し、直接審査請求をすることができるようになった。

・従前
課税処分 ⇒ 異議申立て ⇒ 審査請求
・改正後
課税処分 ⇒ 審査請求

H28年度中における直接審査請求は、前年度の約4倍増。
再調査の請求の件数は前年度から大幅(47.5)減。


6.特例有限会社から大会社に、監査役は業務監査まで必要か?

■事案(安愚楽牧場事件)
・安愚楽牧場の出資者が会社と元役員に損害賠償請求請求を起こした裁判
⇒税理士の元監査役にも連帯責任があるかどうか?
■ポイント
・元監査役は税理士で「会計限定監査役」として契約
・特例有限会社から株式会社に商号変更し、大会社に該当(負債200億円以上)していたが、会計監査人と業務監査を行う通常監査役(公認会計士又は監査法人)を設置してなかった。
■地裁判決
元監査役に約7,000万円の損害賠償請求
⇒会計監査の場合より厳密な調査を行う義務と任務があったと判断
■高裁判決
責任なし
⇒取締役の選任懈怠であり、元監査役に業務監査の責任はないと判断


7.所得拡大税制 29年度 ポイント

■中小企業以外
(通常分)
平均給与が前年の平均給与より2%以上増加していない場合には適用されないこととされた。
増加率が計算できない場合も適用なしとされた。
つまり、新設法人や前年が役員のみの法人には適用がない。
(上乗せ分)
通常分の適用がある場合にはプラスアルファの税額控除あり
=通常分と上乗せ分はセットで適用となる。

■中小企業
(通常分)
平均給与が前年より増加していれば従来通り適用がある。
増加率が計算できない場合でも適用あり(新設法人でも適用あり)
(上乗せ分)
前年平均より2%以上増加していればプラスアルファの税額控除あり。
ただし、増加率が計算できない場合は適用なし。
(=新設法人は上乗せなし)


8.小規模宅地等の特例の実務(第4回)二世帯住宅②-持家のない子が相続した場合

■事案
被相続人甲、相続人乙(別生計)、丙(家なき子)
相続前 土地(330)⇒甲2/3 1/3、建物1(220)⇒乙1/1、建物2(180)⇒甲1/1
相続後 土地(330)⇒甲2/3分を乙2/6、丙2/6相続、建物2(180)⇒丙1/1相続

特定居住用宅地等に該当する部分は?

■区分所有建物の登記がされている場合
丙⇒相続した敷地のうち2階に対応する部分49.5㎡が特例対象
330×2/6×(180+220)×180=49.5
⇒区分所有登記がある場合、生計別の居住の用に供されていた部分(建物1階)は特例対象外

■区分所有建物の登記がされていない場合
乙⇒相続した敷地全体の110㎡が特例対象
⇒全体が被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の部分に含まれる

丙⇒相続した敷地全体の110㎡が特例対象
⇒まず全体が被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の部分に該当
プラスで他の要件を充たせば特例の適用対象
・甲の居住の用に供されていた部分に甲と共に起居していた親族がいない
・相続開始前3年以内に、丙又はその配偶者の所有する家屋に居住したことがない


9.ROA

・コーポレートガバナンス改革における新たなKPI(重要業績評価指標)としてROAが採用された
ROAROEと異なりレバレッジの影響を受けない指標
・今後はROAが重視されそう
ROA=負債も含めた総資産から、どれだけ効率的に利益を生み出せたかを示す指標
・何を「利益」とするかは企業ごとに異なる
 日立製作所:当期利益
 グンゼ:営業利益
 JFEホールディングス:経常利益+支払利息


10.公共施設等運営事業に関する財務諸表等規則等の改正について

■BS表示
・無形固定資産に区分表示「公共施設等運営権」
⇒単体での取扱い:金額の多寡にかかわらず区分表示
⇒連結での取扱い:資産総額の1/100以下である場合には、その他の資産としてOK

・運営権対価を分割で支払う場合に計上する負債も区分表示「公共施設等運営権に係る負債」
⇒1年基準で流動負債と固定負債に分ける
⇒単体と連結で異なる扱いはされていない(「その他」表示不可?)

・更新投資に係る資産及び負債:上記とは別の取扱いとなる。
⇒資産:その他の無形固定資産に含まれる。ただし、資産総額の5/100超の場合には区分表示
⇒負債:同様に、純資産の5/100を超える場合に区分表示(金額は現在価値により算出)

■注記
・公共施設運営権の概要
・公共施設運営権の減価償却の方法


11.外貨建取引等の換算方法の変更の留意事項

TTB(債権)、TTS(債務)による換算からTTMによる換算への変更
・会計方針の変更に該当するか
⇒該当しない(いずれも直物為替相場の枠内の為)
・税務上問題があるか
⇒法人税上は原則TTMなので問題ない(継続適用を条件としてTTBTTSの適用OK

■在外子会社の収益及び費用の換算方法変更(CRからARへ)
・会計方針の変更に該当するか
⇒正当な理由による会計方針の変更に該当する(原則ARCR容認)
⇒原則、過去の期間のすべてについて遡及適用する


12.決算短信等の様式に関する自由度の向上を踏まえた上場企業の対応

■サマリー情報における所定様式の使用義務の撤廃
・サマリー情報の使用強制を取りやめ
⇒ただし事務に定着していることから、参考様式として位置づけ、使用を引き続き要請
⇒指標としてEBITを開示した会社もある
■業績予想について多様かる柔軟な開示が可能であることの明確化
3月期決算の会社の96.6%が開示(表形式または記述形式)
⇒半期予想を非開示とする会社は増加傾向にある
⇒従来の表形式に加え、定性情報も盛り込んだケースもあり


13.「阿吽の呼吸」ではうまくいかない 海外子会社の経理業務体制の現状と課題

■経理業務体制の現状
・グループの統一方針の整備や業務プロセスやシステムの共通化・標準化に着手できていない。
⇒子会社の自主性を尊重するマネジメントスタイルを採用するケースが多く、駐在員が本社と海外子会社の間をつなぎとめることが多い。

■経理業務体制の課題
海外子会社ごとに業務や報告情報のレベルにバラつきがあるため、日本本社の経理部門の機能が情報の精査や情報の検証・調整にリソースがさかれている。
⇒グループ共通のルールや会計システム、業務報告システムなど業務プラットフォームを構築することで、共通化・標準化された手順に従った均質なオペレーション体制とし、グループ全体の経理業務のリソース軽減や新たな付加価値を提供する経理機能への移行にリソースをさくことができるようになる。


14.債券の利回りがマイナスになる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取り扱い

・安全性の高い債権の利回りがマイナスとなる場合、退職給付債務の計算で使う割引率をマイナスにできるか。

→ 以下(1)(2)いずれの取り扱いも可とされた。

(1)割引率をゼロとする。
(2)マイナスの割引率を利用する。

・本議論は、欧州でも統一的な見解は出ておらず、今後も議論が必要とされている。 
・今回の取り扱いは平成303月末までの一時的な取り扱いで、以後については未定。


15.契約締結

契約は契約当事者の自由な意思によって成立
口約束で条件を取り決めることも法律上問題ないが、会計処理の証拠書類として位置付けられるほか、下記のような効果が期待できるため、取引基本契約書を締結することが望ましい。

1.契約成立の有無を明確にする
2.契約の内容、特に権利・義務を明確にする※
3.トラブル発生時に契約内容・条件を立証する

※自社契約書のひな型通りに契約締結出来ない(取引相手が優位な立場にあり、先方の雛型に合わせざるを得ない)ケースでは、契約内容については顧問弁護士と相談しながら対応することが必要。

取引基本契約書を作成するときは、双方で合意した事項を簡潔明瞭に条文化し、抽象的な表現は極力避けることが重要。
契約書に盛り込む主な事項としては、主に下記がある。

1.取引の対象
2.債権回収条件
3.契約期間
4.契約解除または違約の場合の条件
5.暴力団排除条項









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2017年6月23日金曜日

6/23 勉強会:税務の動向 民泊新法が可決・成立 他

1.個別への収益認識会計適用で経過措置

ASBJ7月に「収益認識に関する会計基準(案)」を公表予定
・個別財務諸表でも適用のため事務負担大
⇒経過措置を設ける方針
また適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができることも認める
⇒つまり遡及適用しない方法も容認
※平成3341日以後開始する事業年度から強制適用の方向


2.会社法改正で株主総会資料の電子提供制度が導入へ

※検討段階
・上場企業など一定の株式会社に対し、株主総会資料の電子提供を義務づけ
・株主総会の招集通知に記載している事項全てWEB掲載
・掲載期間は、招集通知発送時から総会終了後3カ月
・アドレスは、招集通知で通知
・株主はWEB掲載事項の全てを記載した書面の交付請求が可能


3.国税庁、太陽光発電関連事案で多数告発

国税庁が平成28年の査察事績の告発件数を公表。
査察事件は年間100件で、全てに有罪判決が下されている。

■国税庁が、近年力を入れている査察事項
(1)消費税事案
(2)国際事案
(3)社会的影響力の大きい事案

■摘発事例
・国外に設立した会社に対して架空の支払手数料を計上していた会社
⇒法人税4,400万円の脱税を摘発
・太陽光発電設営・販売会社が架空の業務委託費を計上していた会社
⇒法人税12000万円の脱税を摘発

4.行為計算否認、ヤフー及びIBM判決の影響鮮明

・最高裁でIBM事件及びヤフー・IDCF事件の判決が確定し、1年余りが経過
⇒両判決で示された行為否認規定※の適用ロジックが既に実務に浸透し始めている。
※法人税法132条、132条の2
 IBM判決では、法人税132条適用の判断基準は、経済的合理性のみという解釈を明示
⇒納税者にとって非常に厳しい判断基準と言えるが、課税当局は上記判断基準に則り、従来であれば、寄付金課税の対象となっていたと考えられる事例に対して、法人税132条を適用
 ・法人税法132条は、かつては伝家の宝刀と言われるほど適用件数が少なかったが、今後はその適用件数が増える見込み


5.文書回答手続の見直しで照会者の範囲も拡大

H29.7月受付分より、国税庁の「事前照会に対する文書回答の事務処理手続等」の見直しが実施される。
 事前照会に対する文書回答とは、納税者がある取引等につき、税務上の取扱いについて税務署に問合せ(事前照会)をした場合、一定の要件を満たす文書回答の求めが必要となった場合に、納税者に対し文書で回答を行うとともに、国税庁のHP上で公表すること。

■見直し点
・照会対象のうち、「将来行う予定の取引等」について取引の範囲をわかりやすくすることが検討
・取引を行う当事者以外でも照会できるよう照会者の範囲を広げる

6.RSが業績連動給与に該当しない根拠は

RSとは…特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)

業績連動給与の定義規定には「特定譲渡制限付株式」の文言があるが、損金算入要件を規定する条文には「特定譲渡制限付株式」という文言が出てこない
∴譲渡制限付株式報酬は業績連動給与として損金算入することはできない


7.税務の動向 民泊新法が可決・成立

「住宅宿泊事業法」が2969日に成立し、民泊に係るルールが整備された。

■所得税
宿泊料が所得税の対象となることが明確化された

■固定資産税
固定資産税の減額特例の対象から外れることになる見込み
⇒たとえばバリアフリー改修を行った場合には一定の減額制度があるが、民泊に供する場合「居住の用に供するもの」でなくなるため適用対象外となることが予想される。

■参考
・住宅宿泊事業※を営もうとする場合:都道府県知事に届出が必要となる
※住宅に人を180日を超えない範囲で宿泊させる事業


8.日本法人が信託銀行に支払うマスターリース料は源泉徴収必要-東京局受益者等課税信託の源泉徴収義務について文書回答

■事案
外国法人Bが不動産信託の信託受益権を購入
信託受託社(信託銀行C)A社がマスターリース契約、A社は第三社とサブリース契約を締結
お金の流れ⇒賃料は受益者である外国法人B

■照会内容
A社はC信託銀行にマスターリース料を支払うが、外国法人Bに対する国内にある不動産の貸付けによる対価として源泉徴収義務を負うか?

■結論
源泉徴収義務を負う
マスターリース契約が信託銀行との間であってもマスターリース料の支払いはA社から外国法人Bへの支払いと取り扱われる。
受益者等課税信託に係る規定は、
⇒信託財産の法律上の帰属者である受託者への課税を排し、信託財産の経済上の帰属者に対し課税するもの


9.PPAにおける無形資産の認識

・無形資産として何を認識すべきか?
 具体的な無形資産の例示

①マーケティング関連の無形資産
・商標・商号・ブランド

②顧客関連の無形資産
・顧客リスト
・受注残
・顧客との契約・関連する顧客との関係
・契約外の顧客関係(将来の発注見込み)

③契約関連の無形資産
・他社より有利な条件での契約等
・営業許可、フランチャイズ契約、放映権、利用権など

④技術関連の無形資産
・特許権を取得した技術
・特許申請中・未申請の技術
・企業秘密(秘密の製法・工程等)
・ソフトウェア、データベース
・仕掛中の研究開発(製薬会社等)


10.ハイライト情報、過年度遡及会計基準におけるハイライト情報の取扱い

■ハイライト情報
Ⅰの部の第一部(有価証券届出書の第二部)の冒頭に、連結及び提出会社について「主要な経営指標等の推移」を記載する項目

■過年度遡及会計基準におけるハイライト情報の取扱い
最近連結会計年度(最近事業年度)に会計方針の変更、表示方法の変更、過去の誤謬の訂正を行った場合は、その1期前(5期並んでいるうちの4期目)の経営指標等について遡及修正を行わなければならない。
なお、それ以前の期についても注記を付した上で遡及修正後の数値を記載することができる。

(参考)
・記載項目
1)売上高
2)経常利益金額又は経常損失金額
3)当期純利益金額又は当期純損失金額
4)持分法を適用した場合の投資利益又は投資損失の金額(連結財務諸表を作成している場合を除く)
5)資本金
6)発行済株式数
7)純資産額
8)総資産額
91株当たり純資産額
101株当たり配当額(中間配当を含む)
111株当たり当期純利益金額又は当期純損失金額
12)潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額
13)自己資本比率
14)自己資本利益率
15)株価収益率
16)配当性向
17)営業活動によるキャッシュ・フロー(連結財務諸表を作成している場合を除く)(注5
18)投資活動によるキャッシュ・フロー(連結財務諸表を作成している場合を除く)(注5
19)財務活動によるキャッシュ・フロー(連結財務諸表を作成している場合を除く)(注5
20)現金及び現金同等物の期末残高(連結財務諸表を作成している場合を除く)(注5
21)従業員数





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2017年6月16日金曜日

6/16 勉強会:国外転出時課税の対象は一千億円超 他

1.「遺言の種類」

1)自筆証書遺言(承前)
⇒全文を自分で書く遺言
メリット
・費用がかからず、手軽に書ける
デメリット
・民法で定められたとおりに作成をしないと、遺言として認められない
・遺言書の隠匿、偽造、紛失の恐れがある
・解釈に疑義が生じるリスクが高い
・家庭裁判所の検認手続きを要する

2)公正証書遺言
⇒公証役場で公証人に作成してもらう遺言
メリット
・方式不備等の不安がない
・紛失や偽造変造の心配がない
・家庭裁判所の検認が不要
デメリット
・証人2名が必要で手間もかかる
・費用が発生する
・秘密が守れない

3)秘密証書遺言
⇒「内容」を秘密にしたまま、「存在」のみを証明してもらう遺言
 実際はあまり利用されていない
メリット
・「内容」を他人に秘密にしたまま、遺言書の「存在」を明らかにできる
・偽造・変造の心配がほとんどない
デメリット
・作成の際、煩雑な手続きが求められる
・内容は確認していないため、公正証書遺言のような確実さがない
・執行時に家庭裁判所の検認の手続きを要する


2.今週の専門用語

■地域統括会社
・日本の親会社の子会社として海外に設立されるもの
・複数の海外現地法人の業務を集約
(メリット)
・集約によるコスト削減
・意思決定の一本化、迅速化
・流通経路の簡素化

H22年度税制改正で、タックスヘイブン対策税制の適用対象から除外されて以来、設立する日本企業が急増


3.国外転出時課税の対象は一千億円超

■平成28年分確定申告の申告状況について

・所得金額1億円超の申告者…2383

・国外転出時課税の申告数…99
⇒うち所得税の課税対象となる含み益は1,013億円

・マイナンバー記載率…83


4.不適法な納付も予納額還付は認められず

■国税通則法第5912
・納税者が「概ね6ヶ月以内において納付すべき税額の確定することが確実であると認められる国税」を納付する旨を税務署長に申し出て納付した場合、納税者は還付請求できない

■本件
・相続財産の申告漏れに対する税務調査及び査察調査を受けた納税者が査察官の助言を踏まえ、国税の予納申出書を提出した上で納付
⇒その後、予納額は税務当局による増額更生等により納付すべきこととなった国税に全額充当

■納税者の主張
・本件予納は、国税通則法第5912号に該当しない
⇒過誤納金としての還付及び還付加算金の支払を納税当局に対して請求

■税務当局の主張
・本件予納は、国税通則法第5912号に該当
∴査察官が予納の積極的利用の勧奨を行った後に相続人が予納の申し出を行った等の客観的状況からすれば、納税者が国税通則法第5912号の国税として納付する旨を申し出て納付したものであることは明らか

■裁判所
・本件予納は、国税通則法第5912号に該当しない(不適法な納付)
∴査察の進行を待たずに自ら税額を決めて修正申告することを予定していたとまでは認められない。

・充当は信義則に反する権利の濫用として無効なものであるとは言えない
∴所轄税務署長が還付請求権を納税者に最も有利に、増額更生等により納税者が納付すべきこととなった国税に充当

⇒納税者の請求を棄却


5.法定相続情報証明制度について

H29.5.29より法定相続情報証明制度が始まった。

■法定相続情報証明制度とは
相続が発生する前に、法務局へ戸除籍謄本等の束を提出し、あわせて法定相続情報一覧図を提出することで、法務局が一覧図に認証文を付した写しを交付する制度。

■概要
・従来の手続きと比較し、
認証文が付された写しのみの提出で被相続人の預貯金等の払戻し可能となった。(手続の負担が軽減)
・手続は住所地を管轄する登記所などで手続き可能。
・被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本が必要。
・法定相続情報一覧図には、以下項目を記載する必要あり。
・被相続人の氏名・生年月日、被相続人死亡時の住所及び死亡年月日、相続人の氏名・生年月日・続柄等
・相続放棄者であっても上記一覧図に記載する必要あり。
・法定代理人のほか、税理士でも手続きの申請が可能。(弁護士、社労士、司法書士も可)
・相続手続以外の利用は不可。
・保存期間中(5年間)は何度でも再交付可能。
・不正申出には戸籍法の罰則規定が適用される


6.非居住者か否かの確認義務巡り控訴審でも企業側が敗訴

■事案
不動産等譲渡対価の源泉徴収義務を巡る裁判
⇒売主が非居住者の場合は所得税の源泉徴収が必要

買主不動産会社は「居住者」と判断
・売主が日本国内の住民票を所有

税務署は「非居住者」と判断
・米国人と結婚して米国籍を取得し、現在も米国の住居で長男と同居中
・日本には年14回ほど帰国(日本滞在は1年の半分に満たない)

■裁決
1審、2審ともに不動産会社の敗訴
⇒売主は生活の本拠が米国であり、非居住者
⇒買主は注意義務を尽くしたとはいえない

■確認すべきだった点
・出入国の有無・頻度
・海外への滞在期間
・海外での家族関係、資産状況等


7.消費税:簡易課税・性質及び形状変更の判断

QA社は再生資源としてプラスチック容器等を購入し,それをプラスチック製品の原材料として販売するに当たって梱包等の都合で一部を裁断したうえで販売している。

この場合の再生資源の販売は,性質及び形状を変更しないもの(第1種事業)として簡易課税の計算を行ってよいか?

A1種事業で問題ない。
消費税法基本通達1322 《性質及び形状を変更しないことの意義》の考え方を踏まえれば,販売等の都合上裁断するものであり,販売に伴い必然的に生ずる加工行為であることから,新たな商品の製造とまで評価する必要はないと考えられる。


よって、性質及び形状を変更しないもの(第1種事業)として簡易課税の計算を行ってよい


8.会社規模区分と土地保有特定会社

■土地保有特定会社の該当に注意
2911日以後の相続・贈与から、非上場株の評価における会社規模の基準等が変更
⇒大会社に該当しやすくなった⇒自動的に土地保有特定会社に該当してしまうケースも想定される
※通常は大会社の方が評価上は有利

■土地保有特定会社の判定
土地保有割合以下で土地特になる
・中会社のケース⇒9割以上
・大会社のケース⇒7割以上
※大会社の場合には判定の保有割合が低く厳しい

【参考】会社規模
・改正前
従業員数⇒100人以上で大会社、
取引高基準(100人未満の場合)⇒例えば卸売業、直前期の取引金額80億円以上で大会社
・改正後
従業員数⇒70人以上で大会社
取引高基準(70人未満の場合)⇒例えば卸売業、直前期の取引金額30億円以上で大会社
※大会社の判定が緩くなっている


9.合意された手続業務

・合意された範囲の財務情報のみを扱う
・財務諸表監査のような保証業務には該当しない
・保証業務の結果として誤用されることを防ぐため、報告書の配布・利用先も手続業務に合意した関係者に限られる


10.所得拡大税制改正概要

1.適用要件
(1)前年度2%以上の増加が要件
※従来は、前年度を上回れば良かった。
(2)適用年度に係る比較平均給与がゼロの場合は要件を満たさなくなった。
⇒新設法人の適用は出来なくなった。

2.税額控除額
(1)大会社
雇用者給与増加額×10%+(雇用者給与支給額-比較雇用者給与支給額)×2%
(2)中小企業
雇用者給与増加額×10%(雇用者給与支給額-比較雇用者給与支給額)×12%
※従前は、大企業・中小企業とも雇用者給与増加額×10%


11.PFI事業に関する会計処理・開示のポイント

■適用時期等
・適用時期:3月決算の会社…2018/3期の第1四半期から
・経過措置:なし。過去の期間全てに遡及適用する(!)

■概要
・公共施設等の運営権を合理的に見積もって無形固定資産に計上
・対象:公共施設等運営権制度に基づく運営権
⇒利用料金の徴収を行う公共施設等について、当該施設の所有権を公共主体が有したままで、公共施設等運営権を民間事業者に設定する制度
・取得時の支出のみならず、分割で支払う場合の将来支出額も割引計算により現在価値を算出し、運営権として計上
・施設の更新工事:いわゆる資本的支出的な部分も運営権価額を構成する


12.税効果会計に関する四半期決算固有の論点

■会社分類
・基本的には課税所得が確定する年度決算で見直す
・ただし、四半期決算の時点で既に当期の年度末において企業の分類を見直すような業績の状況になっているとき等は年度決算を待たずに起業の分類を変更することを検討

■会計処理
・原則的な税金計算における簡便的な取扱い
 ⇒納付税額の算定に際して加減算項目や税額控除項目を重要なものに限定できる
 ⇒DTAの回収可能性の判断に際して、前期末に使用した将来の業績予測やタックスプランニングを利用できる
 ※経営環境等に著しい変化が生じていない場合
・四半期特有の会計処理
①中間税効果実務指針に定める方法(予想年間税金費用/予想年間税引前当期純利益)
⇒一時差異に該当しない差異や税額控除等の算定に際し、重要な項目に限定することが出来る。
②税効果会計適用後の実効税率を厳密に見積もる方法


13.役務提供の対価として特定譲渡制限付株式を交付する場合の会計処理

■前提
・役員から報酬債権2,000万円の現物出資をうけ、株式を発行
・当該報酬が対象とする勤務期間および付与から譲渡制限解除までの期間は2
・譲渡制限期間中は勤務を継続
■会計処理
1.株式交付時
前払費用2,000万円/資本等2,000万円
2.役務提供1年目
株式報酬費用1,000万円/前払費用1,000万円
3.株式交付時
株式報酬費用1,000万円/前払費用1,000万円

14.四半期短信の開示についての見直し

■従来
サマリー情報の様式:使用を強制
投資判断に有用な情報(定性的情報等):開示を要請

■見直し後
サマリー情報の様式:使用を要請(開示の自由度up)
投資判断に有用な情報(定性的情報等):開示の要請もなし(開示の速報度up)

■適用時期
H29.3以降終了する四半期決算短信から


15.中小企業特例に関する改正の実務ポイント

・地域中核企業向け設備投資促進税制の創設
⇒地域経済への波及効果や都道府県の基本計画に合致していることが前提
⇒認定された事業計画の設備投資について特別償却or税額控除をとれる

・中小企業投資促進税制
⇒生産性向上設備の税制優遇の上乗せ措置が改組し、資産対象が拡充

・中小企業経営強化税制
⇒特定経営能力向上設備等の取得時に即時償却または特別控除

・特定中小企業者等の経営改善設備投資促進税制
⇒平成25年度税制改正で創設されたもので、平成29331日までに取得した資産が対象であったが、適用期限が2年延長。

・経営力向上設備等の取得に係る固定資産税の減税措置
⇒取得した資産の固定資産税を軽減する措置の対象資産(器具備品等)が拡大

・中小企業向け租税特別措置
⇒平成314月以後に開始する事業年度から中小企業向けの各租税特別措置について、平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)で適用の可否を判断。
⇒平均所得が年15億円を超える事業年度では、軽減税率、貸倒引当金の租税特別措置が適用できない


16.IFRS移行の現状

・平成292月末時点で、IFRSの任意適用・適用予定上場企業は140社。
・日本たばこ産業、IFRS導入の主な財務的な影響は下記。
→ 売上収益が日本基準で6兆円あったが、IFRSでは2兆円に(代理人取引と間接税の影響)。
→ 大型買収ののれん非償却。
KDDI1年半でスピード導入。工夫した点は…
→導入は連結決算のみ(一方で数字の二重管理の問題発生)
IFRS導入のメリットは、「機動的なM&Aが可能になった」「機関投資家のニーズに応えられる」「海外子会社の業績比較が容易になった」など。


17.IPO直後の高値⇒その後の下落ケースが多い背景

1.全体相場の先行きが不透明
2.その企業の業績が上場前の想定を下回った
3.業績は比較的堅調で割安感があるものの、投資家に業態や将来の成長が理解されずにいる
4.業績は良くても割安感がある
5IR活動への関心が薄いか意識がない




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