2018年12月15日土曜日

12/14 勉強会:IFRS16号「リース」適用時の表示と開示のポイント 他

1.金地金に係る仕入税額控除を厳格化

・平成30年改正で金の密輸に係る罰則強化がなされたが、密輸の摘発件数は高止まりしているため、
平成31年度税制改正において消費税の仕入税額控除を厳格化する。
⇒密輸品と知りながら行った課税仕入は、仕入税額控除を認めないこととする。
⇒金地金に係る仕入税額控除については、現行の帳簿保存に加えて「本人確認書類の写し」
 (個人の場合は免許証等、法人の場合は登記事項証明書等)の保存が要件とされる方向に。







2.改正民法で創設の配偶者居住権の財産評価

■配偶者居住権とは
・配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利
(=生前同様、継続して住み続ける権利)
・例えば、配偶者と長男が2000万円の建物を相続した場合(所有権は長男)、長男の所有権1000万円と配偶者の居住権1000万円とにわけるイメージ
⇒配偶者居住権の財産評価の方法が問題となっていた(従来)

■2019年度税制改正
・評価方法が定められることに。
・敷地に対する配偶者居住権の計算方法も合わせて定められる
⇒小規模宅地等の特例の対象となるので税負担軽減(配偶者居住権の登録免許税は1000分の2)




3.仮想通貨の法人税法上の取扱いを明確化

・31年度税制改正で仮想通貨に関する法人税法上の取扱いが明確化

■期末に保有する仮想通貨について
・活発な市場が存在する場合は時価法により評価し、簿価との差額は評価損益として計上
・活発な市場が存在しない場合は原価法により評価し、評価損益は計上しない(低価法の適用は不可)

■譲渡損益について
・譲渡に係る契約をした日に計上(約定日基準)
・譲渡原価の算出方法は、移動平均法または総平均法
・信用取引で期末に決済されていないものがある場合、みなし決済損益額を計上






4.平成31年10月1日以後の消費税率等に関する経過措置Q&A

■部分完成基準が適用される建設工事等の適用税率
・H31.4/1以後に契約締結、完成部分を順次引渡しする建設工事契約の場合
 ①H31.9/30までの引渡⇒旧税率、②H31.10/1以降の引渡⇒新税率

■不動産賃貸の賃借料に係る適用税率
・H31.10/1以後に受領する賃貸料
当月分(1日~末日)の賃貸料の支払期日を①前月○日としている場合と、②翌月○日としている場合
①10月分を9月末日に受領した場合 ⇒ 新税率、②9月分を10月に受領 ⇒ 旧税率

■短期前払費用として処理した場合の仕入税額控除
・3月決算法人がH31.4~H32.3までの1年間の保守契約料金を支払った場合
H31.4/1 ~H31.9/30分についてのみ仕入税額控除を行い、新税率については仮払金として翌期に繰越
翌期の課税期間の消費税申告において新税率により仕入税額控除を行う。

■ICカードチャージによる乗車券
・事業者がH31.9/30までに旅客運賃、映画演劇を催す場所等へ入場料金を領収している場合、その領収に係る課税資産の譲渡等が10/1以後であっても旧税率が適用される
⇒「領収している場合」とは乗車券等を9/30までに販売した場合であり、チャージは販売ではないので注意。







5.民法の成年年齢引き下げで相続税法等が見直し

■成年年齢の引き下げ
・成年年齢を20歳から18歳に引き下げることを含む民法改正が行われた。
→平成30年6月に公布され、平成34年4月1日から施工
・税制上の年齢要件を20歳又は成年としている制度
→民法における成年年齢引き下げに合わせて、18歳に引き下げられる方向

■改正内容
相続税法
・20歳未満の者に対する控除制度
・相続時精算課税制度における受贈者の要件について20歳以上
租税措置法
・贈与税の税率の特例における受贈者要件について20歳以上
・相続時精算課税の特例における受贈者の要件について20歳以上
税理士法
・欠格事由として未成年者
→上記のような20歳や成年者を要件にしている規定について見直しがなされる





6.任意の情報照会拒否なら強制力&罰則も

31年度税制改正で税務当局による情報提供要請権限が拡充。
⇒電子経済稼得者は多額の所得を得ているにもかかわらず所得税を申告していない者等の把握する為。

■対象者
メルカリや仮想通貨業者⇒年間1,000万円超
脱税商品の販売業者
金地金業者

金融機関やクレジット会社に対する任意の情報提供要請は行われているが、税法上、その根拠となる明文規定があるわけでない。
⇒国税通則法に明記する方向。

■任意の情報提供要請に応じない場合は強制力をもって求められるようになる。
拒否した場合には、検査忌避の罰則の適用を受けることにもなることも。
⇒一年以下の懲役又は、50万円以下の罰金




7.税務CGによる調査時期延長等、対象法人は90社に増加

・税務に関するコーポレートガバナンス(税務CG)の取り組みが良好で調査時期延長等がされた法人が平成30年6月末時点で90社(前年度比+39社)と増加した。
・不適切な税務処理が発生するリスク低減や税務調査対応の負担軽減、自主的に税務方針を公表する企業が現れるなど税務CGに対する意識が定着してきた。
・しかし、業種別でばらつきがある。
⇒金融・サービス業で税務CGが良好、建設業で良好である比率が小さい。
⇒整備・運用状況に改善の余地がある。






8.税務賠償事例

■概要
税理士Aは関与先の法人税申告において雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除の
適用要件を確認する上で必要な平均給与等支給額を算定するにあたって,一般被保険者の定義を誤って
認識していたことに気付いた。

<一般被保険者>
×雇用保険に加入していない者は計算対象外
○加入手続きをしていなくても、
雇用保険の適用事業に雇用される労働者であって,65歳以上で新たに雇用される者など雇用保険法の適用除外となる者や
1週間の所定労働時間が20時間未満である者等以外は,原則として,被保険者となり、計算対象となる

<対策>
ポイント1 改正税法に留意する
ポイント2 研修会・セミナーを活用する
ポイント3 鍵となる適用要件を確認する






仮想通貨と財産債務調書

財産債務調書の提出対象者が仮想通貨を所有している場合、
12/31時点における仮想通貨の取引価格を財産債務調書に記載して提出する必要あり。

※財産債務調書の提出対象者とは
その年の総所得金額等の合計額が2,000万円超かつ、
その年の12/31時点で3億円以上の財産を保有してる者

■記載方法
・財産債務調書の「その他の財産」欄に記入する
・取引価格(=時価)は交換業者が公表する取引価額を基に算定するが、
市場が存在しない場合等は取得価額や売買実例価額などを参考に価額を記載する




10.M&Aのディール保護条項の種類と実務上の留意点

■特例有限会社と株式会社の違い

①機関設計

・必置機関は株主総会と取締役1名のみ
・監査役は置ける
・取締役会、会計参与、監査役会、会計監査人等を置けない

②任期

・規定なし 任期について定めなくてOK
・任期の定めのない取締役が、解任された場合、損害賠償できるか
 ⇒ 出来ない
 ⇒ 株式会社の場合、任期途中で正当な理由なく解任された取締役は損賠賠償請求可能。

③決算公告

・義務なし

④みなし解散規定

・適用除外(12年以上登記をしなくても解消したものとみなされない)。





11.IFRS16号「リース」適用時の表示と開示のポイント

■BS
・使用権資産はいずれかの方法で表示
①他の原資産と区分して表示
②原資産と同じ科目に含める(その科目と金額を注記により開示)。

・リース負債はいずれかの方法で表示
①他の負債と区分して表示
②他の負債と同じ科目に含める(その科目と金額を注記により開示)。

■PL
・減価償却費と利息費用を区分表示。
・利息費用は金融費用として処理。

■CF
・リース負債の元本返済部分は財務活動。
・リース負債に係る利息費用は、他の利息と同様の区分で表示(営業活動or財務活動)。
・短期リース料、少額資産のリース料、リース負債に含まれない変動リース料は営業活動。

■開示
・減価償却費、利息費用
・短期リース、少額リース資産、変動リース料に係る費用
・サブリースに係る収益
・キャッシュアウトフローの合計額
・使用権資産の増加額
・セール&リースバック取引の利得又は損失
・期末時点での種類別の簿価
⇒他にも、延長オプション、解約オプション、残価保証額等、追加の定性的・定量的情報の開示が求められる。






12事業報告等と有報の一体的開示のポイント

・事業報告及び(連結)計算書類=会社法
・有価証券報告書=金融商品取引法
■主な記載の共通化について
(大株主の状況)
・株主の所有株式数の割合
 有報=所有株式数/発行済株式総数
 事業報告=所有株式数/(発行済株式総数-自己株式)
⇒自己株式を控除する算定へ統一
・議決権行使基準日を事業年度末日より後ろの日に設定した場合
 改正前=事業年度末日時点の状況を記載
 改正後=有報の「大株主の状況」の記載時点を原則として議決権行使の基準日とする







13.改正税効果会計の早期適用ポイント

■改正概要
主に税効果の体系整理や基準間での不整合、実務上の問題への対応図る+開示拡充を目的としている。
→注記事項のみ早期適用可能
→比較可能性を確保するために会計処理の早期適用は☓


■改正内容
・貸借対照表区分の見直し
→繰延税金資産/負債は固定区分で計上

・評価性引当額の内訳注記
→繰越欠損金に係る評価制引当額と将来減算一時差異等に係るものを記載

・繰越欠損金の繰越期限別の内訳に関する注記
→外国子会社がある場合、国によって税制が異なるため、情報収集が必要となる

・個別財務諸表での取扱
→連結財務諸表で注記済みの場合、個別財務諸表での注記は不要





14.収益認識基準の建設業への影響

現行の会計基準では、成果の確実性が認められる場合は工事進行基準、認められない場合は工事完成基準を適用
⇒工事完成基準について、新たに原価回収基準の適用検討が必要になる

■収益認識基準の工事契約処理
(1)一定の期間にわたり充足される履行義務と判断され、進捗度が合理的に見積もれる場合
⇒工事進行基準を適用し、進捗度に基づき収益を認識
(2)一定の期間に渡り充足される履行義務と判断されるが、進捗度が合理的に見積もれない場合
⇒発生した費用を回収することが見込まれる場合、原価回収基準を適用
(3)一定の期間に渡り充足される履行義務と判断できない場合
  ⇒履行義務を充足した一時点で収益を認識
(4)期間がごく短い工事契約
  ⇒完全に履行義務を充足した時点で収益を認識できる
(5)工事損失引当金を計上する場合
⇒現行の処理と変更なし






15利益計画・予算管理

1.中期経営計画の作成
・企業環境の分析
社会環境、経済環境、金融環境、市場環境、競合分析(財務面、戦略面を含む)を詳細に行い、
SWOT(強み、弱み、事業機会、脅威)等を把握する必要あり。
その上で、業界全体の将来性、業界における自社のポジション、参入障壁の高さ、自社の強みと弱み等を計画に反映。

・経営方針の決定
企業環境分析の結果を踏まえて、経営方針を作成。
経営方針は経営トップが描く将来像であり、社員全員の指針となる。

・各部門との調整
トップマネジメントと各部門との間で十分な検討、調整を行い、全社的に意思統一を図ることが必要。

・単年度予算との整合性
中長期経営計画は、単年度予算と整合していることが必要。

2.単年度予算管理について株式上場審査上のポイント
・達成可能性
上場審査上は、たとえ前年度の実績を上回ったとしても、予算と実績が大幅に乖離すれば、予算管理能力に欠ける会社であると判断され、他に問題点が無くても、公開妥当性が疑わしいと判断されてしまう場合もあり。
予算については、上場の直前まで、その達成可能性が審査されることになる。

・合理性
予算は、単なる社内目標ではなく、現状を分析し、その現状分析に基づき、合理的な根拠を有する計画でなければならない。
したがって、以下の視点が必要。
・利益計画は、資金計画、人員計画、設備投資計画等との整合性が図られたものか
・マネジメントチームの事業遂行能力があるか
・実現のために、必要な経営資源を認識しているか





















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決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

2018年12月11日火曜日

12/7 勉強会:収益認識基準の内部統制への影響 他

1.のれんの計上の状況等の分析

■IFRS任意適用企業におけるのれん
・IFRS=のれん非償却(減損テストのみ)、JGAAP=のれん償却
・IFRS任意適用企業=2018年3月期までで158社(うち、のれん計上140社)

■のれんの計上額が大きいIFRS任意適用企業(カッコは連結純資産に対する割合)
・ソフトバンク 4兆3025億円(68.6%)
・日本たばこ産業 1兆8912億円(66.5%)
・武田薬品工業 1兆0292億円(51.0%)
・電通 7981億円(69.4%)
・アサヒグループホールディングス 7379億円(64.0%)
・このほか、2019年3月期の第1四半期よりIFRS適用を開始したNTTグループもNTT本体ののれん額は1.3兆円

■比較
・JGAAPの方が償却するため、IFRS適用企業に比べ「身軽」。
・投資家にとってもいざというときに巨額の減損リスクがより少ないのはJGAAPといいうる






2.国税庁、仮想通貨の申告手続きを簡便化

■所得税申告
・平成30年分の確定申告から、1月末に業者から交付される「年間取引報告書」の利用が可能に
・年間取引報告書には、仮想通貨ごとの購入金額や売却金額が明記される
・国税庁HPで仮想通貨の所得を自動計算できる「仮想通貨の計算書」を公表
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2018/faq/index.htm

■相続税申告
・仮想通貨を相続した相続人は、業者から残高証明書の交付を受けられる
・残高証明書の記載内容を基に申告書を作成することが可能に





3.H31.10/1以後の消費税率等の経過措置

■指定役務の提供の税率等に関する経過措置
指定役務とは
⇒役務の提供に先立って、対価の全部または一部が分割して支払われる契約 
例として冠婚葬祭互助会が挙げられている。(資産の購入を前提に積み立てているものは除外)

下記要件を満たす事で旧税率の適用が可能となる
・平成31年3月31日までに締結した役務の提供にかかる契約。
・契約に係る役務の提供の対価の額が定められていること ・後に対価の変更を求めることができないこと。

■予約販売の書籍等に係る税率等の経過措置
・平成31年3月31日までに締結
・不特定かつ多数の者に対する定期継続供給契約に基づき譲渡
・書籍その他の物品に係る対価の全部または一部を9/30までに収受している場合

■通販等の税率等に関する経過措置
・平成31年4月1日前に販売価格等の条件を提示、又は準備を完了している
⇒一般的に新聞・TV・ラジオ、ネットなどでの販売条件を提示
・平成31年10月1日前に申し込みを受け、条件に従い商品を販売





4.課税売上割合に準ずる割合承認に高い壁

・課税売上割合に準ずる割合を適用するためには、適用しようとする課税期間の末日までに税務署長の承認を受けて必要がある。
・「課税売上割合に準ずる割合」適用承認申請検討事業者が増加しているが承認を受けることは極めて困難。

■下記の内容での「課税売上割合に準ずる割合」の適用承認申請はすべて却下
⇒同一種類の費用のうち特定の費用のみに適用すること。
⇒居住契約付建物から生じた課税売上高及び非課税売上高のみから同割合を計算すること。
⇒売買価額が変動するものを算式に組み込むこと。






5.株主総会資料の電子提供、株主総会の3週間前の日から

・法制審議会会社法制部会は、新たに株主総会資料の電子提供制度を導入する方針だが、その概要が固まった。
⇒株主総会資料の電子提供制度とは、取締役が株主総会資料を自社HP等に掲載し、株主に対して当該ウェブサイトのアドレス等を書面により通知した場合には、株主の個別の承諾を得ていない場合であっても、株主に対して株主総会資料を適法に提供したものとする制度

・背景として現行、招集通知及び関連書類の電子提供には株主から事前に個別承諾を得ることとされており、実際に電子提供できる書類の一部にとどまっている等問題点が指摘されていた。




6.消費税 経過措置 長期大規模工事

■対象
2019年4月1日から2019年9月30日までの間に締結した長期大規模工事で
目的物の引渡しが2019年10月1日以降となるもの

■計上額
下記の算式により計算した金額を8%売上として計上できる

①長期大規模工事にかかる対価の額
②着手日から2019年9月30日までの間に支出した経費の額
③2019年9月30日において見積もられる総工事原価の額

計上額=①×②/③

なお,事業者がこの経過措置の適用を受けた目的物の引渡しを行った場合には,その相手方に
この経過措置の適用を受けたものであること等を書面で通知することが必要となる。





7.定年退職者への記念品と課否判定

定年退職に伴い、会社から記念品(=経済的利益)が贈られるケースがあり。
退職規程があれば「退職所得」、それ以外は「給与所得」となる。
ただし、上記要件を満たす場合は経済的利益として課税されない(=非課税)となる。

・勤続期間等に照らし、社会通念上認められる範囲額であること。
・10年以上の勤続年数者であり、2回以上の表彰者はおおむね5年以上の間隔があること。
⇒一般的に高額すぎず、また必要以上な特別は物でなければ問題なし。

なお昭和60年の個別通達上、永年勤続記念旅行券の取扱いとして、
・満25年勤続⇒10万円相当
・満35年勤続⇒20万円相当
これらは課税を要しないと国税庁より回答されているので、この通達が一つの目安となる。





8.在外子会社、在外関連会社の会計処理

・IFRSまたは米国会計基準に準拠して作成されている場合、連結決算手続き上利用可能。
・ただし、「修正5項目」については修正が必要。
①のれんの償却
②退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理
③研究開発の支出時費用処理
④投資不動産の時価評価及び固定資産の再評価
⑤資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合の組換調整







監査対象の範囲

・結論:今話題となっている、「役員報酬」は監査の対象外
・監査の対象となる範囲は「金商法193条の2第1項」に基づく。
⇒直接の対象となっているのは、注記を含む、財務諸表(=有報の「経理の状況」部分)
⇒「設備の状況」や「提出会社の状況」は対象外
⇒役員の報酬は「提出会社の状況」に含まれる。






10.M&Aのディール保護条項の種類と実務上の留意点

■ディール保護条項とは?
(主に)買主の立場として、売主や対象会社が他の買主候補者との取引を選択することを防ぐための条項

■ディール保護条項の種類(一般的なもの)
(1)No talk条項
⇒他の候補者との協議・交渉を禁止、第三者への情報提供禁止
⇒売主は難色示すケース多
(2)No shop条項
⇒他の候補者を積極的に勧誘・誘因する行為を禁止
⇒売主にとって制約小
(3)Go shop条項
⇒買主を1社に確定前に自発的に他の候補者を探して交渉を行う期間を設ける
⇒売主にとって意思決定の正当性の説明がつき、買主にとっても他の候補者が登場する場面を限定できる
(4)Window shop条項
⇒他の候補者を積極的に勧誘・誘因する行為を禁止しつつ、買主を1社に確定前に他の候補者による提案があれば交渉可能な期間を設ける
(5)Matching Right条項
⇒他の候補者から提案があった場合にそれと同等の提案を行えば自ら取引を行うことができる権利を先行者に付与する
⇒(3)Go shop条項と組み合わせて利用が多
(6)独占交渉権条項
⇒売主及び買主において、交渉中の買収案件につき、相手方のみと交渉することを合意
⇒基本合意書段階において盛り込まれることが多
(7)Break-Up Fee(違約金)条項
⇒合意から離脱する際に違約金が発生
⇒一般的には売主が違約金の主体、買主においても違約金によって離脱することを認めるケース有
 違約金の金額いかんではディールの拘束力を弱める方向に働く(取引金額の1~5%が多)

■保護条項のポイント
(買主)
・保護条項の選択及び組み合わせ
・保護条項の例外、有効期間の検討

(売主)
・基本的に買主と同様
・売主の取締役における善管注意義務・忠実義務に違反しないかという観点を意識






11.内部統制報告制度概要と評価手順

■制度概要
自社の内部統制(IC)を評価して会社が作成したIC報告書の適正性を、外部監査人が評価
※財務報告の信頼性を確保するためのICが対象(ICの充実⇒企業開示の信頼性)

■評価手順
(1)全社的なICと業務プロセスに分類
・全社的なIC:適正な財務報告をするための会社全体のガバナンス体制等
・業務プロセス:決算財務報告プロセスや販売・購買プロセス等、個々の業務
⇒全社的なICを先に評価

(2)業務プロセスの整備状況の評価
①その業務プロセスが、虚偽の財務報告が防止・発見する仕組みであるかを評価
②その業務プロセスが、実際に日々の業務に適用されているかを評価

(3)業務プロセスの運用状況の評価
整備された業務プロセスが、継続的に実施されているか評価(主にサンプルベース)





12収益認識基準の内部統制への影響

新収益認識基準は「履行義務の充足」に着目して収益認識を行う必要がある。

・期間配分の観点からみた収益認識基準(商品製品)
通常顧客が検収した時点で、履行義務が充足されると考えれる。
→顧客から検収日が記載された検収書を回収・確認する必要がある。
→実務上は不確実性と不効率を伴うことになり、実務慣行としてもなじまない
→適用指針では出荷から検収までが通常の期間であれば、代替的取扱として出荷基準等の適用も認められる。
→今後も出荷基準を採用する企業が多いと想定されるが、検収基準に変更する場合は業務フローやシステム変更の必要性が出てくる

・表示の妥当性から見た収益認識基準(本人と代理人の区分)
新収益認識基準では収益の総額表示と純額表示が明確化
→企業が本人:総額、代理人:純額
→本人か否かは履行の主たる責任+在庫リスクを有する+価格決定権
→消化仕入:消費者に販売された時点で百貨店等がテナントから商品を仕入する取引形態
→純額表示:履行責任、在庫リスク、価格決定権はテナントが有するため、百貨店等は「代理人」
→内部統制には大きな影響は与えないと想定される






13.企業版振り込め詐欺の特徴

企業版振り込め詐欺は、メールで請求書のやり取りを行う際に狙われやすい。
特徴的なポイントは以下の3点となる。

(1)財務・経理担当者が狙われる
 実際にお金を扱う財務・経理担当者が狙われやすい。
⇒外部に公表している共通メールアドレスがある場合には注意が必要
(2)信用度の高い人になりすます
 社長や役員、相手先の責任者になりすます劇場型の詐欺が日本でも確認されている。
⇒実際のメールアドレスと誤りがないかどうか、確認が重要となる
(3)振り込みを急がせる
 攻撃者は相手先を徹底的に研究しているため、あらゆる方法で緊急性を訴え、冷静な判断ができないようにする。
⇒通常とは異なる対応を求められた場合、メール以外の方法で確認する等の対応が重要となる

社内規定の整備、適正なチェック体制、法人取引口座登録を活用する等の対処方法が有効。






13.グローバルオファリング

国内市場と「同時に」主に欧米市場などの海外でも株式の募集・売出し等を行う手法
近年の例では、日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、LINE
グローバルオファリングでは、海外の投資家を想定して、日本の証券会社の海外拠点や外国証券会社が株式の引受け、販売を担当する。

1.メリット
・国内市場のみでのIPOでは難しい資金調達が、海外市場からも可能となる
・海外の投資家に対してIPO(特に国内外並行上場を伴うもの)を通じて本邦企業の知名度がアップし、
その後もグローバルでの資金調達手法の多様化が図れる
・海外投資家が入ることによる株主構成の多様化が図れる

2.デメリット
国内型IPOでは不要な外国語での資料・書面作成をはじめ、相当額の追加コストが発生するなど
総額2~3億円程度かかるといわれている。
国内のみでは数千万円程度
























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