2018年7月27日金曜日

7/27 勉強会:請負契約に基づく機械装置、取得時期をめぐり納税者敗訴 他

1.請負契約に基づく機械装置、取得時期をめぐり納税者敗訴

■事例
・会社の決算期は平成25年3月期。
・工場に設置する機械装置の製造納入を請負業者に依頼。
・検収完了は、納入された機械装置が問題なく動作するかを確認し、検収書の押印をもって完了する契約。
・平成25年2月に機械装置は工場に設置され稼働したが、翌日以降に不具合が生じた。
・平成25年5月に機械装置が安定稼働することを確認し、検収書に押印した。

■争点
・納税者は、平成25年3月期の法人税申告に際して、2月分3月分の減価償却費を損金算入した。
・税務署は、平成25年3月期ではまだ機械装置を取得していないのだから、損金算入できないとした。

■地裁判決(納税者控訴中)
取得の時期=所有権移転の時期=検収完了の時期であるから、損金算入はできない。






2.時価算定の評価技法は毎期継続適用

■時価の算定に関する会計基準案【策定中】
・時価の定義を明確化
・時価のレベルを1~3で設定し、レベル1から優先的に使用する
・レベル1:活発でオープンな市場における公表価格
→レベル2・3となるにつれて時価の概念は抽象的となる。
・時価には、マーケットアプローチの他、インカムアプローチも含む
・評価方法は毎期継続して適用する






3.譲渡所得の無申告めぐり重加算税取消す

■事例
・土地換地処分に係る清算金を確定申告期限までに申告しなかった
・清算金は分離譲渡所得に該当
⇒税務署は重加算税の要件を満たすと判断

■判決
・重加算税は課さない
(理由)
・確定申告会場に清算金に関する書類を持参しなかったのは、その事実を秘匿するための行動とはいえない
・税務調査時に清算金を受領した事実や資料を隠ぺいしようとする態度を取っていたとはいえない
・資料を破棄しておらず、清算金も口座から出金していないため、秘匿行為はないと判断









4.OECDが評価困難な無形固定資産に関するガイダンスを公表

平成31年度税制改正でのHTVIアプローチ(所得相応基準)の適用によって生じた二重課税を解決
事前確認制度を活用し事後の紛争解決よりも未然に紛争を防止する事に重点をおいた

■評価困難な無形固定資産(HTVI)とは
無形固定資産の売買時において、有効な比較対象取引が存在せず、活用により将来生ずるCFの予測が困難なため、適切な売却価格を算定する事が難しい無形固定資産のこと

■所得相応基準とは
HTVIについて取引時点の予測と一定期間経過後の実績値に一定の乖離がある場合、実績値に基づいて取引価格を再評価する手法の事

■BEPS行動計画
BEPSとは多国籍企業がその課税所得を人為的に操作し課税逃れを行っている問題を指す
各国の首脳間でこの問題を解決するための行動計画が15あり8~10に記載











5.7月豪雨で有価証券報告書の期限内提出が困難な場合は延長可

■豪雨の影響により有報等を本来の期限までに提出できない場合
→金融庁は、平成30年9月28日までに提出すれば、行政上および刑事上責任は問われないとする取り扱いを明らかにした。

■平成30年9月28日でも提出できない状況がある場合
→所管の財務局の承認を得ることで提出期限をさらに延長できる。

■臨時報告書
→作成自体が行えない場合には、その事情が解消した後、可及的速やかに提出すれば遅滞なく提出したものと扱われる。









6.平成30年度における相続税法等の改正について

非上場株式等に係る納税猶予制度の見直し
(1)納税猶予対象株式及び納税猶予税額の拡大
■納税猶予対象株式
⇒取得した全ての発行済議決権株式
■納税猶予税額
⇒納税猶予対象に係る贈与税・相続税の全額
 
(2)承継パターンの拡大
■贈与者・被相続人の要件
⇒複数人(代表者以外の者を含む)からの特例後継者への承継も適用対象
■後継者要件
⇒代表権を有する複数人(最大3名)への承継も適用対象

(3)雇用確保要件の実質的な撤廃
⇒雇用確保要件を満たせない場合であっても、一定の書類を都道府県へ提出すれば納税猶予を継続できるようになる。

(4)譲渡、合併、解散時等の納税猶予額の免税
⇒「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」には、下記に額に基づき納付金額を再計算し、当初の納税猶予税額との差額は免除。
譲渡:譲渡対価の額
合併:合併対価の額
解散:解散時の相続税評価額

(5)相続時精算課税制度の適用対象者の拡大
⇒贈与者の推定相続人以外の者である特例後継者も適用対象










7.税務相談:事業者向け電気通信利用役務の提供に該当するかどうか

■相談内容
国外事業者A社はインターネットを通じて投資に関する情報を提供している。
この役務の提供は「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するか

■A社概要
・国外事業者
・インターネットで株式投資に関する情報を提供
・サービス料が高額であることから個人の利用はない
・利用者(法人)とは個別に契約を締結

■事業者向け電気通信利用役務の提供とは
国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち,当該役務の提供に係る役務の性質等から
役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいう
例)インターネット広告、
例)契約において役務の提供を受ける事業者が事業として利用することが明らかなもの

■判定
相対で個別に取引内容を定めて契約を締結し、事業として利用することが明らかであることが
確認できるため事業者向け電気通信利用役務の提供に該当することとなる。
なお、サービス料が高額であることで実質的に個人利用が見込まれないとしても、それだけで
「事業者向け」とはならず、あくまで契約内容・取引条件から実態をみて判定する。












8.大幅下落している電話加入権の取扱い

インターネット回線の普及に伴い、「電話加入権」の価額が下落している。
NTT東日本と契約している場合、電話加入権の利用休止から10年後に自動解約される制度あり。
※NTT西日本は自動解約される仕組みはない

■電話加入権とは
電話回線を利用する場合に必要となる権利

■電話加入権の税務上の取扱い
・固定資産ではあるが、非減価償却資産に該当
・償却費計上×
・評価損計上×
・除却損○

■評価損計上できない理由
「1年以上利用休止(遊休)状態」であれば、法人税法において固定資産の評価損計上が認められる。

ただし電話加入権は以下理由により評価損計上ができない
・ネット普及に伴い市場全体が大幅に下落した
・1年以上利用休止していた事実によって下落していない

なお利用契約を解約した場合、
電話加入権の権利が消滅しているため、除却損計上が可能となる。










減価償却方法の統一

・近年、減価償却方法を定率法から定額法に変更する傾向が続いている
・変更理由
 「使用実態をより適切に反映」
 「より適正な期間損益計算を行う」
 「グループ内での会計方針の統一を図った」
・親子の会計方針は原則統一
 ⇒「評価の方法」「固定資産の減価償却方法」
  については「必ずしも統一を必要としない会計処理」








10.内部統制高度化の着眼点

■M&Aを契機とした内部統制の再構築
・内部統制報告制度はあくまで財務報告の信頼性に目的が限定
→コンプラ、労務管理、経営管理やガバナンスのケアについて、全社統制での対応は限定的
・制度対応のみならず、コンプラ対応も含めたグループ管理標準パックを構築する
■ガバナンス機能の向上と内部統制
・会社における広義の内部統制機能を高めるために重要な点は、内部統制はあくまで経営者による指示命令で実行
・経営者を監視する取締役会や監査役会等といったガバナンス機能を担う機関と連携
→連携強化をすることで、経営者による不正の抑止、防止、早期発見につながる











11.内部統制の見直しはこう進める 1章

■内部統制報告制度の概要
・内部統制報告制度とは?
⇒主として上場企業が「自社グループ」の「財務報告に係る内部統制」の有効性を評価し、内部統制報告書を作成すること、さらに、その内容の適切性について、外部監査人による監査を受けることが要求される制度

・主たる特徴
⇒上場企業だけでなく上場企業に属するグループ会社も対象となり得る
⇒自社グル―プの内部統制のうち、財務報告の信頼性に係る範囲に限定される

・制度対応手順
※「文書化」した上で、文書化通りに内部統制が「整備・運用されているか」を評価
(1)評価範囲の決定
全社的な内部統制および決算・財務報告プロセス=原則としてすべての事業拠点を評価対象
業務プロセス=「重要」な事業拠点のうち、企業の事業目的に大きく関わる勘定科目に至る業務プロセスえお評価対象
※「重要」・・・連結ベース売上高のおおむね2/3に含まれるか否か
IT全般統制=財務報告上で重要な役割を担うシステムを評価対象
(2)評価対象の文書化
全社的な内部統制および決算・財務報告プロセス=チェックリストや質問書等
業務プロセス=業務記述書・フローチャート・RCM等
(3)整備状況の評価
「ルールが存在するか、ルールが実務に落とし込まれているか」を評価
(4)運用状況の評価
実務上は特に重要なコントロールに絞って、「ルールが一定期間守られているか」を評価
(5)有効性の判断
発見された内部統制上の不備を集計し、金額的・質的重要性を勘案して、開示すべき重要な不備に該当するか否かを判断








12内部統制報告制度への対応合理化のヒント

(1)(大前提) 内部統制報告制度への対応だけでは不足
⇒内部統制(以下、IC)の4目的を意識
・財務報告の信頼性(IC制度の対象)
・業務の有効性・効率性
・事業活動に関わる法令等の遵守
・資産の保全

(2)合理化案について監査人と事前協議・合意

(3)評価単位は必ずしも会社単位にする必要はない
企業単位とする会社がほとんど⇒事業別管理していれば、見直しの余地あり

(4)コントロールの統合による文書化・評価作業の合理化
同じコントロールなのに部署・拠点別に評価作業を実施⇒コントロール統合
異なるコントロールだが、基本ルールは共通⇒コントロール統合
※IC制度上、詳細規定なし

(5)フローを考慮したキーコントロール(以下、キーコン)の見直し
例:担当者のフローとその管理者のフローにキーコンあり⇒重要な後者だけをキーコンに
例:受注フローと計上フローにキーコンあり⇒財務に近い計上フローのコントロールをキーコンに

(6)業務監査担当者との連携
業務監査担当者とIC評価担当者は連携していない事例が多い
業務監査担当者は通年で業務負担は変わらない⇔IC評価担当者は評価時期で繁忙と閑散の差あり










13.研究報告にみる内部統制報告制度の現状と留意事項

■環境変化への柔軟性欠如
法律上の規制対応を目的とするため、環境変化を考慮した取組が実施されていない
⇒文書化資料の更新/評価作業が膨大、ローテーション採用により評価担当者にノウハウが蓄積されていない。
⇒業務変革等に対応できず実際の業務と内部統制報告制度対応に乖離が生じる

■信頼性の懸念
開示すべき重要な不備の半数程度は有報の訂正に伴って報告
⇒内部統制が有効と報告したあとで、有効でないと報告することは制度のそのものの信頼性を毀損しかねない

■大規模企業における開示すべき重要な不備の特徴
全社的な内部に起因するものと経営者/従業員の不正、子会社の誤謬に起因するものが多い
⇒決算・財務報告プロセス、業務プロセスに起因するものが多いが、防止/早期できる内部監査等の全社的な内部統制の課題があると判断される
⇒子会社では人員体制の脆弱性やジョブローテーション未適用など、不正防止が難しい
⇒取締役会の活性化や内部監査の監査体制等の改善、子会社決算数値の異常点の識別等が是正措置として考えられる

■新興企業における家事すべき重要な不備の特徴
創業者の力が強く働くことや人材不足が重要な不備に起因する
⇒役員・従業員の内部統制意識の熟成、社外取締役の導入等、基本的な内部統制体制の構築が求められる。










14.退職給付信託財産の一部返還の可否

■退職給付信託財産の返還可否
 信託財産を会社(事業主)の意思によって自由に会社の資産等と交換することは禁止されている。
※退職給付信託は、退職給付の支払い、他の年金制度への拠出を目的として設定されるため。

■例外として事業主の資産と信託資産との入替えが認められるケース
 (1)退職給付信託が超過積立の状況となった場合
 (2)信託目的を達成できない場合(信託した資産が株式であり、当該株式が上場廃止等により流動性がなくなる等)
 (3)買収・合併により年金資産に自己株式が生じるおそれがある場合










15.平成30年度税制改正における、主な法人税関係の改正について

■法人税法
(1)収益認識に関する会計基準への対応
・収益認識の時期:引渡し日(検収日、出荷日等)、近接日
収益の額:貸し倒れ、返品等は加味しない
(2)大法人の法人税等の電子申告の義務化

■租税特別措置法関係
(1)税額控除
 ・環境関連投資促進税制の廃止、高度省エネ投資促進税制の創設
 ・国家戦略特別区域等の特別区において固定資産等を取得した際の特別償却、税額控除制度の見直し
 ・雇用促進税制、所得拡大促進税制の見直し
(2)特別償却、準備金等の税制の見直し

■その他
(1)交際費等の損金不算入制度の延長
⇒平成32年3月31日まで、2年延長。
(2)中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の延長
⇒平成32年3月31日まで、2年延長。






16.税務調査において調査官が、修正申告ではなく更正を嫌がる理由はいくつかあるが、その1つが「理由の附記」。

・増額更正する場合は、税目を問わず理由附記が必要。

・裁決で、理由付記が不十分で課税処分が取り消された例もあり。

・理由附記とは【その調査の内容を知らない第三者が理由附記を見ただけで処分の理由がわかる】程度が求められる。



 


17.固定資産論点

1.固定資産の減損
・事業用の固定資産が収益性の低下によって投資額の回収が見込めなくなったこと
・資産の帳簿価額を減額させる
・人員増加に伴いオフィス移転⇒内部造作等を固定資産計上⇒翌期には減損といったケースあり
・税務上は損金不算入⇒売却、除却により解消

2.ソフトウェア
・「市場販売目的」と「自社利用目的」
・将来の収益獲得(費用削減)が確実⇒資産計上、不明⇒費用計上
・税務上は不明な場合も資産計上
・資産計上するためには、ソフトウェアの制作予算が承認された社内稟議書や、
ソフトウェアの制作現価を集計するためのPJコードを付した管理台帳等の整備が必要
・社内稟議書においては、収益獲得、費用削減効果を定量的、具体的に明らかにし承認を取っておく必要あり

3.資産除去債務
・原状回復工事の見積書を業者へ依頼、これに基づいて計上(原則法or簡便法)
・自社で見積もることができる場合もあるが、証明力が弱い
・ハウスクリーニングは資産除去債務の範囲外
・税務上は見積のため、全額否認















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2018年7月20日金曜日

7/20 勉強会:平成30年税制改正-法人税編- 他

1.当局の裁決分析から見る審査請求審理の舞台裏

事例
■原処分調査
請求人が意図的に少ない収入金額を青色申告決算書に記載したことにより、隠蔽仮装の事実が認められるとして重加算税を賦課決定。
しかし、過去の裁判例や裁決事例からすると意図的な過少申告にすぎないものと判断され、
重加算税の賦課決定処分が取り消される可能性が高かった。

■異議調査
そこで、審判所が原処分を維持するように、異議調査において再度、業務の流れ、収入金額の集計方法等を詳細に確認し、具体的な隠蔽行為があったことを把握した。

⇒税務当局は原処分を維持するために必要な証拠収集等を後追いで行うことがある!





2.一部の定期保険の損金算入割合圧縮も

■定期保険
・現行法上、全額損金算入…一般の定期保険は取扱に変更なし
・一定期間災害補償重視型定期保険について、当局に問題視
⇒当初の5年or10年or15年は基本的に災害による死亡のみ保険金を支払い(病気による死亡は対象外)
⇒死亡保障の範囲を絞ることによって解約返戻率が一般の定期保険より高く設定
⇒節税目的で加入する事例が散見される
⇒早ければ年内にも税務処理を変更する通達が出る可能性がある





3.大企業賃上げ投資減税の留意点を示す

■大企業向け所得拡大促進税制
【適用要件】
(1)雇用者給与等支給額が前年度を超えること
(2)継続雇用者給与等支給額が前年度比3%以上増加
(3)国内設備投資額が当期の減価償却費の総額の90%以上
【控除税額】
・給与等支給額の前年度増加額の15%の税額控除が適用
・さらに教育訓練費増加要件を満たせば、税額控除率5%アップ
※控除額は法人税額の20%が限度

■国内設備投資額とは
・適用事業年度に取得した国内資産(国内事業の用に供する資産)の取得価額の合計額
※注意点
・国内判定⇒無形固定資産(○○権等)は、権利が使用される場所、ソフトウェアは、そのソフトウェアが組み込まれている資産の所在場所で判定
・翌期から使う場合⇒適用年度終了日に事業の用に供されてなくても、その後使うことが見込まれる場合は対象としてOK
・資本的支出の場合⇒既存の国内資産に資本的支出を行った場合の金額は対象としてOK








4.平成30年税制改正-法人税編-

■収益認識基準に関する会計基準への対応(法人税法22条)
・新会計基準に基づく収益の額を定義
①契約を識別⇒②契約における履行義務を識別⇒③取引価格の算定⇒④取引価格を履行義務に配分⇒⑤充足時、充足するにつれ収益を認識
・適用開始時期
早期適用:2018年4月1日以後開始事業年度より/強制適用:2021年4月1日以後開始事業年度より

■電子申告の義務化(法人税法75条)
・対象となるもの:法人税の確定申告・中間申告・修正申告、期限後申告も対象となる
・適用額明細書:電子申告義務化に伴い提出義務対象書類となった
・適用開始時期:2020年4月1日以後に開始する事業年度より
※上記の制度と併せて、代表者の自署・押印制度が廃止

■所得拡大促進税制
(改正後:給与引き上げ及び設備投資を行った場合の法人税額の特別控除制度)
・平均給与支給額が前事業年度から3%以上の増加(中小企業は1.5%) (改正前は上回っていればOKだった)
・国内設備投資額が減価償却費の90%以上 (改正前は要件無し)
・控除税額:15~25%(20~25%の控除を受けるには上乗せ用件に該当する必要あり)

■少額減価償却資産の特例
・2020年3月31日まで延長










5.KAM導入で監査基準改定、平成33年3月期から適用へ

■制度の概要
・KAM (Key Audit matter)とは、「監査上の主要な検討事項」のこと。
・監査プロセスの透明性を向上させる観点から、監査報告書にKAMの記載が求められる。
・平成33年3月期決算に係る財務諸表監査から適用。
・東証1部上場企業については、可能な限り平成32年3月期決算に係る財務諸表監査からの早期適用が促されている。
・会社法の監査報告書への記載は見送られた。








6.今週の専門用語

■定期保険
一定の保障期間で支払われる生命保険のこと。
法人が支払う定期保険料全額損金算入が認められている。
※ただし、保険のタイプによって損金算入割合がことなるので確認が必要です。

■教育訓練費増加要件
下記の要件を満たす場合、控除率を5%上乗せできる。(所得拡大促進税制の一つ)
大企業⇒教育訓練費が過去2期の年平均額から20%以上増加
中小企業⇒教育訓練費が前期比10%以上増加
対象費用:講師・指導員等の経費、教材費、外部施設使用料、研修参加費、研修委託費


■配偶者居住権
⇒配偶者相続人が、被相続人の遺産である建物を、無償で使用及び収益することができる権利。配偶者が所有権を得ずとも建物にそのまま居住できる。










7.法人税:請負工事の完成引渡し時期についての判例

■概要(工事業者Aの事業年度末は3/31)
工事業者Aは発注者から工事Bの発注を受け、本体工事を3/31までに終え
発注者から工事検査通知書を受領した。しかし、付属するバリケード設置工事及び
一定期間の現場管理が完了していないとして売上を計上しなかった。
税務当局は工事の完成引渡しが3/31までに完了しているものとして売上計上もれと
して加算処分をした。工事業者Aはこれを不服として処分の取り消しを求めた。

■事実関係
・本体工事は3/31までに完了
・バリケード工事は実質3/31に完了していた
・完了後の現場管理は発注者が行っていた

■審判所の判断
建設工事等の請負による収益の帰属時期は目的物の全部を完成し相手方に引き渡した日の
属する事業年度である。本件工事は実質的に工事の全部を3/31までに完了し引渡している
ことから当該事業年度の売上として計上される⇒税務当局勝訴

■考察
バリケード工事が契約に盛り込まれ、実際に4/1以後も行われていた場合または現場管理業務を
4/1以後に行っていた場合には<工事の全部が完了していない>ことになり、翌事業年度の売上
計上が認められていた可能性がある。











8.災害と所得税の軽減措置

自然災害により住宅や家財等が損害を受けた場合、
下記のどちらか有利な方法を選ぶことにより、所得税の全部又は一部が軽減できる。

■災害減免法による所得税の軽減・免除
・災害のあった年分の所得金額が1,000万円以下であること
・災害によって受けた住宅又は家財の損害額が時価の1/2以上であること
上記に該当する場合、所得税が軽減・免除される。
(具体例)
所得金額500万円以下 ⇒ 全額免除
所得金額500万円超~750万円以下 ⇒1/2の軽減 
所得金額750万円超~1,000万円以下 ⇒1/4の軽減

■所得税法による雑損控除
生活に通常必要な資産について損害を受けた場合、
損失額△所得金額の1/10の金額の所得控除を受けられる

■その他
・上記の控除は併用不可。
・上記の対象資産の範囲はほぼ同じ(住宅や家具・什器・衣服等)
・給与所得者が源泉所得税の還付等を受ける場合は、
給与支払者を経由して、災害を受けた者の税務署に申請書を提出する必要あり。









監査基準の改定「監査上の主要な検討事項」を記載へ

・監査上の主要な検討事項=KAM(Key Audit Matters)の記載が求められることになる
 さらに、監査人の意見を監査報告書の冒頭に記載する改定等もあり
・当面は金商法監査のみが対象
・連結・単体ともに対象
・「経営者の責任」を「経営者及び監査役等の責任」に変更
 ※20121年3月期から適用







10.支配獲得日が決算日以外の場合における連結方法

・当該日の前後いずれかの決算日(四半期決算日含む)に支配獲得が行われたとみなして処理できる
■事例
(前提)
・親(3月決算)が4月末日に子会社(3月決算)を取得
(設例)
・親の第1四半期連結決算(6月末)における連結方法
(会計処理)
原則
⇒4月末において全面時価評価法を適用して資本連結
⇒子の5/1~6月末日までのPL、6月末のBSを取り込む

容認(1)3月末をみなし取得日
⇒3月末において全面時価評価法を適用して資本連結
⇒子の4/1~6月末日までのPL、6月末のBSを取り込む

容認(2)6月末をみなし取得日
⇒6月末において全面時価評価法を適用して資本連結
⇒子の6月末のBSのみ取り込む










11.未払残業代の会計処理(ケーススタディ(2))

■状況
・労働基準監督署より、過去1年分の未払残業代の支払命令あり
・しかし、調査しても記録がなく、具体的な金額を算出することができない
・そこで、従業員と協議し、一律に1人100万円を支給する合意をした

■会計処理
・合意時に支払債務が確定したことから、合意した期に一時に費用処理する







12四半期報告書上の留意点

■非財務情報に関する留意点
主に以下に項目が改正されている
「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」
⇒従来から「経営者による」が追加され、経営者の視点による分析・検討内容を具体的かつわかりやすく記載することが求めれらるようになった
「新株予約役兼等の状況」
⇒新株予約証券を発行した場合、①ストックオプション制度の内容に決議年月日、付与対象者の区分、人数等の事項を記載する

■財務情報に関する留意点
「税効果会計基準一部改正」
⇒貸借対照表の表示が下記に変更
繰延税金資産:流動資産または投資その他⇒投資その他
繰延税金負債:流動負債または固定負債⇒固定負債
⇒繰延税金資産/負債は固定項目として開示









13.国際会議の費用にかかる消費税の課税判定

■役務の提供の判定
・原則:役務の提供が行われた場所が国内であるかどうかにより判定
・原則以外に別途基準が定められているもの以外で、役務の提供場所が明確にされていないもの等
 ⇒役務の提供に係る事務所等の所在地により判定
 (例)、国内と国外の双方で行われるもので国内対応分と国外対応分とが合理的に区分されていないもの等

■国際会議の判定例
(1) 国際会議は国内で行われるが、会議資料は国内で作成され参加者に提供(国内と国外の双方にわたる)
 ① 国際会議が国内事務所により提供されるもの  ⇒国内取引
 ② 国際会議が国外現地事務所等より提供される場合⇒国外取引
(2) 参加費用について内訳が明示され、国内取引分と国外取引分が明確に区分されている場合
  ⇒国内取引部分のみが消費税の対象









14.未払残業代の会計処理(ケーススタディ(3))

■状況
・従業員からの労働審判の申立てによる争い
・請求額はタイムカードに基づいており、過去2年分で800万円
・解決金として400万円支払うことで和解

■会計処理
・過去の未払残業代としての性格が強いと考えられる場合
→過去に未払が発生した期の費用として処理。
・解決金としての性格が強いと考えられる場合
→和解が成立した期の費用として処理。









15.役員退職金は、通常、最終月額報酬×勤続年数×功績倍率で計算される。

・「月額報酬」に、役員賞与を12分割した金額を加算することは認められるか?

・認められるのが合理的に思えるが、役員賞与が支払われ、「これを12等分したものを最終報酬月額に加算すべき」と判断された事例は無い。

・社会保険料の削減、老齢年金の増額支給を目的として、月額報酬を極端に下げ、役員賞与を高額にするスキームは功績倍率法が採用されないリスクを負うことになる。









16.製造業の上場審査

(1)製品の特徴等 
⇒製造業の収益力のポイントに関して、以下の観点を申請書類等で確認。
1.市場の成長性…マーケット規模および今後の拡大要因
2.業界動向…業界及び主要顧客を取り巻く環境ならびに需要動向等
3.競合状況…業界シェア及び同業他社との相違、製品の優位性、製品の効率性

(2)法的規制や業界慣行等
⇒業界に対する法的規制等が実施されている場合には、その内容が上場審査で確認。
⇒弁護士等に事前に相談するなどの検討が必要。

(3)ファブレス型企業
・製造は他社に任せて、企画・開発・販売だけを自社内で手がける企業。
⇒生産委託する理由や委託先における生産能力を上場審査で確認。

(4)内部管理
⇒以下を重点的に上場審査で確認。
1.在庫管理
2.原価計算制度
3.為替リスクの管理(海外に生産拠点をもつ企業が多いため)


 


17.システムの自社開発における留意事項

・上場審査において、業務に関連する情報システムを自社で開発していること自体は特に問題とならない。
・ITに係る内部統制の観点からは、仕様書、設計書、システム運用マニュアルなどによって、
システムの目的や構成、運用方法などを客観的に理解、把握することができる状態
・それらの文書に基づいた運用、整備、保守が適切に行われることも重要

・開発予算の制約や業務効率重視のため、必要レベルのセキュリティ概念が設計思想に盛り込まれていないなど、
内部統制を軽視したシステムが構築されることもある
・内部統制の思想もカバーした開発が行われているかどうか特に留意しておくことが必要。














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