2015年12月26日土曜日

12/25 勉強会:スマホアプリの会計処理と実務上の留意点 他

1.税制改正大綱から読み解く法人税課税の重要改正項目
■実効税率
32.11%⇒29.97%へ
・法人税の税率が23.4%、事業税の所得割が3.6%へ引き下げられるため

・中小企業の800万円以下の所得金額に適用される税率:19
 ⇒措置法により15%に引き下げ中(29年度改正で延長するか?)

■法定償却方法
・建物付属設備、構築物の償却方法が定額法に一本化
・平成2841日以後取得分から

■繰越欠損金(控除限度割合)
・平成27年度 65
・平成28年度 60
・平成29年度 55
・平成30年度 50

・繰越期間の延長(910年)は平成30年度より

■外形標準課税拡大
・付加価値割、資本割の税率がアップ
・中堅企業には軽減措置あり(負担増となる場合)

■役員給与
・利益連動給与の算定指標が明確化

■少額減価償却資産
・常時雇用する従業員が1000人を超える法人は除外

■雇用拡大税制
・無期雇用、フルタイムが条件に追加
・事業所が一定の道府県に限定される
 例:東京都内や大阪府内の事業所で雇用者が増えても適用できない

・所得拡大税制の併用可


2.株式報酬は譲渡制限解除時の時価で課税
■一定期間の譲渡制限が付された欧米型の株式報酬に注目が集まっている
・日本での導入には会社法・税務がネック
会社法=株式の発行は金銭等の「払込み」を前提=欧米型の払込みなしで現物株式を支給するスキーム不可

■金銭報酬債権の現物出資により役員に株式を交付するスキームが提案
⇒会社法はOK
⇒税務
役員に対する給与課税のタイミング=株式の譲渡制限が解除された時点
会社は同じ時期に株式報酬額を損金算入できる

給与課税の対象額=株式の譲渡制限が解除された時点における株式の時価
会社の損金算入額=株式を交付した時点における株式の時価


3.軽減税率制度、中小企業以外にも売上高のみなし計算特例
・平成2941日から軽減税率制度の導入が正式決定
・インボイス制度は平成334月から導入
・その間の4年間については各特例措置が導入されることになる

■売上の特例…平成29年から4年間対象
軽減税率対象売上の算定方法は3種類から選べる

(1)軽減税率対象売上に係る課税仕入/課税仕入総額の割合を、
  そのまま売上に乗じる方法

(2)(10営業日間の)軽減税率売上高/総売上高の割合を、該当する課税期間中の売上高に乗じる方法

(3)50/100を課税期間中の売上高に乗じる方法

■仕入の特例…平成29年から1年間対象
(1)売上総額に占める軽減税率対象売上額を、軽減税率対象品目の仕入として算出可能

(2)(1)で計算不能な場合、簡易課税制度の事後適用可
  ※中小事業者以外でも適用可能


4.募集事項
新株発行又は自己株式の処分を行う際に、発行又は処分する株式について定めなければならない事項

具体的には、
(1) 発行又は処分する株式の数、種類
(2) 発行又は処分する株式の払込金額又は算定方法
(3) 金銭以外の財産を出資する場合は、その旨、出資する財産の内容及び価額
(4) 払込期日又は期間
(5) 増加する資本金及び資本準備金に関する事項

(2)(4)から、会社法が想定する新株発行又は自己株式の処分が「払込み」を前提にしていることが分かる


5.国外転出時課税、分割確定時の法令整備
国外転出時課税とは、
1億円以上の有価証券を保有した居住者が出国した場合に適用
1億円以上の有価証券を保有した被相続人に相続が発生し、非居住者が取得した場合に適用

■法令整備
未分割により法定相続分で準確定申告をした後に、遺産分割成立後、相続人が有価証券等を取得しなかった場合

・現状(改正前)
⇒準確定申告をした所得税に、更正の請求が認められるか否か、法令により明らかでなかった。

・改正後(H2811日以後)
⇒準確定申告後の遺産分割で、当初申告と異なる場合には、以下のように法令で定められるようになった。

税額が増額 ⇒ 遺産分割が行われた日から4月以内に修正申告
税額が減額 ⇒ 遺産分割が行われた日から4月以内に更正の請求

また以下事由により、非居住者に移転した有価証券等が、当初申告と異なる場合も更正の請求が対象となる。

・強制認知の判決確定による相続人の異動
・遺留分による減殺の請求に基づく返還すべき額が確定
・遺言書の発見、遺贈の放棄があった


6.テイクアウトや出前も軽減税率
29/4/1 消費税10%UP と同時に導入される軽減税率の内容が決定

・軽減税率(8%)の対象は、
-飲食料品(酒類・外食は対象外)
-週2回以上の定期購読契約している宅配の新聞(駅売り新聞・書籍・雑誌は対象外)

・テイクアウト、持ち帰り、宅配は、外食に該当せず(軽減税率対象)
)
・ハンバーガー店のテイクアウト
・そば屋の出前
・ピザの宅配
・寿司屋の「お土産」
・コンビニの弁当をイートインコーナーで食べた場合


7.裁決事例:航空機リース事業の任意組合が受けた債務免除益について
■概要
・航空機リース事業を営む任意組合の組合員らが高い利息を支払っていたことなどを理由に融資銀行から債務の一部を免除された。
この債務免除益の所得税法上の区分は何にあたるか?

・国⇒雑所得、組合員⇒一時所得 をそれぞれ主張

■東京地裁
一時所得として国側の主張を退けた。

理由:
一時所得の要件として、
(1)利子・配当・不動産・事業・給与・退職・山林・譲渡以外の所得である
(2)営利目的の継続的行為から生じたものでない
(3)対価性がない
がある。

当て嵌め:
(1)⇒充足する
(2)⇒銀行判断で偶発的に生じたものである
(3)⇒組合員が役務の提供をしていない

以上より一時所得の要件を満たすとして国側の主張を退けた。


8.税制改正:調査の事前通知後に課される加算税
H28年度税制改正で加算税の取り扱いが変わる。
[]過少申告加算税の場合
改正により、下記(2)の期間に修正申告を行った場合にも、過少申告加算税がかかることになる。
 (1)「税務調査の事前通知を受ける」までの期間
 (2)「事前通知を受けた時」から「更正を予知する」までの期間
 (3)「更正を予知した時」以降の期間

■現行(『予知』するまではペナルティが無い)
 (1)および(2)の期間に修正申告を行った場合、過少申告加算税は課されない。
 (3)の期間に修正申告を行った場合、過少申告加算税がかかる。10%(or15%)

■改正後
 (1)の期間に修正申告を行った場合、過少申告加算税は課されない。
 (2)の期間に修正申告を行った場合、過少申告加算税がかかる。(5or10%)
 (3)の期間に修正申告を行った場合、過少申告加算税がかかる。10%(or15%)

同様の改正が、無申告加算税についても盛り込まれている。


9.建物附属設備の償却方法
28年度税制改正:建物附属設備の償却方法見直し
 H28.4.1以降取得の建物附属設備&構築物について、定率法を廃止、定額法のみとなる
・会計上は減価償却方法の変更は会計方針の変更に該当
・「正当な理由」がないと過年度遡及
・税制改正だけでは正当な理由に当たらない


10.リース契約における残価保証の処理
1. 残価保証とは
⇒ リース資産売却の際に、一定額を下回った場合、貸し手に生じる損失を、借り手が負担する取り決めの事。

2. 会計上の取り扱い
(1) 割引現在価値の算出
⇒ 残価保証額を将来キャッシュフローに含めて計算を行う。
(2) リース資産の残存価額
⇒ 所有権移転、所有権移転外に関わらず、残価保証額を残存価額とする。
※所有権移転外の場合、残存価額はゼロ。
(3) リース契約終了時
⇒ 残存価額分のリース資産とリース債務が両建てで残る。
⇒ 貸し手がリース資産を売却し、借り手が損失を負担するか否かが判明した時点で、リース資産とリース債務を相殺する。

※残価保証額を下回る金額で売却された場合は、当該損失を借り手の損失として処理することになる。


11.スマホアプリの会計処理と実務上の留意点
■資産計上のタイミング
 ・製品を販売する意思が存在すること
   ⇒経営会議などで「市場にリリースすると判断」されていること
 ・最初に製品化された製品マスターが完成していること

■アプリ開発のコストの集計範囲
 ・個別原価計算の計算構造に基づく
 ・人件費が相対的に多くなる(人件費の集計が重要)
 ・バージョンアップに係る開発コストはソフトウェアの取得原価に算入する
 ・一方、アプリの動作プラットフォームを変更するケースでは研究開発費となる
 ・委託作業による場合は成果物が納品されたタイミングをもって原価算入

■アプリ開発のコストの費用化方法
 (1) リリース時に一括費用処理
 (2) ソフトウェアとして減価償却
 (3) コンテンツ(無形固定資産)として減価償却

■アプリ開発コストの期末評価 ⇒ 減損検討が必要
 この場合の減損検討の最小単位は「シリーズ別」「タイトル別」など

■アプリの収益認識のタイミング
 課金アイテム購入時点では前受金(又は預り金)で処理し、ユーザの使用料に応じて売上に振り替える

■固有の留意点
 (1) ライセンス売上
 ・変動ロイヤリティ
 ・ミニマムギャランティ
  ⇒収益認識のタイミングが異なる点留意
 (2) 開発支援金の処理
 ・収益項目でなく、制作コストの控除項目として取り扱う
 (3) ボーナスポイントの付与
 ・一時的に無償でサービスを提供した場合、逸失利益を管理会計上把握しておくことが必要


12.訴訟損失引当金の会計処理ポイント
・引当金計上のタイミング(認識)
 敗訴の可能性が高く、その支払金額を合理的に見積ることができる場合に計上
 ⇒第一審判決で敗訴している場合には、その敗訴判決を覆せる合理的な証拠があるなどの場合を除き、訴訟損失引当金を認識する必要がある

・いくらで計上するのか(測定)
 ⇒第一審判決で敗訴している場合には過去の判決を参考にして、今回請求されている訴訟において認められる可能性が高い金額について訴訟損失引当金を計上


13.物流コスト削減の為の取組
■サード・パーティ・ロジスティックス(3PL)の活用
 3PLは荷主でもなく物流会社でもない第三者が物流サービスを提供する。複数の荷主と複数の物流会社を束ねる事で価値を提供する。

 3PLを上手く活用するパートナーシップ構築のポイント
・最適な3PLを見極める為の選定基準の明確化
⇒要件充足度、実現性・実行力、維持運用性、取引安全性、価格適正
3PLを選定・窓口となる人材育成も重要

・物流サービスの見直し
⇒顧客サービスの標準化・サービスメニュー化を実施
※単純に物流をアウトソースしても、顧客からサービスレベルが落ちたとクレームがあるかもしれない

・継続的な改善が出来る仕組みつくり
3PLの品質・コスト・サービスといった仕事の質に対する期待値と実績を正しく評価できるようにKPIを設け、両社でSLA(サービス・レベル・アグリーメント)を締結
KPIの実績によっては3PLにボーナスを支払う等、改善意欲を醸成する


14.上場審査上、人事労務制度で注意すべきポイント
(1)従業員の定着率(※1
⇒一般的に、従業員の定着率が悪い場合は、上場審査上問題があり、経営基盤の不安定要因ととらえられる。
⇒従業員の定着率が低い場合は、退職事由などその原因を十分に吟味・分析した上で、人事労務制度の見直しや良好な労使関係の構築を行うなど、定着率改善に向けた対策を行う必要がある。

(1)定着率=1-離職率=1{(当該年度の離職者数)÷(期首従業員数+期中入職者数)}

(2)法令順守
1.人事労務関係書類の整備
⇒就業規則や労働者名簿、賃金台帳、雇入通知書などの作成・保存

2.労働保険・社会保険の加入
⇒加入義務があるにも関わらず、加入対象者に未加入期間がある場合には、法令違反行為として上場審査において問題となる。

3.時間外労働の取扱い
36協定の遵守
⇒残業手当の支給ルールが明確に定められていないことや手続上の不備等により、結果として割増賃金の不払い等について違法状態となっているケースでは、上場審査に支障をきたすこともある。


15.今週の新規上場会社
上場・公開日    社名                      銘柄コード 市場  公募価格(円)
12/21  マイネット                            3928      マザ  1,680
12/21  ビジョン                                9416           マザ  2,000
12/22  ソネット・メディア・ネットワークス 6185     マザ  2,300
12/22  プロパティエージェント            3464     JQS    1,400
12/24  ソーシャルワイヤー                3929      マザ  1,600
12/24  ケイアイスター不動産             3465      2部   1,200
12/25  一蔵                                    6186       2部   1,210

(マイネット)
業種:情報・通信業
事業内容:スマートフォン向けオンラインゲームの運営
主幹事:大和証券
監査法人:新日本

(ビジョン)
業種:情報・通信業
事業内容:グローバルWiFi事業及び情報通信サービス事業
主幹事:みずほ証券
監査法人:あずさ

(ソネット・メディア・ネットワークス)
業種:サービス業
事業内容:DSPLogicad(ロジカド)」を中心とするマーケティングテクノロジー事業
主幹事:大和証券
監査法人:PwCあらた

(プロパティエージェント)
業種:不動産業
事業内容:資産運用型不動産の開発、販売及び賃貸管理等不動産管理事業
主幹事:野村證券
監査法人:新日本

(ソーシャルワイヤー)
業種:情報・通信業
事業内容:ニュースワイヤー事業(プレスリリース配信サービス、クリッピングサービス)、インキュベーション事業(レンタルオフィス運営)
主幹事:SBI証券
監査法人:トーマツ

(ケイアイスター不動産)
業種:不動産業
事業内容:分譲住宅、注文住宅、中古住宅、マンション販売、その他の総合不動産事業
主幹事:大和証券
監査法人:トーマツ

(一蔵)
業種:サービス業
事業内容:きものの販売・レンタル事業、結婚式場の運営等
主幹事:野村證券

監査法人:新日本






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決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
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2015年12月19日土曜日

12/18 勉強会:法人税20%台引き下げも課税ベース拡大 他

1.国税通則法改正の全容
■事前通知を受けてから「修正申告」を行う場合
・現状
 修正申告が更正があることを予知して提出されたわけではない場合
 ⇒過少申告加算税は賦課されない

 事前通知を受けた段階で、修正申告を提出するケースが後を絶たない
 …事前通知の段階では更正があることを予知していたことにはならないから
 ※事前通知:所轄署からの調査日程の連絡

・改正案
 事前通知を受けてから更正があることを予知するまでの期間
 ⇒過少申告加算税を賦課する(5%または10%)

■事前通知を受けてから「申告」を行う場合(無申告のケース)
・現状
 無申告で自主的に申告書を提出した場合
 ⇒無申告加算税は5%となる
 事前通知を受けるまで放置する納税義務者が後を絶たない

・改正案
 無申告で、事前通知後に申告書を提出した場合
 (事前通知を受けてから更正があることを予知するまでの期間)
 ⇒無申告加算税は10%または15%(50万円を超える部分)


2.繰延税金資産の回収可能性指針、"会計方針の変更"部分は限定的
ASBJ12/25にも「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」を正式決定
⇒平成2841日以後開始する連結会計年度の期首から適用予定

■適用初年度の取扱い(会計方針の変更or会計上の見積りの変更)
・会計方針の変更に該当は3つのケースのみ
⇒適用初年度の期首の影響額は利益剰余金とする
・その他のケースは会計方針の変更とせず、損益計上が可能


3.法人税20%台引き下げも課税ベース拡大
平成28年度税制改正議論が決着。
■法人税率等
・法人税     (現行)23.9 %⇒(28年)23.4
・法人事業税所得割(現行) 6.0 %⇒(28年)3.6
・法定実効税率  (現行)32.11%⇒(28年)29.97

・外形/付加価値割(現行) 0.72%⇒(28年) 1.2
・外形/資本割  (現行) 0.3 %⇒(28年) 0.5
※外形標準課税の拡大に対応するかたちで、
 事業規模が一定以下の法人は3年間の軽減措置あり

■その他
・生産性向上設備投資促進税制が縮減/廃止
・「建附」「構築物」の償却方法が定額法に一本化
・大企業の繰越欠損金の控除限度割合が見直し
 (現行)65%⇒(28年)60%(29年)55%(30年)50


4.生産性向上設備投資促進税制
 一定規模以上の先端設備等を取得等した場合、産業競争力強化法の施行日(平成26120日)から平成28331日までであれば、即時償却又は5%の税額控除(建物・構築物は3%)、また、平成2841日から平成29331日までであれば、50%の特別償却(建物・構築物は25%)又は4%の税額控除(建物・構築物は2%)の適用を受けることができる。
平成28年税制改正では適用期限通り、軽減・廃止がなされることになった。
 ここでいう、
・先端設備等とは、「先端設備」又は「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」となり、
・取得等とは、取得又は製作若しくは建設をいい、建物にあっては改修のための工事による取得又は建設を含みます。
 「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」は、資産取得前までに、投資計画策定、公認会計士又は税理士による投資計画の確認、経済産業局による確認書発行など手続きが多く時間がかかりますので充分時間の余裕をもって対応する必要があります。


5.相続紛争に関する和解金の所得区分で課税処分取り消し
■事例
Aが相続による遺留分減殺請求訴訟により金員を受領
・和解金として取得した金員は相続財産である賃貸マンション収入
・原処分庁は不動産所得に該当すると判断
・審判所は不動産所得ではなく一時所得と判断

■争点
・不動産所得に該当するか

■審判所の判断
・金員は相続紛争を解決するための和解金としての性質あり
Aがマンションの所有者ではないため、そのマンション収入は不動産の貸付による収入には該当しない。
・ただし収入にはかわりないので一時所得として課税される


6.インボイス導入で免税事業者に経過措置
29/4/1 消費税10%UP と同時に「軽減税率&インボイス制度」が導入予定
 ※下記、12/3に政府・与党が素案を公表

【買手側】
・仕入税額控除をとるためには、「適格請求書」の保存が必須
⇒売手側に交付を依頼する必要あり
 ※適格請求書・・・登録番号、適用税率、税率別の消費税額等の記載が必須

【売手側】
・買手側から依頼された場合は、「適格請求書」の交付・保存が義務
・ただし、免税事業者は「適格請求書」を発行することができない

⇒今後は、免税事業者からの仕入については仕入税額控除が取れなくなる
 ※ただし、制度導入後6年間は経過措置あり
 (免税事業者からの仕入につき、当初3年間は80%、その後3年間は50%の仕入税額控除が可能)
⇒買手側は、課税事業者から仕入れた方が節税となる
 ※免税事業者は取引してもらえなくなる
⇒課税事業者を選択する会社が増えることが想定される


7.所得税:従業員等に支給する金品と源泉徴収
■資格の講習費用等を支給した時の取り扱い
・業務遂行上の必要に基づき「適正」な支出であれば非課税
・「適正」か否かは
(1)個人に帰属する利益の度合い
(2)事業関連性
(3)習得後の勤務期間
等を勘案して個別に判断する。

■個別事例検討
・経理部員にセミナーを受講させる費用
⇒個人に帰属する利益が少ないため源泉徴収不要

・バス会社が事務職員に大型免許を取得させる費用
⇒個人に帰属する利益が大きいため源泉徴収が必要な可能性がある

・病院が看護学生の学資金を負担した場合の費用
⇒非課税(通達あり)


8.法人税:子会社等に対する債権放棄に関する裁判例(東京高裁)
■内容
・債務超過状態の子会社に対して行った債権放棄の額が寄附金に該当するか否かが争われた。
・「相当な理由」があれば寄附金課税しなくてよい旨が規定された法基通9-4-2の適用可否。

■「相当な理由」が有るかどうかの判断基準
(1)対象の子会社の倒産を防止するために、債権放棄が止むを得ないものであるか?
(2)債権放棄が合理的な再建計画に基づくものであるか?

■判決
法基通9-4-2は適用不可。寄附金課税するのが相当。
(本通達適用の可否判断のほか、貸倒損失の要件を満たしていないことにも言及している。)

■適用不可とした理由(判断基準と事実関係の照合)
(1)について
 ・親会社が子会社に対して債務の支払いを猶予していた結果、他の取引先への支払いは滞っていなかった。
 ・債務超過ではあるが、子会社は継続的に金融機関から借り入れができていた。
 ⇒債権放棄は子会社の倒産回避のために不可欠とはいえない。

(2)について
 ・再建計画は存在していたが、目標値等が書かれているだけで具体的なコスト削減策等は盛り込まれていなかった。
 ・再建計画の中で親会社に対する債務の取り扱いについて触れられていなかった。
 ⇒合理的な再建計画に基づく債権放棄とはいえない。


9.繰延税金資産等の表示
DTADTLの場合、発生原因となった取引・科目が流動or固定のどちらに属していたかで決まる

・土地の評価に関する損失について計上されたDTAの場合
 土地が固定資産に計上されている場合⇒DTAは「投資その他の資産」へ
 不動産業などで土地が流動資産に計上されている場合⇒DTAは「流動資産」へ

・繰越欠損金
 ⇒特定の資産・負債に関連しない
 ⇒ワン・イヤー・ルールで長短区分する


10.消費税のリバースチャージ方式に関して判断に迷う論点と対応
1. 経費管理システム
経費管理システムにおける基礎データの入力は各部門の担当者であることが多い
⇒会計、税法に詳しくない担当者でも対応できるように事前に十分説明する必要がある

2. 担当者が判断に迷う論点への対応
(1) 電気通信利用役務の提供か否か
⇒「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A2-1に範囲の例示が記載されている。

(2) 事業者向けか、消費者向けか
⇒役務の性質と取引条件から判断 (Q&A3-1
() 事業者向けと判断されるケース
 ・役務の性質 … インターネットを介した広告の配信等
 ・取引条件  … 取引当事者間固有の契約を結ぶクラウドサービス等

(3) 登録国外事業者か否か
⇒ 国税庁のHPに記載された業者か否かを確認する。


11.無対価合併の適格判定
■原則
 無対価合併=原則として非適格合併として取り扱う

■事例
 V社がW社を吸収合併する(V社が合併法人、W社が被合併法人)
 いずれも株主はX社とY社のみで、持株比率はいずれも5149である。
 (V社の持株比率はX:Y=5149、W社の持株比率もX:Y=5149
 したがって、合併後の新会社の持株比率も5149となるので無対価合併としたい。
 この場合、適格合併となるか?

■結論
 適格合併とはならない(下記を満たさないので)

■適格の要件を満たす場合
 (1) 100%グループ内の合併である場合
   V社がW社を100%支配していた場合
 (2) 50%超100%未満グループ内の合併である場合
   X社がV社を100%支配しており、
   X社が40%、V社が60%、W社の株式を保有していた
   ∴X社グループで、W社を100%支配していた場合
   
 (3) 当事者が公益法人等である場合


12.特定個人情報の漏えい時の対応ポイント
1.措置
 ・被害の拡大防止(例えばLANを抜いてネットワークから切り離すなど)
 ・影響範囲の特定(漏えいした情報の内容、漏えいした手段、漏えいした原因等)
 ・再発防止策の検討実施
 ・事実関係について本人へ連絡

2.報告時の留意事項
 ・主務大臣のガイドラインに従って報告
  (場合によっては特定個人情報保護委員会に報告)
 ・個人情報取扱事業者以外の事業者は、以下すべての条件を充足する場合は特定個人情報保護委員会への報告不要
  (本人すべてに連絡、外部漏えいしていない、不正目的で持ち出した事案でない、個人情報の数が100人以下)

3.事前整備の重要性
 ・事案発覚後の対応を行う組織、体制の整備
 ・技術的なモニタリング体制の整備
 ・人的な監視体制の整備


13.ロイホがホテル事業を加速
・東京浅草に、「リッチモンドホテル プレミア浅草インターナショナル」が開業する。
・ハラル認証を得た和食2種類・洋食2種類の専用弁当を提供し、ムスリムの受け入れにも注力。
・運営するのは、「ロイヤルホスト」を展開しているロイヤルホールディングス。
2012年度はセグメント利益で外食:19.8億円、ホテル:12.9億円
2015年度は第3四半期時点で外食:26億円、ホテル:25.6億円
・「期初の業績計画に対してホテル事業が大きく上振れしている。今期は初めてホテルの利益が外食を上回りそうだ」


14.関係会社への役員の出資
関係会社の株主に役員等の特別利害関係者がいる場合、役員等の利得行為が発生する可能性があり、原則として認められない。
申請会社の役員が関係会社へ出資している場合、上場審査上、出資関係の解消が求められることとなるが、その場合の留意点は次の通り。

(1)申請会社による役員所有の関係会社株式の買取り
⇒申請会社と役員との株式の売買については、特別利害関係者との取引であるため、その価額の決定・手続は公正・慎重に行う必要がある。

(2)役員による申請会社所有の関係会社株式の買取り
⇒関係会社の事業が申請会社の事業と関連性がなく、
将来にわたって競合関係が発生しないことおよび取引関係の解消も特段の支障がない場合においては、出資関係を解消する一つの解決方法である。

■今週の新規上場会社
上場・公開日    社名                   銘柄コード 市場  公募価格
(円)
1215      ダブルスタンダード       3925      マザ    2,190
1211      ツバキ・ナカシマ          6464      2部      1,550
1217      ミズホメディー             4595      JQS     1,100
1217      オープンドア               3926      マザ     3,820
1218      フリュー                     6238      1部     3,200
1218      アートグリーン            3419      名セ     3,200
1218      アークン                    3927      マザ       1,360

(ダブルスタンダード)
業種:情報・通信業
事業内容:企業向けビックデータの生成・提供、データ生成過程で培った技術を活用
したサービス企画・システム開発
主幹事:SBI証券
監査法人:新日本

(ツバキ・ナカシマ)
業種:機械
事業内容:鋼球の製造・販売等
主幹事:野村證券
監査法人:あずさ

(ミズホメディー)
業種:医薬品
事業内容:体外診断用医薬品の開発・製造・販売
主幹事:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
監査法人:トーマツ

(オープンドア)
業種:情報・通信業
事業内容:総合旅行情報サイト「トラベルコちゃん」等の運営
主幹事:みずほ証券
監査法人:トーマツ

(フリュー)
業種:機械
事業内容:
プリントシール機及びその関連製品の企画・開発・販売、インターネット上のコンテ
ンツ・メディアの企画・運営・開発、クレーンゲーム景品の企画・販売、家庭用・ス
マートフォン向けゲームの企画・開発・運営
主幹事:野村證券
監査法人:トーマツ

(アートグリーン)
業種:卸売業
事業内容:種苗の輸入販売並びに生花の生産及び卸売
主幹事:エイチ・エス証券
監査法人:あずさ

(アークン)
業種:情報・通信業
事業内容:情報セキュリティ製品の開発・販売事業
主幹事:SMBC日興証券

監査法人:トーマツ






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