2020年1月10日金曜日

10/4 勉強会:新収益基準~経理部門と事業部門の連携の必要性~ 他

1.財産評価基本通達における非経常的な利益とは?

・財産評価基本通達では、類似会社比準価額における評価会社の「1株当たり利益金額」の算定に当たり、
 法人税の課税所得金額から「固定資産売却益、保険差益等の非経常的な利益」を除くとある。

■論点
クレーン事業を営む会社がクレーン車を毎期継続的に売却する場合の固定資産売却益は、法人税の課税所得金額から除けるのか?

■結論
クレーン車の売却益は評価会社の経常的収益力を構成し、非経常的な利益には該当しない。
⇒非経常的な利益に該当するかどうかは固定資産売却益又は保険差益に該当するか否かのみによって判断されるべきではない。
 評価会社の事業の内容、利益の発生原因、その行為の反復性又は臨時偶発性等を考慮して実質的に判断するのが相当。



2.図解 新・時価評価課税&欠損金持込制限

■グループ通算制度(連結納税制度の新名称・予定)
・組織再編税制との整合性を配慮した結果、時価評価課税・欠損金持込制限は現行制度よりも拡大
・分類
(1) 時価評価課税の対象となる法人(=繰越欠損金の利用が制限される法人)
(2) 時価評価課税の対象外となる法人
a. 含み損益の実現時に利用制限があるもの
b. 含み損益の実現時に利用制限がないもの(全額欠損金を持込可能)



3.「外形要件の優先」vs.「消費税の実質判定」

課税仕入れへの該当性争う事案の控訴審で商品売買仲介業者(A)が主張を変更

■事案
商品売買仲介をめぐり消費税の課税仕入れに該当するか否かが争点となっている税務訴訟で、契約書の有無を含めた仕入取引の実態判断により「Aの課税仕入ではない」と判断が示されていた。
それに対し、Aは取引の実態判断ではなく、外形要件の優先させるべきであり、
輸出許可書等の記載により取引の当事者が判断されるインボイス形式などの書類への記載(外形)が実務上の判断基準もあるタックスアンサーの記載を援用し、Aは輸出免税の適用者であると主張。

■国の主張
Aは取引の当事者でない以上、この取引についてのAの課税仕入れと認めれらる余地はない。消費税の免税を受けるためには一定の事項を記載した輸出許可書が必要であると、国税庁が公表するタックスサンサーでは説明しているものにすぎない。Aは自己に都合よく曲解していているものに過ぎないと反論。

■判決
11月6日に判決言渡しが行われる予定。



4.軽減税率、税込同一価格採用も申告は別

・軽減税率制度導入に伴い、経営判断として税込同一価格とするところが出ている。
・税込同一価格にすることでこれまでと同様にスムーズに飲食料品を販売することが出来る。
⇒しかし、事業者は税込同一価格を採用したとしても店内飲食か持ち帰りかの判断は必要。
 税務申告においては、軽減税率か標準税率かを区分した上で帳簿を作成しなければならない。




5.税トレ:会計上の見積りの開示など、新会計基準の公開草案が公表へ

■概要
ASBJは「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」及び「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(案)」を10月に公開予定。
適用時期については、2021年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表からとする方針。

■「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」の主な内容
会計上の見積のうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目を識別した上で、識別した項目のそれぞれについて、会計上の見積りの内容を表す項目名などを注記。
あくまで翌年度の財務諸表への影響に着目している点に注意。

■「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の主な内容
「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」に関する注記事項の充実を図るもの。
関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続については、それらが重要な会計方針に含まれることが明記されている。




6.10/1付で変更があった税目の税率

2019/10/1付で以下税目につき税率の変更あり
また特別法人事業税が新たに創設された。

■消費税
現行:10%
ただし軽減税率対象となる場合は8%

■地方法人税
10/1以後開始する事業年度以降 ⇒ 10.3%

■法人事業税 ※東京都
10/1以後開始する事業年度より変更
所得割の標準税率
・所得400万以下 ⇒ 3.5%
・所得800万以下 ⇒ 5.3%
・所得800万超下 ⇒ 7.0%(軽減税率不適用法人含む)

所得割の超過税率
・所得400万以下 ⇒ 3.75%
・所得800万以下 ⇒ 5.665%
・所得800万超下 ⇒ 7.48%(軽減税率不適用法人含む)

■特別法人事業税
従前の地方法人特別税が廃止され、新たに創設
・外形対象法人以外 ⇒ 37%
・外形対象法人    ⇒ 260%

法人事業税の税率については、市区町村ごとに異なるためHP等で必ず確認をすること


7.のれん

■日本

・のれんで税効果を認識すると同額ののれんが変動する結果となるため、税効果を認識しない。
(子会社株式等の取得に伴い、連結上認識したのれんも同様)。

・非適格合併等における税務上の資産調整勘定は、一時差異とみて繰延税金資産を計上し、その上で配分残余としてののれんを算定する。

■米国

・のれんに関する費用を損金算入できる場合、のれんに対する税効果を認識すべきとしている。

・具体的には、
(1)いずれか小さい方を一時差異として繰延税金資産・負債とする
(2)その残額については以下とする。
税務上ののれんが会計上ののれんを上回る場合は一時差異として繰延税金資産を認識する。
会計上ののれんが税務上ののれんを上回る場合は繰延税金負債を認識しない。

■計算例

仮に実効税率を30%として
税務上ののれん(日本でいう資産調整勘定)100、会計上ののれん160の場合、

日本基準 100×30% =30(繰延税金資産計上)
米国基準  100<160 小さい100が一時差異 
     ただし当初認識時点では一致しているので税効果を認識しない
     期末には税務上ののれん償却(5年償却として20)×30%=6 繰延税金負債を認識




8.収益認識会計基準の早期適用、合計36社

・前回7/10時点で28社⇒9/23時点で36社と8社増加(すべて日本基準)。

・8社の会計方針の変更の注記では、影響額だけでなく、どのように収益認識を変えたか、という記載あり。
例)住友林業
①代理人取引に係る収益認識
②工事契約に係る収益認識
③保証サービスに係る収益認識
⇒②について、履行義務を充足するにつれて、一定の期間に渡り収益を認識する。

・8社すべて84項ただ書きを適用
⇒適用初年度は、原則遡及適用だが、累積的影響額を期首の利益剰余金に加減することもできる。




第1章 事業部門との連携が重要な理由と連携のコツ

・新収益認識基準は会計処理や業務プロセスだけではなく、業績評価、営業活動実務、契約実務等にも大きく影響
⇒導入及び運用には事業部門との連携が不可欠
⇒内容は事業部門による基準の理解、差異の影響度分析にとどまらず、契約書ひな形の変更等もある
・履行義務への取引価格の配分によっては、収益認識時期が後ろ倒しになったり、部門間で収益が移動したりする等、業績評価にも影響を与える可能性がある
⇒各事業部門の業績評価についての影響(期間帰属・部門間をまたぐ取引価格の配分)を丁寧に説明することが肝要
・事業現場の実務を熟知した事業部門、特に営業部門の人員にもPJチームに参画してもらうことが必要



10.新収益基準~経理部門と事業部門の連携の必要性~

■ステップ1(契約の識別)
同一顧客と「同時又はほぼ同時に」(1)締結した「一定要件」(2)を満たす複数の契約を結合
(1)「同時又はほぼ同時に」をいつにするか
⇒基準には指標は無い
⇒1カ月や3カ月といった期間を予め事業部間で協議し、会計処理の安定性と事業部成績の予測可能性を確保

(2)「同一の商業的目的を有するものとして交渉されたか」をどう判断するか
⇒1つの商業的パッケージか否かを契約書のみから読み解くのは不可能
⇒商談開始から契約の結合までの考慮が必要であることから、特に営業部との連携が重要

■ステップ2(履行義務の識別)
顧客に約束した財又はサービスは、一点要件を満たす場合は、「別個のもの」(3)とする
(3)別個の履行義務をどう識別するか
⇒個別取引から判断する他ないが、ビジネスモデルにより類型化ができることが多い
⇒法務部と連携し、契約書から類型化した履行義務を明確に識別できるようにしておく

■ステップ4(履行義務への取引価格の配分)
取引価格を配分する場合は、取引開始日の「独立販売価格」(4)をもとに行う
(4)独立販売価格をどう見積もるか
⇒調整した市場評価アプローチ(顧客が支払うと見込まれる価格を見積もる)
⇒予想コストに利益相当額を加算するアプローチ(コストに適切な利益相当額を加算)
⇒各種価格の見積もりには、営業、経営企画等部門との連携が必要



11.経営者・CFO・経理担当者のKAM対応のポイント

・■監査報告書の違いを実感しておく
⇒監査報告書にKAMが記載されることで、会社の経営方針や会計方針で重要なものが記載されるようになる。
⇒KAM以外の文言も大幅に変わる予定であるため、どのような内容が記載されるようになるかを事前に把握しておくことが重要
■監査人との深いコミュニケーション
⇒監査報告書を通じて会社の経営方針等が外部に公表されるため、監査人とのより深いコミュニケーションをとり、監査人の理解を促すことが重要。



12.退職給付信託の設定に関する留意事項

■退職給付信託とは
・退職一時金制度および退職年金制度における退職給付債務の積立不足額を積み立て、将来の退職給付に充当するために設定した信託。
⇒退職年金制度の場合には、退職給付債務と既存の年金資産の差額、
退職一時金制度の場合に退職給付債務の全額が信託設定可能な額と考えられる。

・一定の要件(参考に記載)を全て満たす場合に、年金資産に該当するものとして会計処理を行う。
⇒資産の信託拠出時に、退職給付信託財産およびその他の年金資産の時価の合計額が、
 対応する退職給付債務を超える場合には、年金資産として認められない点に留意。

■退職給付信託に拠出できる資産
・一般に上場有価証券など、時価の算定が客観的かつ容易であり、換金性の高い資産であることが必要。
・土地などの有形固定資産は、通常、拠出対象資産とすることは適当でないと考えられる。

■設定時期
・設定時期の制度は設けられていない。
・要件を満たしていれば、いつ時点でも退職給付信託の設定また追加設定が可能。

■未認識数理計算上の差異や未認識過去勤務費用の計算
・退職給付信託を設定する場合であっても、償却計算を継続する必要があることに留意。

■参考:退職給付信託が年金資産に該当するための要件(下記を全て満たす必要がある)
(1) 当該信託が退職給付に充てられるものであることが退職金規程等により確認できること
(2) 当該信託は信託財産を退職給付に充てることに限定した他益信託であること
(3) 当該信託は事業主から法的に分離されており、信託財産の事業主への返還および事業主による受益者に対する詐害的な行為が禁止されていること
(4) 信託財産の管理・運用・処分については、受託者が信託契約に基づいて行うこと




13.決算・開示体制

・取引所審査項目の中で、対象会社の決算・開示体制がしっかり整っているかを確認
・確認方法としては、対象会社だけではなく、監査法人へのヒアリングも実施
・近年、この体制については、厳しく見られている傾向にあるとのこと
・年度決算による監査修正項目のボリュームや質的影響も加味される
・このようなことからも、申請期ではなく、直前期に監査法人による監査を受けて、
体制ができていることを証明する必要があると考える
・体制としては、1.チェック体制、2.提示開示のための正確性と迅速性などがあげられる


14.IFRSと日本基準の差異_連結

■連結の範囲
日本基準
・議決権比率の具体的な数値基準あり
・潜在的議決権は考慮外
・一時的な支配の場合は連結対象外とできる

IFRS
・過半数にみたに場合の議決権比率の数値基準なし
・支配の判定時に潜在的議決権を考慮する

■子会社決算日
日本基準:3ヶ月内の決算月ズレであればそのまま連結することができる
IFRS:実務上不可能な場合を除き、決算日を統一する



15.消費税率引上げを「またぐ」取引に留意

■税率の確認が困難な場合は自己処理に基づき控除
売手と買手で計上基準が異なる場合の適用税率について、商品の出荷が9月30日で納品日が10月1日の取引の場合
・売手側が8%で請求していても、買手側は10%で仕入税額控除ができるのか否か
・請求書等で消費税率が「明らかな場合」
⇒買手側はその税率で仕入税額控除の計算をするため、旧税率を適用
・税込価額で請求されていて、適用された税率が「明らかでない場合」
⇒以下の順で仕入税額控除の税率を判断

【税込価額で請求されていて、適用された税率が明らかでない場合】
相手方に税率を確認する
② 相手方への確認が困難な場合には、検収基準等による自己の会計処理により算出した仕入税額を基礎として仕入税額控除をする




















◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

2019年11月28日木曜日

9/27 勉強会:M&Aリスクに注意、統合報告書作成のための7項目、その他 他

1.株式交付の再編税制入りに高い関心

■株式交付とは(令和2年に施行予定)
・他社を子会社化するために他社の株式を譲り受ける。
株式の譲渡人に対しては、自社の株式を交付する。
100%子会社化までは意図していない場合にも使える点が株式交換と異なる。

■論点
・株式交付が株式交換の一類型として組織再編税制の一部とされた場合、
 適格株式交換の要件である完全支配関係の継続要件を満たさないとして非適格再編となり、
 対象会社において時価課税が生じてしまうと、全く利用されない恐れがある。



2.のれんの償却期間は10年を上限に

■のれんの償却
・減損のみモデル(米国、IFRS)では減損が適時に認識されていないのではという懸念

■基本的に10年を上限とするのが適切であるとする理由(ASBJ)
・10年を上限として「将来の正味キャッシュインフローが企業結合により増加すると見込まれる期間」とするのが適切
・企業結合の効果を10年超の期間で見込むことは稀であること
・米国基準における非公開企業向けの償却オプションで上限として10年が示されているのも論拠の一つ



3.令和元年度改正における法人税関係の通達を読む

「法人税基本通達等の一部改正について」改正事項。
■適用除外事業者の判定、修正申告等があれば変更後の金額で
平成31年4月1日以後に開始する事業年度から適用される、中小企業向けの租税特別措置の適用除外事業者であるかどうかの判定。
適用除外事業者に該当する事業年度については中小企業向けの租税特別措置の適用を停止。また、基準年度の修正申告により所得の金額が変更。再判定で基準年度の平均所得金額が15億円超になれば中小企業向け租特の適用はなし。

【判定基準】
判定対象年度終了時に確定申告の所得の金額で判定。
中小企業者のうち事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人を「適用除外事業者」と判定。




4.所得税と相続税の納税猶予では「譲渡」の解釈は別物

共有分割の結果、特例農地等の納税猶予の対象とされていた農地が農業相続人以外の相続人に移転したことが譲渡等に該当すると判断し納税猶予の期限を確定した国に対して、納付税額の返還等が求められていた事案
⇒「資産の譲渡と相続税の納税猶予制度の解釈は全く同一にしなければならないものではない」として納税者の請求を棄却した。

■事案
・法定相続人は4人、原告は唯一農業を営んでいた。
・被相続人は遺産全てを原告に相続する旨の公正証書遺言をした。
・被相続人は農業相続人のため特例農地等の納税猶予制度により原告は相続税を猶予された。
・原告以外の相続人が遺留分減殺請求訴訟を提起。本件農地の一部が所有権移転登記された。その農地の一部に原告の長男名義で農業施設を建設。
・最終的に共有持分の放棄を相互に行い、大半の農地を原告の単独所有とし、一定の農地を原告以外の相続人らの共有として和解した。
⇒農地の一部は農業相続人である原告の農業用に供されていないことになり、農業継続を目的とする相続税の猶予という観点で考えるべきで資産の譲渡と解釈が異なるとした。





5.税トレ:軽減税率<アルコール販売関連>

■アルコール販売関連Q
(1)お酒の販売は軽減税率制度の 対象?or対象外?
(2)食品の原材料としてのワインの販売は軽減税率制度の 対象? or対象外?
(3)料理に使用される本みりん(アルコール度数14度程度)の販売は軽減税率制度の 対象?or対象外?
(4)料理に使用されるみりん風調味料(アルコール度数1度未満)の販売は軽減税率制度の 対象?or対象外? 
(5)料理に使用される料理酒(アルコール度数10度程度。塩を加えて飲用できないように調整されている)の販売は
軽減税率制度の 対象?or対象外?

■A
(1)対象外
(2)対象外
「食品」の原材料となるワインなどであっても、酒税法に規定する酒類は、軽減税率の適用対象である「飲食料品」に該当せず、その販売は軽減税率の適用対象とならないこととされている。
(3)対象外
(4)対象
(5)対象
料理酒などの発酵調味料(アルコール分が1度以上であるものの塩などを加えることにより飲用できないようにしたもの)やみりん風調味料(アルコール分が1度未満のもの)については酒税法に規定する酒類に該当せず、「飲食料品」に該当し、その販売は軽減税率の適用対象となることとされている。





6.税務:申告書等閲覧サービスと写真撮影

過去に税務署へ提出した書類の控えを紛失等してしまった場合、
税務署の「申告書等閲覧サービス」を利用して閲覧することが可能。

・免許証等の本人確認書類が必須
・手数料かからない
・委任状があれば税理士も閲覧可能

従前まで、閲覧内容を手書きで書き写す方法しかなかったが、
6月末の改正でスマホ等により写真撮影が可能となった。
なお、動画撮影やコピーは取ることができない

※過去の申告書等の写しを取得する場合は、有料の開示請求手続きを行う必要あり


7.開示すべき重要な不備 2019年3月期に13社

・うち8件が不適切な会計処理等。
・特に、海外子会社における不適切な処理が多かった。
・(藤倉コンポジット(東一、ゴム製品)の例)
 内部通報を機に調査した結果、中国子会社で費用計上すべき一部経費のみ形状が発覚。
 過去5年間の有報を訂正、再提出。




8.M&Aリスクに注意、統合報告書作成のための7項目、その他

■M&Aリスクに注意
・経営者は短期的な売上・利益増大のために、M&Aを行おうとする。しかし、下記の問題がある。
①株主価値の毀損
⇒2,500社を調査したところ、60%の会社の株主価値が毀損した。
②明確なビジョンがない。
⇒400社の経営者を調査したところ、31%の者がM&Aの理解が不十分。DD不足。
③コンプライアンス
⇒300社の経営者・法務アドバイザーを調査したところ、56%が調査不十分。
④経済環境のリスク
⇒特に主要な人材の引き留め、従業員の再教育等の人材リスクが大きい。

■統合報告書作成のための7項目
①経営者及び取締役の支援を受けること
②企業の長期的価値の創造についてのストーリーを利害関係者に伝える
③年次決算書と異なる時期に報告書を作成する
④企業ストーリーを説明するための新たな方法
⑤企業の長期価値創造のために主要な要素を示す
⑥過剰な留意事項を示さない
⑦投資家の関心についての過小評価はしない

■ビジネスリスク
・欧州9か国の内部監査部門のトップによる年次報告会によると、サイバーセキュリティが最もリスクが高い。
以下、規制の変更、デジタル化と続く。
⇒今後5年以内に、気候変動リスクも主要なリスクとなると言われている。



トヨタ系「大豊工業」米子会社の不正で上場廃止の危機

・トヨタ自動車系の中堅部品メーカー大豊工業
・自動車用の軸受け製品やアルミダイカスト製品、自動車製造用の金型などを生産
・全額出資の米国子会社、TCAで不適切会計(※)が発覚、19年度1Q(4-6月)の報告書を期日とされた17日までに関東財務局に提出できなかったため
(※)15-18年の期末棚卸資産が約5億円、過大計上されている恐れ
・最終期限は30日。それでもダメなら整理銘柄に指定され、原則1カ月後に上場廃止
・大豊工業はTCAに対し、今年3月末時点で9.89億円を貸し付けているほか、債務保証も行っている。
・単体決算では保有株減損のほか、貸倒引当金や債務保証損失引当金の追加計上なども迫られる見通し。




10.IFRSと日本基準_法人所得税

IFRSの法人所得税と日本基準の法人税等の税金の範囲実質的な差異なし
→税効果会計の基本的な考え方も共通している

・将来減算一時差異
IFRS:評価性引当の概念なし(回収可能性がある金額を直接計上) 
日本基準:一旦繰延税金資産を計上し、判定結果に応じて評価性引当金を計上(二段階アプローチ)
→日本基準の方が、ひと手間多い

・財務諸表における表示
IFRS:当期税金と繰延税金を合算して税金費用として包括利益計算書で表示
日本基準:法人税等と法人税等調整額に区分して表示
→IFRSでは注記で内訳を開示

・連結上の未実現損益消去に係る税効果
IFRS:回収可能性の検討が必要
日本基準:回収可能性の検討は不要
→IFRSの方がひと手間多い




11.消費税率引上げを「またぐ」取引に留意

■売上計上方法で適用税率が異なることも
①経過措置の適用がない取引(棚卸資産の譲渡)
・9月29日に店頭で商品を引き渡している場合 ⇒ 旧税率(8%)適用
・販売した商品を10月以降に別送する場合(店頭での販売時に継続的に売上計上場合)
 ⇒ 旧税率(8%)適用

②通信販売
・発送基準により売上計上の場合 ⇒ 発送が9月30日なら同日に売上計上し、旧税率(8%)適用
・着荷基準により売上計上の場合 ⇒ 商品の到着が10月3日なら同日に売上計上し、新税率(10%)適用


















◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

9/20 勉強会:機械装置に埋め込まれたソフトウェアの処理 他

1.フリンジベネフィット開示に変化の兆し

・フリンジベネフィット(役員に対する経済的利益)開示が注目を集めている。
・現行実務では、フリンジベネフィットを会社法上の役員報酬とするかは、
 税務上で役員給与として課税対象となるかどうかにより判断している。
⇒税務上役員給与とならない場合は、会社法上も役員給与とせず、有報での開示もしないことになる。

・米国では従来からフリンジベネフィットの開示が義務付けられている。
・欧州でも今年、フリンジベネフィットに関するガイドラインが公表された。
⇒日本でも欧米並みの開示実務が広がる可能性がある。



2.土地の相続税評価における「特別の事情」の存否(鑑定額と相続後売却価額の正否)

■事例(金額は意図的に丸めている)
・相続財産の評価=財産評価基本通達で評価(路線価方式):30,000円/㎡
・別途鑑定評価を依頼&実際に相続後に売却:20,000円/㎡
(原告=本件相続人の主張)
・評価通達による評価方法を画一に使用=時価を超えてしまう(著しい乖離)。
・評価通達に規定する評価方法によるべきでない「特別の事情」が認められるのでは?

■結論:棄却(東京地裁)
・恣意的に売却価額を引き下げることも可能
・売却までの期間の長さ等を考えて、相続税算定に使用する時価(相続発生時点の時価)と乖離が出るのは仕方ない
・鑑定評価=不動産鑑定士が報酬を得て行うので納税者有利の評価が行われているのではという疑念あり
・実際の裁判例でも、鑑定評価よりも評価通達に基づく評価額の合理性を安易に強調する傾向あり



3.顧問契約解除で報酬請求、税理士勝訴

■事案
・顧問税理士が、簡易課税制度の適用要件等について説明がなかったことなどの行為を踏まえて契約を解除。
・顧問契約の解除は、契約に基づく解約申入期間(6ヶ月)の経過後。
・顧問契約上の債務不履行になるとし、顧問契約は解除と同時に終了したから、解除後の顧問報酬の発生がないと主張。
・解除後の顧問報酬について争われた。

■税理士側の主張
・税務処理に関与した時点で簡易課税制度の届出期間を過ぎていた
・飲食店経営につき親会社から業務委託方式をとっているため、簡易課税制度を適用すると二重に経費を控除することになってしまうことから、租税回避とならない範囲で決算案を作成。

■判決
・税理士の簡易課税選択の対応は専門家の判断として相当と評価。
・税理士の行為が顧問契約の債務不履行にあたるということはできないと判断し、税理士の報酬請求を容認。
⇒簡易課税制度の適用を受けることができないことは明らかだった。
⇒業務委託方式を前提とする限り、今後も簡易課税制度の適用を受けることはできないとし、そのことについて数種類の決算案を作成し、説明もしている。



4.本税の更正処分取消しでも重加算税が課される理由は

・東京地裁は法人税更正処分取消し判決が確定した原告が、重加算税相当額の還付及び還付加算金の求めていた事案について、重加算税賦課決定処分に無効事由は認められないと判示し、原告の請求を棄却した。
■論点
・更正処分等の取消しでは、更正処分及び青色承認取消処分の取消しのみ求められており、重加算税の賦課決定処分の取消しは請求されていなかった。(審査請求では両者とも取消し請求の対象となっていた)
⇒両者ともに取消しを求めていれば、重加算税は還付されていた可能性があった。
 行政処分が無効であるという無効確認という訴訟になったことで行政処分の無効立証という高いハードルが課されてしまった。






5.デジタル化に伴う海外取引、対応が課題

■概要
関東信越国税局長の栗原一福氏に対するインタビュー記事であり概要は以下のとおり。
・国際的な租税回避事案への対応に関し関信局管内では海外への資金の流れは多くないが、
デジタル化などに伴う海外との取引は増えており、資金の流れが捕まりにくくなっている。
・かつては恒久的施設(PE)があることによって課税をするのが原則だったが、
ネットショッピングなどのデジタルサービスが増加したことで、拠点を設けなくてもビジネスが可能。
⇒拠点がないことで課税しづらい状況にあるため、どのように対応していくかが課題。



6.機械装置に埋め込まれたソフトウェアの処理

■概要
税務上、機械装置とソフトウェアは、別々の耐用年数を用いて償却限度額を計算
することが原則である。

■ソフトウェアが機械装置に組み込まれている場合の処理
・税務上の明確な規定はない
・研究開発費等に係る会計基準
⇒「機械装置等に組み込まれているソフトウェアについては、当該機械装置等に含めて処理する」
これを理由に税務調査で機械装置計上を指摘されるケースがある

■実務対応
ソフトウェアの使用が機械装置と「一体不可分」といえるか否かがポイント
・ソフトウェアを取り出して利用できる場合⇒機械装置とソフトウェアを区分して計上
・ソフトウェアの取り出しが不可⇒全体を機械装置として計上





7.税務調査:人件費

税務調査の際、人件費関係で想定される確認事項は以下のとおり

■役員給与関係
・役員報酬額の決定プロセスが適法にされているか
・役員報酬額は定期同額となっているか
・事前確定届出給与は届出額と同額が支払われているか
・定期同額の報酬につき期中に金額の改定がある場合の理由は適切か
・役員報酬、役員賞与(事前確定分)は総合的に判断し過大ではないか
・役員退職金は過大であるか、算定額の根拠は

■従業員給与関係
・架空人件費の有無
・未払賞与の要件を満たしているか
・外注費支払いになっていないか

上記以外でも、実態が人件費ではないかの確認のため、
福利厚生費や経済的利益、源泉所得税まで幅広くチェックされるのでケアしておくことが重要






8.内部統制報告制度の展望

・地方自治体も2020年度から内部統制評価報告制度が開始。
・対象はすべての自治体ではなく、都道府県と政令指定都市。
・監査を行うのは監査法人ではなく各自治体の監査委員。
・運用評価についてはサンプリング等は行わず、自治体における非違事例の報告をもって評価結果とする

・上場企業の内部統制報告制度は形骸化が問題視されている
・内部統制報告書における重要な欠陥の報告が少なく、
 後日、内部統制に係る非違事例が発覚して訂正内部統制報告書で重要な欠陥を報告する事例が増え、
 重要な欠陥の件数が、上場企業全体で、後者が全社を上回る年も



減損テストの目的

・IFRSではのれんの定期償却は行わず、毎年必ず減損テストを行う。

・減損テスト
⇒減損の兆候の有無を見極め、帳簿価額と回収可能価額を比較するもの
⇒簿価>回収可能価額なら、回収可能価額まで簿価を切り下げる。

・目的
誤)企業結合が成功したかどうか
正)企業の資産が回収可能価額を超えて計上されないようにする

IASBではのれんを直接減損テストの対象とすることを検討したが、不可能だった、との結論。



10.対象となる無形資産の明確化のポイント(移転価格税制)

■移転価格税制の対象となる「無形資産」が法令で明確に定義された
 ※ただし個別列挙ではなく広範な定義とした
(定義)
・無形資産とは、(中略)その譲渡若しくは貸付け又はこれらに類似する取引が独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って行われるとした場合にその対価の額の支払われるべきものをいうのであるから、例えば、次に掲げるものはこれに含まれる。
(1)令第183条第3項第1号イからハまでに掲げるもの
 イ:工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式又はこれらに準ずるもの
 ロ:著作権
 ハ:第13条第8号イからソまでに掲げる無形固定資産
(2)顧客リスト及び販売網
(3)ノウハウ及び営業上の秘密
(4)商号及びブランド
(5)無形資産の使用許諾又は使用許諾に相当する取引により設定される権利
(6)契約上の権利(1)~(5)除く




11.令和元年度の移転価格税制改正のポイント

①移転価格税制の対象となる無形資産の明確化
⇒一定の金融資産以外で、独立事業者間で通常条件に従って譲渡等が行われる場合に、対価が支払われる。
②独立企業間価格の算定方法の整備
⇒DCF法を導入
③評価困難な無形資産の取引に係る価格調整措置の導入(所得相応性基準)
⇒特定無形資産の価値予測と結果の差が20%超⇒税務当局が再測定&課税可
④移転価格税制にかかる更生期間の延長
⇒6年から7年へ
⑤比較対象取引の利益率を参照する価格算定方法に係る差異調整方法の整備
⇒四分位法(利益率レンジの上下25%切り捨て)に基づく差異調整が可能に
⇒定量的に把握することが困難な場合に限る




12.M&Aで仲介会社や専門家へ報酬を支払う際の留意点

・昨年は、のれんが重要な会計監査のポイントとなっていることもあり、費用を抑えることを優先し、報酬があまりにも低い専門家を利用して、後々の監査で問題となるケースがあった。
⇒報酬だけでなく、専門家の経験や経歴を考慮して専門家を選択することが必要と考えられる。
・自社で対応する範囲を広げ、FAや専門家に依頼する業務範囲を狭めることで費用を抑えられることが可能。

※専門家、仲介会社の一般的な報酬体系

(1)専門家の専門サービスの報酬体系
・DD、株価算定:固定報酬+タイムチャージ
・FA業務   :固定報酬+タイムチャージ+成功報酬

(2)仲介会社の報酬体系
・着手金
契約時に支払うもの
・リテイナーフィー
 契約期間中に、調査や相手先企業の紹介等の名目で毎月支払うもの
・成功報酬
 M&A成立後に支払うもので、通常はレーマン方式と呼ばれる取引金額や買収先企業の規模によって異なる料率が適用される
⇒レーマン方式の計算方法は、時価総資産ベースと取引金額ベースがあり、仲介業者により採用方法は異なるため留意が必要(通常は時価総額資産が取引金額より高くなることから、時価総資産ベースの方が成功報酬金額は高くなることが多い)。




13.東京プロマーケットのメリデメ

1.メリット
・上場までのスピードが早い
東証一部やマザーズでは早くて3年はかかる。
上場審査にあたって2期分の監査証明が必要になり、監査証明に先立って会計処理の整備などが必要になるため。
一方、東京プロマーケットは直近の事業年度1期分の監査証明でよい。

・形式基準がない
マザーズだと株主数は200人以上、時価総額は10億円以上などの要件があり。

・維持コストも安く済む
コストとしては、上場手数料、監査法人に対する監査報酬、株式事務代行手数料、開示書類作成関連費用、IR関連費用、株主対策費用
一般的な株式市場では、年に4回決算を行い、四半期報告書を作成して情報開示しなければならない。
全ての費用を合わせると年間で50Mほどが上場コストとして発生すると言われている。
一方、東京プロマーケットは四半期開示が任意、内部統制報告制度なども任意

2.デメリット
・投資家が制限されることで資金の流動性が下がる
東京プロマーケットはプロ投資家のみが株式を購入することができるため、国内の一般投資家は市場に参入することができない。

・上場の際に資金調達をしにくい
流動性が低いことから、上場時の公募売出しを実施しても想定した資金を集めることが難しい。


14.新規任意適用企業状況

・IFRS適用企業数
2018年3月期までにIFRSを適用した東証上場企業は156社
→2019年3月期までの1年間に新たに40社が任意適用した

・IFRS任意適用企業の東証業種別分類
サービス業:25社
情報・通信業:24社
電気機器:22社
医薬品:17社
輸送用機器:16社
化学:14社
小売業:11社
機械:11社
卸売業:11社
その他:45社
→医薬品は67社中18社(適用予定含む)がIFRS適用しており、約25%がIFRSとなっている
→一方で、サービス業は452社中27社と6%と、業種によって適用状況が異なっている。




15自動販売機の手数料と軽減税率

・自動販売機で行うジュース等の販売は軽減税率8%が適用される一方で、その周辺の取引には標準税率10%が適用されるものもあるため注意が必要

・自動販売機で行われるジュース等の販売は、「飲食料品の譲渡」として軽減税率8%の適用対象

・自動販売機を設置した企業が、販売数量や売上高に応じて飲料メーカー等から金銭の支払を受ける場合
・ジュース等を大量に販売したことについて、飲料メーカー等から奨励金が支払われる場合
⇒「手数料」であるため役務提供の対価として、標準税率10%が適用

・自動販売機の設置者自身が飲料メーカー等からジュース等を仕入れて販売する場合
⇒「飲食料品の譲渡」であるため、軽減税率8%が適用

・ジュース等を大量に仕入れたことについて、奨励金が支払われた場合
⇒もともとの取引(仕入)が「飲食料品の譲渡」であるため、その奨励金にも軽減税率8%が適用














◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供