2015年2月28日土曜日

2/27 勉強会:平成27年度税制改正後の法人実効税率 他

1.特定資産の買換特例を巡り税理士が一部敗訴した事件

■まとめ
・裁判で、個人の確定申告について修正申告を怠った税理士に対して損害賠償請求が認められた事件

・個人の特定資産の買換特例に関して、買換資産を取得期限までに取得できなかった
 ⇒修正申告の提出が必要だが、税理士がその対応を怠った
 ⇒税理士に非がある

・他方で、法人の買換特例に関しても、取得期限までに買換資産の取得ができず、かつ、修正申告もしていなかった
 ⇒税理士が法人に対して事前に十分な説明をしていたことが明らかだった
 ⇒税理士に非はない

・税理士が説明義務をしっかり果たしていたかどうかが争点となった


2.結婚子育て非課税、生前贈与の取扱いは

(1)教育資金に係る一括贈与の非課税措置
⇒贈与者が死亡=受贈者に対し相続税の課税関係が生じない

(2) 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置
⇒贈与者が死亡=贈与者の死亡時点の口座残額を受贈者が贈与者から相続等により取得したとみなされる
 ただし受贈者=孫の場合、相続税2割加算(1)の適用はない

・また「相続開始前3年以内の生前贈与加算」の対象となるのか?
受贈者が贈与者(被相続人)から(結婚・子育て資金の一括贈与に係る)口座残額のみであれば、対象外

(参考)
1 被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算される。


3.固定資産税申告対象は12月決算法人のみ

100万円未満の美術品等の固定資産税の申告の件
 ※以下を満たせば償却資産となる
  ・美術品
  ・時の経過により価値が減少しないものでない
  ・取得価格が1100万円未満

27/1/1以前に取得した美術品は?
 ・個人/12月決算法人
  ⇒27年度から申告対象となる
  ⇒27年度の修正申告か28年度の申告で増加資産として申告

 ・12月決算以外の法人
  ⇒28年度から申告対象となる


4.住宅資金特例、個人売買で贈与税負担も

・平成27年度税制改正で住宅取得等資金贈与特例の見直し
・平成2810月~平成299月の間に売買契約を締結すると、最大3,000万円の贈与が非課税
 ⇒ただし、個人から購入した場合、非課税限度額は1,200万円

・非課税限度額は、
(1)消費税率10%の場合(最大3,000万円)
(2)それ以外の場合(最大1,200万円)で大別

 ⇒個人から購入した場合、(2)それ以外に該当(∴消費税が適用されない)


5.ウェブ開示拡大等、会社法施行規則公布

会社法施行規則の一部改正する省令の施行日はH2751

■社外取締役を選任しない場合
(1)事業年度末日に社外取締役を置いていない場合⇒事業報告
(2)株主総会へ提出する取締役選任議案に、社外取締役の候補者が含まれていない場合⇒株主総会参考書類

社外取締役を置くことが「相当でない理由」を記載する必要あり

■社外取締役の要件の改正による見直し
(1)株主総会参考書類の記載事項について
  ・候補者が過去に該当会社または子会社の役員であった
  ・候補者が親会社の役員であった
  ⇒その旨を株主総会参考書類へ記載する必要あり
(2)ウェブでの開示
  ・ウェブ開示事項の範囲が拡大され、
   社外取締役を置くことが「相当でない理由」の記載が対象となる


6.費途不明で否認の支払金員は販売手数料 

審判所、業務との関連性があり、損金算入は可能と判断
【事例】
X社が支払った「販売手数料」について、支払先、支払目的が不明であるとの理由から損金不算入の更正処分を受けた。

【審判所判断】
・更正処分は取消し(損金算入可能)。

【理由】
・審判請求時に、下記の事実が判明。
 ⇒X社が得意先Y社への売上単価を「上増し」
 ⇒販売数量に応じて、「上増し」分を「販売手数料」としてY社へ還元。
 ⇒実質的に売上割戻しと同じ。
・費途不明な交際費等は、判定時期が限定されていないため、審査請求時に費途が明らかになれば損金算入可能


7.ゴルフ会員権の譲渡損失の取り扱いについて

■改正前
譲渡損と他の総合所得とを損益通算可

■改正後
平成2641日以後譲渡の譲渡損は他の総合所得と損益通算できない。
※ゴルフ会員権が「生活に通常必要でない資産」に追加されたことにより損益通算が認められなくなった。

■留意点
26331日までに譲渡した場合は本年の確定申告で適用あり
・「総合譲渡」所得であることには変わりがないため、他の総合譲渡所得とは通算(内部通算)できる。


8.消費税:特定期間の給与の金額で納税義務の判定をしないことの可否

 ■基準期間における課税売上高  900万円
 ★特定期間における課税売上高  1,100万円
 ★特定期間における給与等支払額 300万円
というケースで課税事業者選択届出書を提出していない場合に、課税事業者となることは可能か。
⇒可能。

特定期間の数字を用いる判定で『課税売上高』を使用するか『給与等支払額』を使用するかは法人の任意。
『給与等支払額』を用いて判定すれば免税事業者となれる場合でも、『課税売上高』で判定して課税事業者になることはできる。

また、課税事業者選択届出書により課税事業者になる場合とは異なり、調整対象固定資産を取得した場合の下記の制限等の縛りを受けない。
3年間の事業者免税点制度の利用制限
・簡易課税制度の選択の制限


9.新規上場後3年は内部統制監査を免除(金融庁)

・金商法施行令等改正案※意見募集中
・新規上場後3年以内に提出する内部統制報告書について監査証明不要となった
 ⇒資本金100億円以上または負債総額1,000億円以上の企業は対象外

■日本版ESOP
・従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する制度
 ※福利厚生、インセンティブ・プラン

【従業員持株会型】
・会社が持株会加入者のうち、一定要件を満たしたものを受益者とする信託設定
・信託は会社の株式を市場から取得
・持株会が信託から株式を買い取る

⇒株価が上場し信託に利益が出たら、受益者である従業員に金銭で分配する
  株価下落時の損失  :会社負担
  株価上場時のメリット:従業員が享受

【株式給付型】
・信託から従業員に直接株式を給付する仕組み


10.有価証券の売買で、約定日に売却処理が認められないケース

1. 売却処理(有価証券の消滅)のタイミング
(1) 通常
 ⇒ 約定日に、売却処理
 ※約定日 … 契約書日
(2) 約定日と受渡日の期間が長い場合
 ・期間が長い理由が事務処理に起因する場合
 ⇒ 約定日に、売却処理
 ・前提条件等が付されてことに起因する場合
 ⇒ 受渡日まで売却処理できない場合がある。
 ※受渡日 … 譲渡の効力が発生する日

2. 前提条件等がある場合、受渡日まで売却処理できない可能性がある理由
・売買にあたって、前提条件等があると、約定日に実質的に売買取引を双方で合意できたとは言えない場合がある。
 ⇒ 約定日に売却処理をすることは出来ない。
 ⇒ 売買取引が完了する、受渡日まで売却処理できない。

※非上場株式の売買の場合に、前提条件等を付される場合がある。

3. 留意点
 非上場株式の場合で、前提条件等があると、約定日に売却処理が出来ない可能性がある。
 ⇒ 見込んでいた利益又は損失を計上できない場合があるので留意が必要


11.連結納税税効果当面の取扱い

 連結納税:
   法人税 → 連結グループとして税効果を考える
   地方税 → 個社ごとに税効果を考える

  地方法人税はどのように取り扱うか?
 ⇒ 連結納税主体で考える(法人税と同じ取り扱い)


12.平成27年度税制改正後の法人実効税率

・平成2741日以後開始事業年度より適用

・改正案
 ⇒ポイント:法人税引き下げ、外形引上げ、所得割及び地方法人特別税引き下げ
  現行                             34.62%(外形なしは36.05%)
  改正後平成27年度         32.11%(外形なしは34.33%)
  改正後平成28年度         31.33%(外形なしは34.33%)


13.第三者割当増資

(1)第三者割当=特定の第三者に対して株式を割り当てる
⇒メリット
・特定少数に絞るので、公募よりスピーディー
・銀行借入が困難でも利用可能
⇒デメリット
・割当を受けない株主は持株比率が低下

(2)発行決議体
・原則:取締役会決議
・例外:株主総会決議(有利発行の場合は既存株主が不利益になるため)

(3)有利発行の判断基準
・発行決議の直前日の株価の90%未満
・例外として、最長6ヶ月平均の株価90

(4)大規模(=直近6ヶ月で希薄化25%以上or支配株主が異動)な第三者割当の規制
・経営者から独立した者からの意見入手
・総会決議等による株主の意思確認

(対義語)
株主割当=既存株主に持株数に応じて平等に割当

※平等でない場合は、第三者割当に該当








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2015年2月20日金曜日

2/20 勉強会:無対価組織再編時の留意点/無対価の組織再編に関する会計のポイント 他

1.裁決事例:システムキッチンの取替工事に係る取扱いについて

■概要
不動産貸付業を営む個人Aはマンションの流し台をシステムキッチンに取替え、その費用を「修繕費」として申告した。
税務当局はこれを「資本的支出」であるとして更正処分を行った。

■個人Aの主張
・建物躯体に影響を与えるものではなく建物の使用可能期間が延長するわけではない。
・工事後においても賃料を変更していない(=価値が増加していない)
・よって本工事は資本的支出に該当しない(=修繕費である)

■税務当局の主張
・全面改装であり通常の維持管理費用にあたらない
・改装により建物本体の価値が増加している
・よって資本的支出に該当する

■審判所の判断
・改装により住人にあらたな便益を付与している
⇒建物の価値が高まったと言えるため資本的支出である

ポイント⇒賃料変更の有無は判定の際考慮されない


2.贈与税:扶養義務者からの結婚等に関する贈与と贈与税

平成27年度改正により、結婚・子育て資金の一括贈与にかかる非課税措置が創設される(300万円まで)

■いまでも結婚に際して親や祖父母が費用を負担するケースはよくあるが、相続税の払う必要はなかったのか?
⇒通常日常生活を営む上で必要と認められる生活費や教育費のための贈与は、課税対象とならない。
地域や家族の風習、子や孫の経済状況を勘案して判断される。
 Ex)・地域の風習に照らして必要と判断される嫁入り道具
   ・結婚式費用のうち親族の行事として親が負担すべき部分


3.取得関連費用(企業結合基準の改正)

・今年の4月以降開始事業年度から
取得関連費用
対価性のある報酬(M&A業者の成功報酬など)

(改正前)
 連結:取得原価=のれんに含める
 個別:株式取得の付随費用=取得原価へ

(改正後)
 連結:費用処理
 個別:株式取得の付随費用=取得原価へ(変更なし)
  ※金融商品Q&A15-2

連結は企業結合会計基準が、個別は金融商品実務指針が適用される。
「親と子で会計処理を合わせる」ってのの例外になる。


4.無対価組織再編時の留意点

1. 無対価で組織再編する場合の留意点
 対価のある組織再編では適格組織再編でも、無対価だと適格組織再編とならない場合がある。

2. 対価があれば適格でも、無対価だと非適格になるケースの例示
 ⇒ 100%グループ内での、親会社と孫会社の合併
 ※100%グループ内での組織再編でも、無対価だと適格とならない。

【参考】無対価組織再編が適格となるための要件(合併のケース)
 ・100%親子間の合併
 ・100%兄弟間での合併
 ・100%親子・兄弟間の混合
※再編の形態(合併なのか、会社分割なのか等)により要件が変わるため、留意が必要

3. 無対価で適格の要件を満たさない場合
 ⇒ 組織再編の直前に、適格となるための要件を満たしていればよい。
 ⇒ 無対価組織再編を組み合わせること等によって、適格と出来るケースがある。
  ⇒ 適格要件を満たすスキームを検討することが重要


5.無対価の組織再編に関する会計のポイント

 ⇒組織再編は原則現金または株式を対価にして行うが、無対価で行う例外的ケースはどうするか?
■規程
 下記の場合(いずれも共通支配下の取引)に会計処理が定められている
  ・100%子会社同士の合併
  ・親から100%子会社への事業分離
  ・100%子会社同士の事業分離
  ・100%子会社から親会社への事業分離

100%子会社から親会社への事業分離
 (原則)共通支配下の取引では、資産負債を適正な簿価で引き継ぐため、移転損益
は発生しない
 (対価:株式の場合)
  子会社:
   【親会社株式】    /移転諸資産
   親会社株式に係るDTA/移転諸資産に係るDTA
  親会社:
   移転諸資産      /【払込資本】
   移転諸資産に係るDTA/

 (対価なしの場合)
  子会社:
   【株主資本】     /移転諸資産
   法人税等調整額    /移転諸資産に係るDTA
  親会社:
   移転諸資産      /【子会社株式】
   移転諸資産に係るDTA/抱合せ株式消滅差損益

  ※通常、株式を発行して組織再編の対価とするので、発行会社では株主資本が増加するが、無対価の場合、原則、株主資本は増加しない。


6.使用見込みのない遊休資産の減損で注意すべき点

・見込まれるキャッシュ・フローは、使用後の処分によるキャッシュ・フローのみとなる。

4つのステップに従い検討する点は通常の減損と変わらない。
 (資産のグル―ピング検討⇒減損の兆候の有無判定⇒減損損失の認識判定⇒減損損失の測定)


7.無形資産の評価について

(1)マーケット・アプローチ
・類似取引を参考に評価
※取引情報の入手が困難なので採用は難しい

(2)インカムア・プローチ
・資産が生み出す将来キャッシュフローをベースに評価(=DCF法)

代表的なものとして下記の2
a.超過収益力法(例:特許権)
⇒評価対象資産が貢献する利益(全体利益-他の経営資源が生み出す利益(※))を対象として評価
(※)キャピタルチャージと呼ばれ、運転資本、固定資産、労働力があげられる

b.ロイヤルティ免除法(例;商標権)
⇒評価対象資産を持っていない場合、本来支払いを要した費用(※)=価値として評価
(※)当該費用は売上×ロイヤルティレートで算出されるが、ロイヤルティレートの設定がポイントになる

(3)コスト・アプローチ
・対象資産と同等の資産を入手するために要した費用をベースに評価


8.法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)

重加算税に該当する「隠蔽又は仮装」の定義についても、事務運営指針に明記されています。

(国税庁HP

第1 1項 隠ぺい又は仮装に該当する場合

(1) 二重帳簿の作成

(2) 次に掲げる事実があること。

1 帳簿書類を、破棄又は隠匿していること
2 帳簿書類の改ざん、虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成、意図的な集計違算その他の方法により仮装の経理を行っていること
3 帳簿書類の作成又は記録をせず、売上げその他の収入の脱ろう又は棚卸資産の除外をしていること

(3) 特定の損金算入又は税額控除の要件とされる証明書その他の書類の改ざん等

(4) 簿外資産に係る利息収入、賃貸料収入等を計上していないこと。

(5) 簿外資金をもって役員賞与その他の費用を支出していること。

(6) 同族会社であるにもかかわらず、架空の者又は単なる名義人を使って非同族会社としていること。

ただし上記は判定しづらいため、「該当しない」場合を覚えておくとより便利です。

第1 3項 帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない場合

次に掲げる場合で、相手方との通謀又は証ひょう書類等の破棄、隠匿若しくは改ざんによるもの等でないとき

(1) 売上げ等の収入の計上を繰り延べている場合において、その売上げ等の収入が翌事業年度の収益に計上されていることが確認されたとき。

(2) 経費の繰上計上をしている場合において、その経費がその翌事業年度に支出されたことが確認されたとき。

(3) 棚卸資産の評価換えにより過少評価をしている場合。


(4) 確定した決算の基礎となった帳簿に、交際費等又は寄附金のように損金算入について制限のある費用を単に他の費用科目に計上している場合。








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2015年2月14日土曜日

2/13 勉強会:役員の就任登記、住民票や運転免許証が必要に 他

1.私道の相続税評価額、ゼロ評価となる分岐点

■財産評価基本通達での私道の評価
 ・原則:通常の宅地として評価した金額の30%相当額
 ・例外:その私道が不特定多数の人に使用されている場合は評価しない

■私道の価額を評価しない具体例
 1、公道と私道に接続しているいわゆる通り抜け道路

 2、行き止まり道路ではあるが、その私道を通行しないと地域の施設、商店街等に出入りできない場合における、その私道

 3、私道の一部に公共バスの転回場や停留所が設けられていて、不特定多数の者が利用している場合における、その私道
 ⇒使用している人が特定されない、私有物としての利用が制限される、など。

私道を廃止して宅地となる可能性は極めて小さくなるため評価しない。
 ⇒「位置指定道路」(建築基準法が規定する道路の一つ)となっている私道、固定資産税評価額が0円である私道でも上記に該当しなければ30%相当額で私道を評価をすることになる


2.タックスプランニングはほぼ現行通りに

・タックスプランニングの実現可能性に関する判断指針の取扱いの概要が明らかとなった。
⇒基本的には監査委員会報告第66号をほぼ踏襲
⇒「分類3※」の企業については、一部取扱いが見直しされる方向

従来:将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)以内の一時差異加減算前課税所得の見積額に基づいて、当該期間の一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を計上している場合には、当該繰延税金資産は回収可能性有り

見直し:課税所得が不安定である原因、中長期計画(おおむね3年~5年の計画)及び達成状況、過去(おおむね3年)及び当期の課税所得の推移等を勘案して5年を超える期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを合理的に説明できる場合であれば、当該繰延税金資産は回収可能性有り

※下記の2つを満たす企業が該当
 ①過去(おおむね3年)及び当期における課税所得が不安定である、
 ②過去(おおむね3年)及び当期のいずれの事業年度においても重要な税務上の欠損金が生じていない


3.償却資産の美術品に係る固定資産税は?

■概要
・法人税の基本通達の改正を受け、固定資産税でも同様に取扱いを変更する

■以下を満たせば償却資産となる
・美術品
・時の経過により価値が減少しないもの以外
・取得価格が1100万円未満

27年度の償却資産税の申告の影響
2711日現在で持っているものは申告対象
・申告後に償却対象資産があると判明した場合
27年度の修正申告か28年度で申告
⇒その場合延滞金は徴収されない


4.粉飾決算巡る監査法人の責任問題で判決

(事例)
 東証一部上場のニイウスコー社による粉飾決算が発覚
⇒株主が監査法人に対して2,600万円の損害賠償を請求
 (会計監査人としての監査義務を怠たり粉飾決算を看過した結果、損害を被ったと主張)

(判決)
 被告監査法人は金商法所定の損害賠償責任を負わないと結論

(判決理由)
 被告監査法人は監査基準が求める水準の監査を行っていたと言え、本件有報等に虚偽がないと証明した点に故意過失が認められないため

(要するに)
 被告監査法人は粉飾決算を看過したが、会計監査人としてやるべきことをやっていた(と、裁判所は判断)ので、損害賠償責任は負わずに済んだ。


5.9号買換え、同一市内でも繰延割合に差

9号買換えのおさらい
(1)10年超所有した土地や建物を譲渡
(2)新たに土地や建物、機械装置等を事業用として購入
(3)(1)の資産の譲渡につき譲渡益が発生した場合には、譲渡益の80%相当額が繰り延べられる (新たに取得した土地や建物を譲渡したときまで)

H27年税制改正により、
地方から「大都市等」への買換え ⇒ 75%相当額が繰り延べ
地方から「東京23区」への買換え ⇒ 70%相当額が繰り延べ
上記以外 ⇒ 現行通り80%相当額が繰り延べ

適用期限はH29331日まで

■大都市等の範囲
東京都は立川市、青梅市、昭島市、町田市も含まれる。
神奈川県は横浜市や川崎市等。
なお千葉県や中部圏、近畿圏については、同じ市であっても区域や住所によって、「大都市等」に該当するかしないか異なるため要注意

■結論
9号買換えを行う場合には、移転先がどの区域によるか見極めたうえで、課税繰延割合を判断する必要がある


6.使用人の不正行為で税理士に懲戒処分も

税理士法改正に伴い、税理士事務所又は税理士法人の従業員が不正行為を行った場合の懲戒処分が明確化。

下記、懲戒処分については、H2741日以後より適用される。

■懲戒処分となる例
(1)従業員の不正行為を社員税理士等が認識していた場合
  ⇒社員税理士等が不正行為を行ったものとして懲戒処分される

(2)(1)につき、社員税理士等が認識していない場合
  ⇒懲戒処分はされないが、内部管理体制に不備がある場合は、
   社員税理士等の過失により不正行為を行ったものとして懲戒処分される

(3)(1)(2)に該当しない場合
  ⇒懲戒処分はされないが、社員税理士等が従業員に対する監督義務違反とされ懲戒処分される

(4)社員税理士が不正行為を行った場合
  ⇒他の社員税理士が不正行為を認識していた、また管理体制の不備等により過失があると認められる場合は、他の社員税理士も懲戒処分される

■そのほか明確化される税理士法の改正点
・懲戒処分による業務停止期間は上限2年に引き上げ
・税理士会の会費滞納者は「戒告」
・停止処分中は税理士業務を禁止
・税理士法人の解散届出をしなかった場合は「戒告」


7.役員の就任登記、住民票や運転免許証が必要に

H27.2.27から一部登記手続きが変更に。
(1)役員就任時の必要書類
(変更前) 登記申請書、就任承諾書
(変更後) 上記に加え、就任役員の住民票コピー or 運転免許証写し等

(2)代表取締役辞任時の必要書類
(変更前) 登記申請書、辞任届
(変更後) 上記に加え、辞任者個人の印鑑証明書等

(3)役員欄への婚姻前の苗字併記について
(改正前) 登記簿には、現在の姓しか記載されず。
(改正後) 役員等就任時に申請すれば、婚姻前の旧姓も登記簿に載せられる。
 ⇒経過措置:H27.8.28迄なら、登記申請のタイミングでなくても、旧姓の記載を申請できる。


8.海外転勤と住民税

■住民税の課税対象者
その年11日において国内に住所を有している者

■海外転勤した場合
(例)平成2741日~平成30331日まで海外転勤した場合

26年度所得に係る住民税⇒2711日時点で住所を有するため納税義務あり
2711日~331日所得にかかる住民税⇒2811日時点で住所がないため納税義務なし
3041日~1231日所得にかかる住民税⇒3111日時点で住所があるため納税義務あり

(まとめ)
①住民税は前年の所得に対して課税される
②(翌年)11日時点で住所を有すると課税される
その年1231日に出国するとその年の住民税を支払わずに済む


9.所得税:多くの外国人駐在員は国外転出課税の対象外に

■国外転出課税の対象
 有価証券等を1億円以上有し、かつ、「国外転出の日前10年以内に、国内に住所又は居所を有していた期間(国内居住期間)の合計が5年超である者」とされている。
 
 日本企業の外国人取締役等が本国に帰国する際に、該当するのか気にする向きがある。

■就労ビザによる滞在は『国内居住期間』から除外される
 『国内居住期間』の5年長の判定上、就労ビザによる滞在は除外される。
従って、多くのケースでは国外転出課税の対象外になるものと思われる。
 
 一方、日本人の配偶者等であることに基づく定住者としての在留資格に係る滞在期間は『国内居住期間』に含まれるため、注意が必要。


10.関連会社配当と税効果

H27税制改正で受取配当の益金不算入制度が見直し

負債利子控除を除いた全額が益金不算入:25%以上⇒1/3超へ

25%超~1/3以下の保有割合の場合、注意。
⇒益金不算入の割合が100%から50%
⇒申告実務だけではなく税効果にも影響あり

会計上、関連会社の留保利益のうち、
将来の受取配当により追加の納税が出る部分を繰延税金負債として認識する。
※関連会社の稼いだ利益のうち、親会社持分割合は毎期持分法により、関連会社株式に加算するが、将来の配当により納税が生じる分は繰延税金負債を計上する
⇒この繰延税金負債の金額が変動することとなる。


11.事業承継税制の主な改正点

■改正時期
 平成2711

■主な改正内容
 適用対象者(後継者):
  ・親族以外を対象とすることも可能に
 先代役員の位置づけ:
  ・代表権のない役員として残留が可能に
  ・給与受給も可能に
 雇用の確保要件:
  ・5年毎年雇用の8割以上を維持→5年平均して8割維持すればOKに。


12.事務運営指針(調査手続きの実施に当っての基本的な考え方等について)

税務調査についての事務運営指針ですが、前回ご紹介した「調査か、行政指導かの明示」以外は、常識的な話が書いてあるだけでしたので、あとは主なものを箇条書きにします。

【全般事項】
・(第1章)調査は、社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行う

【事前通知】
・(第22(2)) 納税義務者が調査開始日時の変更を申し出た場合、その理由と行政目的を比較して判断を行う(税務代理人の事情によるものであっても同様)
・(第22(3))事前通知なしで調査を開始する場合、臨場後速やかに「調査目的」「対象税目」「対象期間」等を通知する

【調査中の手続き】
・(第23(2))非違が疑われた場合には、通知した項目以外の項目を質問検査する(できる)
・(第23(5))帳簿書類の留置は、迅速な調査のために合理的と認められる場合のみ。
返還を求められた場合は、すみやかに返還する。返還できない場合は理由を説明し、不服申立てが出来る旨を伝える。
・(第23(6))反面調査の実施にあたっては、その必要性、事前連絡すべきかどうかを十分検討する

【調査終了】
・(第24(5)) 納税義務者の同意を得れば、調査結果は納税義務者に代わって税務代理人に伝えることができる








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