1.特定資産の買換特例を巡り税理士が一部敗訴した事件
■まとめ
・裁判で、個人の確定申告について修正申告を怠った税理士に対して損害賠償請求が認められた事件
・個人の特定資産の買換特例に関して、買換資産を取得期限までに取得できなかった
⇒修正申告の提出が必要だが、税理士がその対応を怠った
⇒税理士に非がある
・他方で、法人の買換特例に関しても、取得期限までに買換資産の取得ができず、かつ、修正申告もしていなかった
⇒税理士が法人に対して事前に十分な説明をしていたことが明らかだった
⇒税理士に非はない
・税理士が説明義務をしっかり果たしていたかどうかが争点となった
2.結婚子育て非課税、生前贈与の取扱いは
(1)教育資金に係る一括贈与の非課税措置
⇒贈与者が死亡=受贈者に対し相続税の課税関係が生じない
(2) 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置
⇒贈与者が死亡=贈与者の死亡時点の口座残額を受贈者が贈与者から相続等により取得したとみなされる
ただし受贈者=孫の場合、相続税2割加算(※1)の適用はない
・また「相続開始前3年以内の生前贈与加算」の対象となるのか?
受贈者が贈与者(被相続人)から(結婚・子育て資金の一括贈与に係る)口座残額のみであれば、対象外
(参考)
※1 被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算される。
3.固定資産税申告対象は12月決算法人のみ
■100万円未満の美術品等の固定資産税の申告の件
※以下を満たせば償却資産となる
・美術品
・時の経過により価値が減少しないものでない
・取得価格が1点100万円未満
■27/1/1以前に取得した美術品は?
・個人/12月決算法人
⇒27年度から申告対象となる
⇒27年度の修正申告か28年度の申告で増加資産として申告
・12月決算以外の法人
⇒28年度から申告対象となる
4.住宅資金特例、個人売買で贈与税負担も
・平成27年度税制改正で住宅取得等資金贈与特例の見直し
・平成28年10月~平成29年9月の間に売買契約を締結すると、最大3,000万円の贈与が非課税
⇒ただし、個人から購入した場合、非課税限度額は1,200万円
・非課税限度額は、
(1)消費税率10%の場合(最大3,000万円)と
(2)それ以外の場合(最大1,200万円)で大別
(1)消費税率10%の場合(最大3,000万円)と
(2)それ以外の場合(最大1,200万円)で大別
⇒個人から購入した場合、(2)それ以外に該当(∴消費税が適用されない)
5.ウェブ開示拡大等、会社法施行規則公布
会社法施行規則の一部改正する省令の施行日はH27年5月1日
■社外取締役を選任しない場合
(1)事業年度末日に社外取締役を置いていない場合⇒事業報告
(2)株主総会へ提出する取締役選任議案に、社外取締役の候補者が含まれていない場合⇒株主総会参考書類
社外取締役を置くことが「相当でない理由」を記載する必要あり
■社外取締役の要件の改正による見直し
(1)株主総会参考書類の記載事項について
・候補者が過去に該当会社または子会社の役員であった
・候補者が親会社の役員であった
⇒その旨を株主総会参考書類へ記載する必要あり
(2)ウェブでの開示
・ウェブ開示事項の範囲が拡大され、
社外取締役を置くことが「相当でない理由」の記載が対象となる
6.費途不明で否認の支払金員は販売手数料
審判所、業務との関連性があり、損金算入は可能と判断
【事例】
・X社が支払った「販売手数料」について、支払先、支払目的が不明であるとの理由から損金不算入の更正処分を受けた。
【審判所判断】
・更正処分は取消し(損金算入可能)。
【理由】
・審判請求時に、下記の事実が判明。
⇒X社が得意先Y社への売上単価を「上増し」
⇒販売数量に応じて、「上増し」分を「販売手数料」としてY社へ還元。
⇒実質的に売上割戻しと同じ。
・費途不明な交際費等は、判定時期が限定されていないため、審査請求時に費途が明らかになれば損金算入可能
7.ゴルフ会員権の譲渡損失の取り扱いについて
■改正前
譲渡損と他の総合所得とを損益通算可
■改正後
平成26年4月1日以後譲渡の譲渡損は他の総合所得と損益通算できない。
※ゴルフ会員権が「生活に通常必要でない資産」に追加されたことにより損益通算が認められなくなった。
■留意点
・26年3月31日までに譲渡した場合は本年の確定申告で適用あり
・「総合譲渡」所得であることには変わりがないため、他の総合譲渡所得とは通算(内部通算)できる。
8.消費税:特定期間の給与の金額で納税義務の判定をしないことの可否
■基準期間における課税売上高 900万円
★特定期間における課税売上高 1,100万円
★特定期間における給与等支払額 300万円
というケースで課税事業者選択届出書を提出していない場合に、課税事業者となることは可能か。
⇒可能。
特定期間の数字を用いる判定で『課税売上高』を使用するか『給与等支払額』を使用するかは法人の任意。
『給与等支払額』を用いて判定すれば免税事業者となれる場合でも、『課税売上高』で判定して課税事業者になることはできる。
また、課税事業者選択届出書により課税事業者になる場合とは異なり、調整対象固定資産を取得した場合の下記の制限等の縛りを受けない。
・3年間の事業者免税点制度の利用制限
・簡易課税制度の選択の制限
9.新規上場後3年は内部統制監査を免除(金融庁)
・金商法施行令等改正案※意見募集中
・新規上場後3年以内に提出する内部統制報告書について監査証明不要となった
⇒資本金100億円以上または負債総額1,000億円以上の企業は対象外
■日本版ESOP
・従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する制度
※福利厚生、インセンティブ・プラン
【従業員持株会型】
・会社が持株会加入者のうち、一定要件を満たしたものを受益者とする信託設定
・信託は会社の株式を市場から取得
・持株会が信託から株式を買い取る
⇒株価が上場し信託に利益が出たら、受益者である従業員に金銭で分配する
株価下落時の損失 :会社負担
株価上場時のメリット:従業員が享受
【株式給付型】
・信託から従業員に直接株式を給付する仕組み
10.有価証券の売買で、約定日に売却処理が認められないケース
1. 売却処理(有価証券の消滅)のタイミング
(1) 通常
⇒ 約定日に、売却処理
※約定日 … 契約書日
(2) 約定日と受渡日の期間が長い場合
・期間が長い理由が事務処理に起因する場合
⇒ 約定日に、売却処理
・前提条件等が付されてことに起因する場合
⇒ 受渡日まで売却処理できない場合がある。
※受渡日 … 譲渡の効力が発生する日
2. 前提条件等がある場合、受渡日まで売却処理できない可能性がある理由
・売買にあたって、前提条件等があると、約定日に実質的に売買取引を双方で合意できたとは言えない場合がある。
⇒ 約定日に売却処理をすることは出来ない。
⇒ 売買取引が完了する、受渡日まで売却処理できない。
※非上場株式の売買の場合に、前提条件等を付される場合がある。
3. 留意点
非上場株式の場合で、前提条件等があると、約定日に売却処理が出来ない可能性がある。
⇒ 見込んでいた利益又は損失を計上できない場合があるので留意が必要
11.連結納税税効果当面の取扱い
連結納税:
法人税 → 連結グループとして税効果を考える
地方税 → 個社ごとに税効果を考える
地方法人税はどのように取り扱うか?
⇒ 連結納税主体で考える(法人税と同じ取り扱い)
⇒ 連結納税主体で考える(法人税と同じ取り扱い)
12.平成27年度税制改正後の法人実効税率
・平成27年4月1日以後開始事業年度より適用
・改正案
⇒ポイント:法人税引き下げ、外形引上げ、所得割及び地方法人特別税引き下げ
現行 34.62%(外形なしは36.05%)
改正後平成27年度 32.11%(外形なしは34.33%)
改正後平成28年度 31.33%(外形なしは34.33%)
13.第三者割当増資
(1)第三者割当=特定の第三者に対して株式を割り当てる
⇒メリット
・特定少数に絞るので、公募よりスピーディー
・銀行借入が困難でも利用可能
⇒デメリット
・割当を受けない株主は持株比率が低下
(2)発行決議体
・原則:取締役会決議
・例外:株主総会決議(有利発行の場合は既存株主が不利益になるため)
(3)有利発行の判断基準
・発行決議の直前日の株価の90%未満
・例外として、最長6ヶ月平均の株価90%
(4)大規模(=直近6ヶ月で希薄化25%以上or支配株主が異動)な第三者割当の規制
・経営者から独立した者からの意見入手
・総会決議等による株主の意思確認
(対義語)
株主割当=既存株主に持株数に応じて平等に割当
※平等でない場合は、第三者割当に該当
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決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
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