2015年5月29日金曜日

5/29 勉強会:マイナンバー取得、顧客等の身元確認も必要 他

1.検証・IBM事件高裁判決[2]

132条が創設された際に「経済的合理性を欠くものは租税回避行為である」という考え方は存在していない

・税務職員に「経済的実質」を判断させる税制度はあり得るが「経済的合理性」を判断させる税制度はあり得ない
 税務職員は経済の専門家ではないから

・経済的合理性の有無で租税回避の有り無しを判断する根拠としてしばしばグレゴリー判決が持ち出されるが、132条の創設はグレゴリー判決が出される前なので132条の創設の趣旨、目的にグレゴリー判決で示された「事業目的原理」が考慮されているはずはない

・「行為、計算が不当」かどうかではなく、「結果が不当」かどうかをもって132条の適用の有無を判定するという法律の本来の趣旨が正しく理解されていればIBM事件の判決結果は違ったはず

・租税回避の判定基準は創設時のものを軸として時代に合わせて必要な基準を追加していくべきもの


再雇用も職務内容に変動あれば退職所得

■事案
幼稚園の園長が退職金を支給されたあとも勤務を継続した。

■原処分庁
勤務を継続しており、給与所得に該当すると指摘。

■審判所
下記を満たせば退職所得と同様に取り扱うことが相当であると判断。
⇒勤務関係の性質、内容、労働条件等に重大な変動があって、形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とは認められないなどの特別の事実関係があること

今回の事案では・・・
・園長は再雇用されて嘱託職員として園長にとどまり、理事長の地位も有していた。
・実質的には園長としての職務のほとんどを引き継いでいた。
・職務内容は量的にも質的にも大幅に軽減され、基本給の減額など労働条件も大きく変動。

よって従前の勤務関係の延長とは認められず、退職所得に該当する。


3.美術品についての減価償却資産の判定に関するFAQ

H27/1/1以降、100万円未満の美術品は減価償却資産
 ⇒例外として、100万円以上の美術品でも時の経過により価値が減少することが明らかな場合は減価償却資産

■「時の経過により価値が減少することが明らか」とは?
 ・例えば、次に掲げる事項を満たす場合など
  (1)会館のロビーのような不特定多数の者が利用する場所の装飾/展示用
  (2)移設することが困難
  (3)他の用途に転用した場合、美術品としての市場価値が見込まれない

■少額減価償却資産に出来るか?
 ・「中小企業の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」適用可能

■耐用年数は?
 ・金属製のもの     …15
 ・その他(絵画、陶器等) … 8


4.コーポレートガバナンス・コードの策定に伴う上場制度の整備について

■コーポレートガバナンス・コードとは
・上場企業が守るべき行動規範を網羅したもの
 (ex.独立社外取締役を少なくとも2名以上選定すべき)
・コードを実施しない場合に、その理由を開示・説明する必要がある
・その説明をしなかった場合、制裁措置を受ける
・平成2761日から実施予定

■ガバナンス報告書における記載
(1)コードの各原則を実施しない理由
 ・どの原則に対する説明なのかを明示(ex.原則1-4)
 ・自社の個別事情や今後の取り組み、実施の目途など
 ・原則全てを実施している場合、その旨

(2) コードの各原則に基づく開示
 ・コードには特定事項の開示を求める原則あり
  (ex.政策保有株式に係る議決権行使の基準)
 ・直接、内容を記載するほか、
  有報・会社HPに記載していれば、それを参照すべき旨やURLなどの閲覧方法を記載する方法もあり
 
■ガバナンス報告書の更新・提出
・上記記載事項の(1)(2)の内容に変更が生じた場合、その後最初に到来する株主総会の日以後遅滞なく記載を更新し提出する必要あり
 (任意に都度、更新も可)
 
・ただし、適用開始後初回の提出については、特例あり
⇒上記記載事項の(1)(2)は、準備が出来次第、
 速やかに(遅くとも定時株主総会の6ヶ月後までに) 記載し提出すればよい
 (それ以外の既存の記載事項は、通常通り、定時株主総会後遅滞なく更新し提出する必要あり)


5.マイナンバー取得、顧客等の身元確認も必要

■マイナンバー制度
・行政を効率化し、国民の利便性を高める等の目的で導入される。
H27105日より国民1人ずつに通知される。
 ⇒個人番号は12桁、法人番号は13
H2811日以降、税務申告書、支払調書等に、個人番号、法人番号を記載する必要あり

■主に個人番号の記載が必要となる申告書等
(1)所得税、個人住民税、個人事業税
 ⇒H2811日の属する年分以降の申告書より
  (H29315日提出期限の申告書より)

(2)法人税、法人住民税、法人事業税
 ⇒H2811日以降に開始する事業年度の申告書より
   3月決算・・・H293月期の申告書より
  12月決算・・・H2812月期の申告書より

(3)法定調書
 ⇒H2811日以降支払いに係る法定調書等より
  (H28年分の法定調書合計表より)

(4)給与支払報告書
 ⇒H28年分の給与支払報告書より

(5)各種申請書・届出書
 ⇒H2811日以降に提出すべき申請書等より

H28年分以後に使用予定の様式一覧(H27.5.29現在)

■事業者が従業員の個人番号を把握する場合
・利用目的を明示する必要あり。
・通知カード又は住民票で個人番号の確認をし、免許証等により身元確認をする。

■事業者が顧客の個人番号を把握する場合
個人番号の提供依頼書類を作成して提供を受ける。
なお通知カードの写し又は写真等でも構わない。


6.国外転出時課税、未分割時の取扱いは?

・国外転出時課税制度 (H27/7/1以降適用)
1億円以上の有価証券等を保有する居住者が、次のいずれかの場合、その有価証券等の含み益に所得税が課税される制度(みなし譲渡所得課税)

(1)国外転出する場合
(2)非居住者へ有価証券等を贈与する場合
(3)対象者が死亡して有価証券等を非居住者が相続する場合
 ※非居住者へ贈与したものとみなされる

(3)の場合の取扱
⇒みなし譲渡所得課税額は、通常相続発生の際に提出する、準確定申告書()と合わせて申告
 ※死亡する時までの被相続人の所得税を、相続人が代わりに申告するもの
 ※死亡後4ヶ月以内の申告義務あり

4ヶ月以内に遺産分割協議が整わず、非居住者が相続するかどうか不明な場合
⇒法定相続分に応じて非居住者が相続するものとみなして国外転出時課税制度を適用する


7.法人税:受取配当等益金不算入(短期保有株式関連)

■計算期間を通じた保有割合で判定するもの
(1)完全子法人株式等(100%保有)
(2)関連法人株式等(33%超100%未満保有)

■基準日の持株割合で判定するもの※
(3)その他株式(5%超33%以下保有)
(4)非支配目的株式等(5%以下保有)

⇒※短期保有(基準日以前1月以内取得かつ基準日後2月以内譲渡)株式等を除いて判定する

■ポイント
3月決算の場合、2月中に買い増しておく
3月中に購入した場合は6月以降に譲渡する


8.源泉:社宅家賃の経済的利益について

使用人に社宅を貸与する場合で、家屋や土地に係る固定資産税の課税標準等を用いて計算する『通常の賃貸料』の50%以上の家賃を徴収しないときは、その経済的利益に係る源泉徴収が必要となる。

■借上げ社宅等で固定資産税の課税標準額が知り得ない場合に、近隣相場等を用いて判定することは出来るか?
⇒できない。

社宅賃料の金額設定にあたっての算式は会社独自に決めて運用できるが、税務上のバーに例外はない。
例えば全ての社宅について一律で近隣相場の50%の賃料を徴収している場合にも、その金額が『通常の賃貸料』の金額を超えている場合には源泉徴収が必要。


9.新規上場後3年は内部統制監査を免除

・金商法の改正により、新規上場後3年以内に提出する内部統制報告書は、公認会計士または監査法人の監査証明が不要とされている。
 ※内部統制報告書の提出は必要
 ※新規上場の負担を軽減するため

・資本金100億円以上または負債総額1000億円以上の会社は除く。


10.平成26年会社法改正に伴う有価証券上場規定等の一部改正

1. 関連する会社法改正
・株式等売渡請求制度の新設
※議決権90%以上を有する株主(特定株主)が、他の株主に保有する株式の全てを売渡ことを請求できる制度。

・独立役員の範囲の緩和
※退任後10年経過していれば、独立役員になることが可能になった。

2. 上場規定等の改正
(1) 株式売渡請求
・発生事実としての開示
 ⇒特定株主が請求することを決定した場合にその内容を開示

・決定事実としての開示
 ⇒売渡請求の承認・不承認を会社が決定した場合にその内容を開示

・上場廃止基準の該当事由として追加

※その他、全部取得や株式併合など、キャッシュアウトの手法となるものは、適時開示が改正されているため注意が必要。

(2) 独立役員の独立性についての開示
・退任後10年経過したものが独立役員となる場合
 ⇒ 過去に勤めていたことを開示


11.MBOを失敗させた場合の会社の取締役の責任

・取締役の責任
  善管注意義務
  忠実義務
 ⇒一般株主(会社の持ち主)の立場に立って
   企業価値の向上を企図すべき法的義務を負う
 ⇒公開買付価格の公正さを確保する義務
   価格決定手続の公正さの確保に配慮すべき義務 を負っている


12.外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理

・会計処理の方法
  区分法 → 予約権部分と社債部分に分けて会計処理
  一括法 → 両者を区別しないで会計処理

・一括法の場合の会計処理
  行使されるまでは、すべて社債として負債に計上する
  (通常の社債として換算も行う)
  予約権が行使された時は、行使時レートで換算し、社債から資本金へ振替。
  (社債の帳簿価額との差異は為替差損益とする)


13.従業員による不正に係る課税上の問題点と留意点

①従業員が得た収益が、法人の売上に当たるか否か?
⇒以下を総合的に検討する
・取引を行った従業員の地位、権限
・従業員が行った取引形態
・法人の事業内容
・取引の相手先の認識

②会計不正による増加税額に対する加算税が重加算税になるか、過少申告加算税で済むか?
⇒「従業員の行為=法人の行為」と同一視できるか否かで判断
 ・法人が認識していたか
 ・法人と従業員との関係(地位や権限)
 ・法人の黙認の有無
 ・法人が払った注意


14.コーポレートガバナンス・コードの策定に伴う上場制度の整備

(1) コーポレートガバナンス・コードとは
株主の権利や取締役会の役割、役員報酬のあり方など、上場企業が守るべき行動規範を網羅したもの

(2)実務の留意点
・「基本原則」、「原則」「補充原則」の73原則について、実施しない原則がある場合には説明する必要がある。
⇒東証1部・2部は全ての原則について説明
⇒マザーズ、ジャスダックは「基本原則」のみ説明

・「実施しない」場合には、実施する意思があっても適用当初から実施が困難で実施していない場合も含まれる

・ガバナンス報告書に変更が生じた場合は遅滞なく変更後の報告書を提出するが、新設される2つの記載欄の記載内容(5月の改正に伴う)について変更が生じた場合は、少なくとも変更が生じた最初に到来する定時総会の日以後遅滞なく記載を更新
⇒初回の特例として、201561日以降最初に到来する定時株主総会の日後準備が出来次第速やかに(6ヶ月以内)でOK
⇒新設項目以外は特例なし


15.企業の節税策 報告義務化へ

・規則の詳細は未定。欧米のルールを参考にこれから詰める

・対象=税理士、コンサル会社

・報告内容=顧客リストの提出、節税策の報告(対象となる節税策、金額基準については別途規定)、高額報酬を受けている場合の開示等

・罰則=報告義務を怠った場合罰金

・適用時期=2017年度から?

※米英、韓国ではすでに同様の義務あり。
 OECDが日本にも同様の制度導入を呼びかけ。

※米国では1,000万ドル以上の損金が対象









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2015年5月24日日曜日

5/22 勉強会:法人税:接待飲食費まとめ 他

1.IBM判決の影響を強く受ける中小企業
IBMが利用したスキームは、平成22年度改正により実行不可
IBM事件の高裁判決で示された新解釈が、中小同族法人の税務調査を大きく変える可能性あり
⇒正当な理由や事業目的があっても、法人税法132条の適用がありうる
⇒高裁判決が132条の解釈の一般論として判示されているのでそれを前提にタックスプランニングをする必要がある


2.改正企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」等について

H263月に単体開示の簡素化に係る財務諸表等規則等の改正があった
⇒それに伴い、個別財務諸表における開示の要否を明確にするため、H273月企業会計基準等の改正を公表

(主な改正項目と改正内容)
1)決議後消却手続を完了していない自己株式が貸借対照表日にあり、その帳簿価額又は株式数に重要性がある場合の個別財務諸表における注記
⇒注記の箇所をBSから株主資本等変動計算書(SS)へ
⇒個別SSの注記事項として自己株式の種類及び株主数に関する事項を記載していない場合には注記不要

2)個別財務諸表における無償で取得した自己株式の数に重要性がある場合の注記
 ⇒個別SSの注記事項として自己株式の種類及び株主数に関する事項を記載していない場合には注記不要


3.自己株式の取得が予定された株式

・自己株式の取得が予定された株式は受取配当金の益金不算入規定が適用されない
 …「予定された」とは?
 …事実認定次第

(例)完全子会社を目指していたが、株式の取得が予定通り進まなかった
   そこで取得した株式を買い取ってもらった
   ⇒「予定された」に該当しない


4.消費税の内外判定基準

・消費税の課税取引となる国内判定に該当するか否かを判定する基準のこと
・原則は「譲渡」や「貸付」時における資産の所在場所で内外判定する

 ⇒27年度改正で「電気通信利用役務」に関してだけ改正が入り、内外判定が「役務の提供を受ける者の所在地」に変更された


5.繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(以下、適用指針)案の全容

■適用指針の策定の背景
 DTAの回収可能性について定めた「監査委員会報告第66号」(以下、66)について、
(1)税制改正(繰越欠損金の繰越期間延長)に対応していない、
(2)形式的な適用がなされている
 などの指摘があったため

■適用指針の内容
(1)66号の会社分類自体に変更なし

(2)分類234は内容の変更あり
 たとえば、分類2
 スケジューリング不能差異も将来、いずれかの時点で回収できることを合理的に説明できれば、DTAの計上可。
 (66号では、スケジューリング不能差異は、一律にDTAの計上不可。)

■適用時期
 3月決算を前提とすると、連単ともに平成293月期より適用(ただし、平成283月より早期適用可)

■適用初年度の取扱い
(1)適用年度の期首時点において適用指針に基づいて算定したDTADTLと前期末のDTADTLの差額を適用初年度の期首利益剰余金残高に加減

(2)会計方針の変更による影響額を注記
 会計基準等の改正に伴う「会計方針の変更」として取扱う
 (会計処理を定めた66号の内容を変更するものであるため)

■適用前(公表日後~適用するまでの決算期末において)
 未適用の会計基準等に関する注記として、適用による影響を注記


6.出資持分の相続税評価で通達の形式適用を否定する判決

■事例
・非上場会社の出資持分の相続税評価額算定
・持分50%以下であるため、形式適用により配当還元方式を採用
・裁判所は形式適用を否定し、純資産価額方式が適用された
・同族株主に該当するか否か

■通達における判定
通達では、同族株主以外の株主が取得した株式は「配当還元方式」を採用

A氏・・・D社50%超保有、C社6%保有
D社・・・F社32%保有、C社28%保有
F社・・・C社29%保有
 
C社がF社株を取得する場合の算定方法は?

<判定>
D社 50%超>50%         ∴D社はA社の同族関係者
C社 A社6+D社28=34%≧30% ∴C社はA社、D社の同族株主
   F社29%≦30or50%     ∴C社はF社の同族株主及び同族関係者でない
F社 D社32%<50%              ∴F社はA氏、D社の同族関係者でない
   D社32%≧30%        ∴F社はA氏、D社の同族株主

この時点ではC社はF社の同族株主でないため、通達における「配当還元方式」により株価算定

■否定後の判定
F社のD社保有32%を除いた68%について、各出資会社が総会を欠席していた。
⇒F社はD社に実質的に支払いされていたと認定
 ∴D社32%<50%であるが、A氏とD社の「同族関係者」に認定された

否定判決後のF社の判定
A社0+D社32+C社0=32%>30% ∴C社も同族株主に該当

従って、同族株主以外の株主が取得した場合に該当しないため、原則的な方法である純資産価額方式が適用された


7.海外支店取引でも国内法人に消費税

・平成27101日以後、国外事業者から受ける広告配信等が課税対象に。
・海外支店が国外事業者から受ける広告配信等も同様。

例)
・本店:東京
・支店:ニューヨーク
・ニューヨーク支店の広告配信を、現地業者に依頼した
 →現地業者に消費税課税が発生
 →東京本店が代理で納税しなければならない(リバースチャージ方式)


8.法人税:接待飲食費まとめ

∇交際費の損金算入限度
・中小法人 年800万または接待飲食費×50
・接待飲食費×50

∇接待飲食費ポイント
○・・接待飲食費になる ×・・接待飲食費にならない
■自社開催パーティー
・宴会場等の会場使用料…○
・音響照明費用、司会者費用…○
・送迎費、宿泊費…×
・コンパニオン費用…×
・生演奏等の余興費用…×

■政治家のパーティー券購入費用
・飲食パーティーで出席者との懇親を目的とする場合…○
・実質的な政治献金である場合・・・×(寄付金)

■ゴルフプレーなど
・プレー中の食事代…×
・終了後の食事会費用…×
・解散後の飲食費用…○

■その他(社内飲食費との関係)
100%親法人役員等に対する接待飲食費…○
・得意先人数1名に対し接待側人数が複数…○


9.【消費税 個人】相続と消費税の納税義務の判定

相続人()が被相続人()の事業を承継することになった場合の()の消費税の納税義務の判定は、下記のとおり。

[1]相続があった年の判定
 ()の単独の基準期間の課税売上高が1000万円以下であっても、()の基準期間の課税売上高が1000万円超であれば、
 [←合算せず判定]
  ・相続があった日から年末までの期間について()は課税事業者となる。[1年全部ではない]

[2]相続があった年の翌年、翌々年
 ()の単独の基準期間の課税売上高が1000万円以下であっても、()の基準期間の課税売上高と合算して1000万円超であれば、  
 [←合算して判定]
  ・その年について()は課税事業者となる。

[3]複数の相続人()が相続した場合
 相続財産の分割が確定するまでは、複数の()が共同で事業を承継したものとして判定する。
  ・()の基準期間の課税売上高に法定相続分の割合を乗じて計算した金額を使って、[1][2]の判定を行う。


10.工事進行基準の監査上の留意事項

「工事契約に関する会計基準」が幅広い業種で適用され、適用に関する不正事案が散見されている

過去の不正事例
・工事契約を意図的に設定することによる工事損益率の調整
・工事収益総額が確定していない場合の、工事収益の不適切な見積もり
・実現可能性の低い原価低減活動を反映した原価見積もり
・原価の付け替え
・架空原価
・作業時間の操作


11.海外出向から帰国した人の年末調整のポイント、海外出向する人の年末調整のポイント

・海外出向から帰国した人の年末調整のポイント
  年の途中で帰国した社員に関して、一般の社員と同様に年末調整を行うが、帰国初年度については数点留意点がある

・海外出向する人の年末調整のポイント
  年度の途中で海外出向する人について、非居住者となる場合は出国時点で年末調整を行う。









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2015年5月16日土曜日

5/15 勉強会:国内事業者のための電子商取引に係る消費税Q&A 他

1.事前照会の事実が異なれば課税も

■経緯
・大手製薬会社が英国子会社への現物出資について国税局に事前照会を行い、「適格現物出資」の確認を取った
・その後の税務調査で否認された
 ⇒「税制非適格」に該当するとして課税処分
・大手製薬会社が異議申し立てを行ったが棄却となった
・現在、国税不服審判所に不服申し立てしている

■異議申し立ての背景
・事前照会で「適格現物出資」の確認を取っていたにもかかわらず国税局は合理的な説明をしないまま、その結論を覆したため
 ⇒信義誠実の原則に反すると主張

■棄却となった理由
・事前照会は、照会文書に記載された事実を前提としてなされているが税務調査で把握した事実とは相違点があった
・会社が作成した文書に誤りがあったため、事前照会の回答と異なる結果となった
 ⇒信義誠実の原則は適用されない


2.虚偽記載の認定と株価値下がりの損害賠償減額で注目判決

・造船・重機大手のIHIが有価証券報告書を虚偽記載
⇒株価値下がり損失について株主が訴えた

判決は・・・
⇒株主の損害を認めた
 ただし虚偽記載を認める一方、虚偽記載以外に値下がり要因を認め損害賠償額は減額された※

推定損害額=(虚偽記載公表前1ヶ月の市場価額の平均額)-(公表後1ヶ月の市場価額の平均価格)
虚偽記載の公表と同時に業績予想の下方修正が開示され、50%は下方修正による値下がりとされた


3.登録国外事業者

・国内に事業所がある等一定の要件を満たす国外事業者のうち税務署に申請書を出して登録を受けた事業者のこと

(1)今までは国外に事業所がある会社は、
  日本国内でサービスを提供しても消費税は課税されていなかった

(2)27101日以降、消費税の内外判定は「役務提供を受ける側」で判定

(3)事業者向け取引の課税方式
  …リバースチャージ方式(源泉徴収のように支払い側が納税)

(4)消費者向け取引の課税方式
  …国外事業者納税方式 (登録した国外事業者が納税する)


4.事前照会と税務調査での事実が異なれば信義則違反なし

【事例】
 ・大手製薬会社が国税局へ事前照会
 ・海外子会社に対して行った現物出資について、適格現物出資に該当すると確認
 ・その後の税務調査により否認

【要旨】
  照会文書と税務調査で把握した事実が異なる場合、照会文書で確認した税法上の関係も否認され得る。


5.3月購入の5%超保有株の売り急ぎに注意

H27年度改正における、受取配当益金不算入の規定見直し
基準日において
(1)株保有割合100(=完全子法人株式等)  100/100益金不算入
(2)株保有割合1/3(=関連法人株式等)   100/100益金不算入
(3)その他の株式              50/100益金不算入
(4)株保有割合5%以下(=非支配目的株式等)  20/100益金不算入

(2)(4)が新たに新設された。
H2741日以後の事業年度で適用される。

3月決算法人から配当を受ける場合の留意点
(2)の適用を受ける場合
 継続保有要件(6か月以上保有)があるため不可能

(3)の適用を受ける場合
 (4)に該当する株式を買い増しして、(3)の適用を受けることが可能

■注意点
・買い増しして(3)の適用を受ける場合
 ⇒基準日において株式保有の割合を判定するが、短期的に保有した株式は保有割合に含まれない。
 
 短期保有株式とは基準日前1月以内に保有し、基準日後2カ月以内に売却した株式をいう。

 ∴(3)の「その他の株式」に該当させるために、買い増しした株式は基準日後2カ月以後に売却しないと、(3)の益金不算入の適用を受けられない。 


6.国内事業者のための電子商取引に係る消費税QA

【改正概要】
H2710月以降、国外事業者が提供する電気書籍等が課税対象に。
 ⇒国内事業者向け:国内事業者が代理で申告納付
 ⇒国内消費者向け:国外事業者自身が申告納付

(1)消費税の課税対象「電気通信利用役務の提供」
 ⇒電気通信回線を介して行われる著作物、サービスの提供
 例)電子書籍、音楽等の配信、クラウドサービス、ネット広告、ショッピングサイト、オークション、ネット英会話教室 等

(2) 「電気通信利用役務の提供」に該当しない取引
 ⇒通信を媒介するサービスそのもの
 例)電話、FAX、電報、データ送信、インターネット回線利用 等

(3)国内事業者が申告納税を行う「事業者向け取引」
 ⇒サービスを受ける者が事業者に限定されるもの
 例)ネット広告配信、個別契約で事業者がサービスを受けるクラウドサービス等

(4)国外事業者が申告納税を行う「消費者向け取引」
 ⇒「事業者向け取引」以外のもの
 例)電子書籍、電子新聞、音楽、映像配信 等

(5)「事業者向け取引」の仕入税額控除
 ⇒国内事業者に納税義務あるため、支払対価の額(特定課税仕入という)を消費税課税標準に加算
 ⇒同時に、特定課税仕入について仕入税額控除を適用
 ※帳簿に特定課税仕入であることの明記が必要(摘要欄に「特定」など)
 ※請求書の保存は不要

(6)「消費者向け取引」の仕入税額控除
 ⇒国外事業者が直接国へ消費税を納付するため、国内事業者での処理不要(仕入税額控除不可)
 ⇒ただし、登録国外事業者から受けるサービスで、一定の要件を満たせば可能

(7)請求書への納税義務の記載
 ⇒「事業者向け取引」の請求書には、国内事業者に納税義務がある旨の記載がされていなければならない
 ⇒ただ、記載がなくても、納税義務はなくならない

(8)簡易課税適用事業者、課税売上割合95%以上の国内事業者
 ⇒「事業者向け取引」であっても納税義務なし


7.相続税:配偶者のみの相続と税額軽減措置

<ケース1>相続人が配偶者のみの場合
・法定相続人は配偶者のみ
・法定相続分は1
・算式の(B)/(C)1となるため税額負担なし

<ケース2> 相続人が配偶者と子で子が相続を放棄した場合
・法定相続人は配偶者と子
・法定相続分は1/2
・算式により法定相続分を超える財産を取得した場合には税負担が生じる
⇒ケース1同様、配偶者のみが財産を取得しているが計算結果が異なるので相続の放棄があった場合には注意が必要

(補足)
<配偶者の税額軽減措置>
(1)次の算式により計算した金額が控除される

『相続税の総額(A)×【(1)課税価格の合計額×配偶者の法定相続分 (2)配偶者が取得した相続財産の金額】
のいずれか小さい金額」(B/課税価格の合計額(C)
⇒配偶者が取得した財産が法定相続分以下であれば税負担なしにしますよという意味

(2)相続の放棄があった場合にはその放棄がなかったものとして法定相続分を計算する。


8.法人税:渡切交際費と定期同額給与

期の中途から追加で役員に支給する金銭を役員給与とするか渡切交際費とするかにより、法人税の所得計算上の取り扱いに差が生じる。

■定期同額給与となる給与
 (1)1ヶ月以内の一定の期間ごとに支給され、その事業年度中の各支給額が同額の給与
 (2)事業年度開始後3月以内の改定等、一定の要件を満たす改定の前後の支給額が同額の給与
 (3)継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの

(1)(2)は給与として支給される場合に適用される
 ⇒ 給与として増額支給を開始する場合には、(2)の要件を満たさないと損金算入できない。

(3)は経済的利益が供与される場合に適用される
 ⇒ 渡切交際費(経済的利益)として新たに追加の支給を開始する場合には、(2)の要件の充足は不要。
 従って、『3ヶ月以内の改定』等の要件は課されていない。


9.法人税:下請企業の従業員等に支給する記念品等

■原則
 取引先等の関係者に対する接待、供応、慰安、贈答等の行為のために支出する費用は、交際費に該当する。
 もっぱら自社の従業員のために行われるものに通常要する費用は交際費から除かれ、福利厚生費とされる。

■特例
自己の工場内,工事現場等において従事している『下請企業の従業員等』のために支給した見舞金品,表彰金品又は運動会,演芸会,旅行等の費用の負担額については、交際費等に該当しない。
実態として自社の従業員等と同様の事情にある者に対するものであるため。


10.監査人の報酬

・会計監査人の報酬は監査役の同意が必要。

下記の同意が必要
同意した場合、事業報告に同意した理由を記載することとなった(H28.3期から)。
 監査役会設置会社  ⇒監査役会
 監査等委員会設置会社⇒監査等委員会
 指名委員会等設置会社⇒監査委員会

(記載例)
当社監査役会は、日本監査役協会が公表する「会計監査人との連携に関する実務指針」を踏まえ、◯◯などを確認し、検討した結果、会計監査人の報酬等につき、会社法第399号第1項の同意を行っております。


11.法人税関係の改正2

1. 研究開発税制の見直し
(1) 試験研究費の総額に係る税額控除
 ・控除しきれなかった税額控除の繰越制度の廃止
 ・控除税額の上限の引き下げ
   ※法人税額の30%まで ⇒ 25%まで
(2) 特別試験研究費の税額控除
 ・税額控除率の引き上げ(控除額の増加)
   ※特別試験研究費 … 試験研究費のうち、国の試験研究機関等と共同して行う試験研究等

2. 所得拡大税制の見直し
 ・適用要件の緩和 (給与等支給額の増加割合要件の緩和)
 ・外形標準課税・付加価値割の報酬給与等の額から、一定の給与増額分を控除
   ⇒ 付加価値割の税額が減少

3. 地方拠点強化税制の創設
 ・地方で、一定の規模以上の建物等を取得
 ⇒ 特別償却、又は税額控除を受けれる。
  ※適用には、地域特定業務施設整備計画について認定を受けることが必要。

4. ヘッジの有効性判定
(1) 判定方法
 ・原則 … デリバティブ損益   ÷ ヘッジ対象資産の時価変動
 ・特例 … ヘッジ手段の時価変動 ÷ ヘッジ対象資産の時価変動
  ※特例で判定する場合には、適用事業度より前に申請が必要
(2) 改正点
 ・特例で有効性判定するための申請時期
  適用事業年度より前に申請 ⇒ 申告書の提出期限までに申請


12.法人税関係の改正・その1(法人税改革関連)

■法人税率の引き下げ
(大法人または中小法人所得の800万円超の部分)
 25.5% → 23.9%(地方法人税含むと24.95%)

■法人事業税(外形標準課税)の改正
 ・所得割↓、付加価値割、資本割↑
 ・外形標準課税の資本割の課税標準の見直し
  「資本金等の額」が「資本金と資本準備金の合計額」を下回る場合は、「資本金と資本準備金の合計額」を課税標準とすることに【住民税均等割も同じ】
   ⇒平成2741日以後に開始する事業年度より適用

■欠損金の繰越控除制度の見直し
(大法人)
 ・平成2741日~平成29331日までの間に開始する事業年度
   控除限度割合  :65
   欠損金の繰越期間:9年
 ・平成2941日以後に開始する事業年度
   控除限度割合  :50
   欠損金の繰越期間:10年(平成2941日以後に開始する事業年度で生じた欠損金について適用)

■受取配当等の益金不算入制度の見直し
 ・持株割合 25%~33%(1/3)および、5%未満の場合に影響あり
   100%    :変更なし(配当等の全額)
    33%~100%:変更なし(配当等の額-負債利子)
    25%~ 33%:【 変更 】(配当等の額×50%)※
     5%~ 25%:変更なし(配当等の額×50%)※
     0%~  5%:【 変更 】(配当等の額×20%)※
   ※33%(1/3)以下の場合で、負債利子の控除がなくなった

 ・証券投資信託等の取扱も変更
   ・特定株式投資信託   (配当等の額)×20%(改正前:50%)
   ・それ以外の証券投資信託【全額益金算入】(改正前:50%)


13.買収提案を受けた際の一連の対応

 ・取締役会を開催し報告、対策を協議
 ・対策チーム編成、専門家起用、情報管理体制整備
 ・買収者の調査、買収提案の検討
 ・NDAを結び一次開示情報受領検討、意向表明、入札、基本条件交渉、基本合意書締結など
 ・DD実施
 ・最終条件交渉、買収契約書の締結
IRサイトで経緯、内容などを開示
・株主総会で買収提案の経緯、日時、内容等を説明し株主の理解と協力を得る


14.コーポレート・ガバナンス・コードと改正会社法の比較

3月決算の会社は、平成276月の定時株主総会後、12月末までに、「コーポレート・ガバナンス報告書」の提出が必要。

(1)特徴
・コンプライ・オア・エクスプレイン=原則を実施するか、しない場合はその理由説明をする

2)独立社外取締役
A:改正会社法
1名以上
・社外取締役設置なし、かつ大会社で有報提出会社は、定時総会で置くことが相当でない理由を説明
・社外取締役の選任議案を出さない場合は、総会参考書類に置くことが相当でない理由を記載

B:コーポレート・ガバナンス・コード
2名以上
・自主的判断により、独立社外取締役を取締役の3分の1以上


15.内部通報で、取締役が不利な取扱いを受けないことを確保するための体制整備についても決議

・そもそも取締役が受ける不利な取り扱いとは?
 ⇒雇用契約はないが、「役付を解かれる」「情報から隔離され業務執行が難しくなる」などが考えられる

・どのような「体制」が考えられるか?
 ⇒監査役(会)を不正報告の窓口に定める
 ⇒外部の弁護士事務所を窓口にして監査役に通報する

 ⇒不正疑惑の証拠書類を匿名で提出する








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