2019年5月19日日曜日

5/17 勉強会:飲食代の交際費計上めぐり重加を取消す 他

1.取締役の報酬や解任をめぐる会社法の訴訟トラブル

■事例1
入院による長期欠勤により定められた取締役報酬を減額された元取締役が会社に対して減額分の支給を請求した事例。

⇒地裁は、減額支給には取締役本人の同意がなかったとして、被告会社に対して減額分の支払いを命じた。
・定められた報酬額は会社と取締役の双方を拘束するため、取締役が変更に同意しない限り、取締役は報酬請求権を失わない。

■事例2
任期途中で解任された元取締役が会社に対して残存任期中の取締役報酬相当額の損害賠償を請求した事例。

⇒地裁は、取締役としての職務遂行能力や適性に著しく欠けるところがあったとして解任には正当な理由があったと判断。
解任の正当な理由は下記の通り。
・原告が代取に就任した会社の事業が被告会社との関係で競合に当たらないことなどに関して被告会社に十分な説明を行っていない。
・秘密保持誓約の締結拒否。





2.リース会計の単体適用、中小に影響も

■リース会計の基準改訂
・まだまだ着手段階
■単体財務諸表の取扱いが大きな論点
・税務上の取扱いへの影響
・適用上、管理上のニーズ
・投資家のニーズ
・単体にも適用とした場合には結果的に中小企業にも影響しかねない
⇒コストベネフィットを考慮し総合的に判断すべき





3.平成9年事案は仮に存在しても「誤り」

■平成7年と9年の事案(国税庁に寄せられた質問への回答)
・分譲用住宅を分譲までの数年間、賃貸した場合の取扱い
⇒取得の目的が分譲であれば課のみに該当する、という回答文書あり

■国税庁の主張
・平成7年事案は、マンション購入時に入居者なし
⇒課税仕入時に入居者がいなければ課のみで差し支えない

・平成9年事案は、マンション購入時に入居者あり
⇒回答文書の存否を確認できない
⇒仮に文書があったとしても回答が間違っている個別事案に過ぎない
⇒本来は共通対応とすべき

■係争中の裁判への影響
・更正処分が行われた事案は入居者あり
⇒平成7年事案との違いを明確にし、平成9年事案を否定することで、更正処分の正当性を主張




4.飲食代の交際費計上めぐり重加を取消す

■事案
・請求人の代表取締役の個人名義のクレジットカードで、支払った飲食代等代金を交際費勘定等の費用に計上。
・税務調査で、個人的な飲食等に係る金額であることから損金に算入できないことを指摘され、法人税修正申告書を提出。
・修正申告に対し、原処分庁は、個人的な飲食等代金を損金に算入したことが仮想隠ぺいに該当すると判断して、請求人に重加算税を賦課した。
⇒個人名義のクレジットカードを利用し、飲食等代金を費用に計上できないことを認識しながら損金算入したと主張。

■判決
仮装隠ぺいの事実は認められないと判断し、重加算税を取消。
⇒個人名義のクレジットカードを使用したからといって個人的な飲食等代金とはいえない。
⇒請求人が、個人で飲食等をした代金であると申述しているが、概括的に述べたものであり、具体性が乏しいうえにその内容を裏付ける客観的な証拠が認められない。





5.継続企業の前提の判断基準、会計基準の原案が明らかに

・企業会計基準委員会が検討している財務諸表を継続企業の前提に基づき作成することが適切であるかどうかの判断基準に関する会計基準の原案が明らかになった。

■適切である場合
・経営者は財務諸表の作成に当たって継続企業の前提に関する評価を行うこととし、当該企業の清算や事業停止の意図などある場合を除き、継続企業の前提に基づき財務諸表を作成しなければならない。

■適切でない場合
・更生手続開始決定の取消しや破産開始手続きの申し立て、行政機関による事業停止命令等





6.償却資産における申告制度の見直しの行方

■現在検討中の申告制度「見直し案」
※現行方式 ⇒ 新方式
・賦課期日:1月1日 ⇒ 1月1日
・申告期限:1月末 ⇒ 賦課期日直後に到来する決算日から2か月以内 
・申告内容:賦課期日時点の資産状況 ⇒ 決算日時点の資産状況(除却資産及び除却時期を付記)
・申告方法:書面又は電子申告 ⇒ 電子申告に限る
・納期  :4、7、12、2月 ⇒ 決算期により納期数が変動

■懸念事項
・課税事務量の増加、煩雑化
・基幹システムの改修コスト
・新方式を希望する法人数とシステム改修費用の費用対効果

⇒電子申告のメリットが十分活用できるように、課税庁の受入態勢を整えることが望まれる
 下記システムの導入も検討されている
 (1)複数地方団体への固定資産税(償却資産)の一括電子申告システム
 (2)共通電子納税システム







7.仮想通貨の譲渡原価等の計算方法

31年度税制改正政令で仮想通貨の評価方法等につき下記が定められた

■譲渡原価の評価方法
⇒総平均法、移動平均法
※法定評価方法:総平均法
⇒取得日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに,選んだ評価の方法を書面で
納税地の所轄税務署に届け出なければならない。
届出がない場合は法定評価方法である総平均法で計算する

当初は「移動平均法で計算するのが相当」とされていたが、計算が煩雑になるため
「総平均法」が法定評価方法として採用されることとなった

■所得区分
原則は雑所得(事業と認められる場合,事業所得)





8.申告書関係:法人税等の申告書に係る電子申告義務化

2020年4月1日以降、大企業が行う申告書の提出方法が、
電磁的方式により提出することが原則となる。

■対象税目
・法人税及び地方法人税
・消費税及び地方消費税
・法人住民税及び法人事業税
■対象法人
・内国法人のうち資本金の額等が1億円を超える法人
・相互会社、投資法人及び特定目的会社など
■対象となる申告書
・確定申告書
・中間(予定)申告書、仮決算の中間申告書
・修正申告書、還付申告書
※添付すべき書類のすべてをe-taxにて提出
■適用日
2020年4月1日以後に開始する事業年度から適用。
※消費税の中間納付につき毎月納付が適用されている会社は、
2020年4月30日申告・納付期限分より電子申告が必須。
■その他
・電子署名の簡素化
・勘定科目内訳明細書の記載内容の簡素化
・CSV形式による提出







(新収益認識基準)「一定期間にわたり充足される履行義務」

・「一定の期間に充足される履行義務」の場合、履行義務の充足に応じて収益も認識する。

・(1)清掃サービス、輸送サービスなど
 ⇒ 「仮に他の企業に交代した場合、完了済のサービスについて大幅にやり直す必要がない」場合、一定の期間にわたり収益認識。
・(2)顧客の土地の上に建物を建設など
・(3)コンサルティングサービス、個別受注製造契約など
 ⇒「顧客仕様など、他の顧客用に転用できない」かつ「完了した部分について対価を受け取れることが契約に定められている」場合、一定の期間にわたり収益認識。

・従来の会計基準で使われていた「工事完成基準」「工事進行基準」という用語は新会計基準では使われなくなる。

・履行義務の充足に係る進捗度が見積もれる場合 ⇒ 従来の「工事進行基準」と同様に収益認識。
・見積もれない場合 ⇒ 「原価回収基準」で一定の期間にわたり収益認識(★ここが従来と大きく異なる)。
・原価回収基準とは、「かかった原価のうち、回収可能な部分を収益として認識」する方法。
 ⇒ 通常、収益と原価が同額となり、利益ゼロとなる。
 ⇒ 見積もりが出来るようになった会計期間に利益が集中するため、早めに見積もりを固めることが重要となる。







10.時価算定会計基準は6月の最終化を目指す。

・ASBJは4月19日、1月18日に公表した公開草案「時価の算定に関する会計基準(案)」のコメントを紹介・審議。

・時価に算定方法について
公開草案では、インプットと評価技法を用いて時価を算定することを提案(IFRS13号と同様)。
⇒「インプット」、「評価技法」、「時価のレベル」という概念に馴染みがない。
⇒定義を明確化すべき。

・投資信託の経過措置について
⇒何が時価評価の対象で、何がそうではないのか。実務的にも議論あり。
⇒6月の最終化を目指し、引き続き議論。

・LIBBOR対応の検討開始時期は未定
⇒検討開始時期は、国際的な基準の動向や、制度改正の状況を踏まえ、判断。





11.ウーバー株が大幅安

・配車サービスのウーバー・テクノロジーズは続落し、IPO価格を20%近く下回る水準に落ち込んだ。
・アナリストは、同社株が危険水域に急速に接近している可能性を指摘した。
・同業のリフトも下がっている。
・配車サービス業界を巡っては懐疑的な見方が多いが、米中貿易摩擦の激化で株式相場全体が大きく下げたことも要因とのこと。
・日本株市場でも、ウーバーの筆頭株主であるソフトバンクグループの株価も下落。


 



12.新たな収益認識基準が消費材産業に与える影響
消費財産業では販売先に対して販売奨励金を支給することが多。
販売奨励金には、販促目的に金銭や資産を交付することをいい、代表時なものとしてリベートがある。
その他、販売委託料の支払、景品等の支給、サンプル・試供品の提供、マネキン(スーパーの試食販売員)代、販促物品の支給も該当してくる。

<リベートの計上区分>
収益認識基準で、リベートは変動対価に含まれるとされている。
リベートが財またはサービスに対する支払か取引価格の減額、あるいその両方であるのか判断することが必要。
→一般的にリベートは販売側が提供する財またはサービスとの交換ではないため、取引価格の減額=売上のマイナスとして処理される。
→一方、企業のチラシやマネキン代は販売品とは異なる財またはサービスとの交換によるものであるため、販管費として処理される。

<取引価格の減額の認識時期>
収益認識会計基準では、
・財またはサービスの移転に対する収益を認識する時点
・対価を支払うかまたは支払を約束するとき
のいずれか遅い時点で取引価格を減額することになる。
→リベートは通常販売前に契約等するのが一般的であり、販売時点で取引価格の減額をする

<変動対価の見積方法>
期待値法または最頻値法のいずれかで金額を見積することが必要
→収益認識時点でリベート債務を認識し、差額を収益計上する

→見積金額は各決算日に見直す必要がある。































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5/10 勉強会:新たな収益認識基準が外食産業に与える影響 他

1.上場子会社の独立社外取締役、元親会社在籍者以外から選任を

経済産業省のコーポレート・ガバナンス・システム研究会が検討している
「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」の概要は下記の通り。

・上場子会社の独立社外取締役については10年以内に親会社に所属していた者を選任しないことを検討するべき。
・取締役会における独立社外取締役の比率については、1/3以上や過半数を目指すことが基本である。





2.新・連結納税制度の欠損金持込制限と時価評価課税

■現行制度:2択(保有期間を基準)
・時価評価課税あり&欠損金持込不可
・時価評価課税なし&欠損金持込可能

■改定案:3択(中間がある組織再編税制との整合を加味)
(判断基準)
A.親子が合併等するとしたら組織再編税制で適格判定されるか
B.支配関係が5年超
C.親子間に共同事業性あり

(それぞれの取扱い)
(1) A×:時価評価課税あり&欠損金持込不可
(2) A〇+BCどちらか1つでも〇:時価評価課税なし&欠損金持込可能
(3) A〇+B×+C×:時価評価課税なし(含み損益の利用制限あり)&欠損金の一部利用制限





3.マンション仕入控除で新たな更正処分

■アズ企画設計
・中古不動産を取得し、賃貸募集、リノベーションを行い、資産価値を高めてから不動産投資家に販売するビジネス
・居住用住宅の建物部分に関しては課のみに区分し、全額控除していた
⇒共通対応にすべきとして、国税局から更正処分を受ける
⇒追徴税額は加算税を含めて1億3千6百万円
⇒同社は、過去の調査で何の指摘もなかったとして不服申し立てを行う方針

・取扱いの統一のため、国税局が今後否認事案を増加させる恐れあり




4.今週の専門用語

■個別申告方式(案)
⇒各連結法人が所得、税額を計算し、申告・納税も各連結法人が行う仕組み。
⇒修正・更生が一部の連結法人で行われた場合に他の全ての連結法人に影響が及ぶという現行連結納税制度の問題点の解消。
 ただし、連結グループ内の損益通算は維持され、欠損金の合計額は各連結法人の所得金額の比により按分される。





5.審判所、過大支払利子税制の適用を容認

■過大支払利子税制とは
関連者純支払利子等の内、調整課税所得の一定割合(50%)を超える部分を損金不算入とする制度ある。

■事例
海外法人が内国法人である納税者の関連者に該当するか否か。
・海外法人からの借入金があった納税者は、借入金にかかる支払利息を損金に算入していたものの、海外法人に対する利息は未払であった。
・海外法人の役員3名は、納税者の役員も兼務。

・課税当局は海外法人が納税者の関連者等に該当すると判断し、支払利息の一部を損金不算入とする課税処分を行った。納税者は兼任していた2人は納税者の経営実務に一切関与していないとして不服とした。

■審判
海外法人は関連者等に該当すると判断。
・役員の2分の1以上を納税者の役員が兼務していること。
・納税者が海外法人の事業方針を実質的に決定できる関係にあったと推測できる。





6.有価証券報告書 作成上の留意点(平成31年3月期提出用)

■1/31改正開示府令の適用時期と留意点
(1)2019年3月期
・主要な経営指標等の推移
・コーポレート・ガバナンスの概要
・役員の状況
・監査の状況
・監査の状況(監査公認会計士等と同一のネットワークに属する組織に対する報酬等)
・役員の報酬等
・株式保有状況

⇒監査の状況では、新たに監査公認会計士等を選定した理由(選定の際に考慮した方針を含む)について記載する
⇒役員の報酬等では、報酬プログラムの説明(業績連動報酬に関する情報や役職ごとの方針等)や、それに基づく報酬実績を記載する

(2)2020年3月期 ※早期適用可能
・経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
・事業等のリスク
・経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況の分析
・コーポレート・ガバナンスの概要の概要(財務及び事業の方針の決定を支配する者のあり方に関する基本方針)
・監査の状況(監査役及び監査役会の活動状況、継続監査期間等)

■会計基準の改正に係る留意点
(1)税効果会計基準
・注記
繰延税金資産及び負債の主な発生原因の内訳について、重要な繰越欠損金については、他の将来減算一時差異と区分して記載

(2)収益認識会計基準
・会計方針の変更
適用初年度においては会計方針の変更として取り扱い、原則新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する
ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首利益剰余金に加減し、期首残高から新たな会計方針を適用することができる

⇒BS科目について、重要な科目に対する影響額について記載する
⇒PL科目について、売上高、売上原価、販管費などのそれぞれについて影響額を記載する





7.適用除外事業者と中小特例の適用関係

■適用除外事業者
資本金1億円以下であるが、過去3事業年度の平均所得金額が15億円を超える法人をいう

■適用関係(○…適用可 ×…適用不可)
・軽減税率 ×
・中小企業技術基盤強化税制 ×
・その他特別税額控除 ×
・特別償却 ×
・一括評価貸倒引当金の法定繰入率の適用 ×
・少額減価償却資産の取得価額の一時損金算入 ×
・交際費課税における中小企業者の定額控除 ○※
・欠損金額の繰戻し還付 ○※
※大法人(資本金5億円以上)の100%子会社である場合は適用不可

■その他論点
・過去3事業年度がない法人(設立4年未満)は適用除外法人とならない
・修正申告等により過去3事業年度の平均所得金額が15億円を超えることと
 なった場合は過去に遡及して適用除外法人となる
⇒既に中小特例を適用している場合には修正申告が必要
・更正の請求等により過去3事業年度の平均所得金額が15億円以下となった場合でも
遡及して税額控除を受けることはできない(当初申告要件のあるものは確定申告時に
別表添付していないと適用不可のため)





8.源泉所得税:新年号に伴う源泉納付書の記載の仕方

改元後においても「平成」が印字された納付書を使用することは可能。
ただし、以下の点に留意すること

■留意箇所
・「平成」が印字されている箇所
⇒二重線による抹消や「令和」の追加記載は不要

・納付書左上の年度欄
⇒31年度を記載すること

■記載例
・納期の特例のケース(平成31年.1月~令和元年.6月)
納期等の区分欄
自3101
至0106

・令和2年1月20に報酬等を支払った場合
年度欄 ⇒ 31年度
支払年月日 ⇒ 020120
納期等の区分 ⇒ 02年02日

なお「令和」が印字された納付書は10月以降に配布を予定





監査人交代の開示

・東京証券取引所が、2019年1月に「会社情報適時開示ガイドブック」を改訂し、監査人の移動理由について実質的な内容を開示することを明確化。
・2019年1月22日~4月21日で監査人交代を適時開示した会社は36社。「任期満了のみ」を理由にした会社は1社もなし。
・事例 大塚家具
「現任監査人から当社の経営環境の変化に伴う監査工数の増大を理由に契約更新を差し控えたいの申し出を受けました。」
・監査人交代に伴う、監査法人規模の変化
 同規模の監査法人への変更:16件
 小規模な監査法人への変更:19件
 大規模な監査法人への変更:1件







10.新リース会計基準開発へ、専門委で検討開始

・基準開発に当たって、4月23日のASBJの審議では、以下を中心に検討
①借手の費用配分のあり方
②国際的な会計基準との整合性を図る程度
③連結F/Sと単体F/Sの関係

・借手の費用配分のあり方と国際的な会計基準との整合性
⇒IFRSとUS-GAAPでは費用配分の方法が異なる。
 IFRS:FL、OLに関わらず、全てのリースを金融の提供ととらえて、使用権資産の減価償却費とリース債務に係る金利費用をそれぞれ認識する単一の会計処理モデルを採用。
 US-GAAP:FLは上記同様。OLは通常均等な単一のリース費用を認識する会計処理モデルを採用。

・・・新基準では、どちらかを採用するか、または一定の基準により使い分けるか、検討中。

・連結F/Sと単体F/Sの関係
⇒単体F/Sの方が、関係諸法規等の利害調整が難しいため、以下の点を考慮して検討
①投資家のニーズ
②実務上のコスト(ex.中小企業、会社法監査のみの企業etc)
③周辺制度に慌与える影響(ex.会社法、法人税法、財務制限条項etc)





11.有価証券報告書の作成上の留意点(平成31年3月期)

■1/31改正開示府令の項目及び適用時期
・主要な経営指標等の推移⇒2019年3月期~
・経営方針、経営環境及び対処すべき課題等⇒2020年3月期~(19年3期早期適用可)
・事業等のリスク⇒2020年3月期~(19年3期早期適用可)
・経営者による財政状態、経営成績及びCFの状況の分析⇒2020年3月期~(19年3期早期適用可)
・CGの概要⇒2019年3月期~
・CGの概要(財務及び事業の方針の決定を支配する者のあり方に関する基本方針)⇒2020年3月期~(19年3期早期適用可)
・役員の状況⇒2019年3月期~
・監査の状況⇒2019年3月期~
・監査の状況(監査役及び監査役会の活動状況、継続監査期間等)⇒2020年3月期~(19年3期早期適用可)
・監査の状況(監査公認会計士等と同一のネットワークに属する組織に対する報酬等)⇒2019年3月期~
・役員の報酬等⇒2019年3月期~
・株式の保有状況⇒2019年3月期~
 



12.不動産賃貸における収益基準の適用
■概要
リース基準が適用されるリース取引は、収益基準から除外される。
ただし、取引によっては、収益基準が適用される。
⇒リース基準の適用対象かどうか、の検討から始める

■賃料・共益費収入
⇒リース基準を適用(特に論点なし)

■水道光熱費収入
リースの概念とは異なるため、収益基準を適用
⇒水光熱の提供が、本人と代理人のどちらの立場で行われるかで、計上方法は異なる

■違約金収入
賃料としての性質があるか、がポイント(あればリース基準)
・解約違約金⇒典型的なケース(残期間の賃料相当の違約金)であれば、リース基準
・破損違約金⇒賃料としての性格ではなく、賃貸人に履行義務もないので、従来慣行に従う

・礼金・敷金・更新料等⇒実務慣行や判例が様々で、実態判断が必要




13.法人税課税改正の実務ポイント

■主な改正点
・研究開発税制
→試験研究費の増減によって、控除額が減少する場合
・中小企業者の対象範囲の見直し
・業績連動役員給与
→報酬委員会または報酬諮問委員会の決議の独立性要件を追加
・組織再編税制見直し
→株式交換後等の後に完全子会社と合併を予定する場合の、適格要件の見直し
→三角合併等の適格要件について、株式対価の要件の見直し






14.事前確定届出給与の注意点

(1)届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合
・事前に支給額が確定したものとは言えないことから、事前確定給与に該当しない。
⇒支給額全額が損金算入できない。

(2)届け出た支給時期と実際の支給時期が異なる場合
・支給額は届出内容と一致していたとしても、支給時期が異なる場合は、支給額全額が損金算入できない。

(3)支給しなかった場合の役員への課税
・届け出た支給額が実際に支給されない場合、支給期到来前に受給辞退の意思表明を証する書面を役員から会社宛に提出した場合には、課税されない。
※参考:所得税基本通達28-10
 給与等の支払を受けるべき者がその給与等の全額又は一部の受領を辞退した場合には、その他支給時期の到来前に自体の意思を明示して自体したものに限り、課税しないものとする







15.ウーバー・テクノロジーズ

・配車サービス最大手
・今週ニューヨーク証券取引所に上場予定
・IPO価格は仮条件レンジの上限になり得るとのこと
・同社のIPOは最大90億ドル(約9900億円)規模と今年最大で、米史上10位以内に入る規模になる可能性が高い(ブルームバーグの集計データより)
・仮条件44-50ドルで1億8000万株を売却
・IPO価格が50ドルなら、評価額は約840億ドルとなる見込み
・18年12月期の売上高は前期比42%増の112億ドル(1兆2500億円)





16新たな収益認識基準が外食産業に与える影響

新収益認識基準では、顧客との契約から生じる収益に対して適用
➾「顧客との契約」には口頭による約束も含まれるため、飲食サービスの提供(口頭注文➾サービス提供)等も適用対象となる

・いつ収益を計上すべき
外食産業では事前にサービス価格が明示され、サービス提供の都度、対価を受領。
➾対価受領時点でサービス完了となるため、完了時点で収益認識する
➾変更なし

FC(フランチャイズ)の場合、加盟金収入やロイヤリティは注意が必要
➾加盟金がFC契約期間にわたって提供する本部のサポート等に対するものであれば、FC契約期間に渡って計上するか否かの検討が必要
➾ロイヤリティが歩合の場合は、加盟店の売上計上月と同じタイミングでの計上が必要

・いくらで売上計上すべき
無料での割引クーポンは売上代金の割引時に販促費等で処理している場合、売上から減額する処理への変更を検討する必要がある
ポイントに関しての処理にも影響あり
➾自社ポイントが重要な権利(1ポイント=1円値引き等)と判断される場合、売上の繰延を検討する必要がある。
➾他社ポイントを付与している場合、ポイント運営会社のために回収した部分があれば、売上から控除する

・決済手段
ビットコイン等の仮想通貨で決済された場合、当該仮想通貨の時価で収益を計上する必要がある。




























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2019年5月9日木曜日

4/26 勉強会:有価証券報告書 作成上の留意点(平成31年3月期提出用) 他

1.一定の投資運用業者は代理人PEならず

・恒久的施設(PE)とは
外国企業が相手国内で事業を行う一定の場所(支店や工場など)。

・PEが必要な理由
 課税の有無を判断するためにPEが必要。
 例えば、日本企業が中国国内にPEを保有しており、発生した収益が中国源泉の収益と認定された場合、
 法人には中国の企業所得税、その業務を行った従業員には個人色税が課税される。

・代理人PEとは
 非居住者又は外国人に対する課税について、課税所得を区分するPEの類型の一つ。
 自己のために契約を締結する権限のある者その他これに準ずる者。

■投資運用会社は代理人PEに該当するか?
金融庁は4月1日付けのPEに係る参考事例集の一部改訂により、
特殊関係者でないLPがファンド出資の10%以上を保有していれば、
投資運用会社は代理人PEとはならない旨を明確化。




2.取締役に報酬決定を再一任しているケースはその旨を記載

■開示の強化
・2019年3月期より、役員報酬決定の枠組みとして以下を開示
(1) 算定方法の決定権者、権限や裁量の範囲
(2) 報酬委員会がある場合にはその位置づけ・構成メンバ
(3) 取締役会・報酬委員会の報酬決定に関する具体的な活動内容など

■取締役に報酬決定を再一任しているケース
例:総会で報酬の総額を決定⇒個別の報酬額は取締役会で決定する旨の決議⇒取締役会で個別の報酬額を社長に一任する旨の決議
⇒このようなケースも、その旨を記載することとされている




3.技術士

・科学技術に関する高度な専門的応用能力を必要とする事項について計画、設計、分析を行う技術者
・国家資格
・科学技術に関する21の各技術部門がある(機械部門、建築部門など)
・登録者数は9万人。うち45%が建築部門の技術者
・二次試験の合格率は約10%



4.建築数量積算報酬は無資格でも源泉対象

建築積算に係る数量精算業務の対価が源泉徴収の対象となった裁判

■事例
・原告会社は建築設計時の概算書の作成等を業務とする法人。
・無資格者に発注した本件業務は、建築積算業務のうち、建築物等の設計図書から建築資材の数量を算出する業務。
・源泉徴収の対象となる「技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者」に該当しないとして、源泉徴収の対象外であると主張。

■判決
・設計図書から建築資材の数量を算出する数量積算業務は技術士が行う業務であると解釈。
・無資格者に対して発注していた本件業務は技術士が行う業務に相当すると指摘。
よって、源泉徴収の対象になる報酬に該当すると判断。




5.定期保険の損金算入割合を大幅制限へ

・国税庁は一定期間災害保障重視型定期保険をはじめ、高い節税効果が問題視されていた定期保険の損金算入割合を大幅に引き下げる改正通達案を公表した。
⇒生命保険会社各社は2月中旬に国税庁より通知を受けており、すでに法人向け定期保険の販売を停止している。

・例えば、一定期間災害保障重視型定期保険の最高解約返戻率は85%前後のものが多くなっている。
⇒70%超85%以下の場合は今後は損金算入割合は40%となる

・また、一定期間災害保障重視型定期保険の最高解約返戻率が85%を超えると損金算入割合はさらに圧縮される。改正通達は「保険期間開始日から10年を経過する日」までは「最高返戻率×90%」の資産計上を求めている。
仮に、90%だとすると81%(90%×90%)の資産計上が求められ、損金算入できるのは、支払保険料の19%となる。




6.国外送金等調書に係る文書照会→調査の流れ

■国外送金等調書制度の概要
金融機関等を通じて国外へ送金したり、国外からの送金を受領した場合に、金融機関が国外送金等調書を税務署に提出する。対象取引には、ATMを利用した国内・国外口座からの現金引き出しも含まれる。
なお、金額は100万円超(外貨の場合は100万円相当額)が対象

■プライベートバンクへの送金等について
国外送金等調書には、国外送金の相手国名、金融機関名が記載されている。
また、タックスヘイブンやスイスのプライベートバンクへの送金も確認している。

■国外送金等調書に係る文書照会(お尋ね)について
国外送金等調書については所得税申告書等と照合し、照合の結果所得税申告書等と不一致の場合、文書照会による行政指導又は調査による解明が行われる。
国外送金等の年月日が進行年分に係る場合や直ちに課税関係が生じないと想定される場合は、翌事業年度以後に申告書等との照合を行う「継続管理資料」として管理される。

■文書照会に回答しなかった場合、督促は行われるか
未回答者に対し書面による提出督促は行われず、電話による回答の提出確認が行われる。
なお、課税当局は未回答者に対しては調査による接触を検討するとしている。

■調査が行われる場合、実地調査となるのか
事案に応じて調査等の分担が行われ、個人課税部門、資産課税部門において実地調査が行われる。
また、調査対象税目・調査対象期間に係る申告書に税務代理権限証書が添付されている場合、課税当局は税務代理人に対しても説明する必要がある。






7.軽減税率と飲食設備における合意

■飲食設備がある場合
原則として店内飲食か持ち帰りか「意思確認(双方が合意)」を
する必要がある。
店内飲食⇒10%
持ち帰り⇒8%

■公園のベンチ等を利用する場合
双方の<合意>にもとづいて設備が利用されるものではないため
原則として軽減税率8%が適用される。

ただし、<合意>には黙示的なものを含むため、たとえば店側が
メニューやおしぼりをテーブルに設置する場合には実態が<飲食設備>
となり、軽減税率は適用されないこととなる。




8.法人税:受取配当等の益金不算入額の過大計上に注意

受取配当等に係る法人税の申告にあたり、
益金不算入額を過大に計上しているケースが発生している

特に下記(4)に該当する区分を(3)に区分して申告するケースが多く、
税務調査でも必ず確認されるため要注意

■ポイント
株式の保有割合に応じた「株式等の区分」を必ず確認すること

(1)完全子法人株式等
保有割合:100%
益金不算入額:受取配当等×100%

(2)関連法人株式等
保有割合:1/3超~100%未満
益金不算入額:受取配当等△負債の利子

(3)その他の株式等
保有割合:5%~1/3以下
益金不算入額:受取配当等×50%

(4)非支配目的株式等
保有割合:5%以下
益金不算入額:受取配当等×20%

なお(3)のその他の株式等は、
(1),(2),(4)のいずれにも該当しない株式等にあたるため注意すること。






ITに関する重要な虚偽表示リスクのQ&A案

・日本公認会計士協会が発表。
・ERPやクラウドサービスが利用されている際の監査人の留意点等を示す。
・ERP
 ⇒ 内部統制に関して、事前にシステム化された統制機能が組み込まれているケースがある。
 ⇒ ERPによってその程度は異なるので留意が必要。
 ⇒ 会社が当初想定された使い方を異なる使い方をしており、統制機能がうまく働かないケースも。
・クラウドサービス
 ⇒ 市販の簡易なパッケージソフトとして評価を行わないように注意。
 ⇒ 例1)会計システムの管理者権限を社外でベンダーが保有する場合は、不適切なアクセスのリスクに対する内部統制を把握する。
 ⇒ 例2)データのバックアップ体制について、ベンダーとの契約内容で十分にリスク対応されているかを検討する。






10.有価証券報告書 作成上の留意点(平成31年3月期提出用)

■2019年3月期から適用
【主要な経営指標等の推移】
・「最近5年間の株主総利回り」の推移を、「提出会社が選択する株価指数における最近5年間の総利回り」と比較して記載。
・「最高株価」と「最低株価」を記載。

【コーポレートガバナンスの概要】
・「コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方」を記載。
・「企業統治の体制の概要」に機関の名称・目的・権限・構成の氏名を記載。

【役員の状況】
・社外役員の、会社との人的・資本的関係を記載。
・社外役員、監査役監査・会計監査・内部統制の連携等を記載。

【監査の状況】
・「内部監査及び監査役監査の状況」、「会計監査の状況」、「監査報酬の内容等」を記載。

【役員の報酬等】
・報酬プログラムの説明

■参考
・有報は和暦でも西暦でも記載可能。




11.用語から読み解く収益認識会計基準 開示

■企業会計基準29号「収益認識に関する会計基準」が示す開示に関する用語
(契約資産)
・企業が顧客に移転した財またはサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利(債権は除く)
 契約資産は、例えば契約のなかの別の履行義務を充足しなければ債権とはならず、信用リスクだけではなく履行リスクにも晒される
 ※「債権」=上記のうち無条件のもの(すなわち、対価に対する法的な請求権)であり意味合いが異なる。
⇒契約資産は金銭債権として取り扱い、BSに区分表示または注記しなければならない。

(履行義務を充足する通常の時点)
・収益を認識する通常の時点であり、例えば、商品等の出荷時、引渡時、サービスの提供に応じて、あるいはサービスの完了時をいう。
⇒基準80項では、下記を注記することとされている。
 (1)企業の主要な事業における主な履行義務の内容
 (2)企業が履行義務を充足する通常の時点

 



12.統合報告書の活用方法

■投資家目線
・いかに積極的に、明瞭なメッセージを伝えようとする姿勢があるかを感じ取る
・経営の時間スパンを感じ取る

■会社目線
・公表して終わりではなく、外部の反応を経営へフィードバックして活かす
・非財務情報の保証を追及する (財務情報と違い、開示のルールは発展途上)




13.非財務情報開示ガイダンスの特徴と企業への影響

■有価証券報告書の記載内容の見直し
・非財務情報開示の拡充の一環で、有価証券報告書の記載内容が見直された。
・2019年1月に「企業内容等の開示に関する内閣府令」を改正
⇒「記述情報の開示に関する原則」を公表

以下、有価証券報告書の見直し内容と対応時期(3月決算を想定)
■2019年3月期
・ガバナンスの情報の拡充
⇒役員報酬、政策保有株式等
■2020年3月期
・記述情報の記載の充実
⇒経営戦略、経営者による経営成績の分析(MD&A)、リスク情報等
・監査関係情報の拡充
⇒監査役会等の活動状況、監査人の継続監査期間等

■2021年3月期
・KAMの全面適用
⇒監査報告書の記載内容の充実(監査上の主要な検討事項等)








14.投資信託の時価評価

■公開草案
・2019年1月18日、「時価の算定に関する会計基準(案)」が公表された。
※当案は、範囲に含まれる時価をどのように算定すべきかを定めるもので、どのような場合に時価で算定すべきかに関しては、他の会計基準に従うとされている。
・公開草案では、2020年4月1日以後開始する年度の期首からの適用が提案されている。

■投資信託の時価評価への影響
・上記案の公表に伴い、「金融商品会計実務指針62、266、267項」「金融商品会計基準82項」の定めは削除される改正案が公表
⇒公開草案のベースでは、概ね1年をかけて検討を行うこととし、当面の時価評価については現行の取扱いが踏襲されるものと考えられる。







15.今年上場した銘柄の現在

・現在24社がIPOしているが、うち10銘柄は初値を上回っており、残りは下回っている状況
・公開価格を時価が下回っている銘柄が4銘柄(※)あり。
(※)KHC(1451・マザ)、コプロ・ホールディングス(7059・マザ)、NATTY SWANKY(7674・マザ)、東名(4439・マザ)の4銘柄
・株価の推移が上場後堅調な銘柄は識学(7049・マザ)、リックソフト(4429・マザ)、スマレジ(4431・マザ)





























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