2014年12月26日金曜日

12/26 勉強会:被買収会社のストックオプションの取扱い 他

1.貸付金利息の収入時期、履行期に確定は誤り

■まとめ
・個人間の貸付金の利息の確定時期はその年分ごとに確定する
・履行期が到来してから確定するものではない

■事例
・息子が母親に約1000万円を貸し付けた
・金利は年2
・返済の時期は母親の相続開始時または保有する不動産の売却時とし、利息も返済時にまとめて精算することとした確認書を取り交わした
・課税庁側は、返済時にならないと利息が確定しないので利息の収入時期は返済が確定した年分と主張した
・審判所の判断
 利息はその年分ごとに確定する
 よって、確定した年分の収入とすることが相当とした


2.評価額1億円以上の株式等、出国時に課税

■平成27年度税制改正が検討
(目的)
・巨額の含み益のある株式等を保有するものがキャピタルゲインが非課税となる国へ移住後、これを売却することで譲渡益課税を回避する”節税”を封じる。

(対象資産)
・株式、国債、社債など所得税法上の有価証券、匿名組合契約の出資持分、デリバティブ
 ただし”出国時”の評価額の合計額が「1億円以上」の場合

(対象者)
・出国直近の10年以内で5年以上居住者であった者

※納税猶予あり
・出国時に「担保」を提供する、かつ納税管理人の届出をすることが条件
・出国期間中に売却をせず「5年以内」に帰国すれば免除される


3.損金算入配当、実額のみ益金損金可能に

■外国子会社配当益金不算入制度から、損金算入配当が除外に
・現在、外国子会社の配当のうち95%は益金不算入(5%のみ益金)
 ⇒改正により、一部配当は100%益金算入となる

■対象となる配当
⇒外国で損金算入可能となっている配当のみ
 ・オーストラリア子会社からの償還優先株式
 ・ブラジル子会社からの利子配当

■益金に算入すべき金額
・基本は配当全額
・外国では損金算入と損金不算入の配当があるため、損金算入した金額が証明できる書類がある場合は、配当のうち損金算入した金額のみの益金算入で足りる


4.被買収会社のストックオプションの取扱い

(論点)
被買収会社が従業員に付与したSOを買収の際に買収会社が取得した場合の所得税の課税関係について
⇒所得税法に規定がなく質疑応答事例が出された

(課税関係)
(1)SOの付与時
 課税関係は生じない。
(2)SOの譲渡承認時
 給与所得が課税される。(譲渡承認時におけるSOの時価相当額に対して)
(3)SOの譲渡時
 譲渡所得は生じない。
 (譲渡価額・取得費等ともに譲渡承認時におけるSOの時価相当額となるため)


5.粉飾非関与の代表取締役に賠償命じる

■事例
・ニイウスコー社の粉飾決算(売上高約682億円の過大計上)に伴う株主の損害賠償請求
・社長は人事担当役員であり粉飾決算に関与していない

■争点
金商法に規定する「相当な注意」を用いたか否か 
 ()「相当な注意」とは役員が適切な注意をしても事実を知ることができなかったと証明した場合、その役員は賠償責任を負わない規定

■社長の主張
・人事担当役員にすぎないため、巧妙に仕組まれた不適切な取引を見破れることは不可能
・「相当な注意」をしても事実を知ることはできないと主張

■判決
・代表取締役社長は業務執行全般を統括する責任あり
・担当外であろうが疑いがある事情は、自ら確認する義務あり
・売上高が前月比約60億円も増加したが、不適切なものであるか否かの調査・確認も行っていない
 
 「相当な注意」を行っていないと指摘し、損害賠償命令がくだされた


6.消費税の計算処理

テーマ:税込方式、税抜方式、混合方式
1)納付税額の処理方法(税込、税抜の違い)
・税込方式
 -原則⇒翌期の申告時点で租税公課として費用計上
 -特例⇒決算において未払費用として租税公課に費用計上
・税抜方式
 ⇒仮受消費税、仮払消費税の残高を償却し、未払消費税を未払費用として計上
 ⇒貸借の差額は、雑損失 or 雑収入に計上

2)税抜方式のメリット
・売上原価の計算において、棚卸資産評価を税抜で行うため、税込に比べて粗利を圧縮できる
・少額減価償却資産等の判定(10万円未満、30万円未満)において、税抜で判定できる
・交際費損金不算入(800万円限度)の判定において、税抜で判定できる

3)混合方式とは
・課税売上は必ず税抜処理が必要
・課税仕入は、「棚卸資産」「固定資産」「経費等」の3グループに区分し、どれか1グループでも税抜処理すれば、他のグループは税込処理できる
・小規模事業者が、大型の設備投資をし、固定資産だけ税抜方式のメリットを受けたい場合などに活用


7.減額更正後に増額更正があった場合の延滞税について

■概要
1Aは期限内に相続税の申告をし4,000万を納付した。
2)その後土地の評価額を時価よりも高く申告していたため更正の請求をし1,000万の還付を受けた。
3Aは(2)で認められた評価額になお不服があったため異議申し立てをしたところ、逆に500万の増額更正を受けた。
4)課税当局は(2)と(3)の差額につき延滞税を課した。

Aはこの延滞税を不服として訴えた。

■裁判所の判断
一審・二審⇒納税者敗訴
最高裁⇒逆転勝訴

・上記(2)と(3)の差額は未納付の状態となっているが当初納付の際に一旦は納付されている。
・減額更正は税務署長が認めたものであるにも関わらず増額更正にあたり自らその処分を覆したものであること

ことから上記差額を延滞と評価するのは妥当ではないとして納税者逆転勝訴とした。


8.消費税:非居住者から原材料の供給を受けて加工する場合の消費税

■論点
・非居住者(外国法人)から原材料の提供を受け、日本国内で加工を行ったうえで海外に出荷するケース
・当該加工委託業務にかかる売上は、8%課税売上か免税売上か?

■答え
・免税売上となる

■該当条文
・消令17条②七(輸出取引等の範囲)
・非居住者に対する役務提供について、次に掲げるもの以外は輸出類似取引(免税)と規定している。
  イ:国内に所在する資産に係る運送又は保管
  ロ:国内における飲食又は宿泊
  ハ:イ及びロに掲げるものに準ずるもので、国内において直接便益を享受するもの
・輸出加工委託業務は、ハの『準ずるもの』に含まれない。


9.独立役員制度

・一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役or社外監査役
・上場会社は1名以上の確保が必須(東証の上場規程)
20142月には独立役員の1名以上は取締役であることを要請(努力義務)

■本誌が選ぶ2014年 5大ニュース
①単体開示の簡素化
②改正会社法公布 20155月施行
 ・社外取締役を置くことが相当でない理由の開示義務
 ・社外取締役等の要件等の厳格化
 ・会計監査人の選任解任等の議案内容決定権を監査役に
 ・監査等委員会設置会社制度 創設
 ・多重代表訴訟制度 創設
 ・株主による組織再編等の差止請求制度の拡充
③企業会計審議会に「会計部会」を新設
④金融庁と東証、「コーポレートガバナンス・コード(案)」公表
⑤税効果ルール見直しへ
 「検討の結果、実務への影響の大きさを鑑み、例示区分を撤廃せずに規定の一部を修正する方向性」

⇒あまり大きなニュースが無かった模様。


10.特定事業再編に係る税制について

1.特定事業再編とは
⇒ 産業競争力強化法にて認定された再編のこと
 ※認定要件として、生産性の向上や新たな需要拡大が見込まれること。
  (ex . 3年以内に有形固定資産回転率の10%向上が見込まれるなど)

2.特定事業再編に係る税制
(1) 特定事業再編投資損失準備金制度
⇒ 特定事業再編により取得した株式等の価格低下等の損失に備えた準備金の繰入が損金算入可能
⇒ 組織再編を促進し、事業の活性化を図ることが目的

※損金算入可能なのは特定株式等の取得価額の70%が限度。
※原則として、10年経過後に5年に渡って均等額を戻し入れる。

(2) 登録免許税の軽減


11.関連会社株式の減損処理とのれんの処理

Q.時価のある関連会社株式について四半期で減損処理をしました。
  のれん相当額の取り扱いについて教えてください。

A.連結子会社だった場合はどうするか、を前提として考える
  個別財務諸表における減損処理後の簿価と連結財務諸表における簿価とを比較
  個別の簿価が連結の簿価を下回る場合、のれんの未償却残高を限度に連結簿価を切り下げ
 ・持分法適用会社にあてはめる
  のれん相当額について、同様に処理。ただし、一行連結なので仕訳は、
  持分法による投資損益/関連会社株式
 ・連結子会社の場合との相違点
  連結:子会社株式評価損なので、特別損失
  持分法:持分法による投資損益なので、営業外損益

Q.洗い替え法により四半期決算での減損処理を戻入ることは可能でしょうか。

A.連結と同様に、四半期では切放法と洗替法の2つが認められている。
   四半期で減損処理をしても年度末で見直すことは可能。


12.組織再編における会計上の主な留意点

【再編決定時】
・固定資産、のれんの減損
 ⇒利用方法や利用方針の変更に伴う減損会計
・耐用年数の見直し
・固定資産の除却
・引当金の計上
 ⇒引当金要件に基づく計上

【再編時】
・企業結合時の会計処理
 ⇒取得、共同支配企業の形成、共通支配下の取引の会計処理

【再編後】
・会計方針
 ⇒再編後の会計方針の統一


13.IFRSにおける売却目的で保有する非流動資産等の取り扱い

※日本基準では、当該事項に関する区分表示や追加的な開示は求められていない。
 固定資産の中でも売却予定の資産を区分表示することで、将来CFの予測に資する目的

(1)IFRSの要求
・売却目的保有に分類される要件を充たせば
a.帳簿価格 b.売却コスト控除後の公正価値 のいずれか低い金額で計上し、減価償却は中止
⇒財政状態計算書において区分表示

(2) 非流動資産等の分類(一部抜粋)
・非流動資産等の帳簿価額が継続使用ではなく、売却で回収の場合は、売却保有目的に分類しなければならない
・現状のまま直ちに売却可能で売却可能性が高い
・売却可能性が高い=経営者等が売却計画の実行を確約し、当該計画が開始
・売却計画は分類から1年以内で完了


14.使える補助金・助成金vol.13「雇用調整助成金」

※今回から3回は「助成金」を扱います。
「助成金」は「補助金」と違い、「条件に合えば」給付されます。

・(対象者)
事業主

・(要件)
1)雇用保険適用
2)最近3ヶ月の売上が前年同期10%以上減少
3)事業所の全員について休業、教育訓練等を一斉実施

・(受給内容)
中小企業:休業手当または賃金相当額等の2/3
大企業:休業手当または賃金相当額等の1/2
※教育訓練の場合、1人1日1,200円を加算

・(手続き)
開始前に「実施計画」を、実施後に「支給申請」をハローワークに提出








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2014年12月20日土曜日

12/19 勉強会:2014年のIPOは80社 他

1.訴訟で株主の地位確定も役員報酬は損金算入できず

・確定申告後に、訴訟等の結果により確定した決算が誤りだったことが明らかな場合
 ⇒更正の請求ができる


2.受取配当金益金不算入規定はこう変わる!

27年税制改正
・現行制度(持分比率=益金不算入額)
100%=受取配当金の全額
25%以上100%未満=受取配当額-配当を受ける株式に係る負債利子額
25%未満=(受取配当額-配当を受ける株式に係る負債利子額)×50%

27年改正後
100%=受取配当金の全額
33.3%以上100%未満=受取配当額-配当を受ける株式に係る負債利子額
5%以上33.3%未満=受取配当額×50%
5%未満=受取配当額×20%

※参考
株式投資信託の収益分配額は、全額益金算入となる。


3.税理士の妻が役員兼務で給与経費を否認

■概要
 税理士が妻に支払った給与が、事業所得の必要経費に出来るか否かで争われた事例

■論点
 妻が「青色事業専従者」に該当するかどうか
 ⇒審判所は「青色事業専従者」には該当しないと判断

■青色事業専従者
 ⇒該当する人への給料は事業所得の必要経費に出来る
 ⇒条件
 ・青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族
 ・専ら従事する期間が年間通じて6ヶ月以上
 ・他の職業に従事する期間が短い者

■「青色事業専従者」に該当しなかった理由
 ⇒「他の職業に従事する期間」にひっかかったため
 ・税理士と妻が役員の不動産管理業務の法人があった
 ・そこで役員として妻が業務の指揮監督を行っていた
 ・法人の従事する期間が短くとも、役員として常に業務を行う立場にある


4.会計基準選択の"採用理由"までを求めず

東証が平成273月期より、上場企業に対して
「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の開示を要請
⇒平成27331日以後に終了する年度決算に係る決算短信から適用され、早期適用も可能

(1)IFRSの適用を検討している場合、検討状況や適用時期を記載

(2)現在、日本基準を採用し、今後も日本基準を利用する場合はその旨を開示すれば足り、日本基準を採用している理由の開示までは求められない。


5.平成27年度税制改正、実現するもの&見送られるもの~住宅資金贈与の非課税枠、大幅拡大へ~

■実現するもの
(1)消費税の軽減税率(適用は10%増税時)
(2)繰越欠損金の控除限度割合の縮小
(3)受取配当金の益金不算入における不算入割合の持分比率の見直し
(4)NISAの拡充
  ・非課税投資枠を年間100万円⇒120万円へ増額
 ・さらに0歳~19歳に年間80万円までの非課税投資枠を新設
(5)住宅取得等資金等の贈与税の非課税措置
  ・非課税枠を最大1,000万円からどこまで増額するか
(6)発泡酒に対する課税強化

■実現しないもの
(1)地方法人特別税の縮減
(2)地方特別法人税の拡充
(3)自動車取得税の廃止等
(4)中小法人改革(平成29年度税制改正で実施予定)
  ・中小法人の範囲、軽減税率の見直し、外形標準課税の対象拡大等


6.一定資産の内部取引価格は帳簿価額に~税務当局、PE経由による譲渡損益調整を懸念

【国際課税の現状】
・総額主義
・法人税の課税対象は、
 -外国法人の日本支店(PE)の国内事業所得
 -PEに帰属しない国内源泉所得

【改正】(平成2841日以後開始事業年度から適用)
・帰属主義
・外国法人の本店とPEは別法人とみなす
・本店とPEとの内部取引は時価で行ったものとみなす

【改正後の問題点】
・不動産などの一定資産(現状、『PEに帰属しない国内源泉所得』を生じる資産)について、課税逃れの懸念あり。

(例)
・外国法人が、本店に帰属する国内不動産(帳簿価額80、時価100)を譲渡
 ⇒第三者へ譲渡した場合、譲渡益20(国内源泉所得)に対して課税
 ⇒日本PE経由で譲渡した場合、
  -本店側では内部取引(国内源泉所得でない)ため、課税発生せず
  -PE側では、時価100で本店から取得したものを時価100で第三者に譲渡したことになり、課税発生せず

・上記懸念を解消するために、一定資産の内部取引については帳簿価額で行われたものとする改正が予定(H27年度改正)

(上記例に適用した場合)
PE側では、帳簿価額80で本店から取得したものを時価100で第三者に譲渡したことになり、譲渡益20に課税される


7.PFI事業の更新投資に係る取扱い(国税庁回答事例)

PFI事業)
PFIPrivate Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティ
ブ)」とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法

■概要
・国が所有権を有する空港
・民間業者が運営権を取得
・空港施設の修理・改修・増設等(更新投資)は民間業者が行う

■照会内容
上記「更新投資」に係る支出の法人税法上の取り扱いはどうなるか

■国税庁回答
繰延資産として運営権設定対象期間×7/10で償却
(公共的施設の設置又は改良に係る費用で支出の効果が1年以上に及ぶ)

(検討)
×運営権の取得価額⇒既設の運営権に基づき支出するものであるため
×有形固定資産の所得価額⇒施設の所有権は国に帰属するため
×寄付金⇔契約に基づく維持管理義務の履行のための支出であるため

よって、運営権者の「費用」となる。


8.所得税:マイカー通勤手当の引上げと差額の追加支給

マイカー通勤者等に支給される通勤手当の非課税限度額を引き上げる改正があり、この改正はH26.4.1以後に受け取るべき通勤費に遡及適用される。

・マイカー通勤手当の支給額を税務上の非課税限度額に合わせていた会社が、
・この改正に対応して社内規定を改定してマイカー通勤手当の引き上げをH26.4.1に遡及して実施し、
・その増額分を一括して支給した場合
⇒一括して支給されるマイカー通勤手当の増額差額分についても、非課税の取り扱いが適用される。

・その一括支給がH27.1.1(翌年)以降にズレ込んだ場合には、
⇒年内に支給された場合と同様に、非課税の取り扱いが適用される。

■理由
一括して支給される増額分は遡及される社内規程に基づけば、【H26.4.1以後に受け取るべき通勤費】に該当するため。と思われる。


9.2014年のIPO80

・昨年よりも22社増加
・業種別では情報・通信業がトップ(全体の3割)
・市場別ではマザーズが5割超
・監査法人:トーマツが30社で最多、あずさ22社、新日本18
・すかいらーくはIFRS任意適用会社による初のIPO事例となった


10.組織再編時の連結キャッシュフロー計算書

1.表示区分
(1) 組織再編時にCFを伴う
⇒ 投資CF
※具体例
 ・株式を取得して連結子会社化
 ・現金を対価とする事業譲渡、事業譲受

(2) 組織再編時にCFを伴わない
⇒ 現金及び現金同等物の期首残高に加算・減算
※具体例
 ・重要性が増して連結の範囲に含める
 ・現金を対価としない合併

2.実務上の留意点(間接法採用の場合)
期首と期末の連結BSの差額だと、営業CFなどに、組織再編のCFが含まれてしまう
⇒ 調整が必要

【調整方法】
(1) 期首又は期末の連結BS残高を調整
(2) 連結キャッシュフロー仕訳による調整


11.役員への利益連動型給与を損金算入できる条件の主なもの

(1) 対象法人  … 非同族の上場企業
(2) 支給対象者 … 業務執行役員
 ※社外取締役や監査役は対象外
(3) 算定方法  … 客観的な算定方法であり、具体的な上限額を設けること


12.税理士視点でみる会社法改正の概要と実務対応

■今回の会社法改正の全体像
 ・ガバナンス関係の改正
  社外役員の要件や規律、監査等委員会設置会社の創設等
 ・親子会社関係の改正
  企業集団の業務適正化、特別支配株主の株式等売渡請求等
 ・その他のバグ取り改正
  監査役の監査範囲に関する登記等

■トピック
 ・株式買取請求に係る株式等の買取の効力が生ずる時期
  ⇒組織再編成の効力発生日に統一
 ・特別支配株主の株式等売渡請求
  ⇒大株主が、お金を払って少数株主から株式を取り上げる制度が創設された
 ・株式の併合により端数となる株式の買取請求
  ⇒買取請求の制度が創設された
 ・子会社株式の譲渡時手続
  ⇒特別決議を要するものとされた(ただし、重要性基準と持株基準あり)
 ・監査役の監査の範囲に関する登記
  ⇒会計監査限定の監査役は、会計監査限定の旨の登記が必要となった


13.M&A最終契約書のコベナンツ(契約条項)の例(一部)

 ・事業運営
  取引実行前に通常の業務の範囲を超える行為を行う場合、買主の承諾を必要とする。 (新株発行、重要な契約の締結変更終了など)

 ・前提条件の充足
  取引実行の前提条件を充足する努力をする旨の誓約
 
 ・情報提供
  売主が買主に必要な情報を提供する旨の誓約


14.業績目標連動型ストック・オプションについて

(1)内容
営業利益等の業績指標が一定の目標を超えた場合に行使可能となるような条件を設定し、経営者や従業員のインセンティブを、より直接的に企業の業績とリンクさせることが出来る制度。

(2)メリット
・税制適格SOと同様、行使時ではなく売却時課税である(売却時のキャッシュを原資に納税出来る)
・有償発行が多いが、企業にとっては費用計上がない

(3)デメリット
・目標が高すぎると権利行使できない
・有償が多いため、権利行使できない場合は対価が無駄になる

(4)業績達成条件の事例(2013年)
・会計上の利益(営業利益、経常利益、EBITDA、税前利益)…53
・会計情報と株価…23
・株価条件…12
・複数の会計情報の組み合わせ(利益と売上、売上と有利子負債)…9
・その他…3


15.使える補助金・助成金vol.12「新製品・新技術開発助成事業」

※東京都限定
・(対象者)
東京都内で創業または創業予定または東京都で事業を営んで1年以上

・(要件)
新製品、新技術を開発したこと
※なお、自社開発だけでなく、他社に委託してもOK

・(補助内容)
事業にかかる経費を補助
(ソフトウェア開発の場合のみ、人件費も補助対象に)

・(金額)1/2以内 上限1,500万円

・(募集期間)1月中旬~5月中旬

・(採択数)平成26年度 採択58件(エントリー数不明)

・(採択事例)

中小企業と求職者の最適マッチング化を実現、骨盤歪みを矯正し腰痛を予防する装置の開発など








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2014年12月15日月曜日

12/12 勉強会:所得税:NISAの最終買付日 他

1.免税で還付できず、依頼者が税理士に対し賠償請求

■まとめ
・消費税の課税形態の選択をめぐる税賠訴訟で税理士側が完全勝訴
・裁判所は原告法人が税理士に対して適切な情報提供がされていなかったと判断

■裁判所の判断
1、枠組み
  税理士の消費税の課税形態の選択に関する指導、助言は、依頼者からの適切な情報提供をもとに課税上重大な利害損失があり得ることを具体的に認識した場合等に付随的な義務が生じる場合もあり得る

2、今回のケース
  会計ソフトの予算管理のような場所に今後の固定資産の取得状況を記載しても取得予定について認識し得るにとどまる
  したがって、これをもって税理士に適切な情報提供がされたということはできない


2.増資に係る支払報酬は委託業務の対価

■概要
A社が第三者割当増資を行うにつき、X社に業務委託した
・それが架空の契約で、寄付金になるのではないかと争われた事例

■結論
・寄付金には該当せず、業務委託の対価と認められた

■判断材料
1、A社は財務諸表の注記に、
 「継続企業の前提に関する重要な疑義が生じている」旨と、
 「収益改善をするために増資を行う」旨を記載していた

2、経営状況から、公募ではなく第三者割当にするしかなかった

3、X社は契約上投資家を集めるだけでなく、募集が出来なかった場合はX社の資金により新株を引き受けるなどして、本件増資を確実に成功させるような契約になっていた


3.財務諸表等規則と会計基準、どちらの規定に従う?

【論点】
財規の改正に伴い、H26/3期より単体開示が簡素化
→これに伴い発生した実務上の問題にどう対応するか

【単体開示の簡素化とは】
・連結F/S作成会社の個別F/Sにおける開示の簡素化

具体的には、
・会社法の要求水準に合わせた簡便な財務諸表の様式の採用
・一定の注記について会社計算規則の規定による開示
・別掲基準の緩和
など

【実務上の問題点】
財規:開示不要、会計基準:開示必要
という項目に関し、開示の要否が不明

【解決策】
財規>会計基準→「財規上、開示を要求しないものについては、会計基準上も開示を要求するものではない」ことを明確化

例えば、無償取得した自己株式に関する注記について、財規:連結F/Sを作成している場合、個別F/Sでは開示不要
→会計基準:個別S/Sの注記を記載している場合、注記事項として一定事項を記載するとし「会計基準が別途、開示を要求するものではない」ことを明確化


4.国外芸能人等にリバースチャージ適用も

●事例
海外居住の日本人(非居住者)や外国人タレント・スポーツ選手が、日本で得た収入について、消費税を納税しないケースが多発している

●理由
「海外に居住している=非居住者=消費税の納税義務なし」と、間違った認識をしている人が多い。
非居住者であろうが、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている場合は、消費税の納税義務がある。

●対策
リバースチャージ制度の導入を検討している。
非居住者や外国人タレント等が行った役務提供につき、納税義務を報酬を支払う企業に転換させて消費税を納税させる。

平成27年度税制改正で是正される予定。
なお、「税抜金額」で報酬を支払うことになるため、報酬金額の契約形態の変更も必要となる。


5.上場株を時価9割で売却、時価との差額に寄付金課税

【審判所事例】
・請求人が、関連会社間で上場株式を譲渡(相対取引)
・譲渡対価が、証券取引所の売買価格の約9割であった。
・差額の1割分が寄付金に該当するかどうか?

【請求人主張】
・相対取引での譲渡
 ⇒譲渡対価は、売手・買手の思惑や今後の予測が働いて決定されたもので適正額。
 ⇒証券取引所の株価の9割で取引しており、異常な取引価額ではない。
・売手・買手に、差額1割分を贈与(寄付)したとの認識はない。

【判決】
・請求人の主張は退けられた
・上場株式の適正価額(時価)は、特段の事情がない限り、証券取引所の終値
・差額1割分について、売手・買手に贈与の意思がなくても寄付に該当する


6.工事進行基準の適用をめぐる課税関係

(長期大規模工事以外の工事について)
Q1 会計上で工事進行基準を採用した場合、税務上で工事完成基準を適用して減算調整することはできるか

A1 できない(ものと考えられる)
⇒税務上、工事進行基準の適用は任意であり、上記処理を否認する規定はない。
 但し、会計上工事進行基準を選択した以上、税務上も工事進行基準を選択したものと解するのが自然である。

Q2 A工事が黒字工事、B工事が赤字工事の場合、A工事を工事進行基準、B工事を工事完成基準で処理することはできるか

A2 できる
⇒工事進行基準は工事毎に選択適用できることとされている

Q3 法人税で工事進行基準を採用した場合、消費税で工事完成基準(引渡基準)を適用して納付税額を計算することはできるか

A3 できる
⇒基本通達により、「完成引渡し時に資産の譲渡等があったものとすることができる」旨、規程されている。


7.所得税:NISAの最終買付日

・今年のNISA枠を使用するためには、年内に「受渡日」を迎えるように買付けを行う必要がある。

・株式の受渡日は通常は約定日を含めて4営業日目。

・今年の大納会は12/30であり、今年のNISA枠を使用するためには『12/25迄』に約定する必要がある。


8.監査人選任の決定権

・会計監査人の選任等に関する決定権が監査役&監査役会に付与(H27.5.1施行予定)

・監査役等設置会社では会計監査人の選任&解任&再任しないについての総会議案は監査役等が決定する

⇒「インセンティブのねじれ=監査を受ける経営者が会計監査人の選任&報酬を決定」の解消のため

⇒従来から「同意権」はあった。が不十分だった。
 ※報酬については改正後も同意権のみ


9.ポイント制の退職金制度における給付算定基準の選択

1.給付算定基準を採用する場合の方法
 (1) 平均ポイント比例の制度として扱う方法
⇒ 毎期同じポイント数で累積していくとしてPBO算定
※ 将来のポイント変動を加味した退職までの累積ポイント÷勤務期間

 (2) 将来ポイントの累計を織り込まない方法
⇒ 実際に付与されるポイントを基にPBO算定
※ただし、採用するには勤務期間後半に著しいポイントの変動がないことが条件

2.上記方法を選択する判断基準の例示
 (1) 従来採用していた期間定額基準との近似を重視 
⇒ 平均ポイント比例の制度として扱う方法

 (2) どのようにポイントが付与されていくのかを重視(制度の設計思想を重視)
⇒ 将来ポイントの累計を織り込まない方法

※ 会計基準において、原則がどちらかは明示なし

3.上記方法の変更の可否について
 原則として、採用した方法は継続適用しなければならない
  ⇒ 制度設計の変更等による、合理的な理由があれば、変更も可能


10.過年度の「誤謬」訂正に関する情報収集ポイント

■修正再表示などの事態になる前に……平時の心がけ
 →そもそも誤謬が生じないようにする+決算作業中に誤謬の疑いが発覚しても適切な対応ができるような仕組みづくり
  ・ダブルチェック体制など内部統制の充実
  ・将来の検索性を意識した資料の整理、文書化、リファレンス

■誤謬の可能性が発覚した場合 調査における留意事項
(1)概括的な調査
 ・過去の決算書における誤謬の存在は、インサイダー取引規制における「重要事実」に該当する可能性がある
 ・インサイダー取引という二次災害を発生させないよう情報管理には十分注意

(2)本格的な調査
 ・時間的制約 → 有価証券報告書等提出までという時間的制約がある
 ・どのような形式(社内調査or外部調査など)で調査を行うか検討
 ・調査対象期間 → 少なくとも5年分の訂正報告書を提出できるよう調査を行う必要
 ・調査が実務上不可能な場合の対応
 ・調査の範囲 → どの程度まで類似事例を調査対象に含めるのか
 ・再発防止策を意識した調査を行う

■調査の方法
・証憑の確認と検証
  偽造の可能性を考慮し、できうる限り原本を入手して、確認・検証するよう努めるべき
 
・関係者に対するヒアリング
  自己保身のため嘘をつく可能性。先に処分をしてしまうと、その後ではヒアリングの協力を得られない可能性も。
  供述内容が、契約書、電子メール等の客観的証拠を符合しているのか、供述の裏を取ることが必要
  陳述内容、収集資料をリスト化して整理分類しておくことが有益

・証拠保全の必要性、証拠隠滅の防止
  疑いがある、程度の段階で調査対象者のPC等を保全しようとすると、会社が調査をしようとしている事実が発覚してしまう


11.マンション管理組合が管理費等滞納者に請求できる弁護士費用の範囲

Q管理組合が、管理費等の滞納者に、未払管理費等の支払を請求する訴訟を提起した場合、弁護士費用の実費全額を請求出来るのか?

A請求できる(東京高裁平成26416日判決)。
 原審では裁判所が相当と認める額に限定していたが、せっかく訴訟まで提起して滞納管理費等を回収しても弁護士費用に消えてしまうのでは管理組合が訴訟提起することが難しくなる為。

 ※ただし、この事例では建物の管理規約は国土交通省のマンション標準管理規約に依拠している


12.カーブアウト・ディールにおける実務上のポイント

(用語説明)
カーブアウトとは、事業を分離・独立すること+他の組織に移転するまでの手続

(1)具体的には
多角化で複数事業を営んでいる場合に、不採算事業などの一部の事業を切り出すケース
・切り出す事業が法人単位で完結⇒株式譲渡で対応(比較的容易)
・切り出す事業が複数の法人に分散(例:S1社のA事業、S2社のA事業)
⇒手続が煩雑。カーブアウト・ディールの典型例

(2)事例
カーブアウトのプロセスには、事業売却のほか、「事業統合」がある。
・「産業競争力強化法」(H26.1施行 税制優遇、金融支援等)
 ⇒三菱重工業と日立製作所の火力発電関連事業の統合

(3)カーブアウト準備作業
分離元企業における大論点(2つ)
a.分離する経営資源の範囲の特定=カーブアウトFSの作成
・単に切り出した事業は独り立ちするための機能が一部欠落=スタンドアローン・イシュー
b.ストラクチャーの選定
・移転コストのうちでも特に税金費用はインパクトが大きい

(4)ディール段階の課題
・セルサイドDD=自らDDを行い、切り出した後の課題を事前対応する。
・分離元企業と分離先企業で切り出す事業の目線が異なることも

(5)カーブアウト実行段階ので課題
・受け皿への経営資源の移転(特に従業員は個人別対応を要する)
・取引先についても継続取引の同意を得る必要がある


13.使える補助金・助成金vol.11「地域資源活用イノベーション創出助成事業」

※東京都限定
・(対象者)
東京都内に主たる事業所をもち、事業を営んでいる者

・(要件)
東京の地域課題(福祉、安全・安心その他)を解決するビジネスモデル
東京の強みを発揮できるビジネスモデル
のいずれかに取り組んでいること

・(補助内容)
事業にかかる経費を補助

・(金額)1/2以内 上限800万円

・(募集期間)3月初旬~5月下旬

・(採択数)平成26年度 採択51件(エントリー数不明)

・(採択事例)

携帯型レントゲンによる在宅診療の高度化、外国人観光客向け買い物促進アプリなど








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