2016年9月24日土曜日

9/23 勉強会:消費税:仮想通貨と消費税の課非判定 他

1.RS導入企業、損金算入要件にも配慮

RSを損金算入するための要件
・譲渡制限期間を設けること
・法人がその株式を無償で取得することとなる事由が定められていること
⇒事由は限定列挙
 譲渡制限期間内の一定期間に勤務が継続されない、勤務実績が良好でない、など

RS導入企業の適時開示資料
(1)譲渡制限期間
・最短は1年、最長は10
10年とした場合、役員の退任も想定される
⇒企業側「払込から退任までの期間が60か月に達していれば譲渡制限解除」
 税法 「一定期間に勤務が継続されない」に該当する可能性あり

(2)無償取得することとなる事由
ROE、注記経営計画、3年間のTSRなど


2.TSRTotal Shareholders Return)とは?

■株式投資で得た収益(主に配当とキャピタルゲイン)を株価で除した比率
⇒収益÷(購入)株価=TSR
・株式投資により何%の収益が生み出されたのかを示す
・株価上昇=TSR上昇、株価下落=TSR低下
・株価下落時にTSRを維持するためには配当を増やさなければならない
TSRを重視し、毎年公表している上場企業もある
・株式を売却しなければ算出できない点が問題
2013TSRの国別ランキングでは、日本は先進国の中でトップの59
新興国も含めると、トップはドバイの117%(ボストンコンサルティングの調査)
TSRは、株主総利回りとも言われる


3.相続放棄無効確認の訴えは不適法と判断

被相続人の配偶者()が行った相続放棄に対して、子が相続放棄の無効確認を求めていた裁判

■判決
・本件訴えは不適法
・相続放棄無効は遺産分割審判等の手続きの中で主張可能
・本件訴えに確認の利益()を認める事は困難

()確認の利益
・権利又は法律関係等の有無について判決を求めるに値するだけの利益・必要性のこと
・これを欠く訴えは却下(不適法と判断)される


4.平成283月期における会計方針の変更

■会計方針の変更は、45
うち、固定資産の減価償却方法の変更(定率法⇒定額法)25
変更理由としては、例えば、「定額法の方が実態に即する」、
「グループ内の会計処理を統一する」など

うち、「企業結合に関する会計基準」等の適用が8
・子会社株式を追加取得した場合や一部売却した場合等の処理
改正前:損益取引⇒改正後:資本取引
・表示方法
改正前:当期純利益⇒改正後:親会社株主に帰属する当期純利益

■その他
・丸井グループ(消化仕入()に関する会計処理の変更)
変更前:総額表示(売上高・売上原価それぞれ計上)
⇒変更後:純額表示(利益相当額のみ売上高計上)

()顧客への商品の販売と同時に取引先より商品を仕入れるという、日本の百貨店等で行われている商慣行のこと

IFRS15号「顧客との契約から生じる収益」を踏まえ、ASBJが「収益認識に関する包括的な会計基準」を開発しているが、これを先行する形で会計処理を変更


5.同族会社への支払賃料をめぐり所得税の行為計算否認を認める

■事例
・納税者A(個人事業主)が同族会社に不動産賃料を支払った。(Aの事業所得の必要経費算入)
・同族会社は納税者A及びその家族が株式のすべてを保有。
・同族会社への支払賃料が高額であった。
・原処分庁は「不当に減少させる行為」と判断し行為計算否認規定を適用した。
・処分に不服とした納税者が取消処分を求めた。

■争点
Aが支払った賃料に経済的合理性はあったか。

■審判所の判断
・Aが支払った賃料は、原処分庁が類似物件を参考に算定した適正賃料の約5倍以上であったこと。
・通常の経済人の行為として経済的合理性はない。

以上により、Aの所得税を不当に減少させる結果と認めざるおえないため、原処分庁の行為計算否認規定の適用を認めた。


6.国内子会社がIFRSでも18号適用可

(事務対応報告第18)
・在外子会社のF/SIFRS(or 米国会計基準)に準拠し作成されている場合、国内親会社との連結決算手続上、これらを利用できる。
※のれん償却、退職給付会計などは一部修正が必要

⇒国内子会社がIFRS(or 米国会計基準)に準拠している場合でも18号を適用できるよう、実務指針を見直す方針。


7.消費税:仮想通貨と消費税の課非判定

■支払手段の譲渡
消費税法上、支払手段(銀行券や硬貨など)の譲渡は非課税取引とされる。

■仮想通貨の譲渡
消費税法上、仮想通貨(ビットコインなど)の譲渡は課税取引とされる。
2014年、政府がビットコインを「支払手段」でなく「モノ」であると認定したため。
ただし、資金決済に使用されるなど使用実態としての実例を見れば非課税取引(支払手段)に該当するとの意見もある。金融庁は29年度税制改正要望の中に、仮想通貨の消費税法上の取り扱いを明確化することを要望している。


8.【税務】名義変更した“低解約返戻金タイプの保険”の情報提供

■『低解約返戻金型逓増定期保険』とは
「解約返戻金」の返戻率が一定期間は低率に抑えられ、その後払込保険料の90%以上にまで跳ね上がる。外資系の生命保険会社が中心となって発売。

■税務リスク
所基通では、名義変更された場合の保険契約の権利の評価は「解約返戻金」の額とされている。
「解約返戻金」が低額に設定されている期間に契約者を法人から個人(会社オーナー)に名義変更したケースで問題になる。

名義変更時の解約返戻金の額が個人の受ける経済的利益の額として評価することが“不合理”とされる可能性がある。
評価が不合理なら、地位の譲渡対価との差額について給与課税の可能性がある。

■当局の規制
H30.1.1以後に行われた生命保険契約の“名義変更”については、保険会社から税務当局に情報提供される。既存の保険契約分も報告の対象となる。


9.子会社株式の減損と税効果

・税務上損金算入されていない100%子会社の評価損は「一時差異」になる。
・将来売却⇒損金算入 清算⇒損金算入不可
⇒よって、「売却の意思決定」が行われたときに繰延税金資産認識する。

「分類1」の企業では一時差異について全額、繰延税金資産を認識する。
しかし、清算まで保有し続ける場合、回収出来ないにも関わらず繰延税金資産を認識することとなる。
⇒矛盾あり。指針の見直しが必要との意見あり。


10.中期経営計画の精度向上のポイント

1.ビジネスモデルの変更
⇒売上高の予測は、顧客の購入意思やその時の経済状況等に左右される
⇒一般的に予測は困難
⇒不確実性の低いストックビジネスへのビジネスモデル変更
※ストックビジネス … 月額課金サービスなど、毎月安定的な収入が得られるビジネスモデル。

2.費用戦略の選択
⇒固定費の変動費化や、変動費の固定費化を戦略オプションに含める。
⇒競争力が激しい市場では、変動費化することが有効
⇒一方、成長中の市場では、固定費化したほうが利益の伸び率が大きくなり有効
⇒市場の状況を見極めて費用戦略を取ることが有効

3.中期経営計画のボトムアップ
⇒トップダウン型の経営計画策定では、現場の生の声や状況が掴めないケースも出てくる。
⇒現場からの声を吸い上げるボトムアップ型を取り入れた計画策定が望ましい。


11.100%親子関係にある子会社の合併

■結論
・連結グループの経済実態に変更なし
=各社で損益は認識しない。

■子会社同士の合併-対価が子会社株式のみの場合
・子会社(吸収合併存続会社)
吸収合併消滅会社の資産負債を適正な帳簿価額で受入、資本は会社法の規定に基づき決定
ただし、株主資本の内訳をそのまま引き継ぐことも可

・親会社
子会社株式(存続会社)/子会社株式(消滅会社)
⇒消滅会社株式の簿価で仕訳

■子会社同士の合併-無対価合併
・子会社(吸収合併存続会社)
吸収合併消滅会社の株主資本の額を引き継ぐ

・親会社
対価ありのケースと同様


12.CF予算の必要性

■必要性
経理操作を行っても意味がない為、CF予算に基づく業績評価が企業グループのすべての部門に展開されることにより不正の芽を摘み、持続的成長を可能にする。


13.クロスボーダーM&Aの検討ポイント

日本企業が母国と言語、社会制度、商習慣、および法制度を全く異にする異国において安全かつ効率よく事業を始めるためには、
・事業フェーズごとに
・段階的に戦略をミックスし
・投資および事業リスクを抑えつつ
・事業ノウハウを構築
具体的にどのようなスキームを検討するかについては、当該国の会社法等の法制度、経済、社会など、当該市場をとりまく環境を勘案する


14.現物出資型による業績連動型株式報酬の長所と短所

4分類⇒各社状況に合わせて選択
A)初年度発行型orB)業績連動発行型&C)普通株式型orD)種類株式型の組合せ

A)初年度発行型vsB)業績連動発行型
A)初年度に債権付与⇒現物出資⇒RS付与、満了時に達成度に応じて譲渡制限解除
B)初年度に(達成度に応じて変動する)債権付与、満了時に現物出資
⇒株式付与

①税務
A)○一定要件化で事前確定届出給与
B)×事前確定届出給与にならない

②会計
前払費用 /資本(準備)
費用(損失)/前払費用

A)○株価上昇しても費用計上額は当初で確定
⇔×業績未達成時にも損失処理は回避不可

B)×株価上昇すると費用処理額も上昇
⇔○業績未達成時には損失処理額は圧縮

③適時開示
A)×初年度付与時に増加
B)○期間終了時に増加

④ガバナンス
A)×未達成時点でも一律(暫定)付与
B)○達成時点で付与

⑤業績評価期間中の管理負担
A)×達成に応じて制限解除⇒期中管理必要
B)○達成時点で付与⇒期中管理不要

C)普通株式型VSD)種類株式型
⑥導入手続の負担
C)○特に手続き負担なし
D)×原則、定款変更のための特別決議が必要

⑦種類株主総会の負担
D)×他の種類株主への影響がある場合、+種類株主決議が必要


15.事業再生の現実 3/4

(1)事業譲渡と会社分割の比較

(事業譲渡)
・公告不要。
・権利、義務の承継は個別承継。
・労働者との契約は新たに結び直す必要あり。

(会社分割)
・公告が必要。
・権利、義務は基本的に自動承継だが、会社分割を解約要件にしている契約もある
(賃貸借契約など)。
・許認可は基本的に引き継げる(特に酒造など新規の許認可が基本的に降りない業者は死活問題)。

(2)不動産流通税優遇措置 要件
・分割の対価が株式のみ
・分割事業の主要な資産負債が承継会社に移転
・事業は引き続き営まれる
・従業員の概ね80%以上が引き続き事業に従事。

(3)資産負債見合型
・事業に関連する資産、負債のみを第二会社に移す際、資本金が1億円超になると、外形標準課税にひっかかる。
・そこで、「事業に関連しない負債」もあえて第二会社に移すケースも多い。
⇒ 債権者にとっては元の会社から返済を受けるか、第二会社から返済を受けるだけで変わりなし。


16.ショートレビューによる事業計画と予算管理の主なチェックポイント

・予算の立案、決定に当たり、社内手続きがとられているか?
⇒予算管理規程を整備し、承認権限等について社内ルールを明確にする必要がある。

・総合予算となっているか?
⇒総合予算として見積BSPLCF計算書が含まれた予算を作成する必要がある。
⇒一般的に中期計画として3事業年度の予算を作成する必要がある。

・予算の月次展開が行われているか?
⇒年次や四半期単位ではなく、月次での予算を作成する必要がある。

・予算に対する実績の乖離範囲をどの程度まで許容し、修正予算を作成しているか?
⇒上場会社の業績予想では、直近公表の予想値と比較して、新たに算出した予想値が、
1)売上高については±10%以上
2)経常利益または税引利益については±30%以上

の増減がある場合には適時開示にて業績予想修正する必要がある。









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2016年9月17日土曜日

9/16 勉強会:積立NISA、平成31年1月から制度導入へ 他

1.29年改正、RSSOの整合性がテーマに

■平成29年度改正で検討が予想される事項
・リストリクテッド・ストック(RS)とストック・オプション(SO)の課税関係の統一

RSは平成28年度改正で法人税法上「事前確定給与」として損金算入OK
 所得税は譲渡制限解除日にその時点の時価を課税対象に

・平成29年度改正で、SOも一定の要件を満たせば法人税法上「事前確定給与」として損金算入できるようになるのでは?
⇒現行法人税法上は、付与された者に所得税課税が行われた場合には、発行法人側で損金算入できるとされている


2.「PS」「利子」「PE」に関するディスカッションドラフト(DD)のポイント

PS(利益分割法)DD
PS法の適用になる取引について
国外関連取引において当事者が「経済的に重要なリスクのシェア」をしている場合
(1)「高度に統合された事業活動」に従事している場合
⇒バリューチェーンの中で、関連者間に並行統合(≒水平統合)がある場合

(適用される可能性があるケース)
日本は開発・製造、海外子会社は無形資産の改善活動等

(不適用になる可能性のあるケース)
日本は開発・製造⇒海外子会社は販社

(2)「ユニークで価値ある貢献」を行っている場合
⇒不明確のため省略


3.情報すり合わせで調書未提出者に働きかけ

■富裕層対策(調書制度)に関するインタビュー
・調書制度などの導入や海外との租税条約等に基づく情報交換制度を活用していく方針
・調書の未提出者に対しては、様々な情報をすり合せた上で、接触すべき又は調査すべきと考えられる案件があれば働きかけ


4.還付加算金は一種の利子、雑所得に該当

下記が争われた審判
(1)課税処分に係る取消訴訟の勝訴によって還付された還付加算金が損害賠償金と同様、非課税に該当するか否か
(2)取消訴訟に係る弁護士費用は還付加算金に係る雑所得の金額の計算上、必要経費に該当するか否か

審判所の判断
(1)還付加算金は、非課税所得に該当しない(雑所得に該当)
・理由
非課税とされる損害賠償金等は(A)and(B)であるもの
(A)納税者に損害が現実に生じor生じることが確実に見込まれる
(B)その補填のために支払われる
⇒還付加算金は、損害補填のために支払われたものではない
還付加算金は、還付金等に対する一種の利子の性質を有するもの

(2)今回の弁護士費用は必要経費に該当しない
・理由
必要経費となるのは、総収入金額を得るため直接に要した費用
⇒今回は課税処分の取り消しを求めたもので、還付加算金の取得を目的としていない


5.積立NISA、平成311月から制度導入へ

平成29年度税制改正要望で積立NISAの設立が注目されている。

■現行NISA
・毎年新規投資額120万円×5年間(計600万円)、配当・譲渡益が非課税となる制度
5年経過すると、保有資産は原則課税口座へ払い出されるが、翌年の枠を利用してNISAで保有し続けることも可能

■積立NISA(イメージ)
・毎年新規投資額60万円×20年間
・定額で投資(積立)を行うものに限定
・現行NISAとは選択式とする


6.非適格現物出資(DES)(現物出資法人)

■事例
A(現物出資法人)B(被現物出資法人)に対して貸付金()を非適格現物出資
()債権者:A社、債務者:B社、簿価100、時価20

(A社における会計上の処理)
()B社株式 100 / ()貸付金 100

A社における税務上の処理
()B社株式 20(1) / ()貸付金 100
()債権譲渡損80/
(1)非適格現物出資の為、時価で譲渡したものとして計算
取得価額=払込み金銭等の額20+払込みのために要した費用の額020

A社における修正処理
()債権譲渡損 80 / ()B社株式 80

A社における別表調整
・別表四 減算/留保「債権譲渡損計上漏れ」80
・別表五()(Ⅰ利益積立金額の計算明細) 減算「B社株式」80


7.現物出資の適格性巡る事案が訴訟に発展

■事案
・税制適格として現物出資したが、税務当局は非適格現物出資と認定
・事前照会では「適格現物出資」と回答も、回答に反する処分(非適格現物出資)が下された。
・「信義則の法理」の適用により違法ではとの主張も、審判所は重大な相違点があった場合は適用されないと審査請求を棄却していた

上記を踏まえ、原告は訴訟を提起した。

※参考
税務調査から訴訟までの流れは?
「申告」→「税務調査」→「更正処分」→「異議申立」→「審査請求」→「訴訟」

・更正処分→異議申立・審査請求:更正処分の決定後2月以内
・異議申立→審査請求:異議申立の決定後1月以内
・審査請求→訴訟:審査請求の裁決後6月以内


8.今週の専門用語

【有償ストック・オプション】
・発行時に時価相当額を払い込むSO
・会計上、払込金額を新株予約権として計上し、権利行使時に資本に振り替えられる(PL影響なし)。
※無償SOは、報酬(労働サービス提供に対する対価)として費用計上される
・ただし、今後は有償SOも無償SOと同様に費用計上が求められる方向へ


9.消費税:延払基準と特定期間に係る課税売上高

■延払基準採用時の課税売上計上時期
法人税申告で延払基準を採用している場合には、賦払金の支払の都度、課税売上を認識する

■特定期間に係る課税売上高との関係
賦払期日が特定期間内にあるものは特定期間の課税売上となる

■設例
(1)12月決算法人(特定期間は前年1/16/30
(2)前々年に長期割賦販売100万を行った(5/年1回20万分割払)
(3)特定期間における課税売上高990

ケース1:賦払日が6/30の場合
6/30に割賦売上20万が計上される(特定期間売上1,010万)のため当期納税義務あり

ケース2:賦払日が9/30の場合
9/30に割賦売上20万が計上される(特定期間売上990万)のため当期納税義務なし


10.バリュエーション/ディスカウントとプレミアム

・コントロールプレミアムがいくらなのかはケースバイケースですが、KPMGM&A survey によると国内案件の場合、上場・非上場ともに5割近くの案件が10%未満のプレミアムでした。


11.建設業における税務調査のポイント

1.完成工事高関係
・売上計上すべき基準を満たしているのに、未検収等の理由で引き渡し未了として売上を繰延べていないか。
・本体工事が完了しているのに、追加工事等が完了していない等の理由で引き渡し未了として売上を繰り延べていないか。
・翌期完成の赤字工事を利益減少のため繰り上げ計上していないか。

2.労務費関係
・工事現場の人員配置図、タイムカード、残業等明細書、作業日報の内容を確認し、架空人件費を計上していないか。

3.棚卸関係
・仕損じ品やスクラップ等の計上が適切に計上しているか。

4.交際費関係
・架空外注費を計上して、受注謝礼金等が支払われていないか。
・サービス工事の中に交際費とすべき内容が含まれていないか。


12.2段階買収でのスクイーズアウト時の論点。株式取得価格をめぐる最高裁決定の概要と実務への影響

2段階買収
(1) 公開買付
(2) 発行済株式を全部取得条項付種類株式として、全株取得
⇒事例では、(1)時点の価格と(2)時点の価格が異なっていた

■最高裁決定
公開買付が「一般に公正と認められる手続」により行われる場合には、その後のスクイーズアウトに際して株主に交付される価格も公開買付価格と同額とすべき

■趣旨
株主に対する強圧性へ配慮

■「一般に公正と認められる手続」とは
会社法、金融商品取引法等の制定法に従っていることに限定しない。
MBO指針や金融商品取引所の規制に基づきor準じて適切な措置
独立した第三者委員会や専門家(弁護士や株式価値評価の専門家)の意見の聴取なども例示


13.支店移転決定と固定資産の減損会計

■前提
・自社保有の支店の土地建物を処分し、賃借物件へ移転予定
・移転の取締役会決議は四半期決算日後

■留意点
・自社保有の支店の土地建物について減損の兆候に該当する為、減損損失を認識するかどうかの判定を行う必要がある
(使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合に該当する為)

・取締役会決議の意思決定が決算日後でも、期末日時点の状況から移転が明らかであり、意思決定自体が単に期末日後になったにすぎない場合は、減損損失が測定されるのであれば修正後発事象に該当する

・取締役会決議の意思決定が期末日後の環境変化に対応したものである場合は、開示後発事象として注記要否を検討する


14.毎年の税制改正の流れと平成29年度税制改正要望

■流れ
夏~秋:各種業界団体や各府省庁から改正要望が公表される
11月頃:政府税制調査会から税制改正の方向性が提言される
12月頃:与党の税制調査会により税制改正大綱が公表される
1月頃:改正法案が国会に提出され審議
3月頃:可決されると改正法令として公布

■平成29年度税制改正要望(主なもの)
【中小法人税制】
・外形標準課税の適用拡大
・欠損金繰越控除の制限
・減価償却方法を定額法へ統一
【法人税】
・賞与引当金、退職給付引当金の損金算入容認
・貸倒引当金の損金算入見直し
・役員給与の損金算入要件緩和
・受取配当金の全額益金不算入
・留保金課税制度全廃
・寄付金の損金算入拡大
・少額減価償却資産の取得価額基準引き上げ
・欠損金繰越控除の制限撤廃、繰り戻し還付制度の全面復活
・完全子法人等からの受取配当等の源泉徴収の廃止
【消費税】
・基準期間制度の廃止
・消費税の申告期限延長の容認


15.平成283月期 有価証券報告書分析

■マイナス金利関連
割引率の利回りについて、マイナスとなっている場合、そのまま、あるいはゼロを下限としていずれも可
(1) 退職給付(割引率)
・マイナス(6社)、ゼロ(19社)、ゼロ超(168社)
(2) 資産除去債務(割引率)
・マイナス(1社)、ゼロ(10社)、ゼロ超(31社)
(3) ストック・オプション(無リスク利子率)
・マイナス(6社)、ゼロ(2社)、ゼロ超(60社)

■退職給付会計
数理計算上の計算基礎の開示項目が追加され3期目となった
(1)開示項目数
大きな増減はないが、開示項目数が2個(59%)、3個(39%)が大半を占める
(2)基礎率の内訳
・割引率(100%
・長期期待運用収益率(97%
・予想昇給率(40%


16.H28.3有報分析:税効果関連

■関連する改正
・法人税等の引下げ
・繰欠控除の制限見直し 他

■注記
(強制)法人税等変更によるDTA/DTLの修正⇒その旨及び修正額
(重要性)繰欠に係るDTAの回収可能性に影響⇒その旨及び影響額

■事例分析
①⇒分析対象の全社が開示(連結)
+②⇒分析対象の8%が開示(連結)


17.H28.3有報分析:結合基準等

■関連する改正
・支配継続親会社の持分変動による差額の処理
・取得関連費用の取扱い
・暫定的な会計処理の確定時における取扱い
・表示科目の変更 他

■処理
(原則)遡及適用+期首剰余金で調整
(容認)将来に渡って適用

■事例分析
①⇒分析対象の8%が採用、全社影響額まで開示
②⇒分析対象の92%が採用


18.会計監査の信頼性確保に向けた日本公認会計士協会の取り組み

・監査法人のガバナンスコード導入
⇒ 上場企業と同じく、監査法人の経営の透明性を確保。

・監査報告書の情報提供機能強化
⇒ 監査上の重要な事項を記載。
⇒ イギリスのロールスロイス社の監査報告書は、非常に詳細な事例として注目された。
⇒ 会社が公表していない情報を含めてよいか、など今後の検討課題。

・監査人の交代理由を開示
⇒ 会計処理に対する意見の違い、など。
⇒ 実効性があるかどうか、要検討。

・監査法人のローテーション、監査の品質指標の導入

・協会の品質管理レビューの強化
⇒ 専門性の高いレビューアーの確保など

・諸外国に比較して短い監査期間の見直し
⇒ 日本42.5日、米国57.8日、カナダ60.6日、イギリス76.7日…
⇒ 「速報」であるはずの決算短信よりも監査報告書の発行日が早いケースが、上場企業の約4割。
⇒ そもそも「決算短信」「会社法」「金商法」の3つの開示制度の一元化も議論されるべき。
⇒ 総会開催も、他国では約120日後に対して、日本は3ヶ月以内と短い。


19.ショートレビューによるコーポレート・ガバナンスの主なチェックポイント

・株主総会、取締役会は適切に運営されているか?
⇒議事録が適切に作成され、保管されている必要がある。
⇒取締役会を設置していない場合、遅くとも直前期の期首時点では取締役会が設置されている必要がある。

・監査役監査は有効に機能しているか?
⇒直近1年間は有効に機能している必要がある。
⇒一般的に最低2名でうち1名は常勤であることと言われている。

・内部監査は有効に機能しているか?
⇒直近1年間は有効に機能している必要がある。
⇒自己監査とならないよう、専任の担当者を設けるか、複数名の兼務者により、自己の業務以外の監査を実施する必要がある。

・稟議制度が整備され、適切に運用されているか?

⇒稟議制度を整備し、社内での決裁や意思決定が適時・適切に行われたことを明確にする必要がある。









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