2017年8月25日金曜日

8/25 勉強会:Q&Aで読み解く収益認識会計基準案 他

1.Q&Aで読み解く収益認識会計基準案

※実務への影響が大なので注意が必要!!
・適用はいつから?(3月決算)
H3341日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から
 早期適用は、H3041日以後開始する事業年度の期首から

・経過措置はあるか?
⇒適用初年度においては、原則として過去の期間のすべてに遡及適用することになっているが、適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することが認められる

・会社法上の大会社も対象か?
⇒対象となる。また個別FSにも適用されるため、非連結財務諸表作成会社にも適用される

・中小企業は対象か?
⇒対象外。自ら適用することは可能

■その他
・一定の要件を満たせば、従来とほぼ同様の工事進行基準を適用できる
・割賦販売は販売時に一括計上
・ポイント引当金は計上できない
・返品調整引当金の計上ができず、予想される返品部分は収益を認識しない
・売上リベート分は最初に減額=収益認識しない
・消費税の税込方式は採用不可


2.ヤフー・IDCFに続く否認事例が訴訟に

(1)法人税法上、欠損金の引継ぎのみを目的とした適格合併が行われることを防止する為、合併を行う際、「一定期間の支配関係」or「みなし共同事業要件」を満たさない場合、欠損金の引継ぎを制限

(2)本事例では、原告と原告が吸収合併した旧子会社(未処理欠損金あり)の間には5年以上の支配関係があった(上記要件を形式的に満たしていた)が、一方で、吸収合併と同日に旧子会社の事業が新子会社に引き継がれた(しかも、新子会社と旧子会社の名称や役員が同じ)
⇒課税当局は法人税法上132条の2を適用し、当該欠損金の引継ぎを否認
⇒国税不服審判所も「税法の濫用=租税回避」という考え※に基づいて、上記課税処分を支持
※ヤフー・IDCF事件の最高裁判決で示された見解(濫用基準)

(3)1回弁論が171月に開催されて以来、既に4回の弁論が済んでいるが、来年にも判決が下される可能性あり
⇒ヤフー・IDCF事件に続く、法人税法132条の2による否認事案に関する2つ目の判決となり得る

3.海外当局への情報交換要請巡り国家賠償法上の違法を認めず

■事例
・日本在住の両親の税務調査に対する反面調査
・国外在住の息子(原告)が海外当局より情報提供を求められた
・税務当局が海外当局に情報要請をしたことにつき、その要請が違法ではないかと裁判をおこした

■争点
・原告に対する海外当局の情報要請の取消しを請求。
・海外当局への情報交換要請は国家賠償上の違法ではないか

■情報要請の取消しの請求
租税条約において、税務当局が国内で入手できる情報だけでは事実関係を十分に解明できない場合、条約等の相手国・地域の税務当局に必要な情報の収集・提供を要請することができる。
⇒抗告訴訟の対象となる行政処分にはあたらないため不適法として却下

■国家賠償上の違法か否か
租税条約に基づく情報交換要請行為は、日本において「必要があるとき」の下で必要に応じて行っている。また税務職員は情報要請を行うべき職務上の法的義務を負っている
⇒税務職員は原告の資金や株式の移動の全容を把握する必要があり、税務当局が海外当局に要請した情報は、社会通念上相当な限度を逸脱していたとは認められない。

以上より、裁判所は情報要請の取消しの訴えを却下し、海外当局の情報要請も必要性及び租税条約上の要件に沿って行ったとものであるため、国家賠償法上の違法はないと判断した。

4.滞納整理に係る原告訴訟は国側敗訴ゼロ

H28年の新規発生滞納額は6,221億円(昨年比▲650億円)
・発生割合は1.08%で過去最低
・滞納整理済額(7,024億円)が新規発生額(6,221億円)を上回る
・滞納整理の原告訴訟を154件起こし、国側の敗訴はゼロ
・財産の隠ぺい等の悪質事案で7人告発し、4人に有罪判決

5.未払い残業代の一括支給にかかる税務

■所得税
支給形態により取扱いが異なる
1)一時金として支給した場合
賞与と同様に支給年分の給与所得として処理
2)過年分の給与として支給した場合
本来支給されるべき年分の給与所得として処理
⇒年末調整のやり直しが必要

■法人税
支給形態に関係なく支給した期の費用として損金算入
⇒支給額の決定が当期であるため、当期に「債務確定」したものと
される

■社会保険料
賞与を支給した場合と同様の処理を行うのが一般的
なお、過年度分の支払とする場合、3年以上前の期間の保険料は納められないので注意が必要(保険料の納付は2年で時効となるため)

6.東京高裁 退職手当の収入すべき時期を巡り納税者の請求棄却

■事例
平成16年免職処分、同処分を不服とする訴訟を提起
退職手当の受領を拒否(支給総額1,400万円、源泉270万円)、東京法務局へ供託される
平成24年同訴訟が終結、本件退職手当を受領
退職手当を平成24年分の所得とし計算、還付約270万円と申告

■争点
本件退職手当は、所得金額の計算上、平成16年と平成24年のいずれの収入すべき金額となるか。

■結論
退職手当は、平成16年分の退職所得であり、平成24年分のではない。
したがって、平成24年分の確定申告では270万円の源泉は差し引けない。

■論拠
権利確定主義を根拠とする。
・免職処分の存在という事実関係が外観上存在
・東京法務局に退職手当の供託の時点で、権利は一応実現したことが客観的に認識できる

※権利確定主義とは
現実の収入がなくても、その収入の原因となる権利が確定した場合には、その時点で所得の実現があったものとしてその権利確定の時期の属する年分の課税所得を計算するという考え方

7.独立販売価格

Step1:顧客との契約の識別
Step2:契約に含まれる別個の履行義務の識別
Step3:取引価格の算定
Step4:価格の各履行義務への配分
Step5:履行義務の充足時点での収益の認識

Step3で決定した取引価格は独立販売価格の比率に基づいて各履行義務に配布する
・独立販売価格=独立して企業が顧客に販売する場合の価格
・過去に単独販売したことがあればその価格が指標となる
・独立販売価格が算定出来ない場合は見積りが必要となる

8.繰延税金資産に関する見積もりのポイント

■ポイント⇒以下を合理的に説明できるように
・スケジューリング
・事業計画

■事業計画の合理性
・過去の達成度合い
・予実分析の合理性

■資料準備
・過去の計画と実績を比較した分析表
・当期実績と来期計画の増減状況を説明した表などを作成

9.固定資産の減損会計における見積りのポイント

■資産のグルーピング
・資産のグルーピングは、他の資産又は資産グループのCFから概ね独立したCFを生み出す最少の単位で行うべきところ、グル―ピンを大きな単位で設定しているような場合はその合理性を主張するに足る使用実績や使用計画等について十分な資料の準備が必要。

■減損の兆候
・業績が回復基調であることをもって、減損の兆候に該当しないとすることは出来ない。
 あくまで、過去2期がマイナスであった場合等は、減損の兆候は識別し、減損損失の認識の判定における将来CFの見積りの中で回復基調である状況を加味することが適切。

■減損損失の認識の判定
・資産グループの事業計画と、全社の事業計画との整合性を確認する。

■減損損失の測定
・正味売却価額:不動産鑑定士の鑑定評価等に基づいているか。
・使用価値:割引前将来CFを割り引く際の割引率が妥当か。


10.コーポレート・ガバナンスに関する対応状況

■相談役・顧問制度
本年6月総会で注目された議案に、相談役・顧問等を廃止する旨の定款変更議案
・武田薬品工業では30.51%の賛成率(株主提案としては高い賛成率)
・議決権行使助言会社が相談役制度を新設する定款変更議案に反対を推奨した旨の基準を追加
・来年初頭を目途に、退任した社長が相談役・顧問に就任する場合は、氏名等を開示する制度を実施
・事例として、阪急阪神HD、日清紡HDは廃止
・背景として、現経営陣への不当な影響力を懸念する一方で、財界活動等、一定時間をかけて後任へ引継ぎを行う利益もある


11.事業拡大時の減損会計の見直しポイント

■事例
卸のみ⇒卸+小売に拡大

■ポイント
(1)グルーピング
通常、増加資産や生じるキャッシュは小売店舗単位で把握可能⇒本社ビル・小売店舗単位
ただ、エリアマネジメントの実施等⇒エリアに属す複数店舗を集約した単位※
※各店舗のキャッシュが相殺され、本来の減損が顕在化しない可能性に注意

(2)経費の負担基準~将来キャッシュの見積もり~
本社経費や事業別の各本部経費の合理的な賦課・配賦基準の策定が必要

(3)新規事業の合理的計画~早期に減損しないために~
予め合理的な事業計画があれば、減損の兆候※に該当せず(一定の要件有)
※初期投資は黒字化までに期間を要する(2期連続損失⇒減損兆候)


12.のれんの評価に関する見積もりのポイント

のれん計上および評価時のポイント
・取得原価の妥当性
⇒事業計画の実現可能性・合理性、実行可能性等が高いかどうか
・取得原価の配分
⇒のれん以外の無形固定資産に配分している場合は、金額に合理性があるか
・償却年数の妥当性
⇒買収時にどのくらいの期間で投資回収を見込んでいるかが重要
・減損の兆候の識別
⇒通常の固定資産と同じ判定が行われるが、営業損益が継続して黒字であっても事業計画と実績が下方乖離、計画の下方修正、経営環境に大幅な変動が生じた場合に減損の兆候ありと考えられる。


13.平成29年度税制改正 法人税関係

(確定申告書の提出期限の延長の特例)
・定時株主総会が、決算が3ヶ月以内に開催されない場合、申告書の提出期限を最大で決算から4ヶ月以内にすることが出来る。
※定時株主総会を、決算から4ヶ月以内に開催する会社に合わせての改正。

(役員給与等)
・業績連動給与の指標に、株価や売上高が追加。
・業績連動給与として、株式または新株予約権による給与が追加。
・定期同額給与の判定で、「源泉税後の金額が同額」であることが同額とみなされることになった。

(納税地の異動)
・移動後の納税地の所轄税務署長への提出が不要とされた。

(設立の届出の添付書類)
・登記事項証明書の添付が不要とされた。

14.市場変更基準(マザーズから一部、二部)

1.マザーズ⇒一部
主に以下の(A)又は(B)に適合すること。
A
・株主数:2,200人以上
・流通株式:数⇒2万単位以上、かつ時価総額⇒20億円以上、かつ比率⇒35%以上
・時価総額⇒40億円以上
・純資産額⇒(連結)10億円以上、かつ、単体純資産の額がマイナスでないこと
・利益の額⇒直近2年間の利益の額の総額が5億円以上
・虚偽記載又は不適正意見等⇒直近5年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし、直近5年間「無限定適正」または「除外事項を付した限定付適正」

B
・株主数:2,200人以上
・流通株式:数⇒2万単位以上、かつ時価総額⇒10億円以上、かつ比率⇒35%以上
・時価総額⇒250億円以上
・純資産額⇒(連結)10億円以上、かつ、単体純資産の額がマイナスでないこと
・利益の額⇒直近2年間の利益の額の総額が5億円以上
・虚偽記載又は不適正意見等⇒直近2年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし、過去2年間(直近1年間を除く)の財務諸表等の監査意見が「無限定適正」又は「除外事項を付した限定付適正」、直近1年間の財務諸表等の監査意見が原則として「無限定適正」

2.マザーズ⇒二部
・株主数:800人以上
・流通株式:数⇒4,000単位以上、かつ時価総額⇒10億円以上、かつ比率⇒30%以上
・時価総額⇒20億円以上
・純資産額⇒(連結)10億円以上、かつ、単体純資産の額がマイナスでないこと
・利益の額⇒直近2年間の利益の額の総額が5億円以上
・虚偽記載又は不適正意見等⇒直近2年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし、過去2年間(直近1年間を除く)の財務諸表等の監査意見が「無限定適正」又は「除外事項を付した限定付適正」、直近1年間の財務諸表等の監査意見が原則として「無限定適正」









◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

2017年8月19日土曜日

8/18 勉強会:移転価格文書化制度の概要と日系企業におけるLF管理の重要性 他

1.給与とは別の委託料は消費税の課税対象

■勤務先法人から給与とは別に調理場委託料を受領していた請求人(ホテルの料理長)の業務は消費税の対象か
・請求人はホテルの調理場で料理長として勤務
・給与とは別に「調理場委託料」を毎月受領
・各料理人ごとの給与額等を計算したうえで各料理人に対して調理場委託料から給与を渡していた

■判断根拠
・本件法人は各料理人の採否の決定に関与していないこと
・請求人は各料理人を採用するに当たり人材派遣会社を利用することがあったこと
・本件法人は各料理人の出勤状況について請求人から報告を受けていなかったこと
・本件法人は各料理人の給与の計算等に関し請求人に具体的な指示をしていなかったこと

■判断
・請求人は独立の立場で、反復、継続して各料理人を雇って本件調理場を運営していたと認定
・請求人は個人事業者に該当および調理場運営業務は消費税法上の「事業」に該当すると判断
・請求人による調理場運営業務は勤務先法人との雇用契約に基づく料理長としての業務に含まれず


2.PSU、株価上昇時には損金算入額も拡大

・PSU(パフォーマンス・シェア・ユニット)
まずポイント(ユニット)を付与し、評価期間(業績等)終了後に評価の結果に応じてポイント数を変動させ、当該ポイントに応じた株式を交付する株式報酬

・会計上、株式交付時の時価(×最終交付数)に基づいて費用計上
・税務上、業績連動給与として損金経理を要件に損金算入可
⇒株価の上昇が見込まれる場合、課税上のメリットも大きい


3.農工法の対象業種の限定廃止、市町村の実施計画に対象を明記

農工法の改正があり、所得税の軽減措置特例の対象業種が拡大

■従来(高度成長期に制定)
個人が農地を譲渡する際、譲渡後に工業、道路貨物運送業、倉庫業、梱包業、卸売業を供する目的であれば、所得税の800万円の税額控除が適用された。

■改正後
譲渡後の使用目的が、上記の業種以外でも税額控除が適用される。
※なお対象業種は、各都道府県・市町村の実施計画等で定められる予定


4.仮想通貨、損益認識は売買契約の成立時

■検討内容
24時間体制で仮想通貨の取引が可能な場合、期末日のどの時点までの売却損益を当期の損益に取り込むべきか?

(1)売買契約の成立時点
(2)売買契約に基づき、取引が買手のネットワーク上に送信された時点
(3)取引情報が承認手続きを得た上でネットワーク残高に記録された時点
⇒「(1)売買契約の成立時点」とする方向
契約成立時点は業者ごとに異なる可能性があるものの、実務上の指針は必要と判断


5.法人税 使用人兼務役員と職制上の地位

■使用人兼務役員
・法人の役員のうち、使用人としての職制上の地位を有する者をいう
・常務や専務などの地位を有する役員は使用人兼務役員になれない

■常務や専務の地位が適正に付されたか否かが明確でない場合
・登記の有無だけでは判定されない
・取締役会の手続きを経ている場合⇒通常、使用人兼務役員とされない
・対外的に(名刺などで)常務や専務と記載⇒使用人兼務役員とされない可能性が高い
⇒中小企業では事実認定の領域になり、実質で判断することとなる。

6.外貨建預金を原資とした株式等購入は為替差損益を認識

・所得税法の考え方
⇒外貨建取引を行った場合には、取引の都度、為替換算を行い為替差損益を認識する
・居住者が外貨建預金を払い出して株式等を購入した場合
⇒外国通貨の取得時レートによる円換算と株式等の購入価額の円換算額の差額(為替差損益)を所得として認識する必要あり
 ※実務では申告不要であると誤認し、申告が漏れているケースが散見される、なかには税務調査で指摘されたケースもある

・国税庁の質疑応答事例で類似例も
⇒「預け入れていた外貨建預貯金を払い出して貸付用の建物を購入した場合の為替差損益の取扱い」が参考になる


7.有償支給取引

・製造業などで、発注元が外注先に材料を有償支給し、加工後に発注元が買い戻す取引
・従来の日本基準では売上と仕入を総額と純額のいずれで認識するかの定め無かった
・IFRSの規定を取り入れた収益認識基準案が適用となると判断基準が明らかになる
・「財に対する支配」とう観点で判断することになる、
・買い戻しを前提とした有償支給において、
 支給先:「財に対する支配」あり⇒総額表示
 支給先:「財に対する支配」なし⇒純額表示※加工費部分のみを収益認識

8.フェアネス・オピニオンの基礎知識と活用場面

■フェアネス・オピニオンとは
・評価結果に至る会社の経営判断を、独立の第三者が様々な観点から調査
・公正性について財務的見地から意見を表明するもの

■フェアネス・オピニオン業務と算定業務との差異
・フェアネス・オピニオン業務
(1) 経営者が意思決定をした取引金額が、財務的見地から「公正であるか否か」について意見を表明
(2) 依頼人が意思決定をするにあたり善管注意義務を果たしていることを示すための一資料として利用
・算定業務
(1) 投資意思決定等の参考地として評価額を算定する(意見を表明するものではない)
(2) 報告書は参考情報。内容を採用するかの経営判断は依頼人の責任下で行う

■フェアネス・オピニオンが有用な場面
・支配株主との取引等に該当するケース
・実質的に支配株主との取引と一体のケース
・複雑又は大規模な経営統合のケース
・株主により価値の判断が分かれ得るケース
・その他少数株主の保護が必要なケース


9.重加算税の賦課要件

Q購買担当者が、取引先担当者の要請に応じ、本来翌期に計上すべき費用を当期に計上した。これが税務調査で発覚した場合、税逃れの意図なく行った結果でも重加算税は免れないのか?

A従業員が税逃れの意図なく行った行為であっても、重加算税の適用対象となり得るので注意が必要。

⇒判例によれば、取引担当者の隠蔽・仮装による過少申告又は無申告がなされた事実を代表者が知らなくとも、重加算税賦課の要件は満たされる。
⇒納税者において過少申告を行う認識がなかったとしても重加算税の対象となる。


10.IRの現実と取り巻く環境

(1)企業内での地位低下が著しいIRセクション
・短期的な視点をもちプレーヤーが目立ち、このような投資家を相手にするのがIR担当者という位置づけ
・IRの目標、開示内容、どのような投資家に株主になってもらいたいか、投資家の懸念・期待を経営陣に伝えないまま、経営から遠い存在になっているケースも
(2)CGC対応時にも大きな役割の無かったIR担当者
・ほとんどの企業でIRの視点からはるかに遠い議論が行われた。
・少なくない数の日本企業の社長がIRへの関心が薄い
■投資家との建設的な対話に向けて
(1)オール・コンプライすれば対話免除?
・オール・コンプライすれば対話免除という誤解がある
(2)定量的な要件を満たせば反対票投じられない?
・例えば社外取締役が2名いても、社内取締役の数が増えれば比率は下がっていく


11.移転価格文書化制度の概要と日系企業におけるLF管理の重要性

■制度概要
移転価格に関する税務調査に必要な3文書の法制化(H28税制改正)。
(1)ローカルファイル(LF):具体的詳細な事実関係の説明資料。
(2)国別報告書(CbCReport)・マスターファイル(MF):グループ全体での事実関係の説明資料。

■LF管理の重要性
海外取引に関する税制については、海外子会社任せや、親会社が深く関わっていない日系企業が多い。
実際の課税判断はLFがキーとなるため、親会社の関与の必要性が高くなる。
※CbCR・MFは、テンプレートがあったり定性事項で済んだりと、リスク低。

■今後のLF管理のポイント
⇒従来の子会社単位での管理体制を主軸に、親会社の関与を深めていく形が効率的。
⇒子会社のLF作成期限設置、報告様式の統一化、親会社での税制知識強化が必要。
⇒3文書の整合性を保つ(税務調査アプローチの観点)。


12.超過収益力を考慮した非上場株式の減損判定

非上場会社の取得価額が超過収益力を考慮した価額となり、1株当たり純資産額を大きく超える金額になる予定です。
当該株式の決算ごとの減損処理要否の判定方法について教えてください。

・通常の場合
非上場株式は発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときに減損処理が必要。

・超過収益力を考慮した場合
会社の超過収益力を反映した価額が実質価額となる場合も想定されている。
ただし、「超過収益力を考慮した株式を取得した場合」に限定
当該評価の場合、財政状態の悪化がない場合でも超過収益力が見込めなくなり、実質価額が取得価額の50%程度を下回っている限り、減損処理が必要となる。
取得価額が第三者による評価または一般に認められた株価算定方式に基づいて決定された場合は、同じ方法で株式評価をしていくことが適切と考えられる。


13.平成29年度税制改正 法人税関係

(組織再編税制)
・分割法人が一社の場合、分割目的が「分割前から行っている事業を新たに設立した法人で行うこと」の場合、分割は適格分割とされることになった。
・持株割合が2/3以上の場合の吸収合併、株式交換については、金銭その他の資産の交付があっても、適格組織再編の対価要件を満たすこととされた。
・非適格株式交換等の際の資産の時価評価について、帳簿価額1,000万円未満の資産は対象外となった。
・支配関係のある法人間の分割型分割について、適格要件で、分割法人との支配関係の継続が不要とされた(被分割法人との支配関係の継続は必要)。
・営業権の償却について、月割計算を行うこととされた。


14.IT産業の上場審査

(1)特定商品及び特定顧客への依存
・多くの会社は、特定商品を不特定多数の顧客に対して提供するか、特定顧客へ多様なサービスを提供するというビジネスモデルを構築。
・必然的に特定商品及び特定顧客への依存度が高くなる傾向にあり。
⇒特定商品が収益を生まなくなった時、及び特定顧客との取引が解消された時のインパクトを最小限にとどめる体制が構築されているか確認される。
(ex.新商品の開発、新規取引先の開拓)

(2)セキュリティ対策
・顧客情報に接する機会が多い。
⇒顧客データベースへのアクセスを特定の者に限定、アクセス履歴を管理等、顧客情報が社外に漏れないような内部統制を構築しているか確認される。

(3)受注管理
・システム開発の特徴として、受注した段階では、依頼業務の全体像を把握することに困難を伴うことがある。
・全体像を把握していたとしても、その後、顧客の要求が変更になることも多々ある。
⇒適切な実行予算を適時に作成し、受注した業務の採算を常に管理することが重要。

(4)ソフトウェアの会計処理
⇒取引実態を把握し、適正に会計処理に反映させるための内部統制の構築が必要。








◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

2017年8月4日金曜日

8/4 勉強会:RSU、株価高騰でも損金額は決議時価額 他

1.償却資産税の見直し、当局内でも検討

■日税連、「平成30年度税制改正に関する建議書」のなかで、最重要建議・要望項目に「償却資産税の抜本的見直し」を新たに盛り込む
具体的には・・・
・償却資産の賦課期日を法人の決算日とすること
・申告期限を所得税および法人税の申告期限と一致させること
・税額確定方式を申告納税方式に変更すること



2.RSU、株価高騰でも損金額は決議時価額

■リストリクテッド・ストック
(1)事前交付型:事前に株式を交付し一定期間の譲渡制限を課す
⇒平成28年度税制改正により「事前確定届出給与」として損金算入可能となった。
(2)事後交付型:あらかじめ交付株式数を定めた上で一定の待機期間経過後に株式を交付
⇒平成29年度税制改正により「事前確定届出給与」として損金算入可能となった。

■事後交付型
・税法上:損金算入額はあくまで交付決議時の株価に基づき算定
・会計上:費用計上額は、交付時の株価に基づき算定
⇒交付決議時~交付時に株価の変動があれば、税法上の損金算入額と会計上の費用計上額に乖離が生じる。
例えば、交付時の株価が交付決議時の10倍となった場合であっても、交付決議時の株価までしか損金算入出来ない
・なお、IFRSでは、交付時の公正価値で費用計上する為、付与後の株価変動により乖離は生じない。
⇒日本の会計基準よりもIFRS(国際財務報告基準)の方が法人税法と整合的



3.遺産分割終了前に生活費の支払いが可能

民法等の改正に関する要綱案で、遺産分割に関する見直しとして仮払い制度を創設予定。

■背景
昨年の最高裁決定により、普通預金や預貯金等は相続開始と同時に遺産分割の対象となり、遺産分割が終了するまで預金が引き出しにくくなった。

■相続後に想定される諸費用
・被相続人の債務の弁済
・葬式費用の弁済
・相続人の生活費の支払い
⇒最高裁決定により、これらの諸費用を遺産分割終了前に相続財産から使用することが難しくなった

■仮払いを受けるには?
仮払いの必要があるか否かは家庭裁判所の判断による。
また他の共同相続人の利益を害しないことを条件とする。



4.仮想通貨、活発な市場があれば時価評価

■仮想通貨に係る会計上の取り扱い(案)
・取引が活発な仮想通貨については時価評価する
・取引の少ない通貨は取得原価基準に基づいて減損の要否を検討する

■活発な市場とは
・複数の仮想通貨交換業種が取扱っており、客観的に信頼性のある価額として時価が把握できる
・時価による売却、換金等の実現可能性がある

■時価の算定方法
・最も取引が活発な仮想通貨取引所や販売所における取引価額
⇒「活発な市場」の有無で取扱いを変えることは難しいという意見もあるが、9月頃に公開草案が発表される見込み



5.消費税 新設法人と工事進行基準

■Q
・資本金300万円(=初年度は免税)
・当期は2期目
・初年度上半期の売上1,000万円超(⇒当期は課税事業者)
・法人税では工事進行基準を採用

この場合の消費税の課税関係(工事進行基準の適用関係)は?

■A
初年度から工事進行基準を採用したものとして第2期の消費税を計算することができる

■解説
事業者が法人税において工事進行基準を採用している場合には工事進行基準により消費税を計算することができることとされている。ここでいう<事業者>には免税事業者も含まれることから、免税事業者期間である初年度においても工事進行基準を採用したものとして第2期の消費税を計算することができる。

<具体例>
・工事請負高 1,000
・1期目の進捗 50% 2期目の進捗100%(完成)
の場合、第2期の課税売上高は、
原則(完成基準)1,000
特例(工事進行基準)500⇒免税期間中に500、第2期に500完成したものとして計算できる



6.29年度改正通達で示された“功績倍率”の範囲とは?

法人税基本通達で功績倍率を、役員の職責に応じた倍率と定義
1.過去の判決で示されている同業類似法人の功績倍率
2.また例えば、自社で設定した功績倍率等も含まれる
⇒過大(不相当に高額)でなければ、原則損金算入

1.は把握は困難だが、過去国側が以下を参照し算定可能と主張したことがあるため、参考となる。
・財務省や国税庁が公表している「法人企業統計年報特集」や「民間給与実態統計調査」
・税務関係の雑誌(税務通信)の記事、書籍等の資料



7.消えるポイント引当金

・従来の日本の会計実務では「ポイント引当金」として引当計上
・7/20に公表された収益認識基準案により、今後は処理が大きく変わる
 ⇒引当計上は不可となる。
・付与ポイント分、収益は繰り延べて(負債計上)、ポイントが使用されたときに売上計上する
(例)5%のポイント付与、1,000円の商品を購入した場合
 従来基準:売上:1,000円 ポイント引当金:50円(全部行使されると想定)
  新基準:売上:950円 ポイント引当金:0円 将来ポイント利用時に売上:50



8.公共施設等運営事業の会計処理

(前提)
・道路、空港、水道、庁舎、教育文化施設等の公共施設等の運営を民間企業に委託するケースが増えている。

(会計処理)
・運営権者は、運営権の取得と同時に、支払う対価の総額を無形固定資産として計上。
※割引率を加味した現在価値で計上する。

・公共施設等運営権は、運営設定期間を耐用年数として定額法または定率法で償却する。

・更新投資についても無形固定資産に計上する。



9.反社チェック作業フロー例

1.資料入手・情報収集
・会社案内等
・決算書
・HP
・現地確認

2.外部調査機関への照会(帝国データバンク)

3.日経テレコンによる記事検索
・検索期間は全期間
・データベースは、地方紙や業界紙も範囲に含める
・調査対象会社名、代表者名をもとに、検索キーワードは暴力団、逮捕等を用いる
・必要に応じて、警察、検挙、釈放、書類送検、送検、捜査、家宅捜索、指名手配、摘発、臨検、過激派、金融犯罪、架空取引等を用いる
・検索漏れを防止するため、取引担当部署及び総務部でダブルチェックを行なう

4.インターネット検索(Yahoo、Google等)

5.関連法規への違反等がないか確認

6.「取引先調査票」の作成及び保存

1~6を定期的(年1回等)に実施






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供