2019年11月28日木曜日

9/27 勉強会:M&Aリスクに注意、統合報告書作成のための7項目、その他 他

1.株式交付の再編税制入りに高い関心

■株式交付とは(令和2年に施行予定)
・他社を子会社化するために他社の株式を譲り受ける。
株式の譲渡人に対しては、自社の株式を交付する。
100%子会社化までは意図していない場合にも使える点が株式交換と異なる。

■論点
・株式交付が株式交換の一類型として組織再編税制の一部とされた場合、
 適格株式交換の要件である完全支配関係の継続要件を満たさないとして非適格再編となり、
 対象会社において時価課税が生じてしまうと、全く利用されない恐れがある。



2.のれんの償却期間は10年を上限に

■のれんの償却
・減損のみモデル(米国、IFRS)では減損が適時に認識されていないのではという懸念

■基本的に10年を上限とするのが適切であるとする理由(ASBJ)
・10年を上限として「将来の正味キャッシュインフローが企業結合により増加すると見込まれる期間」とするのが適切
・企業結合の効果を10年超の期間で見込むことは稀であること
・米国基準における非公開企業向けの償却オプションで上限として10年が示されているのも論拠の一つ



3.令和元年度改正における法人税関係の通達を読む

「法人税基本通達等の一部改正について」改正事項。
■適用除外事業者の判定、修正申告等があれば変更後の金額で
平成31年4月1日以後に開始する事業年度から適用される、中小企業向けの租税特別措置の適用除外事業者であるかどうかの判定。
適用除外事業者に該当する事業年度については中小企業向けの租税特別措置の適用を停止。また、基準年度の修正申告により所得の金額が変更。再判定で基準年度の平均所得金額が15億円超になれば中小企業向け租特の適用はなし。

【判定基準】
判定対象年度終了時に確定申告の所得の金額で判定。
中小企業者のうち事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人を「適用除外事業者」と判定。




4.所得税と相続税の納税猶予では「譲渡」の解釈は別物

共有分割の結果、特例農地等の納税猶予の対象とされていた農地が農業相続人以外の相続人に移転したことが譲渡等に該当すると判断し納税猶予の期限を確定した国に対して、納付税額の返還等が求められていた事案
⇒「資産の譲渡と相続税の納税猶予制度の解釈は全く同一にしなければならないものではない」として納税者の請求を棄却した。

■事案
・法定相続人は4人、原告は唯一農業を営んでいた。
・被相続人は遺産全てを原告に相続する旨の公正証書遺言をした。
・被相続人は農業相続人のため特例農地等の納税猶予制度により原告は相続税を猶予された。
・原告以外の相続人が遺留分減殺請求訴訟を提起。本件農地の一部が所有権移転登記された。その農地の一部に原告の長男名義で農業施設を建設。
・最終的に共有持分の放棄を相互に行い、大半の農地を原告の単独所有とし、一定の農地を原告以外の相続人らの共有として和解した。
⇒農地の一部は農業相続人である原告の農業用に供されていないことになり、農業継続を目的とする相続税の猶予という観点で考えるべきで資産の譲渡と解釈が異なるとした。





5.税トレ:軽減税率<アルコール販売関連>

■アルコール販売関連Q
(1)お酒の販売は軽減税率制度の 対象?or対象外?
(2)食品の原材料としてのワインの販売は軽減税率制度の 対象? or対象外?
(3)料理に使用される本みりん(アルコール度数14度程度)の販売は軽減税率制度の 対象?or対象外?
(4)料理に使用されるみりん風調味料(アルコール度数1度未満)の販売は軽減税率制度の 対象?or対象外? 
(5)料理に使用される料理酒(アルコール度数10度程度。塩を加えて飲用できないように調整されている)の販売は
軽減税率制度の 対象?or対象外?

■A
(1)対象外
(2)対象外
「食品」の原材料となるワインなどであっても、酒税法に規定する酒類は、軽減税率の適用対象である「飲食料品」に該当せず、その販売は軽減税率の適用対象とならないこととされている。
(3)対象外
(4)対象
(5)対象
料理酒などの発酵調味料(アルコール分が1度以上であるものの塩などを加えることにより飲用できないようにしたもの)やみりん風調味料(アルコール分が1度未満のもの)については酒税法に規定する酒類に該当せず、「飲食料品」に該当し、その販売は軽減税率の適用対象となることとされている。





6.税務:申告書等閲覧サービスと写真撮影

過去に税務署へ提出した書類の控えを紛失等してしまった場合、
税務署の「申告書等閲覧サービス」を利用して閲覧することが可能。

・免許証等の本人確認書類が必須
・手数料かからない
・委任状があれば税理士も閲覧可能

従前まで、閲覧内容を手書きで書き写す方法しかなかったが、
6月末の改正でスマホ等により写真撮影が可能となった。
なお、動画撮影やコピーは取ることができない

※過去の申告書等の写しを取得する場合は、有料の開示請求手続きを行う必要あり


7.開示すべき重要な不備 2019年3月期に13社

・うち8件が不適切な会計処理等。
・特に、海外子会社における不適切な処理が多かった。
・(藤倉コンポジット(東一、ゴム製品)の例)
 内部通報を機に調査した結果、中国子会社で費用計上すべき一部経費のみ形状が発覚。
 過去5年間の有報を訂正、再提出。




8.M&Aリスクに注意、統合報告書作成のための7項目、その他

■M&Aリスクに注意
・経営者は短期的な売上・利益増大のために、M&Aを行おうとする。しかし、下記の問題がある。
①株主価値の毀損
⇒2,500社を調査したところ、60%の会社の株主価値が毀損した。
②明確なビジョンがない。
⇒400社の経営者を調査したところ、31%の者がM&Aの理解が不十分。DD不足。
③コンプライアンス
⇒300社の経営者・法務アドバイザーを調査したところ、56%が調査不十分。
④経済環境のリスク
⇒特に主要な人材の引き留め、従業員の再教育等の人材リスクが大きい。

■統合報告書作成のための7項目
①経営者及び取締役の支援を受けること
②企業の長期的価値の創造についてのストーリーを利害関係者に伝える
③年次決算書と異なる時期に報告書を作成する
④企業ストーリーを説明するための新たな方法
⑤企業の長期価値創造のために主要な要素を示す
⑥過剰な留意事項を示さない
⑦投資家の関心についての過小評価はしない

■ビジネスリスク
・欧州9か国の内部監査部門のトップによる年次報告会によると、サイバーセキュリティが最もリスクが高い。
以下、規制の変更、デジタル化と続く。
⇒今後5年以内に、気候変動リスクも主要なリスクとなると言われている。



トヨタ系「大豊工業」米子会社の不正で上場廃止の危機

・トヨタ自動車系の中堅部品メーカー大豊工業
・自動車用の軸受け製品やアルミダイカスト製品、自動車製造用の金型などを生産
・全額出資の米国子会社、TCAで不適切会計(※)が発覚、19年度1Q(4-6月)の報告書を期日とされた17日までに関東財務局に提出できなかったため
(※)15-18年の期末棚卸資産が約5億円、過大計上されている恐れ
・最終期限は30日。それでもダメなら整理銘柄に指定され、原則1カ月後に上場廃止
・大豊工業はTCAに対し、今年3月末時点で9.89億円を貸し付けているほか、債務保証も行っている。
・単体決算では保有株減損のほか、貸倒引当金や債務保証損失引当金の追加計上なども迫られる見通し。




10.IFRSと日本基準_法人所得税

IFRSの法人所得税と日本基準の法人税等の税金の範囲実質的な差異なし
→税効果会計の基本的な考え方も共通している

・将来減算一時差異
IFRS:評価性引当の概念なし(回収可能性がある金額を直接計上) 
日本基準:一旦繰延税金資産を計上し、判定結果に応じて評価性引当金を計上(二段階アプローチ)
→日本基準の方が、ひと手間多い

・財務諸表における表示
IFRS:当期税金と繰延税金を合算して税金費用として包括利益計算書で表示
日本基準:法人税等と法人税等調整額に区分して表示
→IFRSでは注記で内訳を開示

・連結上の未実現損益消去に係る税効果
IFRS:回収可能性の検討が必要
日本基準:回収可能性の検討は不要
→IFRSの方がひと手間多い




11.消費税率引上げを「またぐ」取引に留意

■売上計上方法で適用税率が異なることも
①経過措置の適用がない取引(棚卸資産の譲渡)
・9月29日に店頭で商品を引き渡している場合 ⇒ 旧税率(8%)適用
・販売した商品を10月以降に別送する場合(店頭での販売時に継続的に売上計上場合)
 ⇒ 旧税率(8%)適用

②通信販売
・発送基準により売上計上の場合 ⇒ 発送が9月30日なら同日に売上計上し、旧税率(8%)適用
・着荷基準により売上計上の場合 ⇒ 商品の到着が10月3日なら同日に売上計上し、新税率(10%)適用


















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9/20 勉強会:機械装置に埋め込まれたソフトウェアの処理 他

1.フリンジベネフィット開示に変化の兆し

・フリンジベネフィット(役員に対する経済的利益)開示が注目を集めている。
・現行実務では、フリンジベネフィットを会社法上の役員報酬とするかは、
 税務上で役員給与として課税対象となるかどうかにより判断している。
⇒税務上役員給与とならない場合は、会社法上も役員給与とせず、有報での開示もしないことになる。

・米国では従来からフリンジベネフィットの開示が義務付けられている。
・欧州でも今年、フリンジベネフィットに関するガイドラインが公表された。
⇒日本でも欧米並みの開示実務が広がる可能性がある。



2.土地の相続税評価における「特別の事情」の存否(鑑定額と相続後売却価額の正否)

■事例(金額は意図的に丸めている)
・相続財産の評価=財産評価基本通達で評価(路線価方式):30,000円/㎡
・別途鑑定評価を依頼&実際に相続後に売却:20,000円/㎡
(原告=本件相続人の主張)
・評価通達による評価方法を画一に使用=時価を超えてしまう(著しい乖離)。
・評価通達に規定する評価方法によるべきでない「特別の事情」が認められるのでは?

■結論:棄却(東京地裁)
・恣意的に売却価額を引き下げることも可能
・売却までの期間の長さ等を考えて、相続税算定に使用する時価(相続発生時点の時価)と乖離が出るのは仕方ない
・鑑定評価=不動産鑑定士が報酬を得て行うので納税者有利の評価が行われているのではという疑念あり
・実際の裁判例でも、鑑定評価よりも評価通達に基づく評価額の合理性を安易に強調する傾向あり



3.顧問契約解除で報酬請求、税理士勝訴

■事案
・顧問税理士が、簡易課税制度の適用要件等について説明がなかったことなどの行為を踏まえて契約を解除。
・顧問契約の解除は、契約に基づく解約申入期間(6ヶ月)の経過後。
・顧問契約上の債務不履行になるとし、顧問契約は解除と同時に終了したから、解除後の顧問報酬の発生がないと主張。
・解除後の顧問報酬について争われた。

■税理士側の主張
・税務処理に関与した時点で簡易課税制度の届出期間を過ぎていた
・飲食店経営につき親会社から業務委託方式をとっているため、簡易課税制度を適用すると二重に経費を控除することになってしまうことから、租税回避とならない範囲で決算案を作成。

■判決
・税理士の簡易課税選択の対応は専門家の判断として相当と評価。
・税理士の行為が顧問契約の債務不履行にあたるということはできないと判断し、税理士の報酬請求を容認。
⇒簡易課税制度の適用を受けることができないことは明らかだった。
⇒業務委託方式を前提とする限り、今後も簡易課税制度の適用を受けることはできないとし、そのことについて数種類の決算案を作成し、説明もしている。



4.本税の更正処分取消しでも重加算税が課される理由は

・東京地裁は法人税更正処分取消し判決が確定した原告が、重加算税相当額の還付及び還付加算金の求めていた事案について、重加算税賦課決定処分に無効事由は認められないと判示し、原告の請求を棄却した。
■論点
・更正処分等の取消しでは、更正処分及び青色承認取消処分の取消しのみ求められており、重加算税の賦課決定処分の取消しは請求されていなかった。(審査請求では両者とも取消し請求の対象となっていた)
⇒両者ともに取消しを求めていれば、重加算税は還付されていた可能性があった。
 行政処分が無効であるという無効確認という訴訟になったことで行政処分の無効立証という高いハードルが課されてしまった。






5.デジタル化に伴う海外取引、対応が課題

■概要
関東信越国税局長の栗原一福氏に対するインタビュー記事であり概要は以下のとおり。
・国際的な租税回避事案への対応に関し関信局管内では海外への資金の流れは多くないが、
デジタル化などに伴う海外との取引は増えており、資金の流れが捕まりにくくなっている。
・かつては恒久的施設(PE)があることによって課税をするのが原則だったが、
ネットショッピングなどのデジタルサービスが増加したことで、拠点を設けなくてもビジネスが可能。
⇒拠点がないことで課税しづらい状況にあるため、どのように対応していくかが課題。



6.機械装置に埋め込まれたソフトウェアの処理

■概要
税務上、機械装置とソフトウェアは、別々の耐用年数を用いて償却限度額を計算
することが原則である。

■ソフトウェアが機械装置に組み込まれている場合の処理
・税務上の明確な規定はない
・研究開発費等に係る会計基準
⇒「機械装置等に組み込まれているソフトウェアについては、当該機械装置等に含めて処理する」
これを理由に税務調査で機械装置計上を指摘されるケースがある

■実務対応
ソフトウェアの使用が機械装置と「一体不可分」といえるか否かがポイント
・ソフトウェアを取り出して利用できる場合⇒機械装置とソフトウェアを区分して計上
・ソフトウェアの取り出しが不可⇒全体を機械装置として計上





7.税務調査:人件費

税務調査の際、人件費関係で想定される確認事項は以下のとおり

■役員給与関係
・役員報酬額の決定プロセスが適法にされているか
・役員報酬額は定期同額となっているか
・事前確定届出給与は届出額と同額が支払われているか
・定期同額の報酬につき期中に金額の改定がある場合の理由は適切か
・役員報酬、役員賞与(事前確定分)は総合的に判断し過大ではないか
・役員退職金は過大であるか、算定額の根拠は

■従業員給与関係
・架空人件費の有無
・未払賞与の要件を満たしているか
・外注費支払いになっていないか

上記以外でも、実態が人件費ではないかの確認のため、
福利厚生費や経済的利益、源泉所得税まで幅広くチェックされるのでケアしておくことが重要






8.内部統制報告制度の展望

・地方自治体も2020年度から内部統制評価報告制度が開始。
・対象はすべての自治体ではなく、都道府県と政令指定都市。
・監査を行うのは監査法人ではなく各自治体の監査委員。
・運用評価についてはサンプリング等は行わず、自治体における非違事例の報告をもって評価結果とする

・上場企業の内部統制報告制度は形骸化が問題視されている
・内部統制報告書における重要な欠陥の報告が少なく、
 後日、内部統制に係る非違事例が発覚して訂正内部統制報告書で重要な欠陥を報告する事例が増え、
 重要な欠陥の件数が、上場企業全体で、後者が全社を上回る年も



減損テストの目的

・IFRSではのれんの定期償却は行わず、毎年必ず減損テストを行う。

・減損テスト
⇒減損の兆候の有無を見極め、帳簿価額と回収可能価額を比較するもの
⇒簿価>回収可能価額なら、回収可能価額まで簿価を切り下げる。

・目的
誤)企業結合が成功したかどうか
正)企業の資産が回収可能価額を超えて計上されないようにする

IASBではのれんを直接減損テストの対象とすることを検討したが、不可能だった、との結論。



10.対象となる無形資産の明確化のポイント(移転価格税制)

■移転価格税制の対象となる「無形資産」が法令で明確に定義された
 ※ただし個別列挙ではなく広範な定義とした
(定義)
・無形資産とは、(中略)その譲渡若しくは貸付け又はこれらに類似する取引が独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って行われるとした場合にその対価の額の支払われるべきものをいうのであるから、例えば、次に掲げるものはこれに含まれる。
(1)令第183条第3項第1号イからハまでに掲げるもの
 イ:工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式又はこれらに準ずるもの
 ロ:著作権
 ハ:第13条第8号イからソまでに掲げる無形固定資産
(2)顧客リスト及び販売網
(3)ノウハウ及び営業上の秘密
(4)商号及びブランド
(5)無形資産の使用許諾又は使用許諾に相当する取引により設定される権利
(6)契約上の権利(1)~(5)除く




11.令和元年度の移転価格税制改正のポイント

①移転価格税制の対象となる無形資産の明確化
⇒一定の金融資産以外で、独立事業者間で通常条件に従って譲渡等が行われる場合に、対価が支払われる。
②独立企業間価格の算定方法の整備
⇒DCF法を導入
③評価困難な無形資産の取引に係る価格調整措置の導入(所得相応性基準)
⇒特定無形資産の価値予測と結果の差が20%超⇒税務当局が再測定&課税可
④移転価格税制にかかる更生期間の延長
⇒6年から7年へ
⑤比較対象取引の利益率を参照する価格算定方法に係る差異調整方法の整備
⇒四分位法(利益率レンジの上下25%切り捨て)に基づく差異調整が可能に
⇒定量的に把握することが困難な場合に限る




12.M&Aで仲介会社や専門家へ報酬を支払う際の留意点

・昨年は、のれんが重要な会計監査のポイントとなっていることもあり、費用を抑えることを優先し、報酬があまりにも低い専門家を利用して、後々の監査で問題となるケースがあった。
⇒報酬だけでなく、専門家の経験や経歴を考慮して専門家を選択することが必要と考えられる。
・自社で対応する範囲を広げ、FAや専門家に依頼する業務範囲を狭めることで費用を抑えられることが可能。

※専門家、仲介会社の一般的な報酬体系

(1)専門家の専門サービスの報酬体系
・DD、株価算定:固定報酬+タイムチャージ
・FA業務   :固定報酬+タイムチャージ+成功報酬

(2)仲介会社の報酬体系
・着手金
契約時に支払うもの
・リテイナーフィー
 契約期間中に、調査や相手先企業の紹介等の名目で毎月支払うもの
・成功報酬
 M&A成立後に支払うもので、通常はレーマン方式と呼ばれる取引金額や買収先企業の規模によって異なる料率が適用される
⇒レーマン方式の計算方法は、時価総資産ベースと取引金額ベースがあり、仲介業者により採用方法は異なるため留意が必要(通常は時価総額資産が取引金額より高くなることから、時価総資産ベースの方が成功報酬金額は高くなることが多い)。




13.東京プロマーケットのメリデメ

1.メリット
・上場までのスピードが早い
東証一部やマザーズでは早くて3年はかかる。
上場審査にあたって2期分の監査証明が必要になり、監査証明に先立って会計処理の整備などが必要になるため。
一方、東京プロマーケットは直近の事業年度1期分の監査証明でよい。

・形式基準がない
マザーズだと株主数は200人以上、時価総額は10億円以上などの要件があり。

・維持コストも安く済む
コストとしては、上場手数料、監査法人に対する監査報酬、株式事務代行手数料、開示書類作成関連費用、IR関連費用、株主対策費用
一般的な株式市場では、年に4回決算を行い、四半期報告書を作成して情報開示しなければならない。
全ての費用を合わせると年間で50Mほどが上場コストとして発生すると言われている。
一方、東京プロマーケットは四半期開示が任意、内部統制報告制度なども任意

2.デメリット
・投資家が制限されることで資金の流動性が下がる
東京プロマーケットはプロ投資家のみが株式を購入することができるため、国内の一般投資家は市場に参入することができない。

・上場の際に資金調達をしにくい
流動性が低いことから、上場時の公募売出しを実施しても想定した資金を集めることが難しい。


14.新規任意適用企業状況

・IFRS適用企業数
2018年3月期までにIFRSを適用した東証上場企業は156社
→2019年3月期までの1年間に新たに40社が任意適用した

・IFRS任意適用企業の東証業種別分類
サービス業:25社
情報・通信業:24社
電気機器:22社
医薬品:17社
輸送用機器:16社
化学:14社
小売業:11社
機械:11社
卸売業:11社
その他:45社
→医薬品は67社中18社(適用予定含む)がIFRS適用しており、約25%がIFRSとなっている
→一方で、サービス業は452社中27社と6%と、業種によって適用状況が異なっている。




15自動販売機の手数料と軽減税率

・自動販売機で行うジュース等の販売は軽減税率8%が適用される一方で、その周辺の取引には標準税率10%が適用されるものもあるため注意が必要

・自動販売機で行われるジュース等の販売は、「飲食料品の譲渡」として軽減税率8%の適用対象

・自動販売機を設置した企業が、販売数量や売上高に応じて飲料メーカー等から金銭の支払を受ける場合
・ジュース等を大量に販売したことについて、飲料メーカー等から奨励金が支払われる場合
⇒「手数料」であるため役務提供の対価として、標準税率10%が適用

・自動販売機の設置者自身が飲料メーカー等からジュース等を仕入れて販売する場合
⇒「飲食料品の譲渡」であるため、軽減税率8%が適用

・ジュース等を大量に仕入れたことについて、奨励金が支払われた場合
⇒もともとの取引(仕入)が「飲食料品の譲渡」であるため、その奨励金にも軽減税率8%が適用














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9/13 勉強会:施行日をまたぐ消費税の適用税率 他

1.施行日をまたぐ消費税の適用税率

■売上計上方法により適用税率が異なる場合
・9月末に販売した商品を10月1日以降に発送した場合
 ⇒販売時に継続的に売上を計上している場合は、発送が10月1日でも旧税率が適用される。
 ⇒発送時に売上を計上している場合は、10%が適用される。

■売手と買手で計上基準が異なる場合
・出荷基準で売上計上している事業者と検収基準で仕入計上している事業者の取引で、
 商品出荷日が9月中、納品日が10月1日以降の場合、売手が8%で請求しても買手は10%で仕入税額控除できるのか。
 ⇒請求書等でその取引に係る消費税率が明らかな場合は、買手側は8%で仕入税額控除を行う。
 ⇒不明確な場合は買手側の会計処理により算出した仕入税額控除をすることが認められている。




2.会社法改正で株対価M&Aが本則化も

■今度の税制改正要望(令和2年度税制改正)
・株対価M&Aにおける買主株主の株式譲渡益について課税繰り延べ措置を講ずる

■会社法の「株式交付」定義
・株式会社が他の株式会社をその子会社とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対して当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付するもの
⇒三角株式交換はダメ??
⇒税法上の「株式交付」をどう定義するかは今後議論





3.通達評価額に乗じた節税策に警鐘を鳴らす

不動産等を相続した相続人らが、取得した財産の価格を評価通達が定める評価方法によって算出、相続税を申告。相続財産の一部の土地及び建物の価額につき評価通達の定めにより評価することが著しく不適当と認めれらるとして、評価通達によらない評価方法での評価を行った更正処分の取り消しが求められた事案。

【判決】
評価通達6項を適用し、通達評価額ではなく鑑定評価額を相続税法上の時価と結論。
⇒通達評価額と鑑定評価額ではほぼ4倍の乖離が生じる
⇒節税や租税回避の意図があった

■評価通達6項とは
「この通達の定めによって評価すること が著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価 する」




4.監査報告書に限定付意見の理由を記載

■概要
監査基準が改訂され、限定付意見とする場合、意見の根拠の区分の記載事項として以下を記載することを明確化される。
「除外した不適切な事項及び財務諸表に与えている影響」
「これらを踏まえて除外事項を付した限定付適正意見とした理由」

■背景
現行の監査基準では、意見の除外により限定付適正意見を表明する場合には、監査報告書の意見の根拠の区分において、「除外した不適切な事項及び財務諸表に与えている影響」を記載する中で、不適正意見ではなく限定付適正意見と判断した理由についても説明がされることを想定しているが、実際には説明が不十分な事例が見受けられ、財務諸表利用者にも分かりやすい説明することが求められている。




5.賃上げ税制 継続雇用者と休職

■概要
いわゆる賃上げ税制では「継続雇用者」への給与等支給額が対前年比で一定割合増加
していることが適用要件の一つとされている。

■継続雇用者とは
法人の適用年度及び当該適用年度開始の日の前日を含む事業年度の期間内の各月において
当該法人の給与等の支給を受けた国内雇用者として政令で定めるもの
⇒簡単にいうと前期と今期のすべての月に給与等の支給を受けている者

■休職者の扱い
休職中に給与の支給がない場合:継続雇用者に該当しない
休職中にたとえば産休手当や育休手当の支給がある場合:継続雇用者に該当する

⇒休職中であっても1円以上の給与等支給があれば継続雇用者に該当する




6.罰金:不納付加算税について

■不納付加算税とは
源泉所得税の納付漏れがあったことに伴い発生する税金の罰金
・1日でも遅れた場合発生する。
・自主的に納付した ⇒ 源泉所得税×5%
・税務署からの指摘 ⇒ 源泉所得税×10%
ただし、計算後不納付加算税が5,000円未満となる場合は納付は不要

なお延滞税は別途発生。(少額の場合はなし)

■正当な理由がある場合
次のケースは「正当な理由」とのことで不納付加算税は発生しない
・従業員が提出したマル扶に誤りがあり、源泉所得税が少額となっていた。
・直近1年内に源泉所得税の納付漏れがなく、法定期限後1月以内納付。
・災害等による納付の遅延。

■裁判事例
・賃貸人である個人へ賃借料を支払う。
・賃貸人が居住者から非居住者になった。
・源泉徴収せずに賃借料を支払い。

賃借人は賃貸人と接触した事実がない。
契約締結時以降、一貫して賃貸人の口座に自動振替されており、
賃貸人からの請求書等は一切発行されなかった。
⇒賃借人は賃貸人の実態を「知る得る状況になかった」と判断をし、
納付しなかった源泉所得税に伴う不納付加算税は発生しなかった



7.金融庁、継続監査期間の算定方法を確認

・提出会社が有価証券届出書提出前から同一の監査法人から監査を受けている場合
 ⇒ 提出前の監査期間も含める

・提出会社が合併等している場合
 ⇒ 取得企業の過去の監査期間を含める
 ⇒ 被取得企業の過去の監査期間は含めない

・監査法人が合併等している場合
 ⇒ 合併前の監査期間を含める

例)PwCあらたの監査を受けている会社で、継続監査期間を「2006年以降」と開示した会社があるが、
 前身の中央青山監査法人による監査期間を含める必要がある可能性あり。

・監査業務を執行していた会計士が異なる監査法人に異動し、異動後の監査法人でも継続して監査を行った場合
 ⇒ 異動前の監査期間を含める

・なお、継続監査期間の算定が著しく困難な場合、注記にその旨をコメントする。




8.監査役としてKAMに期待すること ~花王㈱常勤監査役インタビュー~

・KAM
⇒「監査上の主要な検討事項」
 2021年3月期から適用、2020年3月期から早期適用可。
 監査役等が会計監査人と協議した事項の中から選定され、監査報告書に記載される。

・同業のグローバル企業はすでに導入済み。
 花王も外国人持ち株比率が45%以上と大きいため、早めに対応すべき。
⇒2019年12月期の監査計画の中では、会計監査人と議論しつつ試行している状況。

・KAMの記載をすることになった目的を意識しつつ、企業価値の継続的増加に結び付けていくことが重要。

・KAMの記載によって、監査する側がどのような点を注視しているか、がより明確になる。
⇒今までは監査の方針しか記載がなかった。

・監査報告書が企業価値の増大と投資家の信頼性向上につながってほしい。




インセンティブ報酬の税務上の留意点

■役員給与の区分と税務上の取り扱い
A=BおよびC以外の給与
⇒3類型のいずれかに該当する=損金算入
⇒3類型のいずれにも該当しない=損金不算入
B=業績連動給与以外の退職給与、使用人兼務役員の使用人分給与
⇒損金算入
C=不正経理による給与
⇒損金不算入
※ただし不相当に高額な部分の金額は損金不算入となる
※3類型とは
 定期同額給与/事前確定届出給与/一定の業績連動給与
■損金算入できる役員給与
a=事前確定届出、b=業績連動給与(退職給与含む)、c=退職給与(業績連動給与以外)
(1)新株予約権(非適格SO)=a,b,c
(2)特定譲渡制限付株式(事前交付型リスクテッドストック)=a,c
(3)事後交付型エクイティ報酬(株式報酬/株式交付信託等)=a,b,c
■事前確定届出給与の対象となるエクイティ報酬
・特定譲渡制限付株式(いわゆる事前交付型リスクテッドストック)
・特定新株予約権
・事後交付型エクイティ報酬
・株式交付信託
■業績連動給与の対象となるエクイティ報酬
・特定新株予約権
・事後交付型エクイティ報酬
・株式交付信託




10.のれんと減損に関する審議状況~IASB&FASB~

■共通認識
のれんの減損テストの費用と便益のバランスに問題あり

■IASB(日本)
・減損テストの手続きは煩雑であり、測定しても減損損失が適切に認識されない
⇒but手続を変更することによる改善は不可能
⇒so手続を維持しつつも、企業結合に関する開示を充実させたい

■FASB(米国)
減損テストの簡素化を目指す
⇒非公開企業にはのれんの償却を容認している
⇒今後は公開企業にも簡便な処理の選択肢を与えるか、意見を集めている





11.「時価の算定に関する会計基準」等の解説

■主な変更点
・金融商品における時価の定義が国際的に整合的なものとなるように変更
→時価は、算定日における価格、市場参加者目線、出口価格とされた。

・その他有価証券の月中平均価額に関する取扱い
→時価の定義を算定日における価格としたことに伴い削除。

・第三者から入手した相場価額の利用にあたり、当該価格の検証を要求
→各企業が状況に応じて、適切な手続きを行うことが必要である。

・時価を把握することが極めて困難なものの取扱いの削除
→観察可能なインプットを入手できない場合でも、入手できる最良の情報に基づく、観察できないインプット基づき時価を算定する必要がある。



12.収益認識基準適用後の有償支給取引

■従来の実務
ほぼ全量を加工後に売り戻すことが予定されており、有償支給材料等の価格変動リスクを負っていない場合は、リスク負担の観点から加工代相当額のみを純額で収益として表示

■収益認識基準適用後の会計処理
 買戻し義務の有無にかかわらず、支給品の譲渡に係る収益を認識することはできない。

■支給先が買い戻す義務を負っていない場合
・企業は支給先への支給時に当該支給品の消滅を認識し、棚卸資産の帳簿価額をマイナスする。
・支給品の譲渡にかかる収益は認識することはできず、有償支給取引に係る負債を認識する。

■支給元が買い戻す義務を負っている場合
・支給品の譲渡にかかる収益を認識することはできない。
・原則として、当該支給品の消滅を認識することはできず、棚卸資産に計上したままになる。
・代替的に、個別財務諸表では支給品の譲渡時に支給品の消滅を認識することが認められている
・連結財務諸表では、原則どおり、支給品のオフバランスは不可。
⇒連結修正仕訳において、借方計上し、棚卸資産の帳簿価額と同額の有償支給取引に係る負債を計上する。



13.ソフトバンクG、WeWorkに上場延期要請

・ソフトバンクグループが投資先の米シェアオフィス大手ウィーカンパニーに対し、
9月予定の新規株式公開を延期するよう求めているとのこと。
・投資家がウィーの事業モデルや企業統治に懸念を示し、上場時の想定時価総額が1月時点から半減する見通し。
上場後の株価低迷を回避する狙いと
・ソフトバンクGは傘下の「ビジョンファンド」を通じて累計100億ドル(約1兆円)超を投資している。
・ウィーの主幹事が投資家への聞き取りをもとに条件決定時の想定時価総額を算定したところ、200億ドル程度にとどまる見通しとなった。
・ソフトバンクGが1月に出資した際に見積もった評価額は470億ドル




14.のれんの会計処理に関する国際的な議論の動向

国際会計基準審議会(IASB)はのれんに関する議論に取り組んでおり、「識別可能な無形資産とのれんの事後の会計処理」に関するコメント募集を公表した
→のれんの償却を導入すべきか、のれん減損テストを修正すべきか等が論点となっている

米国会計基準ではのれんは非償却/減損テストのみとなっている
→当該論点について、①現行を維持する見解と②償却及び減損モデルへの移行する見解の双方が上げられている
→①の見解は、のれんの価値は規則的に下落しないことや減損は投資の失敗を示すものであり、償却により当該情報提供の可能性が低下する等
→②の見解は、企業結合のコストは、便益を認識する期間に配分すべき点や償却により企業および監査人のコスト節減となる可能性ある等

コメントリサーチの結果をディスカッション・ペーパーで2019年第4四半期に公表予定。
→IASB会議では減損のみとする見解となったが、僅差(14票のうち8賛成、6反対)のため両モデルを支持する主張を記載予定となっている


15自社ポイント_施行日前の売上に係るポイントも使用時の税率で処理

■売上返還時の自社ポイントの取扱い
売上対価の返還等の処理は、売上時の税率によることとされているが、事業者は当初の売上時である自社ポイント「付与時」の税率で売上対価の返還等を行う必要があるか。
⇒仮にそうであった場合、10月1日前の8%時に付与されたポイントについては、8%で売上対価の返還等の処理を行わなくてはならない。

■結論
自社ポイントの使用については、当初の売上時である自社ポイント「付与時」の税率ではなく、ポイント「使用時」の税率で売上対価の返還等の処理を行うことになる。
⇒国税庁が公表した仕訳例によると、自社ポイントの使用は、「課税売上げの対価1,000円(消費税額80円)」、「対価の返還等1,000円(消費税額80円)」の両建てで処理されており、ポイント「使用時」に売上計上と対価返還が同時に行われたものとして取り扱われている。
⇒そのため、ポイントごとに付与時の税率を把握しておくといった厳格な管理は不要。















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