2017年2月25日土曜日

2/24 勉強会:役員給与税制・株式報酬・関連税制の改正ポイント 平成29年 他

1.今3月期から業績予想の様式はなし

・東証、決算短信の様式のうち、短信のサマリー情報について、上場企業に課している使用義務を撤廃
・現行の「次期の業績予想」を表形式で表示している様式がなくなる
⇒様式に関する自由度の向上
⇒短信の添付資料と同様、短信作成の際の参考様式として、上場会社に対しその使用を要請するにとどめる
⇒業績予想の開示は企業の完全任意


2.適用の可否は固定資産の設置場所で判断

H29年度税制改正で「固定資産税の軽減措置の特例」に
「測定工具及び検査工具、器具・備品、建物附属設備」が追加
・ただし、地域や業種の限定あり。償却資産として課税されるものに限る
・特例が適用できるか否かは、本社所在地でなく、固定資産の設置場所で判断する方向で検討中
・機械装置に関しては、現行制度同様、全国・全業種で適用可能


3.継続保有要件緩和は50%超グループ対象

・平成29年度税制改正において、組織再編税制が見直される
・適格合併における取得株式継続保有要件の緩和が行われる

29年改正において50%超を保有する「企業グループ」が無い状態であれば、株式継続要件は課さないこととされる。

※企業グループ…「50%超」の支配関係にあるグループのこと

()
各株主が2%ずつしか株式を保有していない 等


4.中長期インセンティブと税務・会計上の論点

■現行制度
・役員給与
⇒定期同額or事前確定届出or利益連動のいずれかの要件を満たした場合のみ、損金算入OK

・退職給与、新株予約権
⇒役員給与とは別の規定があり、多くの場合、損金算入OK

■平成29年度税制改正
・インセンティブ報酬
⇒事前確定届出or利益連動のいずれかの要件を満たした場合のみ、損金算入OK

・業績/株価条件のない株式報酬
⇒事前確定届出の要件を満たす場合のみ、損金算入OK
ex.譲渡制限付株式

・業績/株価条件のある株式報酬
⇒利益連動の要件を満たす場合のみ、損金算入OK
ex.パフォーマンスシェア※
※業績に応じて、譲渡制限が解除される、譲渡制限付株式


5.子会社に対する高額外注費に行為計算否認規定を適用

■事例
(1)A社は発注元より@3,750円で受注。
(2)A社は子会社B社へ@3,750円で外注。
(3)子会社B社は下請け業者へ@3,500円で外注。
(4)A社顧問税理士の助言により、子会社B社に対する外注単価を複数年かけて7,000円まで増額。
(5)A社の子会社B社に対する外注費が不当に高額と判断され、行為計算否認規定により外注費が損金不算入となった

■行為計算否認の判断基準
・純粋に経済人の行為として不自然で不合理でないか。
・当事者間の通常の取引に経済的合理性があるか。

■審判所判断
・子会社への外注単価7,000円は一般的な取引相場とかけ離れている。
・子会社B社の実質的な役割は少ないのが、受注単価3,750円を超えて増額する合理性は認められない。
・A社の税負担を圧縮する意図が明確。
以上により、損金不算入とした課税処分は適法と判断した。


6.住宅ローン控除の再適用とその手続き

■要点
・転勤等で一時的に住宅をあけることになっても残存期間において再居住すれば再び税額控除可能
・海外転勤でもOK28年度改正)
・転勤前に「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」と未使用分の住宅ローン控除証明書及び申告書を税務署に提出
・転勤明けに「(再び居住の用に供した方用)住宅借入金等特別税額控除の計算明細書」等を確定申告書に添付して提出


7.月々等の源泉徴収は「源泉控除対象配偶者」に限定へ

■改正
・従来の「控除対象配偶者」⇒「同一生計配偶者」へ
・合計所得1,000万円以下の居住者の「同一生計配偶者」を「控除対象配偶者」と規程
・合計所得900万円以下の居住者の合計所得85万円以下の配偶者⇒「源泉控除対象配偶者」
※合計所得1,000万円⇒給与所得1,220
 合計所得85万円⇒給与所得150

■適用
・「源泉控除対象配偶者」⇒源泉上、扶養のカウント
・合計所得900万円超⇒源泉では控除できず、年調で清算

■適用時期
・平成30年分以降の所得税について適用予定


8.PPA

・合併・買収時の対価(取得原価)を、被取得企業の資産・負債に配分する手続き
・のれんの取り扱いが課題となる。
PPAでは識別可能な無形資産と残額(=狭義ののれん)に分類する
 識別可能な無形資産=ブランド、特許権、顧客関連試算
・配分の結果、償却年数やDTL計上有無等の違いが生じればPLに影響あり
IFRS:狭義ののれんは非償却なので影響大きい。
 日本:のれんも償却するので、大差なし


9.特許権使用料に関する消費税の判定

1.内外判定
(1)特許権の登録地が1国のみ
⇒登録地が国内か国外かで判定
(2)特許権の登録地が複数国
⇒特許権を所有する者が国内に住んでいる(居住者)か、国外に住んでいる(非居住者)で判定

2.課税関係
⇒国内取引に該当する場合、借受人が居住者か非居住者によって処理は下記のようになる。
・居住者  … 課税取引
・非居住者 … 輸出免税


10.ビジネスDDの成功に役立つ事前検討のポイント

⇒高値掴みを避けるため、投資仮説・投資論点の設定が肝要

■投資仮説・投資論点
(1) 本当に対象会社が自社に必要なリソース又はコンピテンシーを高いレベルで持ち
合わせているのか
(2) シナジー効果は、いつから、どの程度見込めるのか
(3) シナジーを得るために追加で必要になるコストと投資
(4) (2)(3)の確度

■複数の案件候補
・案件の優先度と、代替案の有無の検討

■想定シナジー効果の社内共有
・関係部署とシナジーの内容・効果について握っておく
⇒価格に想定外のシナジー効果を織り込まないようになる(高値掴みを避ける)
⇒PMI後に関係部署から「聞いていない」と言われるリスクを避ける


11.組織再編に関する開示

・企業結合の概要
 ⇒被取得企業の名称、事業の内容、企業結合を行った主な理由、企業結合日、企業結合の法的形式など
F/Sに含まれている被取得企業または取得した事業の業績の期間
・取得原価の算定等に関する事項
⇒被取得企業または取得した事業の取得原価、対価の種類ごとの内訳など
・取得原価の配分に関する事項
⇒取得原価の大部分がのれん以外の無形資産に配分された場合には、配分された金額および主要な種類別の内訳など
・連結の範囲等
・決算期の異なる子会社について特に行った決算手続きの概要
・会計方針等
・企業集団の財政状態、経営成績、CFの状況を判断するために重要なその他の事項


12.役員給与税制・株式報酬・関連税制の改正ポイント 平成29

■背景(平成28年)
・法人税法上の利益連動給与と事前確定届出給与の区分が不明瞭
→株式報酬を中心とする中長期のインセンティブプラン導入の税制支援としては、より包括的かつ整合的な制度への見直しが必要

■平成29年改正
中長期の企業価値創造を引き出すための役員への多様なインセンティブを付与できるような制度への見直し
→平成28年は損金算入不可であったが平成29年改正で可能になったもの

・株式交付信託
会社が金銭を信託に拠出し、信託が市場等から株式を取得。一定期間経過後に役員に株式を付与。
H28も退職給与として交付することで損金OKだった
・パフォーマンスシェア
中長期の業績目標の達成度合いに応じて、株式を役員に付与
H28も譲渡制限付株式として交付することで損金OKだった


13.(ケーススタディ)事業年度をまたぐ諸費用の取扱い

■会計処理を迷いやすいポイント
①当期支出した、翌期以降の取引に関連する費用の計上時期
②将来に発生が見込まれる費用の計上時期
③後発事象の取扱いの判断

■長期借入に係る費用(①)
・アレンジメントフィー:(一般的には)ローン組成に対するイニシャルコスト⇒発生年度の費用
・エージェントフィー:(一般的には)契約期間中に係るランニングコスト⇒期間に応じて配分
⇒ただし、手数料の名称だけで判断せず、係る役務の内容・期間で実質的に判断

■期末時点で企業買収手続中の取得関連費用(①)
if株式取得⇒個別上は取得株式の取得原価、連結上は発生年度の費用
if事業譲渡⇒個別上も連結上も発生年度の費用

■期中に意思決定した本社移転に係る引越費用(②)
・発生年度の費用
※引当金⇒費用の発生が当期以前の事象に起因しているか?

■決算日後に関係会社の整理を意思決定した場合(③)
※後発事象⇒実施的な原因が決算日現在において存在した?
YES(ex.累積赤字)⇒修正後発のためFS修正
NO(ex.事故災害)⇒開示後発のためFS注記


14.PMIの成功に役立つ事前検討のポイント

(PMIPost Merger Integration= M&A実行後において、シナジーを実現し、
企業価値を向上させるための統合プロセス全体)

シナジー効果を実現させるためには、以下の3つが重要。
(1) 適切なPMIマネージャーの早期関与
(2) シナジー効果関連部署の早期関与
(3) シナジー効果創出担当者の早期関与によるコミットメント

(1) 適切なPMIマネージャーの早期関与
PMIでは、シナジー効果の創出のみならず、ルールやプロセスの共通化、対象会社の経営管理、経営改善等、多くの部署を巻き込む必要があるため、部課長レベルがPMIマネージャーとして専従することが望ましい。
PMIマネージャーをM&A戦略の構築段階から関与させることで、検討事項の理解や関与してきたコミットメントを引き出せる。

(2) シナジー効果関連部署の早期関与
シナジー効果に関する項目が抽出されたときに関連部署を明確にする。M&A戦略の構築段階から関連部署を関与させることで、責任感を持たせ、PMIの初日からシナジー効果創出に動くことができる。

(3) シナジー効果創出担当者の早期関与によるコミットメント
シナジー効果を実現するためには、現場に納得して動いてもらう必要がある。コミットメントがあってもシナジー効果創出は容易ではないので、コミットメント状態がない中では、シナジー効果の実現はより困難となる。


15.アサツーDK、ゴンゾの不適切な取引で関係者の処分を発表

・アサツー ディ・ケイが買収した会社(※1)で買収前に粉飾決算をやっていた事件。
・アサツー ディ・ケイがファンド(※2)に対して補償請求等を行う方針。
⇒表明保証違反に基づく補償請求損害賠償

(※1)連結子会社ゴンゾ
(※2)いわかぜ1号投資事業有限責任組合(いわかぜファンド)

・訴訟外での解決が難しい場合には訴訟の提起も行なう考え。
・社内でも、社長の月額報酬30%返上、副社長の解任または辞任処分も決定。


16.ファイナンスの手法

ファイナンス手法/持分比率の変動/資金調達/発行済株式数の増加
1.株主割当増資/×/○/○
2.第三者割当増資/○/○/○
3.株式分割/×/×/○
4.株式併合/×/×/×(減少)
5.株式無償割当/×/×/○
6.株式売買等による移動/○/×/×(変動なし)
7.新株予約権/権利行使前:×、権利行使後○/○/○
8DES/○/×/○

1.株主割当増資
株主間の不利益がないため、上場前規制は特になし。

2.第三者割当増資
持分比率が変動するため、上場前規制あり(継続保有要件など)。

3.株式分割、4.株式併合
外部株主を入れる前に、実行されることが多い。

5.株式無償割当
3.株式分割との相違点は以下。
・株式分割は同一の種類の株式数が増加、株式無償割当は同一または異種の株式の交
付が可能
・株式分割は自己株式も増加、株式無償割当は自己株式に割当が生じない。
・株式分割は自己株式の交付は生じない、株式無償割当は自己株式の交付が可能

8DES(デット・エクイティ・スワップ)
金銭債権の現物出資

短期間に実行可能、債権者側も事業再生を目的として活用









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2017年2月17日金曜日

2/17 勉強会:セルフメディケーション税制に関するQ&A 他

1.セルフメディケーション税制に関するQ&A

Q:セルフメディケーション税制とは?
AH291/1H33/12/31までの間に自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る特定成分を含んだOTC医薬品(いわゆるスイッチOTC医薬品)を購入した場合に所得控除を受けられる
 その年中に支払った対価額の合計額が12千円を超えたとき、その超える部分の金額(上限:88千円)について所得控除可能

Q:従来の医療費控除との関係は?
A:同時に控除はできない。
 対象医薬品について、従来の医療費控除orセルフメディケーション税制を選択適用

Q:対象の医薬品は?
A:約1,500品目。厚生労働省のHPで掲載あり

■その他留意事項
・控除額は税込金額で算定する
・レシートや領収書が必須(自宅のプリンターで出力した明細は不可)


2.社会福祉法人の定款変更ミスで措置法40条の非課税承認は?

・個人が土地建物などの資産を法人に寄附した場合
⇒その資産取得時から寄附時までの値上がり益に対して所得税が課される
・資産を社会福祉法人を含む公益法人に寄付した場合
⇒一定の要件を満たし、国税庁長官の承認を受けた時は非課税(措置法40条)
・社会福祉法が一部改正、H2941日から全面施行
・上記非課税の特例を受ける場合、社会福祉法人において、定款変更が必要
・ただし、うっかり同特例を前提としない定款に変更しても非課税承認は直ちに取り消されない


3.法人税等会計基準は3月中に公表へ

ASBJは法人税等会計基準案に対するコメントを踏まえた検討を開始。
草案から内容での大幅な見直しはない模様。

※この草案は監査保証実務指針第63号等の内容を踏襲したものであり、あくまで表現等の整理に留まる。実質的な内容の変更は意図していない

草案の正式決定は3月中に行う予定。
実務上は平成293月期より反映。

(草案具体例)
・外税控除の適用を受けない税額は、法人税・地方法人税・住民税及び事業税に含めて表示など


4.再編税制改正、大綱と法令の用語に違い

■平成29年度税制改正で、下記の適格要件が緩和
・グループ内の分割型分割に係る関係継続要件
・共同事業を行う為の合併等に係る株式継続保有要件

■グループ内の分割型分割に係る関係継続要件
・分割法人とこれを『支配する者』との間における完全支配関係は不要に。
・改正大綱の文言では、『支配する者』を「支配法人」としているが、法人に限定しているのか?※現行法令の文言では、「同一の者」(個人も含む)
⇒法人に限定せず、個人も含むと解釈していい。

■共同事業を行う為の合併等に係る株式継続保有要件
・合併等の当事者に、『他の者』に50%超保有される者がいなければ、株式の継続保有は不要に。
・改正大綱の文言では、『他の者』を「企業グループ」としているが、法人に限定しているのか?
⇒法人に限定せず、個人も含むと解釈していい。


5.最高裁、歩道状空地の相続税評価で弁論

私道に供されている宅地の評価は通達で2パターンある。
・路線価で計算した価額の30%相当額で評価。
・私道が不特定多数の者の通行に供されている場合は評価しない。

私道の相続税評価は減額割合が大きいため、評価をめぐる税務論争が比較的多い。

■争点となる歩道状空地
・共同住宅の敷地の一部で、公道沿いに舗装された幅2mの空地。
・車道脇の歩道として居住者以外の第三者も利用可能(小学校の通学路にも指定)
■地裁判決
歩道状空地は共同住宅の敷地に含まれるため公道に接していることから、私道としての利用制限が課されない判断。
⇒納税者は敗訴し控訴
■高裁判決
地裁判決を支持し控訴を棄却
⇒納税者は敗訴し上告
■最高裁 
現在裁判中だが、上告案件につき口頭弁論を開催した。

なお最高裁は上告を棄却する場合、口頭弁論を開かないことができるため、原審判決が見直される公算が高い。


6.申告期限の延長に伴う役員給与改定期限の見直し

■申告期限の延長(改正案)
29年度改正案では一定の法人の申告期限が「事業年度終了日の翌日から2か月以内」を起点に最大「4か月」延長される。
 
■役員給与の各種改定期限
(1)定期同額給与の通常改定
現行⇒期首から3か月以内に改定
改正⇒延長された申告期限の末日までに改定

(2)事前確定届出給与
現行⇒期首から4か月以内に届出
改正⇒延長された申告期限の末日までに届出

(3)利益連動給与
現行⇒期首から3か月以内に報酬委員会で決定
改正⇒延長された申告期限の末日までに決定


7.消費税《簡易課税制度選択届出書を提出している事業者が高額特定資産を取得した場合の取扱い》

■制度
・課税事業者が簡易課税制度の適用がない課税期間中に、高額特定資産の課税仕入れ等を行った場合
3年間は免税事業者となれず、また、簡易課税制度の選択もできない

■疑問
・従来より簡易課税選択⇒一時的に基準期間の課税売上高5,000万円超
⇒翌年の基準期間の課税売上高が5,000万円以下になった場合、簡易課税は適用されるのか?

■回答
・簡易課税は受けられる
⇒新たな簡易課税選択届出の提出が出来なくなるものであり、事前に出している場合の適用制限ではない。


8.繰延税金資産の内訳開示

・税効果会計を適用した場合、「DTA及びDTLの発生原因別の主な内訳」等を注記する。
・税務上の繰越欠損金、退職給付に係る負債、減損損失、評価性引当額等を記載する
DTAの内訳開示はIFRSや米国会計基準の方がより詳細。
・日本基準では注記不要でIFRSや米国会計基準で注記が必要な項目は下記。
 ①定性的な情報(経営者の判断や見積もりに関する情報等)
 ②DTAの認識の根拠
 ③DTAを認識していない将来減算一時差異の金額
 ④DTAを認識していない繰越欠損金額、失効日
 など
⇒日本基準もより詳細な開示になる方向で検討されている。


9.分配可能額の算定

1. 分配可能額算出の流れ
(1)決算日の剰余金の算出
(2)分配時の剰余金の算出
(3)分配可能額の算出

2. 決算日の剰余金
⇒その他資本剰余金+その他利益剰余金

3. 分配時の剰余金
⇒その他資本剰余金+その他利益剰余金+自己株式処分差損益+資本金・資本準備金の減少額-自己株式消却額-剰余金の配当-会社計算規則150条に定める事項

4. 分配可能額
⇒分配時の剰余金+臨時決算損益-自己株の帳簿価額-会社計算規則158条に定める事項

※臨時決算損益 … 決算日後の期間利益+決算日後の自己株処分対価


10.企業価値評価の観点からみるのれんの減損テストをめぐる実務ポイント

・買収時VA実施時点⇒減損テスト実施時点で、パラメータの連続性や整合性が保たれている必要がある。
・株式価値に大きな影響を及ぼすことが想定される場合は、事前に監査人と協議しておくべき。
・パラメータごとに説明可能なロジックを準備しておくことが必須。


11.計算書類の関係会社注記・関連当事者注記の集計対象

・関係会社に対する金銭債権、金銭債務の金額
・関係会社との営業取引の取引高、営業取引以外の取引高
・関連当事者との取引(取引内容、金額、条件、債権債務残高等)

※有報との相違点
・有報では連結F/Sのみ注記、連結計算書類では個別注記表で注記


12.違法配当の原因と対策

■分配可能額を超過した剰余金の配当等の原因分析
(1)分配可能額を確認する責任部署や担当者が不明確
 責任部署や担当者を設置する。また配当は単体で実施することに留意する※
※連結配当規制の適用を除く
(2)外部専門家がチェックしてくれていると認識
 旧商法では監査対象であったが、会社法では監査対象外
(3)事務処理上のミス
 非経常的な取引(自己株取得等)の失念

■分配可能額を超過して剰余金の配当等を行った場合の対応
(1)取締役等の業務執行者の責任の有無
 原因が取締役の業務執行者にあるか否か、故意か過失か
(2)違法配当等の状態を回復するための措置
 ・当期利益が出て、違法配当の状態が早期に回復されるケース
→一時的に違法状態である開示、追加の手当なし
 ・資本準備金や利益準備金が潤沢なケース
→準備金をその他資本剰余金・利益剰余金に振り替えて違法状態を脱する
※ただし債権者保護が必要
 ・当期利益、本準備金や利益準備金が潤沢でないケース
  →株主に返還を要求
  ※ただし株主への通知・合意が必要
(3)再発防止策
 ・内部統制の整備
 ・取締役や社員への教育徹底


13.M&Aプロジェクトチームの組成・運営ポイント

M&Aの検討・推進には社内・社外の多くの関係者の関与が必要となり、適時・適切な情報共有、適切な役割分担が必要である。加えて、高い守秘性が求められる。

■社内検討チーム
M&Aの中心部門:事業部門、企画部門
M&Aの初期段階から関与
M&Aの協力部門:法務部、財務経理部、人事部、システム部、IR
DDの段階から関与

M&Aの社内検討チームの組成・運営ポイント
>役割分担
・決定権を有する者が責任者として深く関与する。

>情報共有
・買収初期段階から中心部門と協力部門間で情報共有を図る
・コミュニケーションの取りまとめ役を極力一人にする

>守秘性
・プロジェクト名など、案件名称はコードネームを設定する。

■社外専門家チーム
M&Aの全体コーディネート:ファイナンシャルアドバイザー(FA)
M&Aの各種専門家:法務アドバイザー、会計・税務アドバイザー、ビジネス/人事DD

M&Aの社外専門家チームの組成・運営ポイント
>役割分担
FAに社外専門家チームの取りまとめを一任することで、企業担当者は社内調整に集中することができる。
・各種専門家のサービスレベルは事務所の看板ではなく、担当チームの力量による。
・近年は法務、財務・税務以外の専門家も案件の特性に合わせて関与することが増えている。
 
>情報共有
FAが社外専門家チームの取りまとめをする場合、FAと社内検討チームが密に情報共有を図る必要がある。
FAが社外専門家チームを取りまとめしない場合、社内検討チームと各社外専門家間で情報共有を図る必要がある。

>守秘性
・社内検討チームと同様


14.法相が、会社法改正を諮問

・株主提案権の制限導入を検討。
 ⇒ 現行では総株主の議決権の1%以上または300個以上の議決権を6ヶ月以上前から保有する株主に、株主提案権あり。
 ⇒ 提案の数に制限なし。
 ⇒ 2012年、野村HDの某株主が「社名を野菜ホールディングスにする」など、100件の株主提案を受けた。
 ⇒ 株主提案が多すぎると、総会の進行が滞る。
 ⇒ 米国では提案を株主1人あたり1つに制限するなど、株主提案権の乱用を防止する措置あり。


15.企業内容開示制度

有価証券の発行・流通市場において、各種開示書類の提出を発行者に義務付け、適時開示し、投資家保護を図る制度

・有価証券届出書
50人以上に勧誘する1億以上の有価証券の募集又は売出しを行う場合
・有価証券通知書
50人以上に勧誘する1千万超1億未満の有価証券の募集又は売出しを行う場合
・有価証券報告書
・内部統制報告書
・四半期報告書
・臨時報告書
⇒一定の重要事項等が生じた場合(以下に主なもの)
1.親会社又は特定子会社の異動、子会社取得の決定
2.主要な株主の異動
3.重要な災害の発生
4.訴訟の提起または解決
5.組織再編
6.代表取締役の異動

7BS,PL,CFに著しい影響を与える事象









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2017年2月10日金曜日

2/10 勉強会:中小企業経営強化税制のポイントを確認 他

1.株主リストに関するよくある質問

Q:株主リストは誰が作成するか。
A:原則として、登記所に印鑑を提出している代表者

Q:株主名簿を登記の申請書に添付すれば、株主リストの添付は不要ですか。
A:株主リストの添付が必要です。株主名簿と株主リストでは記載内容(例:議決権数等)が異なるため。

Q:上位10名の株主を記載する場合において、10位の株主が複数いる場合、何名の株主を記載するか。
A10位の株主を全て記載する必要がある。

Q:株主が法人の場合、住所欄はどのように記載するか。
A:本店所在地を記載する。


2.税理士以外の者の届出書提出助言義務求めず

A社は、税理士法人でないB社に会計業務を委託
A社は、「消費税課税事業者選択届出書」を提出していれば消費税の還付を受けられた
B社は、届出書を提出しておらず、A社は還付を受けられなかった
A社は、消費税に関する助言義務を怠ったとしてB社を訴えた
・裁判所は、税理士法人ではないB社には会計業務以外の義務はないと判断、B社が勝訴


3.平成304月から査察監査が変わる!

国税犯則調査が平成29年度改正で各手続きが見直される。

(1)サーバのメールやクラウド保管の電子ファイルの差押え可能に
・現状、外部プロバイダのサーバは裁判所からの許可状が必要
・その間にサーバからもデータを削除されてしまう恐れがあったため

(2)強制調査の夜間執行が可能に
・現状、日没~日の出までは強制調査が出来ない
・夜間の間に証拠隠滅を図られてしまう事態が生じていたため

(3)酒税や揮発油税は重加算税の対象に
・上記の申告納税方式の国税に対して通告処分対象から除外
・過少申告や無申告に基づく重加算税の対象となる

※通告処分
・罰金制度のようなもの
・処罰ではなく行政処分のため、「前科」はつかない


4.マイナス金利の会計、来年3月期以降も

・企業会計基準委員会がマイナス金利に関する実務対応報告案を公表

・適用時期
平成29331日以後終了する事業年度から平成30330日に終了する事業年度まで
※以降の取り扱いは、引き続き、検討を予定しているが、継続の可能性もあり

『スチュワードシップ・コードを改訂へ』
・スチュワードシップ・コード
機関投資家のあるべき姿を規定したガイダンス

・改訂:個別の議決権行使結果について
前:アセットオーナー(年金基金や保険会社等)への開示のみでOK
後:原則として、一般に対しても公表


5.現金支給の株式交付信託は利益連動給与

大企業が役員向けに導入している株式交付信託(信託型報酬信託)は、「利益連動給与」または「事前確定届出給与」のどちらに該当するか。

株式交付信託はポイントに応じて株式が付与される。
ポイントは株式を付与されるまでの期間における業績や株価によって変動。
変動するもの⇒「利益連動給与」
変動しないもの⇒「事前確定届出給与」

ただし、変動しないケースであっても、報酬が現金で支給され、損金要件を満たす場合は「利益連動給与」に該当。
H29年度税制改正で「事前確定届出給与」の要件に、「所定の時期に確定した数の株式を交付する給与」が盛り込まれたが、現金で支給される株式交付信託は該当しないと考えられるため。


6.最高裁:節税目的の養子縁組に有効の判断

■概要
・被相続人Aの子であるBは、節税目的のためその子CAの養子とする手続きを行った
・同じく被相続人Aの子であるDはこの養子縁組は「当事者間に縁組をする意思がない」場合に該当し、無効であると訴えた
・最高裁は「相続税の節税の動機と縁組をする意思は併存し得るもの」であり、直ちに「当事者間に縁組をする意志がない」とは言えないとし、Dの訴えを却下した
 
■解説
(1)民法上:節税を目的とした養子縁組は合法
(2)相続税法上:節税目的での養子縁組が行いやすくなったとは言える。
但し、「不当に相続税額を減少させるための行為」とされる場合には否認(=養子はいないものとされる)の可能性がある
 ※過去に否認されたケースはない


7.中小企業経営強化税制のポイントを確認

■事業者の要件
・青色申告
・中小企業者等
・経営力向上計画の認定を受けている

■取得資産の要件
H29/4/1からH31/3/31までに取得等し、国内にあるその法人の指定事業の用に供する
・生産等設備を構成する機械装置、工具器具備品、建附及びソフトウエア
※医療機器は除外予定
・特定経営力向上設備等に該当し、一定規模以上(金額基準)

■税制優遇措置
・即時償却 or 7%(特定中小企業者等は10%)の税額控除
・控除税額は法人税額の20%が上限(1年間繰越可)
※特定中小企業者等⇒中小企業者等で資本金3,000万円以下

■特定経営力向上設備等とは
・生産性向上設備(A類型) or 収益力強化設備(B類型)
・経営力向上計画に記載されたもの
・税制優遇措置を受けるためのステップは基本的には以下の手順となる
A類型、B類型に該当するか確認⇒経営力向上計画の申請・認定⇒設備の取得


8.親会社等の情報開示

・東証では親会社の決算内容の開示を求められる
・親会社が「会社」である場合に限る
・親会社等が複数ある場合:影響が最も大きい会社に限る
・開示内容
 商号、親会社等の企業グループにおける上場会社の位置づけ
 その他の上場会社と親会社等との関係 など
・親会社が上場会社の場合には不要
・親会社と関係が希薄で東証が認める場合も開示不要


9.リスク分担型企業年金の会計処理

1.確定拠出制度か確定給付制度の会計処理かの判断
⇒実質的な追加拠出の義務の有無により会計処理が異なる
⇒具体的な判断基準なし
⇒制度設計の趣旨などを鑑みて、実質判断する必要あり

2.決算時のポイント
(1)確定拠出制度に分類
⇒掛金額を毎期費用処理
(2)確定給付制度に分類
⇒退職給付債務と年金資産の差額を負債として認識
⇒勤務費用や利息費用等より、当期に帰属させる費用を計上する。
※通常の退職給付会計の処理を実施


10.『リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い』等の解説

■復習
・確定拠出⇒簡単
⇒拠出掛金を費用処理して終了
・確定給付⇒難解
⇒PBO計算、年金資産、その他係数を用いた計算

■分類(確定拠出か、確定給付か)
(1) 企業が規約で定められた掛金相当額の他に追加的拠出義務を負わない
(2) 一定の掛金を外部に積み立てている
(1)(2)に両方あてはまる ⇒確定拠出
・いずれかにあてはまらない⇒確定給付

■開示:確定拠出制度に分類されるケースでの注記事項
・企業の採用するリスク分担企業年金の概要
・退職給付費用の額
・翌期以降に拠出することが要求されるリスク対応掛金相当額及び当該リスク対応掛
金相当額に関する残存年数


11.連結子会社及び持分法適用会社の決算日変更

・親会社の決算日:×14月~×23
・子会社の決算日:×11月~×112

子会社の決算日を3月末に変更した場合の留意事項は?
■損益の調整
決算日変更後の子会社の事業年度は15ヶ月(×11月~×23月)になる。
×11月~×13月までの損益を次のいずれかの方法で調整する。
①利益剰余金で調整する方法
 ⇒S/Sに「決算期の変更に伴う子会社剰余金の増加高等の名称」で表示
②損益計算書を通じて調整する方法

■注記
子会社の事業年度の月数と連結会計年度の月数が異なる旨、その内容を注記する。


12.コーポレートガバナンスコード 適用初年度の開示分析

CGC前提:コンプライ・オア・エクスプレイン
→原則実施、実施しないのであれば説明する

■監査役および監査役会の役割・責務
「自らの守備範囲を過度に狭くとらえることは適切ではなく、能動的・積極的に権限を行使する」(原則4-4
→「実施しない理由」の開示はほぼなし
「監査役(会)は、社外取がその独立性に影響を受ける事なく情報収集力の強化を図ることが出来るように社外取と連携を確保すべき」(補充原則4-4①)
→「実施しない理由」の開示あり
(1)社外取の選任なし:企業の特殊性、迅速な意思決定や経営判断への障害
(2)社外取を置いて間もない
(3)以前より社外取を設定しているが連携が不十分、あるいはそれぞれ独立した立場であるから均一的な情報提供にとどまる

■取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件
「監査役には、財務・会計に関する適切な知見を有しているものが1名以上選任されるべき」(原則4-11
→「選任していない」の開示あり
(1)外部監査人等の専門家に依頼できる体制を整えている
(2)監査役スタッフ等に知見者を配置している
「取締役会の実効性の分析・評価の結果の概要」(補充原則4-11③)
→「実施していない」の開示ありjCGC原則の中での説明率1位(63.6%)
(1)そもそも実施していないので今後実施していく
(2)評価を実施しているが、結果を開示していないので今後開示を検討
(3)評価は実施していないが、取締役会の実効性はステークホルダーの満足度で示されるものなので、開示予定なし


13.経理業務のBPO化事例(味の素)

■ステップ1:BPO化対象業務の選定
全経理業務の棚卸+「是非」「可否」の判断+BPO効果の高いものを選定
・是非の観点:ex.ノウハウの流失リスクのある業務は非
・可否の観点:ex.判断要素の大きい業務は否
⇒会計伝票入力業務、を選定

■ステップ2:業務・システムフローの再構築
従来:各部がそれぞれ伝票を起票
⇒「BPOセンター」(各部からの依頼をもとに、会計伝票を一括起票)の設立
従来:個別システムに入力された情報が基幹システムに集計
⇒基幹システムに直接入力

■ステップ3:ベンダー(BPOセンターの運営委託先)の選定
1次選考要素:会社・人・品質
2次選考要素:コスト・工数・取引実績・当社との相性

■ステップ4:推進メンバー・業務フロー管理方法策定
システムとの関連強
⇒情報システム部門からサポートメンバー補充
ステータス管理の徹底
⇒原本待ち・申請中・伝票入力中・レビュー中・完了

■ステップ5:内部用KPI(5つ)の設定
・重要なミス率、軽微なミス率&訂正伝票率
・納期遵守率&平均伝票入力時間

■ステップ6:業務移管準備・社内周知
⇒ベンダー社員への作業レクチャー+マニュアル作成

■ステップ7:BPO化後の業務安定化に向けたフォロー
⇒運用開始後に分かる問題点の継続的是正と改善


14.コーポレートガバナンス・コード(以下、コード)

コーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたもの。
上場準備会社も、コードに従ってガバナンスを整備する必要がある。

コードは、5つの基本原則と各基本原則に対応する30の原則及び38の補充原則で構成。

コードの基本原則
1.株主の権利・平等性の確保
2.株主以外のステークホルダーとの適切な協議
3.適切な情報開示と透明性の確保
4.取締役会等の責務
5.株主との対話


上場会社は、201561日よりコードの適用が義務付けられ、適用以後、最初に開催する定時株主総会後、準備でき次第、速やかにコードに対応したガバナンス報告書の提出が必要となった。









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