2018年8月31日金曜日

8/31 勉強会:管理会計目線の新収益基準のポイント 他

1.IoT税制の疑問点

■IoT税制とは
・生産性を向上させるシステム等を導入した場合に、特別償却30%又は税額控除3%(賃上げを伴う場合は5%)を講じるもの。
・適用対象は、主務大臣により「革新的データ産業活用計画」の認定を受けた青色申告書を提出する企業(大企業も適用可能)。
・設備等の最低投資額は5,000万円。
・機械装置等に加えソフトウェアも同時に取得する必要がある。
・平成30年6月6日~平成33年3月31日までの時限措置。

■子会社やグループ会社も含めて計画の策定を複数の企業で行うことは可能か?
・複数の会社が共同で計画を策定し、主務大臣の認定を受けることにより税制措置を適用することが可能。
 (子会社やグループ会社だけでなく、他社と共同で申請も可能)
・ただし、要件(生産性向上目標、投資利益率等)はそれぞれの会社において満たさなければならない。
 仮に共同で行う企業のうち1社でも要件を満たさなければ認定を受けることはできない。

■投資額が結果的に5,000万円に満たない場合は税制適用分を返還する必要があるか?
・既に受けた適用分の返還は不要だが、以降の適用は受けることはできない。

■計画を共同申請する際、親会社はソフトウェア、子会社は機械装置を取得するといったケースについて適用対象になるか?
・計画全体で判断することになるため、適用対象となる。

■計画の認定を受ける前に取得した設備等は適用対象となるか?
・認定を受ける前に取得した設備等は適用対象外。
・ただし、設備等について契約し発注していても、取得が計画の認定後であれば適用対象となる。

■計画の申請から認定までにどの位の時間がかかるか?
・申請から認定までの期間は1ヶ月とされている。
・取得するソフトウェアのデータに個人情報が含まれている場合は、審査のためにさらに1ヶ月時間がかかる。





2.粉飾決算と代表取締役の責任で内部統制システムが問題に

■リソー教育の粉飾決算
・2007年2月期:約6億円の売上を先行計上
⇒内部監査室の強化、授業実施数を正確に管理するシステムを導入することで再発防止を図った
・2008年2月期~2014年2月期2Q:約84億円の売上を先行計上
⇒授業当日に生徒が欠席した場合に役務の提供があったものとみなして売上に仮装計上
・二度目の粉飾:財務担当取締役らが関与、代表取締役は関与していない

■裁判における原告株主の主張
・当時の代表取締役は不正会計の兆候を知りながら放置、適切な対処を怠った
⇒監視義務違反を主張
・一度目の再発防止策として、明らかに不十分な内部統制システムを導入した
⇒内部統制システムの構築義務違反
⇒当時の代表取締役に対し、リソー教育に課せられた課徴金等に係る損害賠償を求めた

■裁判所の判断
(監視義務)
・当時の代表取締役が不正の事実や兆候を知っていたということはできない
⇒監視義務違反はないと判断
(内部統制システム構築義務)
・一度目の粉飾後に導入したシステムは、一度目の手法による粉飾に対してカバーするように構築されていた
・二度目の粉飾は、幹部役員が指示・黙認するなど一度目とは全く違う要因による発生したこと
⇒通常想定される不正行為を防止し得る程度の機能・有用性を備えており、構築義務違反は認められないと判断






3.仕入控除否認で東1上場企業が不服申立

・販売用マンションの仕入税額控除の否認問題で、エー・ディー・ワークスが不服申立
・税務調査の結果、追徴税額5億3千7百万円(加算税含む)の更正通知書を受領
・消費税導入以来20年以上、当局も認める適法な税務処理方法と認識

■その他の動向
・ムゲンエステートは東京地裁で係争中
・課税処分に異を唱える動きが大手企業の間で広がっている
・一旦修正申告を行った事業者も更正の請求を行う可能性も





4.平成30年度における税務手続の電子化促進

■e-Taxの運用状況
電子申告の利用率:法人税79.3%(内、大規模法人については56.9%)、所得税は53.5%にとどまっていた。

■平成29年3月 電子申告の義務化実現の数値目標~義務化へ
大法人の法人税・消費税の申告については利用率100%との目標設定後、様々な過程を経て閣議決定された。

■制度概要
・対象法人:事業年度開始時における資本金の額等が1億を超える法人
・対象税目:法人税、地方法人税及び消費税
・申告種類:確定申告(期限後を含む)、中間申告、還付申告、修正申告
・適用開始:法人税・消費税ともに平成32年4月1日以後に開始する事業年度より
・特例措置:電子申告が不可能な状況の場合、申告期限の15日前までに申請書を提出

■処分通知等の範囲拡大
・現行:納税証明、電子申請証明のみ
・今後:上記に加え、更正決定通知、住宅ローン控除証明書、適格請求書発行事業者の登録に係る通知など





5.在外子会社会計処理、公開草案通りで

■実務対応報告公開草案第55号(実務対応報告第18号の改正案)について、公開草案から大きな変更はなく正式決定の方向

■資本性金融商品のノンリサイクリングは修正項目に。
・改正案において、在外子会社等においてIFRS9(金融商品)を適用し、資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合には、当該資本性金融商品の売却を行ったときに、連結決算手続上、取得原価と売却価額との差額を当期の損益として計上するよう修正することが提案されていた。
→公開草案に寄せられたコメントに特段反対意見はなく、文言等の明確化のみの修正にとどまる見通し。

・適用時期は平成31年4月1日以後開始する連結事業年度
→多数の資本性金融商品を保有する企業においては、平成32年4月1日以後開始する連結事業年度からの適用が容認されている。

・適用開始初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取扱う。



6.譲渡会社に申告漏れ、売主に賠償命じる

■事例
・個人である売り主は、法人である買主に1億5,000万円で株を譲渡。
・契約書に申告条項、判断影響条項についての記載があった。
・その後、税務調査があり修正申告を行った
⇒売上除外や仕入に係る消費税申告漏れなどにより未払租税債務として約1億4,000万円の簿外負債が存在。
・契約書の申告条項や判断影響条項に違反として損害賠償請求。

■判決
・未払租税債務が申告条項や判断影響条項に違反していると判断。
・売主に対して約9,700万円の損害賠償を命じた。
⇒公認会計士による報告書によれば、譲渡契約当時の株式価格はゼロ円。
 未払租税債務が存在しないと仮定した場合の譲渡契約登記の株式の価格は少なくとも約9,700万円であると認めた。



7.ソフトウェアの追加ライセンスにかかる処理

ソフトウェアの追加ライセンスを取得した場合
・新規資産の取得して処理(資本的支出にはならない)
・ソフトウェアとして計上し5年償却
・ライセンス総額を使用権限数で割って1単位あたりの取得価額を求める
・1単位あたりが10万円未満であれば消耗品費として処理可能





8.償却資産、申告期限見直しの検討が本格化

償却資産に係る固定資産税の制度について、
日本税理士会連合会等から見直しの要望があがっている。

■現状
毎年1月1日を賦課期日として、
同日時点で保有している資産を償却資産申告書へ反映し、毎年1月31日までに申告する。
そののち自治体が税額を決定し、最大年4回の納期で治める。

■改正案
賦課期日は1月1日から変更せず、
申告期限を1月末又は決算日以後2月以内とする選択制を検討中。

■選択制とする理由
双方の主張を加味し、選択制とする方向。
中小企業:法人税の申告時期と償却資産の申告時期のそれぞれで資産台帳を整備することに手間がかかる。
大企業:毎月資産状況を把握しているため、現行の制度で不満はない。(メリットを感じない)
また決算日からの2カ月の間に、決算発表や株主総会等以外の業務が上乗せされる事態を避けたい。

■改正時期
2020年度以降の税制改正となる模様。
新制度(決算日以後2月以内の申告)を適用する法人は、
適用の事前届出をし、かつ、電子申告での申告がもとめられる。
また納期限も1回のみとなる。







任意の指名・報酬委員会の設置

・近年、任意の指名・報酬委員会を設置する会社が増えている
・本年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードの補充原則4-10①では
 監査役設置会社または監査等委員会設置会社で、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合、
 「取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名・報酬委員会など、独立した諮問委員会を設置する」
 ことが記載されている。







10.経理人材に習得させたい知識・スキル

・(1)スペシャリスト職と(2)CFO等のマネジメント職を目指す場合によって育成方法を考えるべき
 (1)簿記は最低限(3級程度)にして、代表的なERP操作を習得することがキャリアアップにつながる
 またエクセルやAccess等の技術は強力な武器になる
 (2)簿記1~2級を目指すのもよいが、重要なのは簿記のしくみであって実務ではない
・会計理論を習得すべき
 日本企業は税務を中心とした細則主義に慣れており、原則主義に対応できていない
 会計を「覚える」ということから「考える」ということに頭を慣らす必要あり
・経理部自体の行動倫理
・実務知識
 非財務情報も含めた経営管理数値の重要性が高まっており習得が必要



11.管理会計目線の新収益基準のポイント

■新基準が管理会計へ与える影響
⇒収益を計上する単位、収益の金額の決め方、収益を認識する時期が変わる

(1)収益を計上する単位が変わる
⇒新基準ステップ2:履行義務の識別
⇒契約の中から収益計上できる単位(履行義務)を識別、細分化する
⇒対価となる財又はサービスがそれぞれ独立しているか、それとも統合しているか、で判断

(2)収益の金額の決め方が変わる
⇒新基準ステップ3:取引価格の算定
⇒契約の額面だけでなく、将来発生する変動対価を見積もって、加味することが必要
⇒変動対価(値引、インセン、ペナルティ等)を、その発生する可能性と合わせて考慮

(3)収益を認識する時期が変わる
⇒新基準ステップ5:収益の認識
⇒期間に渡って認識するのか、一時に認識するのか
⇒財又はサービスの内容で決めるのではなく、要件を満たすものは期間、満たさないものは一時に認識






12M&A契約における表明保証条項の検討ポイント

表明保証:一定の事項が一定の時点において真実かつ正確であることを表明/保証する条項

■表明保証の内容
①財務諸表・計算書類の正確性
②簿外債務の不存在
③法令違反
④情報開示の正確性・完全性
の4項目が対象とされることが多い。
⇒特に①、②の重要性が高い

■財務諸表/計算書類の正確性
・財務諸表と計算書類は異なる概念
⇒財務諸表は金商法に基づき作成、計算書類は会社法上の定義
・子会社がある場合は、連結財務諸表/計算書類を表明保証の対象とするか検討が必要
・最終事業年度の財務諸表/計算書類が表明保証を対象とすることが一般的
・表明保証内容
⇒財務諸表/計算書類が正確かつ完全な写しが公布されていること、
一般に公正妥当と認められる会計原則に準拠していること、
財務状態および経営成績を正確に表示していること
等があげられる

■簿外債務の不存在
簿外債務は法令等によって明確に定義されていない
⇒裁判例では簿外債務=財務諸表/計算書類に記載されていないあらゆる債務を含むものではない
⇒簿外債務の範囲について慎重に検討する必要あり




13.市場価格がない金融資産の評価について、業者等から提供される時価の確認事項等

■合理的に算定された価額の算定方法

(1)取引所等から公表されている類似の金融資産の市場価格に、利子率・満期日・信用リスク等の変動要因を調整する方法
(2)対象金融資産から発生する将来CFを割り引く算定方法
(3)一般に広く普及している理論値モデル又はプライシング・モデル(ブラックショールズ等のオプション価格モデル)を使用する算定方法

⇒いずれを選択しても、原則的に自社の責任において行う

■業者等から提供される時価の具体的な確認事項
(1)導入時の確認または指示事項
・業者等から提供される時価が、金融商品実務指針で定められている算定方法に準拠したものであるか
 または、算定に使用する入力数値の確認または指示
・業者等の評判、経験の確認
・業者等の時価の算定・提供体制が適正なものであることの確認等

(2)継続使用時の確認事項
・導入時に確認した時価の算定方法等が継続されているか
・時価の動向の異常性の有無等、時価の妥当性の確認等

上記(1)(2)の確認は、時価を毎期同様の方法により入手し、原則みだりに変更してはならないとされていること、業者等の時価の算定誤りや不正の報告の可能性も否定できないことから、重要。







14.収益認識基準の管理会計への影響

■概要
収益を総額で認識するか、純額で認識するかによって、管理会計(予算管理)にどのような影響を与えるか。

■事例
従来の会計基準では収益を総額で表示、新基準では純額で表示する事業を営む企業グループ。
<ケース1>
親会社の予算管理部門も、各社の現場部門も新基準で予算管理。
(1)長所
 ・グループ全体の予算管理の一貫性を保てる。
⇒業績の見える化、透明性の向上、ガバナンス強化の観点から望ましい。
 ・予算管理部門と現場部門で基準差異の調整が不要。
 ・財務会計数値と予算管理数値の基準が一致しており、直感的に把握しやすい。
(2)短所
 ・新基準適用に伴い、現場部門は業務変更等の負担を強いられる。

<ケース2>
親会社の予算管理部門は新基準だが、各社の現場部門は従来の基準で予算管理。
(1)長所
 ・現場部門は新基準への業務変更等の負担が生じない。
(2)短所
 ・グループ全体での予算管理の一貫性を保てない。
 ・新基準との差異調整の影響が大きい場合、現場の予算管理と親会社の予算管理で認識のズレが生じ、
現場部門への統制がしづらくなる。
 ・財務会計数値に関する説明根拠を、予算管理数値に求めることが直感的にできなくなってしまい、非効率。

⇒望ましいのは、<ケース1>のグループ全体で新基準で予算管理を行い、財務会計数値と合わせること。
 ただし、財務会計と切り離した予算管理を運用することで得られるメリットと、運用するための業務コストのバランスを考えて検討すべき。





15.歌唱活動の報酬は雑所得か、事業所得か

・請求人は平成24~26年にかけ、A社の代表取締役、常勤監査役だった

・請求人が平成24~26年にかけて行なったライブ活動の回数は下記の通り。

 平成24年:18回程度
 平成25年:43回程度
 平成26年:43回程度

※平成25、26年はCDも販売

・請求人の主張
・請求人は、本件行為(歌唱活動)に専念したいと考えていたこと
・請求人が歌手であると考える者が少なくないこと
・本件行為によって安定した収益を得ることができる状況でないことは事実であるが、一般論として、個人事業者が安定した収益を得ることは難しいことからすれば、本件行為から生ずる所得は、事業所得に該当する旨を主張。

・審判所は「雑所得」と認定。

⇒営利性・有償性・反復継続性は○ 相当程度の期間継続して安定した収入を得られる可能性は×
⇒自己の危険と計算においてする企画遂行性を有していたとはいえない
⇒精神的及び肉体的労力の程度は限定的
⇒人的設備を有していなかった
⇒請求人は、株式会社A(本件会社)の役員の地位にあり、本件会社などからの給与収入及び本件会社からの配当収入を得て、生活の資とするとともに本件行為のための資金としており、歌手としての社会的地位が確立されていたとはいい難い

などの事情を総合的に考慮し、社会通念により判断。

・「これだけの回数やっているならば、事業所得でいいだろう」という安易な判断は危険。






16.株価の下落から上昇

過去のIPO銘柄の株価変動をチェックすると概ね60%以上も株価が下落すると、
自然体での中で株価は大きく反発に向かっている場合を数多くあり。

これには業績が下方修正されて低迷してきた銘柄も売りが一巡し、
あきらめの境地で売却してきた投資家も少なくなったところに、
積極的な買いスタンスの投資家が現れての反転上昇となっているものと推察されるとのこと。

【参考:高値から直近の安値まで60%以上下落したマザーズ、JASDAQ銘柄】
1. シャノン(3976)M
H7370円→L1411円(▲80.9%)
2. うるる(3979)M
H5600円→L1931円(▲65.5%)
3. インターネットインフィニティ(6545)M
H3470円→L1277円(▲63.2%)
4. ソレイジア・ファーマ(4597)M
H 652円→L 221円(▲66.1%)
5. ズーム(6694)JQ
H3540円→L1290円(▲63.6%)
6. No.1(3562)JQ
H4135円→L1540円(▲62.8%)
7. ビーブレイクシステムズ(3986)M
H8300円→L2223円(▲73.2%)
8. ディーエムソリューションズ(6549)JQ
H4250円→L1255円(▲70.5%)
9. SYSホールディングス(3988)JQ
H2850円→L 987円(▲65.4%)
10.クロスフォー(7810)JQ
H841.5円→L325円(▲61.4%)














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決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
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2018年8月27日月曜日

8/24 勉強会:タックスヘイブン対策税制における管理支配基準をめぐる裁決 他

1.一部の棚卸資産は時価会計基準の対象に

・企業会計基準委員会は現在、時価の定義及びガイダンスに関して、時価に関する会計基準及び適用指針を開発中。
・トレーディング目的で保有する棚卸資産については時価会計基準の対象範囲に含める方向。
・仮想通貨については時価会計基準の対象範囲に含めない方向。








2.低利益企業の高額役員報酬は許されるか

■ポイント
・投資家を意識した制度設計が必須に
⇒株主の納得感
・固定報酬のウエイトを減少、業績連動報酬や株式報酬のウエイトを増加
・業績連動報酬算定上のKPIは売上よりも利益を重視

■税務上との兼ね合い
・譲渡制限付き株式報酬の税制上の取扱の明確化
・業績連動給与の算定基礎となる指標に株か等が追加
⇒インセンティブ型報酬の導入促進に向け税制面でも環境整備がすすんだ
⇒損金参入要件を満たすように設計し、キャッシュが無駄に社外流出しないような配慮が必要






3.租税条約に基づく徴収共助の適用事例も

・国税局が滞納国税の取り立てを強化

事例1.国際徴収
滞納者が外国に預金等の金融資産を保有している場合、執行管轄権の問題から国税庁は差押できない
⇒外国税務当局に資産の差し押さえを依頼し、約8億円の滞納国税全額を徴収した事例あり

事例2.滞納処分免脱罪(滞納処分の執行を免れさせる目的で財産を隠ぺい等する罪)で起訴
税金を滞納している飲食店オーナーが従業員の退職金の支給を装って2,500万円を従業員の預金口座に振り込み、財産を隠ぺい
⇒オーナーに対して罰金50万円の有罪判決








4.タックスヘイブン対策税制における管理支配基準をめぐる裁決

■外国子会社合算(タックスヘイブン対策)税制とは
・国内企業が低税率の外国子会社に所得を移転する事により日本における税負担を不当に軽減する事を防ぐ目的
・一定の要件に該当する外国子会社の所得を、国内企業の所得と合算して日本で課税する税制をいう
・自ら独立した立場で事業活動を行う実体のある会社等に対してこの税制の適用を免除する「適用除外基準」が設けられている。(事業基準、実体基準、管理支配基準、所在地国基準又は非関連者基準の4つで判断される。)

■親会社から独立しているか否かで争われた例
税務署側:管理支配基準を満たしていない為、適用除外要件を満たしていないとして法人税等の更正処分
請求人側:当該外国子会社の業務執行が親会社から独立して行われているかどうかで判断すべきと主張

■裁決結果⇒請求人の敗訴
⇒企業の正常な海外投資を阻害する結果になってはいけないという趣旨から適用除外基準がある。
・管理支配基準は、株主総会の開催や役員の職務執行などの諸事情を総合的に勘案し、独立した企業として実体を備えて活動しているか否かで判断すべきであるとした
①株主総会が開催されていない。
②当該子会社の社長が常駐しておらず別の子会社に常駐していた。
③唯一常駐していた董事(代表取締役)は他の関連会社の業務を兼務しており、営業も関連会社を介して関与するにとどまっていた。
以上から、事業の管理、支配及び運営を独立した立場で自ら行っていたとはいえないと判断した。






5.「収益認識に関する会計基準等への対応」として平成30年度に行われた税法・通達改正の検証(3)

22条の2の各項について

■収益の計上時期について(第1~3項)
第1項
・収益認識の時期に関する原則を定めたもの。
→原則として収益計上時期は、目的物の引渡し役務の提供の日の属する事業年度
→従前の取扱いの明確化であり、基本的には従前どおりの取扱いとなるもの

第2項
・収益認識の時期に関する特例を定めるもの。
→一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って、引渡し等の日に「近接する日」に収益認識を行っている場合には、法人税法上もその日に収益認識をする。
→売上計算書到来日や検針日基準等

第3項
・申告調整によって2項の「近接する日」に収益認識できることを定めるもの

■収益の計上額に関する(第4~5項)
第4項
・収益の額に関する原則を定めたもの
→原則として時価 

第5項
・収益の額は、貸倒れや返品の可能性がある場合には、その影響を織り込むことはできない





6.質問応答記録書作成マニュアルの中身とは?

■作成方法と理由
・課税要件事実の立証手段の一つとして、質問応答記録書を書面で作成。
・調査担当者は2名。(質問者1名、記録者1名)
・作成後は回答者に対して読み上げ、閲読し、署名・押印をしてもらう。
・訂正や追加があれば追記する

■署名・押印
・回答者の代用はさせない。
・実印である必要はないが、シャチハタ印の使用はできない。
・印鑑を所持していない場合は、サイン(姓や姓名を書いてこれを○で囲む)、又は指印(原則は左手人差指)

■質問応答記録書の写しの交付
・記録書の写しは交付できない(撮影もNG)
・回答者等が開示請求を行うことはできるが、別手続が必要。





7.裁決例:通達の但し書きが適用できないとされたケース

■概要
消費税基本通達9-1-13
固定資産の譲渡の時期は別に定めるものを除き、その引渡しがあった日とする。
ただし,その固定資産が土地,建物その他これらに類する資産である場合において,
事業者が当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているときは,
これを認める。

請求人Aはいわゆる自販機スキームを利用するため建物の購入契約をしたが、自販機売上のみが
計上される期に引渡しを受けることができなかった。そのため、上記ただし書きを根拠として
契約の効力発生日の属する期において課税仕入れを計上し税額控除を受けた。

■審判所裁決
上記ただし書きは合理的な理由がある場合にのみ認められるものであり、消費税還付を受けることを
理由として適用することは租税負担の公平性を著しく害するものといえる。よって本件は原則通り
引渡しがあった日に課税仕入れを認識すべきである

⇒ただし書きを読む限り、適用するのに合理的理由が必要とは書いていないが裁決で否認された









8.成人年齢の引き下げと税法の年齢要件

2022年4月1日より、成人年齢が18歳に引き下げられることが決定。
上記施行に伴い、税法上「20歳」としている年齢要件も18歳に引き下げられる方向で検討。

■20歳を年齢要件としている主な制度
・相続税の未成年者控除
・相続税の相続時精算課税
・住宅取得等資金贈与の特例
・事業承継税制
・NISA

ただし、上記制度は「20歳」という年齢で規定されているため、
民法上の年齢が18歳に引き下げられても、税法上は改正されない可能性あり。
現在、制度ごとに経過措置等を含めた適用関係を検討中。

なお年齢を要件とする税制で、
所得税の「控除対象扶養親族(16歳以上)」や「特定扶養親族(19歳以上23歳未満)」は、
成人年齢の引き下げが施行されても、見直されることはならない模様







適時開示体制の概要

・コーポレート・ガバナンスに関する報告書(CG報告書)の記載事項に「適時開示体制の概要」がある。
・単なる開示の業務プロセスではなく、「重要な会社情報の適切な開示を可能とするための社内体制」と位置づけられている。
・サカタのタネの例
 適時開示に係る社内体制の状況を①決定事実②発生事実③決算に関する情報
 の3つに分けて開示している。
 ①決定事実:毎月の取締役会で決定&必要に応じて臨時取締役会
  ⇒決定した重要事項を管理部門責任者が開示が必要な否か検討する
 ②発生事実:事故・災害・訴訟等については事象が発生後、
   危機管理対策本部にて情報収集を行い管理部門の責任者を中心に情報開示の検討準備を行う







10.オペレーティングリース取引のオンバランス化に賛否両論

・ASBJで、オペレーティングリース取引のオンバランス化についての議論(IFRSとの整合性を図るかどうかの議論)がなされている。

・ASBJのサイトによると、先月の委員会において、主に以下の項目の議論がされた。
 ① すべてのリースに係る資産及び負債の認識
 ② リースの識別、および、リースとサービスの区分
 ③ 重要性に関する事項

・オペレーティングリース取引のオンバランス化については「賛否両論の意見があった」とのこと。

・財務諸表利用者からは、
(1) 注記情報で示されていたオペレーティング・リース取引に係る資産及び負債が、統一された基準でオンバランスされると、正確な財務分析が可能となる
(2) 使用権の移転の有無からすべてのリース契約から生じる資産及び負債がオンバランスされることは企業活動の実態が財務諸表によりよく反映される
といった賛成意見もある。

・他方、
(1) サービス部分についても資産及び負債が認識される可能性があるとの懸念や、
(2) リース期間が短いレンタルのようなものまで資産及び負債を認識することについての懸念、
も聞かれる。

・リース業協会は『わが国リース会計基準の検討に対する見解』という文書を公表し(7月18日付)、「IFRS等と整合性を図る必要性はない」との見解を示している。






11.直近のIPO銘柄の株価

・7月以降、11銘柄がIPO
・そのうちの2銘柄(GAテクノロジーズ、プロレドパートナーズ)については、株価は公開初値を上回っているが、それ以外の銘柄は下回っている
・IPO時は概ね、どの銘柄も過大な評価がなされがち
・大型IPOのメルカリの株価下落も悪影響しているとのこと
・IPO前に出した業績見通しを達成できず、下方修正をすると投資家の評価を大きく下げ、売りが行われることが多いとのこと



















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