1.ヤフーに続きIDCF事件控訴審でも国勝訴
■まとめ
・ヤフー事件と一体と言えるIDCF事件の控訴審も国が勝訴(1月15日)
→IDCF側が最高裁へ上告することが予想される
■IDCF事件とは
1、ソフトバンクの100%子会社(当時)のIDCS社の営業部門を分割し、IDCS社の100%子会社のIDCF社を設立
2、分割直後にIDCS社はIDCF社株式の全部をヤフーに売却
3、2の行為により1の分割は税制非適格分割となる
→IDCF社に資産調整勘定が発生
4、ヤフーがIDCS社を合併
→当該合併は「みなし共同事業要件」を満たすとして、IDCS社の欠損金を引き継ぐ形となっていた
■IDCF事件の問題点
・IDCS社がIDCF社株式を売却した行為が意図的な「適格外し」
→IDCS社の青色欠損金をヤフーに引き継がせ、IDCF社ではのれんを認識しその償却費を計上する
2.執筆・公演等の所得は雑所得に該当と判断
■概要
大学の准教授が執筆・公演の所得を事業所得として申告
⇒雑所得に該当すると判断された事例
■准教授の所得
・大学の非常勤講師による所得
・上記に関する講演、執筆による所得 ※ここが争点
■事業所得として認められなかった理由
・執筆活動に関して営業や取材をしていたと主張
⇒裏付けとなる証拠や記録が一切残っていない
・専門分野と、その他趣味の執筆活動をしていたと主張
⇒書面やデータが一切残っていない
⇒これらの内容の執筆による収入金額がない
…「事業」と言える程の規模や様態でないため
「事業所得」としては認めることが出来ない
■結果
・当初申告の事業所得の必要経費(交通費200万、図書費200万円等)が雑所得の必要経費となるため、他の各所得から控除が出来なくなる
3.税効果適用指針、27年3月末までの最終化は困難
(1)現状、繰延税金資産の回収可能性(税負担の減額効果があるかどうか)に関する具体的な会計基準なし
⇒企業会計基準委員会が公開草案を作成中
(従来は、監査上の実務指針に基づいて判断)
(2)従来の指針:画一的な取扱い⇒新基準:ある程度柔軟な取扱い
Ex.金額的に重要な繰越欠損金がある場合
従来:翌期に見積もりできる課税所得の範囲内でしか回収可能性が認められない。
⇒新基準:状況次第で、より長期に渡って見積もった課税所得の範囲内で回収可能性が認められる。
(3)H27年3月期から早期適用を望む声あり
⇒時間的に厳しく実現は困難
4.必要経費該当性の判断で当局の理由記載に不備
■事例
原処分庁が必要経費算入を否認した件で、原処分庁が提示した必要経費に該当するか否かの判断理由に審判所は不備があったと指摘した
⇒不備による一部課税処分の取り消しが行われた
■事案
雑所得に係る旅費等の経費について一部必要経費不算入とした。
原処分庁:
必要経費不算入とした更正の理由として、書面上で、一部の金額は業務上の必要性が明らかに区分できない。
また必要経費ではなく家事関連費に該当と記載
⇒ざっくりと指摘した
審判所:
金額のみの指摘だけでは不十分。
「いつ、だれに、どのような内容で支払ったか」など、必要経費に該当するか該当しないかの内容が特定できないと指摘
⇒指摘する以上、細かいところまで特定して指摘すべき
■今後
必要経費の該当性の判断については、より具体的な理由の提示が求められる可能性があり
5.ベンチャーファンドへの出資に税理士も
・金融審議会「投資運用等に関するワーキング・グループ」が1/19開催
⇒プロ向けファンドの新制度について報告案がまとまった
【内容】
・プロ向けファンドが悪用され、投資家が被害に合うケースが散見
⇒ファンドに投資できる個人投資家を限定することに
・投資できる個人投資家
(1)金融資産1億円以上保有している者
(2)(1)以外では、一定条件のもと、
-上場会社の役員・元役員 等
-上場会社の上位50位程度の株主 等
-経営革新等支援機関として認定されている公認会計士・弁護士・司法書士・行政書士・税理士等
-会社役員・コンサル等として、会社設立・新規事業の立上げ等の実務に1年程度携わった者
6.出国時課税制度 補足
<制度概要>
評価額1億円以上の有価証券等を有する者が出国する場合、出国時に譲渡があったものとして課税する制度
■対象者
転勤で1年以上国外勤務となる者も含まれる
■更正の請求
国外転出後5年以内に帰国した場合には更正の請求をすることで課税を取り消すことができる
■納税猶予制度あり
担保を供し、納税管理人の届出をすれば最大10年納税が猶予される
■対象となる金融資産
上場株式だけでなく、非上場株式・新株予約権なども対象となる
■適用開始
平成27年7月1日以後の国外転出より適用
7.事業税:外形標準課税の拡充
H27.4.1以後に開始する事業年度から、段階的に『付加価値割&資本割』の税率が引き上げられ、『所得割』の税率が引き下げられる。
これにより、外形標準課税が拡充される。
(所得が発生している法人の税負担が減り、所得が発生していない法人の税負担が増える)
■税率の変更 ※標準税率
・H26年度[現行]
所得割:3.8% 5.5% 7.2%、付加価値割:0.48%、資本割:0.2%
・H27年度[改正後1]
所得割:3.1% 4.6% 6.0%、付加価値割:0.72%、資本割:0.3%
・H28年度[改正後2]
所得割:2.5% 3.7% 4.8%、付加価値割:0.96%、資本割:0.4%
■負担軽減措置(経過措置)
・付加価値額が30億円以下の法人に適用される。
・『旧税率により計算した事業税』と『新税率により計算した事業税』の差額(負担増加分)の1/2が税額控除される。
■超過税率について
・各自治体の条例改正により、税率が今後明らかになる。
8.66号(DTAの回収可能性の判断指針)の見直し
・分類3と分類4に「将来の業績予測等を考慮する定め」を記載した点が大きく変わった
・過去の課税所得や繰越欠損金という期末時点の事象だけではなく将来もみて判断することとなった。
分類3(5年)の変更点
・5年超期間での回収について合理的に説明できれば認められることとなった
・5年以内のより短い期間となることもある(従来は5年固定)
分類4の変更点
・従来は「繰越欠損金の存在」というストック要件が重視されすぎていた
・重要な欠損金があっても将来解消が合理的に説明できれば、分類2や3があり得ることとなった
・重要な繰越欠損金が「過去3年以内か当期に発生したかどうか」で判断することとなった。
9.新興国の非上場株式の評価時の留意点
新興国企業であり、非上場の会社の株式を評価する際に問題になりやすい事項は以下の通り
1.評価段階以前に問題となりやすい事項とその対応例
・財務諸表の信頼性が低い
⇒評価に先だって財務DDを実施
・資本市場のデータ入手が困難
⇒先進国のデータで代替
・経営陣が参画継続か否かで企業価値に影響を与える
⇒インセンティブプランによる経営陣の引き留めなど
※例として、経営陣が行政とのパイプが広いなど
2.評価段階で問題となりやすい事項とその対応例
(1) 倍率法(類似会社比準法など)
・比較対象と出来る企業が見つからないことが多い
⇒対象企業の国以外の同業種の企業を利用
(2) DCF法
・所在国の予測が困難な事象(カントリーリスク)をどのように企業価値に反映させるかが難しい
⇒様々なカントリーリスクの推定方法はあるが、確立された手法は無い
⇒推定したカントリーリスクが、所在国の情報などの定性的な情報と整合性しているかを検討する
・急成長中の新興国ではターミナルバリューが大きくなりやすい
⇒現在の成長率がどの期間続くのか中長期的な視点で判断し、成長率を決定
10.「平成27年度税制改正大綱」のポイント
■法人税
○
・実効税率の引き下げ
▲
・事業税外形標準課税の強化
・繰越欠損金の控除制限の強化
・配当課税の強化
・試験研究費の税額控除制度の見直し
・特定資産の買換え特例の縮減(限度額80%⇒70%or75%)
■消費税
・引き上げ時期の変更
・電子商取引の課税方式の変更
■国際課税
・外国子会社からの配当の益金不算入制度の見直し
・外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の見直し 等
11.固定資産の減損における資産のグル―ピングと事業セグメントの関係
⇒目的・意義が異なるので区分の方法も常に同じにはならないが重要な関連性がある。
・連結F/Sの固定資産の減損における資産グループは、どんなに大きくても事業セグメントよりも大きくなることはないと考えられる
・事業セグメントの変更や見直しを行った場合、固定資産の減損における資産グルーピング変更につながる可能性がある。
12.非上場の子会社株式の評価損の損金算入について
(1)評価損の損金算入
・原則×
・例外○
(2)例外について(a.かつb.)
a.発行法人の資産状態が著しく悪化
・法的整理が開始
・@純資産が株価の50%以上下回る
b.株価が著しく低下
・@純資産が株価の50%以上下回るかつ将来の回復が見込まれない
(3)実務
a.評価のポイント(企業支配株式等の価額)
・特定株主により20%以上保有されている場合で、企業支配が目的と認められる場合
⇒通常の評価+企業支配に係る対価の額を加算して判定
(事例)
@純資産が4万の非上場株式を支配目的で60%を@5万で取得
↓
当期末は@純資産2万(50%以上下落しているが。。。)
⇒通常の評価(@2万)+企業支配に係る対価の額(@1万=購入時時価@5万-購入時純資産@4万)
=@3万(@5万と較べて50%以上下落していない)
↓
損金算入×
13.青色申告承認取消の条件
税務調査の過程で、「青色申告承認取消」をちらつかせ、交渉を有利に進めようとする調査官がいたら…
青色申告承認取り消しの条件を、事務運営指針でしっかり確認しておきましょう!
「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」
tm
1.帳簿書類を提示しない場合
⇒帳簿書類が存在しない場合、存在しても税務職員に提示しない場合
2.税務署長の指示に従わない場合
⇒帳簿書類の備え付けについて、指示に従わないと青色申告取消になる旨を説明の上、なお説得に応じない場合
3.隠蔽・仮装の程度が大きい場合
⇒隠蔽または仮装した所得金額が更正後の金額の50%超かつ500万円以上
⇒隠蔽または仮想した所得金額が当初欠損金額の50%超かつ500万円以上
4.2期連続無申告、あるいは期限後申告
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