2016年1月29日金曜日

1/29 勉強会:減損損失の認識の判定のポイント 他

1.平成27年分所得税確定申告のチェックポイント
・住宅ローン控除 平成316月末まで延長

・公的年金についての確定申告不要制度が外国の年金など源泉徴収の対象外の年金については適用不可に

・国外転出時課税制度が開始
 平成2771日以降国外に転出等をする
 時価1億円以上の対象資産(有価証券など)を保有
 出国時に含み益がある場合
 ⇒含み益について所得税等が課税される

■国外出国時課税制度
・納税管理人を置く場合
 出国時の対象資産の時価の合計が1億円かどうか
 1億円以上の場合は確定申告時(出国の翌年315日まで)に含み益についても申告が必要になる(含み益:出国時の時価-簿価)

・納税管理人を置かない場合
 出国予定日より3か月前の対象資産の時価の合計が1億円かどうか
 1億円以上の場合は国外転出前に含み益について確定申告が必要になる
(含み益:出国予定日の3か月前の時価-簿価)


2.財産の名義と帰属をめぐる相続・贈与課税トラブル
■贈与・相続財産に該当するか否か
【事例1
父が息子の名義で自動車を登録し、支払いも父が行ったケース。
父から息子への贈与となるか。
・考え方
 ⇒名義人が真実の所有者と推定されるが、反証があればこの限りではない(相基通9-9)
・当てはめ
 ①息子は自動車をほとんど利用しない
 ②息子は自動車会社関係者のため割引が受けられる
 ③息子が自動車の選定や購入手続きに関与した事実がない
・結論
 今回のケースは贈与を受けたとは認められない(平成2791日裁決)

【事例2
日本人が米国でジョイント・テナンシーの形態により米国不動産を被相続人と所有。
被相続人死亡時に当該不動産の被相続人持分は相続財産となるか。
なおジョイント・テナンシーは日本には存在しない。
・用語の説明
 ジョイント・テナンシーとは、複数名が同一の不動産について取得する財産権。
 所有者の1名が死亡した場合には権利が生存者に帰属することが特徴。
・結論
 死亡時に生存者に権利が帰属するため、その時に死亡者から生存者への贈与となる。
 併せて3年内贈与のため相続財産となる(平成2784日裁決)


3.扶養控除等申告書への個人番号記載
■原則
・提出の都度、個人番号の記載が必要

■個人番号を省略するには下記の対応が必要
・従業員が扶養控除等申告書に「個人番号については給与支払者に提供済みの番号と相違ない」と記載する
・会社は既に受領している個人番号を確認し、確認した旨を扶養控除等申告書に表示する


4.グリーン投資減税見直しで電気自動車等は特別償却のみに
グリーン投資減税
…対象設備を購入した場合、設備の取得価額に対して30%の特別償却か7%の税額控除(中小企業のみ)が取れるというもの

■平成28年度税制改正
・グリーン投資減税が2年間延長
・対象設備の見直しあり

■変更点
・風力発電の即時償却の廃止
・太陽光発電は自家用のみ
 …売電収入を事業所得とし、給与所得と損益通算していた個人が自家用(雑収入)のみとなるため、節税が出来なくなる
・車両運搬具は特別償却のみ
 …対象車は電気自動車等一部に限られる

※補助金等をもって取得した設備は本税制の対象外となる


5.粉飾決算巡る監査法人の賠償責任認めず
■東証1部に上場していた、ニイウスコー社が循環取引により、売上高を水増し
⇒ 同社株主が監査法人に対し2,600万円の損害賠償請求

■地裁
原告株主:
監査法人は容易に粉飾を発見できたはず
⇒ 会計監査人としての監査義務を怠った

判決:
監査法人は監査基準で要求されている手続をきちんと実施した上で、有報に「虚偽記載なし」と証明
⇒ 故意過失はない
⇒ 損害賠償請求を棄却

■高裁
原告株主:
(1) 監査調書に明らかに矛盾や不自然な記述あり
⇒ 監査法人は架空取引が存在することを知っていたハズ

(2) 監査法人が実施した在庫の実地調査には過失があった
⇒ 有報に「虚偽記載なし」と証明した点に故意過失あり

判決:
(1) 監査調書にそこまで大きな矛盾はない
⇒ 監査法人が架空取引が存在することを知っていたとまでは言えない

(2) 従業員が架空在庫の存在がバレないよう仮装し、また一部のソフトウェアについてデモ画面を閲覧するなど実在性を確認
⇒ 監査法人が実施した在庫の実地調査には過失があったとまでは言えない
⇒ 損害賠償請求を棄却


6.マイナンバーの記載省略は税制改正前も弾力的運用を容認
H28年度税制改正において、税務署等へ提出する書類に記載するマイナンバーの省略が可能になる。

(1) H28.4.1以後提出すべき書類から適用されるもの
・給与所得者の配偶者特別控除申告書・保険料控除申告書
・住宅借入金等特別控除申告書等

(2)H29.1.1以後提出すべき書類から適用されるもの
・所得税の青色申告承認申請書
・消費税の簡易課税制度選択届出書
・相続税延納・物納申請書等

税制大綱上、それぞれの期日以後に提出する書類よりマイナンバーの記載が省略となるが、H28年税制改正法の施行日前であっても、弾力的にマイナンバーの記載が省略可能となる。

※雇用保険、社会保険関係はマイナンバーを記載する必要あり
・雇用保険:H28.1.1以後提出分より
・社会保険:H29.1.1以後提出分より
 なお年金機構はマイナンバー利用延期の処分が下されているため、現状はH29.1.1以後であってもマイナンバーの記載は不要


7.改正経営承継円滑化法の施行日が判明
・中小企業経営承継円滑化法の改正施行日は、2841日~
・主な改正内容は以下の通り

(1)「遺留分に関する民法の特例」の適用対象者に、親族外が追加
 ※上記特例は、生前贈与された自社株式を、遺留分の算定基礎から除外することができる (=後継者が、自社株式以外の財産も相続する権利が残せる)というもの

(2)個人事業者が親族内で事業承継した場合、65歳以上の会社役員が退任した場合に、小規模企業共済制度で支払われる共済金が引き上げられる


8.相続税:小規模宅地特例(貸付事業用宅地)
■貸付事業用宅地にかかる評価減の流れ
・被相続人がアパート経営などを営んでいた
 ↓
・相続人がその事業を承継した
 ↓
・宅地の評価を50%減

■ケーススタディ
・被相続人がアパートを経営
・相続人である妻Aが建物を、子Bが土地を相続
・子Bは妻Aに土地を貸し付ける

Q:この場合、子Bが相続した土地は評価減できるか?
A:評価減できない。
 被相続人が営んでいたのはあくまでアパートの貸付であり、その事業を承継したのは妻Aである。子Bが営むのは土地の貸付であり被相続人の事業を承継したわけではない。よって評価減できない。
  ⇒妻A(子B)が建物と土地をセットで相続した方が有利


9.法人税:28年度改正 建物附属設備等への資本的支出も定額法
H28年度改正により、建附の償却方法は定額法となる。
■変更のタイミング
 ・H28.4.1以降『取得』分について適用される。
 ・供用日が同日以降であっても、3.31までに取得していれば定率法。

■資本的支出について
 ・定率法が適用されている既存資産についての資本的支出は、既存資産と同じ耐用年数の資産を『新たに取得した』ものとみなして定額法により償却する。
 ・従って、建附について4.1以降に実施された資本支出には定額法を適用する。


10.税効果の旧ルールを廃止
・実務上の税効果会計ルールであった以下の2つの委員会報告を廃止した。
 委員会報告66号/DTAの回収可能性の判断に関する監査上の取扱い
 委員会報告70号/その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い

20151228日に「DTAの回収可能性に関する適用指針」が公表されたため。
 ※この指針は201641日以後開始する事業年度から適用
  (早期適用もあり)


11.平成28年度税制改正による法人実効税率
1. 法人実効税率の引き下げ
・現行       32.11%
・平成28年度   29.97%
・平成29年度   29.97%
・平成30年度以降 29.74%
※上記税率は標準税率の場合

2. 税収確保の為の課税ベース拡大措置
・生産性向上設備投資促進税制の縮減
・建物付属設備等の償却方法を定額法に一本化
・外形標準課税の拡大
・中小企業等の少額減価償却資産の損金算入特例の適用対象の縮減
・繰越欠損金の繰越期間延長の適用年度を1年後倒し


12.減損損失の認識の判定のポイント
■減損損失の認識の判定フロー
 (1) 主要な資産の決定
 (2) 将来CFの見積期間の決定
 (3) 将来CFの見積り
 (4) 割引前将来CFとの比較

■主要な資産の決定
 資産グループのうち、将来CFに最も寄与する構成資産

■将来CFの見積期間の決定
 経済的残存使用年数と20年のいずれか短い方
 経済的残存使用年数=著しく不合理と認められる事情がない限り税法耐用年数に基づくことが可能

■将来CFの見積り
 ・将来の設備投資等
  計画されていない将来設備の増強や事業の再編      ×
  現在の価値を維持するための合理的な設備投資      ○
  建設仮勘定に関する完成まで、完成後のキャッシュアウト ○

 ・本社費等間接的に生ずる支出
 資産グループが将来CFを生み出すために必要な本社費等は将来CFの見積上控除する


「減損損失の測定のポイント」
■正味売却価額
 ・不動産
  不動産鑑定評価基準に基づき算定
 ・その他の固定資産
  コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチを併用又は選択

■使用価値(将来CFが見積と乖離するリスクをどう反映させるか)
 ・将来CFの見積り自体に反映
  使用する割引率:リスクフリーレート
 ・割引率に反映
  使用する割引率:
  (1) 当該資産又は資産グループに固有のリスクを反映した収益率
  (2) 当該企業に要求される資本コスト(WACC)
  (3) 類似の賃貸用不動産の還元利回り
  (4) 当該資産グループのみを裏付けとして大部分の資金調達を行ったときに適用されると合理的に見積もられる利率

■減損損失の配分
 ・帳簿価額に基づき比例配分する方法
  ⇒ただし、配分の結果個別構成資産の時価<個別構成資産の帳簿価額となった場合は要再配分
 ・構成資産の帳簿価額と時価との差額に基づいて配分する方法 等


13.資産のグルーピングのポイント
・新たに資産を取得する場合
その資産の取得目的、取得を申請した部署に関連する資産グループによりグルーピングする

・外部から事業を取得する場合
 取得に当たって自社の既存事業と外部の事業とのシナジー効果を期待していた場合には、既存事業と取得した事業を一体でグル―ピングする

・事業の変革期
 事業を再編成したことにより管理会計上の区分が変更した場合、マネジメントアプローチに基づき既存の事業セグメントの区分を見直した場合などはグルーピングの変更の要否を検討する必要がある


14.過年度に減損したその他有価証券評価差額金の税効果について
N3月末の前提
N3月末に税務上の簿価2,000、会計上の簿価1,400となり減損した(税率30%)
 (投資有価証券評価損)600 (投資有価証券)600
(1)DTAに回収可能性あり
 (DTA180 (法調)180
(2)DTAに回収可能性なし
  仕訳なし

■ケース1
N13月末に会計上の簿価1,200となった場合
 (その他有価証券評価差額金)200 (投資有価証券)200
(1)DTAに回収可能性あり
 (DTA60 (その他有価証券評価差額金)60
(2)DTAに回収可能性なし
  仕訳なし

■ケース2 ※減損額を超えない範囲で簿価が上がった
N13月末に会計上の簿価1,800となった場合
 (投資有価証券)400 (その他有価証券評価差額金)400 
(1)DTAに回収可能性あり
 (その他有価証券評価差額金)120 (DTA120 
→減損後に生じた評価差額金(評価差益)は将来減算一時差異の戻入となるため、DTAを取り崩す
(2)DTAに回収可能性なし
  仕訳なし

■ケース3 ※減損額を超えて簿価が上がった
N13月末に会計上の簿価2,200となった場合
 (投資有価証券)800 (その他有価証券評価差額金)800 
(1)DTAに回収可能性あり
 (その他有価証券評価差額金)180 (DTA180 
→減損後に生じた評価差額金(評価差益)800のうち、減損分の600は将来減算一時差異の戻入となるため、DTAを取り崩す
 (その他有価証券評価差額金)60 (DTL60 
→当期の生じた評価差額金(評価差益)800のうち、減損分以外の200は、新たに発生した将来加算一時差異となるため、DTLを計上する
(2)DTAに回収可能性なし
  仕訳なし


15.タワマン節税防止 高層階の評価額引き上げへ
・高層マンションでは、相続税の算定基準となる「評価額」は階層や日当たりなどの条件によって差がつかず一律。
 ⇒高層階になるほど評価額と市場価格が乖離し、相続税節税に使われやすい
2018年にも、「20階は1階の10%増し、30階は20%増し」等の一定の補正を行う案が有力。
・相続税評価額だけでなく、固定資産税にも影響を与える見込。
・マンション市場を冷え込ませる恐れもあるため、総務省と国税庁が税の引き上げ幅を今後慎重に検討。


16.ファイナンスの規制期間
(1)第三者割当増資に関する規制
・制限期間中(※1)に第三者割当増資を行っている場合
⇒保有者は、新株発行の効力発生日から上場後6ヶ月を経過するまでの間、継続保有、かつ、申請会社と継続保有に係る確約書の締結が義務
⇒確約書の締結を行っていない場合、上場申請が認められない。
(※1)直前期の期首から上場日の前日まで

(2)ストックオプションに関する規制
・制限期間中に役員、従業員にストックオプションを発行した場合
⇒第三者割当増資と異なり、継続保有義務は上場日の前日まで
⇒継続保有に係る確約書の締結は義務


17.今週の新規上場会社
なし









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2016年1月25日月曜日

1/22 勉強会:税制改正による定額法変更で企業に混乱が生じる可能性大 他

1.住宅取得等資金の贈与を受けた場合の審理上の留意点に係るQA
■贈与を受けた後、外国に転勤になった場合
・平成271月に贈与を受け、3月にそれを頭金としてハウスメーカーと契約
・引き渡しは10月の予定
・平成274月より海外転勤になる予定(単身赴任)
・完成引き渡し後は、日本に残った家族が新築の家に住む
⇒住宅取得資金の特例の適用あり(家族が居住を開始するため)
※たとえば、家族も海外転勤についていき、10月の引き渡し以降に居住していない場合は適用なし

■連年で贈与を受けた場合
・平成26年に父親から頭金にあてるため200万円の贈与を受ける
・平成26年分は贈与の適用を受けた(旧措置法の適用)
・翌年に残金支払のため、父親から300万円の贈与を受けた
⇒平成27年分については、住宅取得資金の特例の適用なし
※住宅取得資金の贈与に関する規定は、何度か改正されていて直近では平成2711日以後贈与分について改正があった。
 よって、平成26年の旧措置法の適用を受けた者は、平成27年以後の贈与分について適用を受けることができない


2.税制改正による定額法変更で企業に混乱が生じる可能性大
■平成28年度税制改正による減価償却制度の見直し
・建物附属設備及び構築物の償却方法が定額法へ
・対象:平成2841日以後に取得するもの
■監査上の取扱いに注意
・この税制改正を理由に償却方法を変更した場合には「正当な理由による会計方針の変更」に該当しない可能性あり
⇒税制改正以外に定額法に変更する合理的な理由を企業側が説明する必要が生じる

「正当な理由による会計方針の変更」と認められなかった場合には、会計上=定率法、税務上=定額法とし、二重に管理する事態になりかねない。


3.裁決事例紹介 納税義務者への事前通知、取引先への照会には不要
■概要
Aが所得税の確定申告を行った
・医療費控除欄で、Aの母の介護サービスの金額を含めていた
・税務署が介護サービス会社とAの母の間での金銭取引を事前照会
 (Aへの事前通知なし、介護サービス代金はAの母が支払っていた)
・上記に則り税務署がAへ更正処分を行った

■争点
・本件の更正処分に係る調査手続きは国税通則法違法かどうか
 …納税義務者への事前通知なしで取引先へ確認を行った行為

※国税通則法第74条の9
 納税義務者に対し質問検査等を行う場合には事前通知をする

⇒今回の事前照会は納税義務者に調査をしたわけではなく、取引先(≠納税義務者)に行ったため国税通則法違反とはならない。


4.監査契約の更新は新規契約に該当せず
■粉飾決算を行った、東芝の監査を行っていた、新日本有限責任監査法人に対し、金融庁が行政処分を行った。
 ・新規契約締結の業務停止処分(3ヶ月間)
 ・業務改善命令
 ・課徴金納付命令(21億円1,100万円) ⇒ 監査法人に対して、初めて

■「新規契約締結の業務停止処分」とは
 監査業務の新規契約のみならず、監査以外の業務の新規契約も該当
 ただし、既存の監査契約の更新は該当せず(業務の拡大となるものではないため)
⇒ 影響は軽微

 また、以下のような場合も、基本的には、該当せず
 ・既存契約に密接に関係した、新規契約締結(既存の契約先が会社分割した場合など)
 ・新規上場クライアントに対し、既存の任意契約を金商法に基づく監査契約に切り替える
 ・既存の契約先が過年度財務諸表を遡及修正する場合における監査


5.青年会議所の会議への参加交通費を損金と認めず
■事例
・会社社長は青年会議所の会員。
・青年会議所の会議出席のために生じた旅費交通費を自社の損金に算入していた。
・原処分庁側は事業遂行上必要な費用ではないため役員給与と判断。

■争点
青年会議所の会議に出席するための費用が、自社の損金に算入可能か否か

■会社社長の主張
・会議所の会員を通じて取引先となった会社より1億円の売上があった。
・青年会議所の活動に関する支出は、会社の受注活動費用としての性質あり
・上記理由により会議出席に関する諸費用は、、会社の事業遂行に必要な費用であり、社長が負担すべきものでないため、役員給与には該当しない。

■審判所の判断
・会議出席の費用は、あくまでも青年会議所の活動目的を遂行するための費用。
⇒青年会議所の活動に付随する副次的な費用であり、社会通念上に照らしても、社長の会社の事業遂行に必要な費用とは認められない。
・社長が支出した交通費等は個人で負担すべきもの。
⇒定期同額給与には該当しないため、損金算入できないと判断


6.プロ野球新人選手が税金について学ぶ
・今期プロ入りした12球団選手を対象に、東京ドームホテルで税金研修会が開催された
・新人選手が脱税に関わった過去の事例を紹介しながら、申告義務を説明


7.2016年における税務紛争の動向
・近年の重要な税務紛争は、資本等取引、組織再編成、租税回避の3分野
・資本等取引、組織再編成
 ⇒H13年度改正以降取引が増え、税務調査官の経験がアップ、指摘が増加
・租税回避
 ⇒IBM事件の高裁判決で、132条(同族会社の行為計算否認)の解釈が変更
 ⇒従来の租税回避判断:
 「行為又は計算が、異常、かつ、租税回避以外に正当な理由がない場合」
 ⇒現在の租税回避判断:
 「独立当事者間の通常の取引と異なる場合」
 ※租税回避の意図がなく、租税回避以外に正当な理由があったとしても関係ない


8.有利発行
新株等を引受人に特に有利な価格で発行すること。

100%資本関係→有利発行という概念はない。
税務上→時価-発行価額 > 時価の10%の場合有利発行 (法基通2-3-7)
 ※会社法上の有利発行かどうかは問われていない。

時価については、財産評価基本通達に定める非上場株式の純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額として最高裁判決あり。

課税関係(時価-発行価額について)
・個人が低額引受→所得税or贈与税
・法人が低額引受→受贈益課税
 ※既存株主→引受人へ経済的な利益が移転するため
  なお既存株主の課税関係は必ずしも明確ではない

関連裁判
→神鋼商事が大阪国税局より申告漏れ(受贈益)を指摘され、現在裁判中で1審敗訴、2審中。


9.消費税:入居者から受け取る違約割増金の取り扱い
Q
A社は不動産賃貸業を営んでいる。
・入居者が契約条件に従わない場合には退去してもらう契約となっている。
・退去期限までに退去しない場合、期限後は契約賃料の3倍相当額の賃料を徴収することとしている。

⇒この場合、収受する賃料は違約金(損害賠償金)として不課税取引となるか?

A
役務提供の対価として取り扱われるため、課税対象となる。

この違約賃料は損失補てん又は逸失利益の補てんとしての性質を有しておらず、単に割増料金を収受しているに過ぎない。
したがって不課税ではなく課税対象となる。

なお、不正乗車について通常の3倍の乗車料を徴収する場合も同様の考え方から課税対象取引(割増運賃扱い)となる。


10.消費税:原材料に使う飲食料品への軽減税率の考え方
売手が『食品』(酒を除く)として販売しているか否かにより、軽減税率の適用可否を判断する。
仕入側の目的は考慮しない。

■例
・食品にも化粧品にも使用可能な添加物を販売するケース
・売手は化粧品に使用することを想定したパッケージ等をして販売している。
・仕入側は食品の原材料として使用する。
⇒このケースでは売手は『食品』として販売していないので、売手側&仕入側の双方で10%の税率を用いる。(軽減なし)


11固定資産の減損と税効果
・減損損失:原則として税務上の損金計上不可
 ⇒一時差異となり税効果の対象となる
・回収可能性の検討の際、「スケジューリング可能な一時差異か否か」がポイントとなる
・スケジューリング不能=分類1の会社以外では回収可能性なし、となる。
・減価償却資産ならスケジューリング可能。
 土地等の非償却資産は売却予定があるか否かで判断する


12.シャープ再建 3,500億円の金融支援
・みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行が再建案を受け入れへ
⇒優先株2千億円を産業革新機構へ無償譲渡。
156月にDESしたもの)
15百億円の貸付を新たにDESに。
・シャープは液晶事業と家電事業を分社化
・液晶事業はジャパンディスプレイと統合


13.上場審査と委員会制度
(1)委員会制度
・監査役制度に代えて、指名委員会、報酬委員会、監査委員会を設置
⇒指名委員会:取締役の選任・解任に関する議案内容の決定
⇒報酬委員会:取締役、執行役が受ける個人別報酬内容の決定
⇒監査委員会:取締役、執行役の職務執行の監査
・各委員会は3名以上で社外取締役が過半数
・業務執行を担当する執行役の設置

(2)執行役の取扱い
・特別利害関係者となるため、会社取引など健全性が審査対象

(3)監査委員会の取扱い
・上場審査上、監査委員会のメンバーに取締役、執行役の同族関係者が就任している場合には、独立性の観点より有効な監査がなされていないものとみなされ、その就任が問題になる。


14.今週の新規上場会社
なし








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2016年1月17日日曜日

1/15 勉強会:組織再編に伴う報告セグメントの変更 他

1.裁決事例から見る処分理由の記載内容
・平成23年度改正により、税務署長は更正・決定などの
 不利益処分等を行う場合は、通知書に処分理由を記載することになった
 ⇒平成251月から適用されている

・どのような事実関係でどの法規を適用して処分したかを具体的に理解できる程度の理由の記載が必要


2.空家等対策の推進に関する特別措置法
・平成2611月成立
・管理されていない空き家が地域住民の生活環境に悪影響を及ぼすことを未然に防ぐ目的
・空き家の所有者は適切な管理をしなければならない旨が明記
・地方自治体は、空き家への立入り調査や倒壊等のおそれがある等の空き家に対して除去や修繕等の指導・命令等を行うことが可能


3.相続空き家の譲渡に3,000万円の特別控除
■平成28年度税制改正
・相続した家に相続人が住まず、空き家になっているケース
⇒「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」が創設
⇒譲渡所得から3,000万円を特別控除できる

■要件
・相続開始直前に被相続人だけが居住していたこと
・昭和56531日以前に建築されたもの
・相続時から譲渡時点までに居住・貸付・事業の用に供していないこと
・譲渡価格が1億円以下であること


4.繰延税金資産回収可能性で柔軟な取扱い
■企業会計基準委員会が「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」を公表
⇒ 監査委員会報告第66号について、企業から(硬直的な運用であるとの)指摘を受けたため

■改正内容
・スケジューリング不能な将来減算一時差異に関する取り扱い(分類2)
・課税所得の見積可能期間に関する取り扱い(分類3)
・一定の場合、分類2又は分類3として取り扱うことができる(分類4)
など

■平成283月期より早期適用可能(なお、平成293月期より強制適用)
■適用初年度の取扱い
「分類2に該当する企業において、スケジューリング不能な将来減算一時差異について回収可能であることを合理的に説明できるために回収可能性ありと判断する場合」など、
3つのケースの場合、会計方針の変更に該当
⇒ 影響額について、期首の利益剰余金等に加減


5.スマホ、デジカメによる領収書等の電子保存が可能に
H28年度税制改正により、スマホやデジカメで撮影した領収書の電子保存が可能となる。

・従来の制度
 電子化には固定型のスキャナを使用する必要があった。
 また受け取った領収書は、会社に持ち帰り経理担当者が原本確認後、電子化する必要があった

・制度改正後
 スマホやデジカメで電子化可能。
 受け取った領収書をその場で電子化可能なため、経理担当者の経費精算等がスムーズになる。
 ただし撮影した領収書をPCやクラウドに転送する場合は、受け取った従業員の署名やタイムスタンプ(3日以内)の付与が必要となる。
 また経理担当者が領収書等を確認することが要件。

小規模企業者(従業員5人以下の会社等)は、税理士または会計士が事後検査を行うことを条件に、経理担当者による領収書等の内容確認が不要となる。

H28930以後に行う承認申請から適用される見込み。


6.相続財産の申告漏れめぐり税理士の調査義務違反を認めず
■事例
・税理士が相続案件を受注した
・相続人からの提供資料を基に申告書を作成
・税務調査により、一部相続財産の申告漏れが発覚
・相続財産の調査義務違反と主張し、税理士に対して損害賠償を請求した

■争点
税理士に申告漏れとなった相続財産の調査義務違反があったか否か

■高裁の判断基準
調査義務の範囲は、税理士と相続人間で締結される委任契約の解釈で決すべきと判断。

■委任契約の中身
・相続人は相続財産に関する資料提供を約する
・税理士は提供される資料に基づき申告書を作成することに限定

■判決
委任契約での解釈から判断すると、
・相続財産の申告漏れは、税理士に対し申告に必要な書類を交付しなかった。
・申告の基礎資料は提供された資料に限定していることから、申告漏れの危険に備えるための調査検討すべき義務はあったと判断できない。

以上のことから税理士の調査義務違反はないと判断した。


7.株式継続保有要件の適用は法人毎に判断
・平成28年度税制改正で、共同事業を行うための新設合併等に係る株式継続保有要件が明確化
※株式継続保有要件
 ⇒適格合併等において、株主が50人未満である場合には、合併後も一定割合の株主が継続して株式を持ち続ける必要があるというもの

・合併法人(A)の株主が50人以上、被合併法人(B)の株主が50人未満の場合
(1)従来
 ⇒A社株主及びB社株主のどちらについても、株式継続保有要件が求められると解釈されてきた
 ※規定で明確化されておらず、実務上、保守的処理が行われていた

(2)今後
 ⇒B社株主のみに、株式継続保有要件が求められることが明確化された


8.NISA(少額投資非課税制度)に関するQ&A 抜粋
NISAとは?
20歳以上の居住者を対象として、H35年までの間に、非課税口座で取得した上場株式等について、その配当等や譲渡益を最長5年間非課税とする制度をいう。
投資額は年間120万円が上限。
(注)平成27年分までは100万円が上限

■売却損の取り扱いは?
非課税口座で取得した上場株式等の売却損はないものとみなされる。
したがって特定口座や一般口座で生じた売却益との損益通算はできない。

■年間100万までしか購入しなかった場合、未使用枠はどうなる?
未使用枠を翌年に持ち越すことはできない。

■複数の金融機関に申し込みを行うとどうなる?
税務署では申請がもっとも早かった金融機関にのみ「非課税適用確認書」を送付し、その他の金融機関には「交付を行わない旨の通知書」を送付する。
したがって複数の口座で非課税規定の適用を受けることはできない。


9.住民税:均等割に係る無償減資の減算措置と合併
均等割の税額の判定上、「資本金等の額」から無償減資に係る一定の欠損填補額を減算できる。(H27年度改正)

上記の恩恵を受けていた法人を被合併法人として適格合併した場合、合併後に合併法人は、被合併法人の欠損填補額を資本金等の額から控除して均等割の税率区分を判定できない。

■たとえば...
  合併法人 :資本金等の額200
  被合併法人:資本金等の額10090%欠損填補済

[合併前]
 合併法人 :200を用いて判定する。
 非合併法人:10(100-90)を用いて判定する。(H27改正の恩恵)

[合併後]
 210(=20010)を用いて判定するのではなく、
 300(200+100)を用いて判定しなくてはならない。

 ※なお、外形標準課税の資本割にも同様の取り扱いがある。


10.税効果会計の新指針、公表
2015.12.28公表
・分類2から4までの回収可能性の判断要件について見直ししている

分類2
 従来:スケジューリング不能⇒×
 今後:スケジューリング不能⇒企業が合理的な根拠をもって説明する場合◯
分類3
 従来:5年
 今後:5年超の部分でも企業が合理的な根拠をもって説明する場合◯
分類4
 従来:1年
 今後:企業が合理的な根拠をもって説明する場合、分類2や3として扱うことができる


11.平成28年度税制改正大綱のポイント
1. 法人実効税率の引き下げと、税源配分の変更
(1) 平成28年度 (実効税率の引き下げ)
・法人税率が引き下げ(23.9%23.4%)
・事業税所得割の引き下げ(6%3.6%
 ※税率は、法人特別税を含んだ税率
(2) 平成29年度 (税源配分の変更)
・地方法人特別税の廃止
・地方法人税の引き上げ(4.4%10.3%
・道府県民税法人税割の引き下げ(3.2%1%)
・市町村民税法人税割の引き下げ(9.7%6%)
 ※上記変更は、税目間の変動であり、実効税率自体に変更なし

2.税収確保のための財源措置
(1) 事業税外形標準課税の強化
・付加価値割の引き上げ(0.72%1.2%
・資本割の引き上げ(0.3%0.5%
(2) 繰越欠損金の控除制限の強化
⇒ 繰越欠損金を使える額が徐々に制限される
⇒ 現行65%が最終的に平成30年度では50%

3. 消費税
(1) 軽減税率制度
⇒ 平成2941日以降、消費税率は10%
⇒ 飲食品(外食以外)及び、定期購読の新聞については、現行の8%が適用
(2) インボイス制度導入
⇒ 導入時期は平成3341
⇒ 導入までは、現行の請求書等保存方式が適用
⇒ 軽減税率適用品目については、その旨と税率毎の対価の額を請求書等に記載することが要件


12.不正による収益認識への対応策
■不正のレベル
 ・企業レベル>組織レベル>個人レベル

■モニタリング体制の構築
(1) 企業レベル ⇒ トップ主導で不正が実施されることが想定
 ・外部専門家に期待。
   定量的アプローチによるモニタリング
   トップマネジメント層と密にコミュニケーションをとることができる体制
(2) 組織レベル ⇒ トップレベル+人的リソースの振り分け(リスクアプローチ)
 ・基本的には企業レベルと同様
 ・比較的大きな変化に直面している組織(部門)を選定・モニタリングを強化
   ⇒より効果的かつ効率的な対応につなげる対応も可能
(3) 個人レベル ⇒ 金銭的事情等の個人的な事情が絡むことが多い傾向
 ・マネージャー層等、上位職階によるコミュニケーション⇒何らかのシグナルの把握
 ・内部統制や社員間の相互けん制により、不正が予防されることも期待される。


13.組織再編に伴う報告セグメントの変更
・開示
  原則:前年度のセグメント情報を当年度の区分方法により作り直して開示
  容認:当年度のセグメント情報を前年度の区分方法により作成して開示
  困難な場合:実務上困難な場合は、困難である旨とその理由を記載

・四半期での取扱い
  原則:前年度のセグメント情報を当年度の区分方法により作り直して開示
  容認:実務上困難な場合には困難である旨とその理由を記載

・報告セグメント変更のタイミング
  法的な効力発生日と合せる必要はない
  ⇒法的な効力発生日に先行して、変更後の事業セグメントにより取締役会等で経営上の意思決定や業績評価が行われている場合はそのタイミングで変更する


14.招集通知等の発送前開示に関する実務上の留意点
・招集通知等の発送前開示とは、招集通知等の発送が行われる前に、TDnetや自社ウェブサイトを通じて開示する事

(1)株主以外への開示に対する抵抗感
CGコード等での積極的な評価による後押しがあり払拭されたため、批判を受けることはないと考えられる

(2)訂正に関する問題点(発送前開示をした後に訂正があった場合の取扱が明確でない)
・発送前開示の訂正を行わなかったとしても違法ではないが、通常は適時に訂正を行うべき
・訂正方法は差替方式ではなく、正誤方式によるべき
・発送前開示後、招集通知発送前であっても、スケジュール・費用等を鑑み、書面自体の修正が不可能・著しく困難な場合はウェブ修正もOK

(4)その他
・自社ウェブサイトが閲覧しやすいか見直す
・比較可能性確保のため、少なくとも数年分は開示が望ましい


15.住友商事 ニッケルプロジェクトで減損計上
・マダガスカルで推進中のアンバトビーニッケルプロジェクトで770億円の減損損失を計上。
・足元のニッケル価格下落で、固定資産を全額回収不可と判断。
・投資総額は約2,000億円強。⇒約3分の1を減損。
・ニッケル価格は2010年頃10ドル/ポンドだったが、今は4ドル以下。


16.セグメント情報の上場審査上のポイント
セグメントは、マネジメントが実際の意思決定で利用している単位、あるいは業績評価の対象としている単位と整合している必要がある。

(1)セグメント情報の概要
⇒「上場申請のための有価証券報告書」や「有価証券届出書」では、連結F/SまたはF/Sの注記事項としてセグメント情報の開示が求められる。
⇒セグメント情報では、以下の項目が開示される。
●報告セグメントの概要(報告セグメントの決定方法、各報告セグメントに属する製品及びサービスの種類)
●報告セグメントの利益・損失、資産、負債およびその他の重要な項目の額
●セグメント情報と財務諸表計上額との間の差異調整に関する事項

(2)上場審査とセグメント情報
⇒上場審査上、申請会社の収益構造を把握し、利益計画に基づく申請会社の収益性、安定性を判断するため、セグメント情報が検討される。
⇒どのセグメントが会社の弱点であるか、今後どのセグメントが成長するのかを判断することになる。
特定セグメントの業績が悪い場合には、その理由や今後の見通しについて、説明が求められることになる。


17.今週の新規上場会社
なし







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