1.検証・IBM事件
■ヤフー・IDCF事件
・租税回避に該当(東京地裁2014年3月18日判決)
・国側が全面勝訴
・証拠資料が十分にそろっている。税務調査が的確かつ効率的
・スキームの立案が国内において行われている。税務担当部署で作成
■IBM事件
・租税回避に該当せず(東京地裁2014年5月9日)
・納税者側が全面勝訴
・事実認定に関する記述に終始
・証拠資料が少ない
・スキームの立案が国外?弁護士などが特別チームを編成して作成?
・国際的な租税回避についてを述べた条文がない
→132条では対応しきれない面がある
■判決の分かれ目
・証拠資料の質、量の差
→証拠資料が少ないことがIBM裁判では納税者側に有利に働いた
→納税者側も少ない資料で事実関係の説明をしなければならない
2.連結納税における貸倒引当金の計算
■普通法人である連結子法人が貸倒引当金の繰り入れを行う際の留意点
・損金の額に算入するには下記の要件を満たす必要あり
①資本金の額が1億円以下であるもの
(大法人による完全支配関係がある普通法人等は除かれる)
②その連結子法人に係る連結親法人が①に該当する
・内国法人が、その内国法人との間に連結完全支配関係がある連結法人に対して有する金銭債権は含まれない
生産性向上設備投資促進税制の適用要件
・設備投資計画上の投資収益率が15%以上(中小企業は5%以上)
・税理士等がチェックし経済産業局の確認が必須
⇒対象設備の50%の特別償却又は対象設備の取得価額の4%の税額控除
投資収益率とは
(営業利益+減価償却費)の増加額÷設備投資額により算定
<結論>
特別償却又は税額控除
⇒ Aの金額
適用要件の判定
⇒ A+Bの金額
⇒上記、税制優遇措置を適用する場合には、留意する必要あり。
4.後年分の会計票筆圧調査から偽計を認定
【事例】
日々の会計票の束の裏面に残っていた筆圧痕金額(束の合計額)
> 実際に集計した束の合計額を発見
・売上金額を家族名義の口座に入金していたにも関わらず、調査時にその家族口座は会社とは関係ないという態度をとっていた
【審判所】
・会計票の束から、売上にかかる会計票の一部が故意に抜かれた
・把握しづらい家族名義口座に売上金額を入金し、会社に帰属させないようにしていた
⇒売上の隠蔽を図る行為であり、「偽りその他不正の行為」に該当すると判断
※偽りその他不正の行為
⇒社会通念上不正と認められる一切の行為が該当
⇒懲役・罰金(刑事罰)の対象
5.IPO関連
- 新規IPO企業紹介 -
◆会社の概要
会社名:㈱イグニス
上場日:7月15日
市場:マザーズ
事業内容:スマートフォン及びタブレット端末等向けのネイティブアプリサービスの提供
主幹事証券:野村證券
監査法人:あずさ
◆資本金100万円で上場
有価証券届出書によると、上場直前のイグニス社の資本金は設立時から変わらずの100万円。
マザーズの上場要件に資本金や純資産の項目が無いとは言え、設立時から一度も増資をせず(創業者保有株式の売却はあり)、上場を果たした非常にレアなケース。
直前々期は44百万円の債務超過であったが、直前期では147百万円の利益剰余金が計上されており、アプリの開発期(直前々期)は借入金(みずほ銀行などから90百万円程度)で運転資金・開発資金を賄い、サービスリリース後の現在は内部留保で賄う、理想的な形の資金繰り。
アプリの開発力もさることながら、創業3年の会社にメガバンクが1億円近い融資を行っているため、創業者社長にはそれなりの資力があったが、税務メリットや話題性の点などから、あえて増資を行わなかったことが考えられます。
6.判例:土地譲渡対価の益金算入時期
■概要
・不動産業者Aは東京都との間にH20年11月に土地売買契約を締結
※代金の支払いは所有権移転登記後とする
※土地の上に建物があり、これを取り壊さないと土地は利用できない
・H20年12月に所有権移転登記
・H21年6月に建物を取り壊した
この場合「引き渡しがあった日」がいつになるかを巡り争われた。
A社⇒実際に土地が利用できるようになったH21年6月
課税庁⇒契約締結日であるH20年11月
■東京地裁
不動産の売買があった場合の収益計上時期は「引き渡しがあった日」となる。
この場合の「引き渡し」は現実に固定資産が使用収益できるようなることでなく、契約により支配権が移転することを言う。よって契約締結日であるH20年11月に売上計上すべきである。
7.税務:租税公課等の損金算入時期
租税公課等はその租税債務が確定した事業年度に損金算入されるという考えのもと、具体的には以下の様に取り扱う。
□申告納税方式のもの(事業税、事業所税)
申告書を提出した日の属する事業年度の損金とする。
□賦課課税方式のもの(固定資産税、不動産取得税、自動車税)
賦課決定のあった日の属する事業年度の損金とする。
□特別徴収方式のもの(ゴルフ場利用税、経由取引税)
納入申告書を提出した日の属する事業年度の損金とする。
□利子税、延滞金
納付した日の属する事業年度の損金とする。
8.リサイクリング
・その他の包括利益(OCI)として計上した未実現利益を、実現時にPLを通して当期純利益に計上し直すこと
・その他有価証券評価差額金:売却時にPLで売却損益を計上
・IFRSの場合、その他有価証券評価差額金のリサイクリングは認められていない
=売却時にPLを経由せず利益剰余金に直接振り替えられる
=売却時にPLを経由せず利益剰余金に直接振り替えられる
9.経理・財務部門と他部門間の職務分担見直し
(1)経理・財務部門内の見直し
※「やりすぎ」の削減
①業務の廃止、簡略化
②業務の移管(SSC、アウトソーシング)
(2)他部門間との見直し
※「形だけの業務」の削除
①業務の移管(他部門へ)
②制度の再設計
(3)ポイント
※不要なものは思い切って「関わらない」
※効率化のために「減らす」だけでなく「増やす」という発想も必要
※「しかたない」と思考を停止させてはいけない
10.附帯税等の会計処理
・附帯税等の会計処理
⇒P/L上、「法人税等」の次に、「法人税等の更生、決定等による納付税額又は還付額」等の科目で記載(外形除く)
※修正申告事項が過去の誤謬に起因するものでない場合
⇒金額の重要性が乏しい場合には、「法人税等」に含めて表示することが出来る
・利子税等の会計処理
⇒利子税は営業外費用の「その他」等で処理
⇒還付加算金は、営業外収益の「法人税等還付加算金等」で処理
⇒印紙税の過怠税は「租税公課」等で処理
11.M&Aファイナンスの特徴
投資ファンドが買手となる場合、全額自己資金ではなく、投資効率を高めるために借入を利用することが多い。
【例】100億投資して5年後に資産価値が50億増加する場合
借入する場合は、80億を買入
(5年後に一括弁済 年率5%固定=利息20億(4億/年×5年)
(結果)
①借入なし⇒100の投資で50増加
②借入あり⇒20の投資で30(50-20)増加
(結論)
②の方が増加資産は少ないが、投資効率は良い
※ただし、借入時にその他取引費用が出たり、自己資金を使わなければ預金利息を得られた可能性もあるため、実務的には内部収益率(IRR)を使って投資効率を図る。
12.接待飲食費の損金算入に関する判断ポイント
→26年度改正で社外の人との接待飲食費は50%損金算入可能に
■ポイント① 5千円基準と併用できる
⇒1人当たり5千円以下の飲食費は交際費から除外できる(従来通り)
⇒接待飲食費の措置法と併用可能
⇒大企業の場合、5千円基準で交際費をはじいた残りの接待飲食費について、50%相当額が損金算入となる
■ポイント② 接待飲食費の範囲
⇒ゴルフや観劇等の催事に伴う飲食や、送迎費は接待飲食費の対象外
⇒だが、飲食を主とする目的であるならば、「カラオケ」「キャバクラ」「スナック」も接待飲食費の対象
■ポイント③ 社内交際費
⇒社内交際費は50%損金算入できる接待飲食費からは除外される
⇒ただ周辺科目を使えば100%損金算入できるため、慎重な判断が必要
※福利厚生費の要件
⇒慰安目的であること
⇒従業員に対して公平さが保たれること
⇒通常要する費用であること
※会議費の要件
⇒通常会議を行う場所で行われる会議に伴う費用であること
⇒通常供与される飲食物であること ※1、2杯程度のお酒はOK
13.ローランド TOB成立 TOB価格は安すぎる??
・現経営陣と、米系投資ファンドが手を組み、TOBを実施
(創業者は反対していた)
・7月15日、TOB成立。83%を取得。
・TOB価格は安すぎるため、今後、プロ投資家が残った株式を買い集め、高い価格で会社に買い取らせる動きも?
・TOB価格の算定はアミダスパートナーズ。
→DCF法で算定。