2017年5月27日土曜日

5/26 勉強会:税務の動向 仮想通貨の消費税法上の取り扱い 他

1.Q&A役員給与税制改正の疑問点

・平成29年度税制改正について
Q:確定した数の株式を付与するタイプの譲渡制限付株式報酬を事前確定届出給与として損金算入可能か?
A:可能

Q:あらかじめ確定した数の株式を事後交付するタイプの株式報酬の導入を検討しているが、株式交付までに株式分割や株式併合があった場合、どのようになるか?
A:株式数が変わったとしても、事前確定届出給与に該当しうる。

Q:中長期の役員給与を事前確定届出給与として損金算入するためには、税務署への届出は毎年必要か?
A:1回の届出で足りる。1年以上先の期間も届出の対象とするよう省令が改正されている。

Q:業績が未達の場合に、"すべて"の株式が没収されるタイプの譲渡制限付株式報酬を支給しているが、没収要件が「業績」に関連する以上、事前確定届出給与から除外されるか?
A:事前確定届出給与となる。
 「利益その他の指標」を基礎として譲渡制限が解除される数が算定される譲渡制限付株式報酬が事前確定届出給与の対象から除外されているため注意。


2.分割型分割における他の者と分割法人の支配関係継続要件の改正

 (H29年度税制改正)
・例:A(親、承継法人)は、a(子、分割法人)から資産等の移転を受けた
・改正前:完全支配関係の継続が見込まれていない場合、非適格
・改正後:分割前にAを上位とする完全支配関係があれば、適格。分割後、a社株式の譲渡は自由


3.来料加工、省令の七業務を"総合勘案"

来料加工はCFC税制の適用除外基準である所在地国基準を満たすかどうかにおいて、29年度改正により来料加工に係る7業務が改正省令に列挙された。

■来料加工(例)
・日本法人の香港子会社が、中国広東省の法人に無償で原材料を支給、加工
⇒香港子会社は棚卸業か製造業かによってCFC税制の適用が変わる

■省令改正内容
・来料加工が所在地国基準を満たす場合として7業務が公表
7業務全てに該当する必要はなく、総合的に判断する


4.修正国際基準第4弾の改正案が明らかに

IFRS12号「他の企業へ関与の開示」※については、IFRSの取り扱いを基本的に変更しない方向

F/S利用者が以下の評価を行えるような情報の開示を目的とする基準
(1)他の企業への関与の内容・これに関連するリスク
(2)上記関与が財政状態、経営業績等に与える影響

≪開示に関する適用後レビューを実施へ≫
個々の基準を開発する際、有用性・コストの観点から開示が必要と考えられる項目を定めてきたが、その運用状況についてレビューしたことはない。

企業会計基準委員会は個々の基準に基づいて作成されたF/Sが公表時に想定していた有用な情報を提供しているかレビューすることに意義があると判断

今後、開示に関する適用後レビューを実施する方向


5.滞在日数だけでは住所判断の決め手にならず

税法上、「居住者」か「非居住者」のどちらに該当するか。

居住者:国内に「住所」を有し、かつ引き続き1年以上「居所」を有する個人
非居住者:居住者以外の個人

「住所」の認定がポイントとなるが、最高裁判決を引用すると、下記6項目を客観的事情に照らして総合的に勘案するとしている。
・滞在日数
・生活場所及び同所での生活状況
・職業及び業務内容、従事状況
・生計を一にする配偶者その他の親族の居住地
・資産の所在
・生活にかかわる各種届出状況等

生活の本拠地であることをうかがわせる重要な事情があるかなど、1つの項目のみで判断せずに、すべてを勘案して判断すること


6.類似業種の株価

・非上場会社の評価方法である「類似業種比準方式」の計算式で使用
・事業の種類が同一又は類似する複数の上場会社の株価の平均値

■平均値の計算期間の選択拡大
従来は「課税時期の属する月以前3か月間の各月のうち最も低いもの」か「前年平均株価」
29年度改正で「課税時期以前2年間の平均株価」が追加

■類似業種の業種目の減少
現在の118から若干減る見込み(6月公表)


7.税務の動向 仮想通貨の消費税法上の取り扱い

2971日以後の取り扱い
・仮想通貨の購入・譲渡⇒非課税扱い
・課税売上割合の計算から除外※

※以下の取引については課税売上割合の計算上、非課税売上に含めないこととされている
①支払手段の譲渡
②特定の金銭債権の譲渡
③売現先取引による債券等の譲渡

■支払手段にかかる関連規定
収集品,販売用に該当するもの(記念硬貨や古銭等)は非課税の対象から除外されているため、課税対象となる。なお、仮想通貨を「投資用」に購入・譲渡した場合でも非課税扱いとなる
(別段の規定が設けられていないため非課税でOK


8.<税務相談>法人税《完全支配関係子会社から残余財産の現物分配を受けた場合の課税関係》

■事例
完全子会社が解散し残余財産が確定
土地(帳簿価額3,000万円、時価1,500万円)の分配(適格現物分配)
保有する子会社株式の簿価は1,300万円、子会社の資本金等の額は2,000万円

■質問
1.みなし配当の金額は?
2.子会社株式の消滅時の譲渡損益と別表処理は?
3.土地の分配は土地の譲渡に該当するのか?

■回答
1.について
・適格現物分配である以上、時価ではなく簿価ベースで計算
⇒本ケースでは、1,000万円と算定(土地簿価3,000万円-資本金等2,000万円)
 なお、受取配当等の益金不算入が適用、適格現物分配は源泉徴収は不要

2. について
・譲渡損益は認識なし、譲渡損益相当額は分配を受けた法人の資本金等の額から減算
⇒本ケースでは、譲渡益が700万円発生、そのため資本金等をプラス加算する
 (土地簿価3,000万円-(みなし配当1,000万円+子株簿価1,300万円))

3.について
・適格現物分配の場合には、その現物分配をした資産の帳簿価額により譲渡損益を計算
⇒譲渡損益は生じない
⇒性質的には、損益取引と資本等取引の混合取引と解されている
※残余財産の分配は資本等取引の範囲に含まれている、一方、通常は時価による譲渡と計算される


9.権利確定条件付き有償SOの実務対応報告案

・従来は複合金融商品適用指針を利用していた⇒今後はSO会計基準等に準じた処理となる
・従来は発行時の払込価額を新株予約権として計上し、払込時に資本に振替していた。
・今回の草案
 業績条件を満たす可能性が高くなり、権利不確定による失効の見積もり数に重要な変動が生じたためSOの数を見直す
 SO価値が増えた分を
  株式報酬費用✕✕✕/新株予約権✕✕✕
 と処理する。


10.組織再編税制の改正の概要

1.スピンオフ税制
⇒支配株主の存在しない新設分割型分割や子会社株式の現物分配は現行では非適格
⇒上場企業で適格となるケースは稀
⇒活発な組織再編できる様に適格要件を緩和
⇒対象となる取引は下記
・単独新設分割型分割
100%子会社株式を対象とした現物分配

2.スクイーズアウト税制
⇒吸収合併及び株式交換に係る対価要件の緩和
⇒被合併法人等の発行済株式の2/3以上を有する場合の適格要件の緩和


11.スクイーズアウト税制の整備に関する実務ポイント

■適格スクイーズアウトの対価要件
(改正前)
・完全親法人株式以外の対価は×
(改正後)
・合併法人又は株式交換完全親法人が株式を3分の2以上保有する場合は金銭交付OK
・株主による価格決定申立金銭、株式売渡請求による金銭交付はOK

■非適格スクイーズアウトに係る税務上の取扱い
・株式交換完全子法人の資産の時価評価課税:
⇒含み損益が一定額未満※の資産、帳簿価額が1,000万円未満の資産は除外
・端株交付に係る金銭交付の取扱い見直し
※完全子法人の資本金等の額の2分の1or1,000万円のいずれか少ない金額

■スクイーズアウトに係る少数株主の課税関係(課税が発生するケース)
・みなし配当課税
⇒非適格スクイーズアウトで合併のケース(金銭交付/不交付を問わない)
・株式譲渡益課税
⇒金銭交付をするケース(適格/不適格を問わない)


12.スピンオフ税制の創設に関する実務ポイント

■スピンオフ税制とは
 特定事業を切り出して独立会社とするスピンオフ等の円滑な実施を可能とする税制

■スピンオフの種類
【適格単独新設分割型分割】
 その分割に係る分割法人の当該分割前に行う事業を当該分割により新たに設立する分割承継法人において、独立して行うための分割として政令で定めるもの

【適格株式分配】
 完全子法人の株式のみが移転する株式分配のうち、完全子法人と現物分配法人とが独立して事業を行うための株式分配として政令で定めるもの

■課税関係
【適格単独新設分割型分割】
分割法人
 ・移転する資産に対する譲渡益課税なし(簿価移転)
 ・減少資本金等の額と減少利益積立金額の合計が、移転純資産簿価と同額
分割法人株主
 ・みなし配当課税なし、分割法人株式の譲渡益課税なし
 ・分割法人株式簿価を分割承継法人株式に付替え

【適格株式分配】
現物分配法人
 ・子法人株式の譲渡益課税なし(簿価移転)
 ・減少資本金等の額は、子法人株式の簿価と同額
現物分配法人株主
 ・みなし配当課税なし、現物分配法人株式の譲渡益課税なし
 ・現物分配法人株式簿価を子法人株式に付替え


13.監査役の視点からの監査法人のガバナンスコード

■ガバナンス・コードの採用により変わると思われる点
ガバナンス・コードにおいて示されている多くの点は、監査法人にとって当然であるが、当然かどうかと、適切に対応されていたか否かは別問題であり対応の精度が望まれる
・監督・評価機関の構成員に独立性を有する第三者を選任・役割の明確化
⇒以前は重要な機関に第三者を選定する事はなかった
・人事管理・評価および報酬に掛かる方針を策定
⇒職業的懐疑心を適正に発揮したかどうかの具体的な評価がなかった
・法人の構成員に対し、例えば非監査業務の経験や事業会社等への出向を含め、会計監査に関する幅広い知識・経験を獲得する機会を与える
⇒積極的には行われてこなかった
・利害関係者による評価と外部に向けた開示を充実
⇒以前はほとんどなかった


14.株主総会決議の瑕疵・動議

■総会決議の瑕疵を争う方法:以下の訴えによること可能
(1)訴え
・決議取消⇒実務上、大多数
・決議無効確認(決議内容が法令違反)、決議不存在確認(総会手続に重大法令違反)⇒稀

(2)決議取消事由
・招集手続又は決議方法が法令定款違反or著しく不公正(例:2週間の招集期間不足)
・決議内容が定款違反
・特別利害関係者の議決権行使による著しく不当な決議(例:事業の譲受予定人が議決に加わり可決)

(3)提訴権者:株主等(株主、取締役、監査役、精算人、執行役)、被告:会社
(4)提訴期限:決議の日から3ヶ月以内

■動議
(1)手動的動議(議事進行上の動議:採決方法・休憩・黙とう等)
⇒以下(議場判断) を除き、議長判断。※動議に対する議長の考えを議場に諮る形がスムーズ。
・議長不信任
・総会提出資料検査役選任
・会計監査人出席要求
・延期続行

(2)実質的動議(議案提案)
⇒不適法な内容、招集通知記載事項から予見し得ない内容は議長が排除可能。
※予見可能な動議は必ず取り上げる。
※動議か意見か不明な場合は、株主に確認する。


15.有形固定資産の減価償却方法の変更

■質問事項
大型設備の新規導入を機に、有形固定資産の減価償却方法を、定率法から定額法に変更する場合の会計上留意すべき事項

■減価償却方法の変更
減価償却方法は会計方針に該当
⇒会計方針を変更するには、会計基準等の改正に伴う場合(強制)とそれ以外の正当な理由による場合
(自発的)の2パターンがある
⇒自発的に会計方針を変更する場合は5要件を満たしている必要がある。

■遡及適用の有無
正当な理由による会計方針の変更は過去の期間全てに遡及適用することが原則。
⇒但し、減価償却方法の変更については遡及適用しない

■注記
過年度遡及会計基準上、会計上の見積りの変更と同様に取り扱われるものの、会計方針の変更に該当するため、変更の内容や変更を行った正当な理由等を注記する。


16.完全子会社の整理と税務

B社はA社が設立した完全子会社だが、業績不振が続いている。
A社はB社を吸収合併するか、解散させたいと考えており、それに先立ってA社⇒B社への債権を放棄した。

B社を吸収合併する場合)

B社は吸収合併されることで事業は継続される。
その為、「回収可能性がない」とは言い切れなくなり、債権放棄は寄付金扱いとなる。
なお、完全支配関係内部の寄付金は損金不算入となり、相手側では債務免除は益金不算入となる。

また、A社はB社を設立以来、完全支配していることから、合併は適格合併となり、B社の未処理欠損金は制限なく、A社で引き継ぐ事ができる。


17.資本政策事例

20175月現在
飲食業を営むA
20193月期を直前期とし、マザーズ上場を目指す
現在の資本構成は、オーナー80%、オーナー以外の役員20%
飲食業の多店舗展開を行っており、出店にあたっては、資金調達がカギ
これまでは借入金調達がメイン

オーナーの希望
・上場後も経営権は持ちたいが、当面の個人的な資金負担は難しい
・上場までの出店を加速するために、出店費用は資本政策の中で賄っていきたい
・経営権の安定のため、安定株主対策も進めたい
・従業員への福利厚生も考えたい

1.上記希望を達成するための資本政策の手段は?
1)第三者割当増資
⇒割当先として安定株主として将来機能することが期待できる取引先企業、金融機関などに対して実施

(2)オーナー向け新株予約権の発行
⇒オーナーの持株比率を保ち、経営権を維持

(3)従業員向けストックオプション、持株会の設立
⇒福利厚生目的、インセンティブ目的で帰属意識を高める

2.安定株主比率はどの程度か?
安定株主は、オーナー、オーナーの同族株主、取引先企業、金融機関、役員、従業員持株会など
比率は、株主総会の特別決議に必要な3分の2以上の議決権を確保しておくことが望ましい。
また、オーナー一族で過半数の議決権を確保しておくことが望ましい。

最低限、株主総会の特別決議の拒否権を発動できる3分の1超は確保しておくべきである。









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2017年5月21日日曜日

5/19 勉強会:有償新株予約権はSOに該当 他

1.有償新株予約権はSOに該当

5/10 ASBJが「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」を公表
※意見募集中
⇒上記の有償新株予約権の会計処理及び開示を明らかにするもの
SO会計基準に定めるSOに該当する旨が明確化された
 付与に伴う従業員等からの払込金額=新株予約権
 付与に伴い企業が従業員等から取得するサービス=費用として計上
⇒なお適用範囲は、従業員等を引受先とし、市場価格がないなど典型的な権利確定条件付き有償新株予約権
・適用時期;実務対応報告の公表日以降
(公表日前に付与した取引は、注記を要件に従来採用していた会計処理を継続適用可能)


2.住宅の貸付け、再転貸借も非課税取引に

・審判所が初めて下記の判断を示した
・転貸借だけでなく、再転貸借も非課税とされる住宅の貸付に該当
・ただし、契約書その他で、住宅として転貸する事を明らかにする必要あり


3.事業承継スキームにも影響する遺留分算定方法の見直しの行方

相続関係の民法の改正項目で、遺留分の算定方法の見直しがあがっている

■用語説明
・遺留分…相続において、最低限の権利として認められている相続できる額(割合)
・減殺請求…遺言書等で遺留分を侵害された場合に、最低限度額の相続を請求すること

■遺留分算定方法
(現状)…相続開始時点から遡って「1年以内」に贈与されたものは遺留分に含む
(改正案)…相続開始時点から「10年前」に贈与されたものは遺留分に含む

■見直された場合の影響
・事業承継スキームに影響が出る
⇒自社株の生前贈与は期間に関係なく遺留分減殺請求の対象 
※特例あり
自社株の評価額が高いと、遺留分減殺請求される可能性がある
10年以上前に自社株を渡しておけば、円滑な承継が可能となる


4.収益認識、平成3341日から適用へ

・企業会計基準委員会は平成296月を目途に収益認識に関する包括的な会計基準の公開草案を公表する予定

・適用時期
平成3341日以後開始する事業年度より
※システム改修等の準備期間、経営管理の変更、開示への対応等を考慮
※平成3011日以後開始する事業年度より、早期適用可

<税効果会計、注記事項は早期適用を容認>
・企業会計基準委員会は税効果会計に係る会計基準及び同適用指針を開発中
・適用時期
平成3041日以降開始する連結会計年度及び事業年度の期首より
※改正事項のうち、表示(1)及び注記事項(2)に関しては、公表日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表より、早期適用可
(1)DTADTLをすべて非流動区分に表示:流動比率に対する影響は限定的
(2)注記事項の追加:財務諸表利用者に対して、より有用な情報を提供可

・従来の会計処理と異なる場合、「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」に該当
⇒新たな会計方針を過去のすべての期間に遡及適用


5.サービス開発の四要件充足は別年度で可

H29年度改正において、
研究開発税制の対象に「サービス開発」が追加された。

適用要件として、
・情報収集、取得をしている
・分析している
・役務提供の設計をしている
・確認を行っている。
上記要件を満たすサービス開発を目的とした試験研究につき、税額控除が受けられる。

最終的に上記4要件を満たせば問題ないため、異なる事業年度で要件を充足したとしてもその事業年度で税額控除適用可。

なお税務当局は、「事例を積み上げる必要あり」とのことで、税務調査の結果、税額控除の適用が認められないケースも考えられる。


6.役員の人間ドック費用が給与になるか争われた裁決

役員のみが受診した人間ドック費用は福利厚生費?役員給与?

■人間ドックの費用を経費とするための要件
(1)費用を会社が負担すること⇒○
(2)著しく高額でないこと⇒○
(3)全従業員が対象であること⇒×
・健康診断は全従業員が対象であったが、人間ドックは役員のみ
・金額の差が大きい(人間ドックは約35万円。健康診断は最大2万円)

■裁決
本件は役員のみが対象の人間ドックであったため、損金不算入の役員給与に該当
さらに、給与所得として所得税の課税の対象にもなる


7.消費税:国外支店が購入したデジタルコンテンツの課税方式

■国外支店が国外事業者から事業者向けデジタルコンテンツを購入した場合
⇒国内取引に該当し、リバースチャージ方式の対象となる。

■平成2911日からの改正
国外支店が受けた事業者向けデジタルコンテンツについて「国外で行う資産の譲渡等にのみ要するもの」に限り、課税の対象外となる

■具体例
・国外支店がその支店だけで利用するクラウドの経理システムを購入した場合などが該当


8.<税務相談>資産税《抵当権の設定されている土地の代物弁済による譲渡》

■事例
甲は乙から8,000万円の借金あり
甲の財産はA宅地(相続税評価4,500万円、借金の担保になっている)、他は年間50万円の年金のみ
⇒債務の全額を弁済することは不可能

■質問
1.甲の生前に代物弁済(A宅地を乙に譲渡)した場合の課税関係は?
2.甲に相続が開始、債務の弁済能力のある長男がA宅地を相続し、代物弁済した場合の課税関係は?

■回答
1.について
・資力を喪失し債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合は
⇒譲渡所得は非課税所得
・債務免除益は、甲の贈与税の課税対象外
⇒贈与税対象外の債務免除益は所得税上の一時所得だが、資力喪失のケースは課税対象外

2. について
・単純承認による相続のケース
⇒譲渡所得は課税、債務免除益は贈与税の対象
・限定承認による相続のケース
<代物弁済による譲渡所得について>
⇒長男にはA宅地の(代物弁済時の時価-相続時の時価)が譲渡所得として課税
時間差が無い場合課税問題は生じない
⇒被相続人には相続時の時価による譲渡所得が発生、相続人が準確定申告し納税義務あり
ただし、納税より抵当権により担保されている債権の弁済が優先、納税は取得財産を限度とするためなし
<代物弁済による債務免除益について>
⇒債務免除益は生じないため贈与税は課税されない
⇒限定承認のケースでは、相続により取得した財産の限度で債務を弁済すれば足りるため


9.仮想通貨の勢力分布

・世界に存在する仮想通貨は数百種類
・そのうち日本で流通しているものは20種類ほど
・代表的なものは
 ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、リップル(XRP
201758日現在の世界シェア
  ビットコイン:54
  イーサリアム:17
  リップル  :12
201741日、改正資金決済法が施行
 ⇒仮想通貨の会計処理の検討が始まっている


10.航空機リース 資産負債計上をめぐる裁判例

(事案)
JALは航空機購入にあたって、航空機メーカーから報奨金を受け取っており、それを営業外収益に計上していた。
⇒これが『虚偽の記載』にあたるかどうかが争われた。
 実質的に値引きであり、費用の控除にすべきではないか…。

(第1審、控訴審)
・営業外収益への計上については『一定の合理性』があり、また『長く業界の慣習』であり、『公にされていた』ことであることから、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従ったものといえる。

このように、会計上妥当か否かの判断に「業界の慣習」が加味されることがある。


11.内部統制報告書における開示すべき重要な不備

・自動車関連の部品を製造、販売するA社(上場会社:決算 3月決算)
・販売先にリコール対象品があることが判明
・リコール公表をあえて差し控えた結果、マスコミからその事実を2月に指摘される
内部統制報告書を開示する上での留意点は?
・内部管理体制の問題を検討
⇒リコール問題が社内でいつの時点で顕在化したか?どのような報告ルートを通じて、社内のどの職階まで報告されたかを把握
・会社の現状を把握した上で、全社的な内部統制面での問題点を検討
・会計処理の影響を検討

⇒リコール損失引当金など、引当金の計上を合理的に行うことができるか?合理的な見積が可能な場合は、適切な引当金の計上が必要









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2017年5月13日土曜日

5/12 勉強会:役員給与・株式報酬関連税制の改正の概要 他

1.改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」等の解説

・指定国際会計基準、修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している国内子会社等を実務対応報告第18号および第24号の対象範囲に含める
 ※実務対応報告第18号、24号が開発されたときに国内子会社等がIFRSを適用することは想定されていなかった
⇒この結果、該当の国内子会社等が実務対応報告第18号、24号を適用する場合には、一定の修正(のれんの償却等)を前提に、それらの連結財務諸表を連結決算手続上利用することが可能

・適用時期:平成2941日以後開始する連結会計年度の期首から


2.過大役員給与めぐる税務訴訟、東京高裁も納税者主張を認めず

泡盛の製造、販売等を行うA社における役員給与の損金算入の是非について争われた裁判
1.地裁の判断
類似他社の役員給与の最高額-A社の役員給与
=不相当に高額な部分(損金不参入)

2.A社の主張(控訴理由)
(1)地裁で国が類似他社の抽出に売上高倍半基準※を使用したのは違法
(売上と給与は相関関係が無い)
A社の売上高の2倍以下1/2倍以上の範囲内にある同業者を選定する方法
(2)恣意的な役員給与支給による法人・個人を通じた租税回避の事実はない
(3)確定申告時点で、不当に高額な金額があると予測する事は不可能

3.判決理由
2-(1)⇒売上高と営業利益、純資産、総資産及び従業員数の間には、それぞれ相関関係があるとされており、売上高倍半基準の採用は合理的
2-(2)⇒租税回避事案でない事は、給与が不当に高額でない根拠にならない
2-(3)⇒役員給与が類似法人に比べて大幅に高額と認識する事はできていたはず


3.公共施設等運営権の会計処理が近く公表

企業会計基準委員会が、「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」を公表

■会計処理
・合理的に見積もった支出額の総額を無形固定資産に計上
・原則として、運営権を保有する期間を耐用年数として償却
・更新投資(維持管理費)のうち、資本的支出の部分は資産と負債を同額計上する

■注記事項
(1)運営する公共施設等運営事業の概要
(2)減価償却の方法
(3)更新投資に係る事項(維持管理費用等)

■適用時期
H29/5/31以降終了する事業年度or4半期会計期間より適用


4.実務対応報告第34号「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い」について

■前提
・退職給付債務=退職給付見込額(現在価値)-年金資産
・退職給付見込額(現在価値)の割引計算に利用する割引率は、安全性の高い債券の支払見込期間における利回りを基礎とする。

■本実務対応報告における取扱い
・上記利回りが期末日時点においてマイナスとなる場合、
(1)マイナスの利回りをそのまま利用する、もしくは、(2)利回りの下限としてゼロを利用する

■適用時期
・平成29331日に終了する事業年度~平成30331日に終了する事業年度


5.業績連動給与引当金は損金算入不可

H29年度改正にて、業績連動給与(旧利益連動給与)の支給に伴う算定指標に、複数年度にわたる指標が加えられた。

この改正に伴い、業績連動給与の損金経理要件に、「引当金勘定に繰り入れられた金額を取り崩す方法により経理すること」との文言が追加。

すなわち、
引当金計上時⇒損金算入不可
取り崩し時⇒損金算入可

()
5年間で最大200の業績連動給与が支払われる。

1年目40 ⇒損金算入×
2年目40 ⇒損金算入×
3年目40 ⇒損金算入×
4年目40 ⇒損金算入×
5年目160 ⇒損金算入○(債務確定=取り崩し)
5年目40 ⇒損金算入○(5年目は引当金計上しないため)

∴算定対象期間の最終事業年度に損金算入されることとなる。


6.飲食店業の所得帰属めぐり原処分取消し

■事例
・ホステス業を行う飲食店で働いているチーフに所得税と消費税が課される
・その後チーフが、自分に収益は帰属していないとして処分の取り消しを求める

■ポイント
・チーフとママのどちらが事業主であるか?

「チーフ」
・経理担当事務者、飲食店営業許可の名義人、建物賃貸借契約の名義人、開業届出書の届出人
「ママ」
・資金管理、利益管理、ホステスの雇用、労務管理等を行っており、明らかに一従業員の立場ではない
・契約書の多くがチーフ名義となっているのはママの指示

■裁決
・事業主は、実質的に事業収益を享受している「ママ」であると結論
⇒実質所得者課税の原則を踏まえて総合的に判断すると、名義人が事業主であるとは限らない


7.消費税:所有権移転外リースと高額特定資産

■高額特定資産
棚卸資産又は調整対象固定資産であって、税抜対価が1,000万円以上のもの。
簡易課税制度の適用がない課税事業者(原則課税の課税事業者)が高額特定資産の取得をすると原則3年間は免税事業者になれず、簡易課税も取れない。

■所有権移転外リースで資産を取得した場合
リース総額が1,000万を超える場合には高額特定資産に該当する

■留意点
リース取引にかかる仕入税額控除は
(1)原則:リース契約をした課税期間に仕入税額控除
(2)特例:賃貸借処理にもとづく仕入税額控除も認められる
⇒特例を取った場合でも「高額特定資産」の取得となる


8.最近の事業承継スキーム報道を読み解く③総則6項による否認事案(その2:キーエンス事案)

■事例
・創業家の資産管理会社たるティ・ティ社(キーエンス株を17.8%保有) が、
 ⇒約30年前に転換社債を創業家に発行
 ⇒創業家はその転換社債を別の資産管理会社に現物出資
・この別の資産管理会社(A)の株式を相続時精算課税により贈与
 ※本件はかなり複雑のようで、1局面のみ記載している

■効果
A社の株価は、類似業種比準方式が採用された
 ⇒A社の資産の大部分はティ・ティ社の転換社債だが、転換社債は株式保有特定会社の判定対象外

■課税庁の否認のロジック
・権利行使期間の延長を何度か繰り返していた
 ⇒第三者との関係では、あり得ないような状況だった
・贈与の直前々期までは赤字続き、贈与の直前期に利益を計上
 ⇒比準要素数1の会社を外した

 以上より、一連の行動は計画的とし、総則6項を適用して転換社債は実質株式と認定
 ⇒A社は株式保有特定会社として評価が必要と判定

■その他
29年税制改正にて、新株予約権付社債も株式保有割合の計算上は株式扱いとなった
・相続時精算課税の効果
 ⇒贈与税率は一律20%、贈与時の株価で相続時の価額が固定される
 ⇒本件では低い価格で固定しようとしていたが否認された
ただ、将来株価上昇が見込まれる場合にはメリット有り


9.仮想通貨の会計処理開発/審議中

・草案公開:20177月から8
201663日公布の改正資金決済法において、交換業者は登録&財務諸表監査が必須になった。
・財務諸表監査が必須になったことで会計処理の明確化が必要になった
 ①仮想通貨の利用者の会計処理/期末評価
 ②交換業者の会計処理/期末評価、預かり資産の処理/売上は純額or総額
・適用対象をビットコインに限定するかどうかも議論されている


10.株主提案権と委任状勧誘合戦

1.株主提案権
(1)議題提案権
・株主総会の目的(議題)を提案すること
・株主総会の8週間前までに請求
・資格要件は、総議決権の1/100以上または300個以上の議決権を6か月前から継続して有すること
(2)議案提案権
・議題についての決議案を提案すること
・資格要件は、株主総会に出席している株主
(3)議案通知請求権
・議案の要領を通知することを請求すること
・株主総会の8週間前までに請求
・資格要件は(1)議題提案権と同じ

2.委任状勧誘合戦
(1)委任状勧誘合戦とは
⇒議決権の行使を第三者に委任させるように勧誘すること
(2)メリット
⇒委任された者の意思決定通りの議決権が行使されることになる。
⇒実際に参加されて議決権行使される場合、覆される可能性があるため、委任状の方が議決権の個数の獲得競争上、有利。


11.役員給与・株式報酬関連税制の改正の概要

■平成29年度改正の概要
(1) 株式報酬が役員給与の1つとして制度に組み込まれた⇒下記(3)(4)に関連

(2) 定期同額給与
・支給額が同額 ⇒ 支給額又は手取額が同額
・改訂期限の例外 ⇒ 確定申告書の延長月数+2ヶ月経過日が期限
※1か月延長承認を受けている会社なら3か月なので実質多くの会社は変更なし

(3) 事前確定届出給与
・適格株式又は適格新株予約権の交付が給与の対象に。

(4) 利益連動給与
・適格株式又は適格新株予約権の交付が給与の対象に。
・業績連動指標の範囲 ⇒ 「利益の状況を示す指標」に「株式の市場価格の状況を示す指標」が追加
※上記2つの指標のいずれかと同時に用いられることを条件に「売上高の状況を示す指標」も追加
・指標の計測期間 ⇒ 改正前:単年度⇒中長期の期間設定が可能に。
・子法人の役員への支給 ⇒ 完全支配関係がある子法人に支給する場合も対象に
※ただし、親会社は非同族会社でないと×


12.平成293月期の有価証券報告書の作成上の留意点

■経営方針等の記載
・経営方針の記載について、決算短信でなく有報で開示すべきとされた

■減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い
・平成2841日以後に取得する建物附属設備及び構築物に係る減価償却方法を定額法に変更するときは、法令等の改正に準じたものとし、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。


13.業績連動給与に関する実務ポイント

■対象資産
・役員給与として損金算入○のためには
 ⇒役員在任中の給与として支給される場合
 ⇒金銭、適格株式(譲渡制限付株式は×)、適格新株予約権
 ※譲渡制限付株式が×なのは、制限の解除が不確定な将来の業績によるため、譲渡制限付株式の交付時の報酬債権の資産性に疑義があり、資本充実原則の観点から除外(発行法人はては当該対価相当額を前払費用として資産計上)
 ⇒非同族会社である内国法人、または非同族会社と完全支配関係にある内国法人に限定(実質、上場している100%親会社発行に限られる)


14.定期同額給与に関する改正のポイント

■手取額が一定でも定期同額の取扱い○に
従来は「額面が」毎月一定であることが要件
⇒日本企業で働く外国人役員の報酬が主に対象(手取額保証の契約が多い)
⇒社会保険料等グロスアップすると額面が定額にならない点について問題があった

■給与改定期限の延長:延長月数+2ヶ月までOK
従来は「決算後3ヶ月」まで
⇒申告期限の延長の特例の改正(決算の4か月後まで延長可)を盛り込む形
⇒例:3月決算法人で特例により7月末が申告期限⇒給与改定期限は9月末


15.減損処理を行った減価償却資産に係る論点

■前提(減損理由)
一定期間遊休状態が続いている資産について、今後も操業開始の目途が立たないため減損処理をしている。

■会計上の減価償却の取扱
・減損の有無に関わらず、遊休資産について減価償却は行う。
・減価償却費の計上区分は営業外費用。
・⇒遊休資産は営業活動に貢献していないため。

■税務上の減価償却の取扱
・遊休資産の減価償却は認められない(損金不算入)。
・稼働休止資産も同様。
⇒事業の用に供していないものは税務上の減価償却資産の範囲から除かれる。
⇒ただし、いつでも稼働しる稼働休止資産は減価償却資産に該当。

■減損損失のスケジューリング
・減損損失に係る将来減算一時差異は減価償却を通じて解消される。
⇒減損対象資産が事業の用に供している資産として認められる場合、スケジューリング可能。
⇒事業の用に供していない場合、除売却の計画がないとスケジューリング不可。


16.IFRS適用にあたっての実務上の留意点

・監査チームは従来の日本基準における監査チームの方が効率的。
 ⇒ 会社のビジネスをよく理解しており、IFRS上で検討が必要な論点を把握しやすい。
IFRSを適用することでどのような差異が生じるか、子会社・関連会社も含めて早めに整理し、経営者が理解する
IFRSの開示、注記の作成は想像以上に時間がかかるので、予め準備を進めておく。
 ⇒ ある項目を開示するかどうかの重要性は会社によって異なり、安易に他社事例を真似することは難しい。


17.ロックアップ

・株式を新規公開する際に、創業社長・VCなどの公開前の企業の株主が、公開後の一定期間(一般的には180日)、株式市場(マーケット)で持株を売却することができないよう、公開前に契約を交わす制度
・上場直後(公開直後)に流通量が少ない株式を大量に売却することにより、株価が大幅に下落するのを防ぐことを目的
・通常、目論見書(※)で内容確認することが可能

(※)投資家に交付する有価証券の内容や、募集または売出しの条件を記載した書類









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