2015年7月24日金曜日

7/24 勉強会:平成27年度における所得税関係の改正について 他

1.平成27年度における所得税関係の改正について

■国外転出をする場合の譲渡所得等の特例等の創設
⇒国外転出時点の含み益について課税する制度
(1)国外転出をする場合の譲渡所得等の特例
(2)贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例
(3)上記にかかる納税猶予 など

■国外居住親族に係る扶養控除等の書類の添付等義務化
⇒非居住者の親族に係る扶養控除等についての改正
下記に該当する場合は一定書類を添付する
(1)確定申告において国外居住親族に係る
  扶養控除、配偶者控除等を受ける場合
(2)給与等の源泉徴収において国外居住親族に係る
  扶養控除、配偶者控除等を受ける場合
(3)年末調整において国外居住親族に係る
  扶養控除、配偶者控除等を受ける場合
※一定書類…親族関係書類及び送金等関係書類

■貸倒引当金制度の改正
⇒簡便法による実質的に債権とみられない金額の計算に用いられる
 基準年が平成27年及び平成28年とされた
※平成27年分以後の所得税について適用
 平成26年分以前の所得税については従前どおり

■ジュニアNISA制度の創設
(1)配当所得の非課税
(2)譲渡所得の非課税

NISA制度の改正
(1)限度額の引上げ(120万円)

■住宅ローン控除適用期間の延長
⇒平成31630日まで延長


2.経営判断の原則とは

⇒取締役に善管注意義務違反があったかどうかの判断基準

経営判断の原則の下では、たとえ会社が損害を受けたとしても、「取締役の意思決定の過程と内容に著しく不合理な点」がない限り、取締役に善管注意義務違反に問われない。
⇒損害賠償責任を免れることができる


納税通知書の郵便事故めぐる判決相次ぐ

■納税通知書の郵便事故(不達や遅延)を理由に納税者が地方公共団体を訴えたが、敗訴となる事例が相次いでいる

 (1)納税通知書が到達しなかった
 (2)納税通知書が遅れ、期限内納付が出来なかった

⇒・不達や誤送が相当数発生していた等の事象が無い
 ・郵便事故が発生したとは伺えない

  等、どれも証拠が弱く納税者敗訴となっている


4.税効果開示、294月適用を目途に検討

■回収可能性の判定のみならず、開示項目や税効果に適用される税率(公布日基準)等の見直しも行っている。

■開示項目の見直し
 平成303月期からの適用を検討
∴場合によっては、海外子会社の所在地国における税制を把握するための調査やシステム対応等が必要
 ⇒一定の準備期間を要する

■税効果に適用される税率(公布日基準⇒実質的確定基準)
 平成283月期から適用を検討
∴平成263月期、平成273月期と問題が浮上したのを受け、早期の適用を検討


5.賃貸用建物の取得と借入金の計上、相続税の行為計算否認めぐり裁決

■事例
(1)X氏がA社よりA社所有の建物を3.7億円で購入する売買契約を締結。
(2)X氏が購入資金としてA社より3.7億円を借り入れる契約を締結。
(3)X氏の死亡により相続人Y氏は建物・借入金を相続し申告。
(4)税務当局は上記行為につき「行為計算否認」を適用し、Y氏へ更正処分等を行った。

()相続税における行為計算否認とは同族会社等が行った行為(契約等)につき、相続税等の負担を不当に減少させる結果となる場合には、税務署長が行為等に関わらず再計算して更正を行うことができる。

■争点のポイント
Y氏が納付した相続税につき、上記(1)(2)の行為が相続税を不当に減少させる結果になるか否か。
⇒一般的な面からみて経済的な合理性があるかないか争点

■審判所の判断
・抵当権は設定されているが権利金の授受がない。
・根抵当権の存在を考慮せず売買金額を算定。
・借入金の弁済期は20年後であるが、その支払いの担保がない。
・X氏が死亡した2ヶ月後にA社が買い戻しした。

上記に事実より
(1)の売買契約は一般的な取引と比較して不自然かつ不合理であることから、「行為計算否認」の適用を認める裁決を下した。
⇒売買契約はなかったものとして、税務当局主導による課税価格の再計算をすることとなる。


6.国境を越えた消費税、特定課税仕入れで通達改正

H27.10.1以後、国外事業者から受けた「事業者向け」電気通信利用役務の提供については、国内事業者が消費税等の申告・納税義務を負う(リバースチャージ方式)
・経理上の取扱いが、通達で示された
例)外国企業に、広告配信サービス(税込み10,800円)を依頼した。

⇒原則の仕訳例
 広告宣伝費 10,800 / 現預金 10,000
               / 預り金   800

⇒その他の仕訳例(個人事業者等)
 広告宣伝費 10,000 / 現預金  10,000
 仮払金等   800 / 仮受金等  800


7.受取配当益金不算入 前期末帳簿価額の計算について

■対象⇒関連法人株式等(1/3超・100%未満)
・控除負債利子の計算が必要
283月期においては原則法の計算が必要

※原則法
前期末及び当期末の関連法人株式等の帳簿価額を計算に使用

■設例
前期末 A株式 30%保有 帳簿価額30
      B株式 40%保有 帳簿価額40
当期末 A株式 40%保有 帳簿価額40(買増)
        B株式 40%保有 帳簿価額40
の場合、

前期末の関連法人株式帳簿価額 40
当期末の関連法人株式帳簿価額 80
で計算

※あくまで前期末において1/3超保有していたものだけが対象となる


8.相続税:自民党が『遺言控除』の検討に着手

■概要
・自民党内で『遺言控除』の創設が検討されている。
・相続税の基礎控除に上乗せする形で控除枠を設定する。
・控除額や遺言の形式要件等を検討中。
H29年度以降の税制改正要望となる見込み。

■目的
遺言の作成にインセンティブを与え、作成を促す。
・遺産分割をめぐる紛争の防止
・介護の貢献に見合った遺産相続を促す  等...


9.非流動性ディスカウント

・非流動性ディスカウントは、その投資にどれほどの流動性を要求するかという投資家側の主観的事情や保有形態によって左右される

カネボウの地裁決定(H20.3.14
・定数株主は譲渡を余儀なくされたのであるから、
 株主が進んで株式を売却することを前提とした非流動性ディスカウントを考慮すべきでない


10.平成283月期第一四半期の四半期報告書作成の留意点

1. 企業結合会計基準等の改正に関する留意点
(1) 主要な経営指標等の推移
・『四半期(当期)純利益 ⇒ 親会社株主に帰属する四半期(当期)純利益』へと変更
・当該基準を過年度に遡及して適用している場合 ⇒ その旨を注記

(2) 本表(BSPLSS
・表示の変更
  ※『少数株主持分 ⇒ 非支配株主持分』 へ変更など

(3) 会計方針の変更に関する注記
 a) 遡及して適用
 ・表示を変更した旨を注記
 ・期首残高が、当該会計方針を遡及適用することにより変動した金額を注記
 b) 当期首から将来に渡って適用
 ・表示を変更した旨を注記
 ・当第一四半期において、会計方針を変更したことによる影響額を注記

(4) 追加情報
 ・当該基準を早期適用した場合には、その旨を追加情報に注記
   ※当該会計基準の適用年度 :平成27年度41日以降開始する事業年度

(5) 一株当たり情報
 ・表示の変更

(6) 四半期連結CS
 ・連結範囲が変わらない場合の、子会社株式の取得、売却の表示区分の変更
  『投資CF ⇒ 財務CF
 ・比較情報(前年同期のCS)の科目の組換は不要(『-』表記)

2. 非財務情報に関する留意点
 ・役員の男女別人数と女性比率を記載


11.国境を越えた役務の提供に係る消費税課税の見直しの概要

■概要
(1) 適用対象・適用時期
  適用対象:電気通信利用役務
  適用時期:2015101日以後

(2) 内外判定基準の見直し
  現状:役務の提供を行う者の所在地
     ⇒役務の提供を受ける者の住所等

(3) 課税方式の見直し
  事業者向けの役務提供⇒申告義務を役務提供を受ける国内事業者に転換

■趣旨
 同一の取引について、国内事業者による提供は消費税が課税されるのに国外事業者による提供は消費税が課税されない
 ⇒課税の不公平


12.平成27年度税制改正における法人税関係の改正について

・法人税率の引き下げ(平成2741日以後開始事業年度より)
 25.5%→23.9%に引き下げ

・欠損金の繰越控除(中小法人以外)
 -平成2741日~平成29331日までの間に開始する事業年度
 所得の65

 -平成2941日以後開始事業年度
 所得の50

・受配の益金不算入の対象となる配当額を4つに区分
(平成2741日以後開始事業年度より)
① 完全子法人株式等(保有割合100    →不算入割合100
② 関連法人株式等(保有割合1/3超)    →不算入割合100%△負債利子
③ その他株式等                        →不算入割合50
④ 非支配目的株式等(保有割合5%以下) →不算入割合20


13.キャッシュ・アウト

(1) キャッシュ・アウトとは
 ・株主の個別の同意なく株式を取得すること
  →例)上場企業のMBOにおいて、全ての株式を取得するためにTOB1段階目)を実施し、残りの少数株主をキャッシュ・アウト(2段階目)するのが一般的

(2) キャッシュ・アウトと似た制度:特別支配株主による株式等売渡請求制度
 ・総株主の議決権の10分の9以上を有する株主は、他の株主全員に対して全株の売渡を請求できる
 ・異なるポイント
  →株式等売渡請求制度は株主総会を開催しないでキャッシュ・アウト出来る点
  →株式等売渡請求制度は株式だけではなく、新株予約権も対象と出来る
  →株式等売渡請求制度は対象会社の承認が必要(取締役会)、仮に十分な検討が無ければ、取締役の善管注意義務違反の可能性あり


14.中国人 マンションも爆買い ホテル利用目的で

・東京湾岸エリアでは1割強、新宿・六本木などでは2割の部屋を外国人が購入。
・「投資用ホテル」としての購入目的が増えている
・新築マンションを普通に貸しに出せば、利回りは4% 対してホテル利用だと15%
・世界的に利用されているホテルマッチングサイト「Airbnb」を活用
・住民にとっては不特定多数の人間がマンションに出入りし、騒音や犯罪の温床にも
・法律的にはマンションのホテル利用は黒に近いグレー(旅館業は地方自治体への許可申請が必要)
・ただし規制改革で「イベント開催時など、宿泊施設の不足が見込まれる場合は許される」方向に(2016年中に最終結論)

・ホテル管理組合の総会特別決議で禁止にすることもできるが、4分の3以上の賛成が必要










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2015年7月17日金曜日

7/17 勉強会:マイナンバー制度 他

1.国税局の指摘を受け源泉税納付、異議を述べる義務があったか?

■論点
・税務調査で指摘を受け、修正事項に異議を述べずに指摘に応じることは不法行為に該当し、損害賠償請求が成立するかどうか。

■裁判所の判断
・税務調査での指摘内容には合理性がある
・異議を述べずに指摘に応じる行為はそれだけで不法行為になるものではない
・よって損害賠償請求は成立しない

■経緯
・外国法人日本支店(A社)に税務調査があった。
A社の副社長のBが代表を務める内国法人(C社)に対しA社は業務委託費を支払っていたが、税務署は、その業務委託費はBに対する給与と指摘した。
A社はその指摘を受け入れ、追加の源泉税を納付した。
Bは自己に対する課税処分を不服とし、異議を申し立てた。
・異議申し立ては却下されたが、国税不服審判所は業務委託費はBに対する給与ではないとしてA社に行った課税処分をすべて取り消した。
BA社に対して、税務調査の指摘に対して異議を述べる義務があったとし、 A社に対して課税処分の取り消しにかかった費用等について損害賠償請求をした。


追加積立で"積立不足なし"、掛金も損金

■企業の年金制度トレンド
⇒×確定給付型、○確定拠出型 へ

■確定給付型では積立不足問題が生じる可能性がある
⇒政府は成長戦略「日本再興戦略」改訂2015にて「将来の景気変動を見越したより弾力的な運営を可能とする措置」を検討

■具体的な検討事項
・法人税法上、本来の積立額より多く拠出した場合損金不算入であるが、損金算入を検討
・企業会計上、本来の積立額より多く拠出した場合には「積立不足なし」と取り扱うことを検討


3.個人番号関係事務実施者

・個人番号【関係】事務実施者
 ⇒マイナンバーを記載した書面(源泉徴収票等)の提出をする者のこと
  民間の企業等が該当する

・個人番号【利用】事務実施者
 ⇒マイナンバーにより行政事務を行う者
  行政機関、地方公共団体、独立行政法人、国税庁等が該当する

…両者をあわせて個人番号【利用】事務【等】実施者という


4.四半期報告書作成上の留意点(平成276月第1四半期提出用)

■企業結合会計基準等の改正(平成283月期より、原則適用)
(1)主要な経営指標等の推移
 ・四半期純利益 ⇒ 親会社株主に帰属する四半期純利益
 ・上記表示の変更に伴い、過年度分の数値の組替を行う
  (欄外に注記)
 
(2)四半期連結F/S
 ・B/S 少数株主持分 ⇒ 被支配株主持分
 ・P/L 少数株主損益調整前四半期純利益 ⇒ 四半期純利益
     少数株主利益 ⇒ 被支配株主に帰属する四半期純利益
     四半期純利益 ⇒ 親会社株主に帰属する四半期純利益
 ・I/S 少数株主に係る四半期包括利益 ⇒ 被支配株主に係る四半期包括利益

(3)会計方針の変更に関する注記
 ・遡及適用した場合
  ⇒過年度に遡及適用した場合の適用初年度の期首の累積的影響額
 ・将来にわたって適用した場合
  ⇒第一四半期において、従来の会計方針と新たな会計方針を適用した場合の差額
  
(4)追加情報
 ・前期において早期適用していたとしても、
  表示の変更(ex.少数株主 ⇒ 被支配株主)は当期より
  ⇒変更内容を注記

(5)S/S関係注記
 ・株主資本の著しい変動⇒主な変動事由を記載
  ⇒子会社の時価発行増資等により、注記の可能性あり

(6)企業結合等関係注記
 ・取得による企業結合⇒取得原価及び対価の種類ごとの内訳を注記
 ・取得に直接要した費用 注記対象⇒注記対象外

(7)1株当たり情報の注記
 ・算定上の基礎
  四半期純利益 ⇒ 親会社株主に帰属する四半期純利益

(8)連結C/S
 ・連結範囲の変動を伴わない子株の取得・売却に係るC/F
  ⇒財務活動によるC/F
 ・上記に関連して生じた費用に係るC/F
  ⇒営業活動によるC/F
 ・いずれも比較情報の組替を行わない。


5.マイナンバー制度

H27105日より国民1人ずつに付与される。
・一度付与されたマイナンバーは、原則として生涯変更されることはない。
・利用目的を明示した上でマイナンバーの提出を求める必要あり。
 目的を明示していない業務等にてマイナンバーを使用することはできない。

■Q&A
(1):従業員等のマイナンバーはいつから入手できるか?
  A:H27105日以降、各市町村から通知カードが送付されるため、11月中旬以降であれば従業員等より入手が可能となる

(2):現在、海外赴任をしているがマイナンバーは付与されるか?
  A:27105日時点で住民票のある人に付与される。(日本に住民票がなければ付与されない。)
   海外赴任者は日本に帰国し、住民票を移した時点で付与される。
なお、国籍に関係なく住民票が日本にある外国人にもマイナンバーは付与される。
   
(3):従業員がマイナンバーの提出を拒否した場合の対応はどうするか?
  A:従業員から企業側のマイナンバーの漏洩等を嫌って提出を拒まれた場合は、拒まれた理由を説明できるよう記録・管理しておく必要がある。

   (理由)H2811日以降発行する源泉徴収票等には、マイナンバーを記載する義務がある。
   未記載の場合でも罰則はないが、法令上の義務であるため、税務調査等で未記載の理由を問われる可能性がある。

(4):マイナンバー漏えいに対する罰則は?(名簿業者等の第三者に売却した等)
  A:最大4年以下の懲役又は200万円以下の罰金。
   なお執行猶予は付かない可能性あり。
   ※個人情報保護法には罰則がない点に大きな違いがある。

(5):マイナンバーの利用には従業員の同意を得る必要があるか?
  A:提出時に利用目的を通知しているため、利用の際に本人からの同意を得る必要はない。
   社内掲示板等で公表することで問題ない。

(6):従業員全員より事前同意を得ていればマイナンバーを利用することは可能か?
  A:従業員の同意を得ていたとしても、源泉徴収票や社会保険・税務署等への書面提出以外の目的で使用することはできない。
   ※個人情報保護法は、同意があれば目的外の利用も認められている。

(7):年末調整の時期のたびにマイナンバーの提出を求める必要があるか?
  A:家族構成等の変更がない限り、提出を求める必要はない。
   すなわち、施工時の今回1回限りの措置である。
   (原則、マイナンバーが必要となったときに従業員へ提出を求める)

(8):利用目的を変更することは可能か?
  A:変更前の利用目的と関連性を有する変更であれば可能。
   例)変更前 ⇒ 源泉徴収票への記載
     変更後 ⇒ 上記の他、健康保険等の保険届出事務に利用する等
   
   その都度利用目的を公表する必要があるため、事前に利用することが想定される事務の全てを明確に把握する必要あり。


6.【事前照会】租税特別措置法第42条の124の適用における給与負担金の取扱いについて

(照会内容)
A社が親会社から継続して出向者を受入
A社に出向負担金を支払い
・出向内容をA社の賃金台帳に記載
・出向者は「親会社」の雇用保険一般被保険者になっている
・『雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除』の計算に、出向負担金を含めていいか

(回答)
・含めてよい
(1)『税額控除』を計算する際の、給与増加額には、出向負担金(賃金台帳への記載が必須)を含めて良いと規定あり
(2)『税額控除』の適用判定に使う、平均給与額には、雇用保険一般被保険者のみを含めると規定されている
⇒臨時雇用者分を計算から除外するのが目的
⇒本件は、親会社の雇用保険者であるが、A社に継続出向しているので計算に含めて良い


7.消費税判例 訪日旅行ツアーに係る輸出免税

■概要
・国内旅行業J社は非居住者であるK社に国内旅行サービスを提供した。
J社は「パッケージ商品の譲渡」にあたるとして輸出免税処理をした。
・課税庁は「国内における飲食・宿泊」の提供であるとして輸出免税にはあたらないとした。

∇非居住者にかかる輸出取引等の範囲
・資産の譲渡
・役務の提供で次のもの以外
(1)国内に所在する資産にかかる運送または保管
(2)国内における飲食または宿泊

■東京地裁
J社はパッケージとしての「サービス利用権」の販売であると主張するが、契約書になんら記載がない。
・実態は「飲食の提供」と「宿泊サービスの提供」である。
・「旅行パッケージ商品」という概念自体がきわめてあいまいとしてJ社の主張を退けた。

■まとめ
非居住者に対する国内旅行サービスの提供は通常の課税売上となる。


8.所得税:朝型勤務の朝食支給と源泉所得税

■朝型勤務を推奨する企業が従業員に朝食を無料支給した場合、源泉徴収は必要か?
 ⇒必要。おにぎり等の経済的利益の価額について源泉徴収を行う。

■源泉徴収が不要となる食事の提供(所基通36382)
 下記の両方を満たした場合には昼食か朝食かにかかわらず、源泉徴収が不要となる。
  ①社員らが食事の金額の50%以上を負担していること
  ②企業が負担した食事の金額が月額3,500円以下であること

 朝食の『無料』支給に関しては①の要件を満たしていないため、上記通達は適用されず原則どおり源泉徴収が必要となる。


9.非流動性ディスカウント

H27.3.26:反対株主の株式買取請求に関する事案についての最高裁判例
・収益還元法における非流動性ディスカウントを否定する内容

・従来は非流動性ディスカウントを考慮すべきか否かは判断が分かれていた
・本件は極めて重要な意義を持つ

・「DCF法には市場における取引価格との比較という要素は含まれていない」 というのが判例の論拠。
・流動性リスクを資本コストの計算で織り込んでいても同様の論拠で否定したのか?

WACC算出時点で上場株式との比較を行っていると言えなくもない。
⇒株式買取請求の場面においては、特段の事情が無い限りは非流動性ディスカウントを考慮することが適切ではない、ということを意味していると考えることが妥当


10.平成27年度税制改正(消費税関係)

1. 消費税10%引上げ時期
・平成27101日 ⇒ 平成2941
 ※経済状況を勘案した結果、税率引き上げ時期を延期

2. 国境を越えた役務の提供に係る課税についての見直し
・対象となる役務の提供とは
 ⇒ 電気通信利用に制限
 ※アプリや電子書籍の販売等
・内外判定の見直し(課税取引か否かの判定)
 役務の提供をする者の事務所等の所在地 ⇒ 役務の提供を受ける者の所在地で判定
・課税方式の見直し
 (a) 事業者向け … 役務の提供を受ける事業者に納税義務(リバースチャージ)
 (b) 消費者向け … 役務の提供を行った事業者に納税義務(従来通り)
・仕入税額控除の制限
 国外事業者から受けた消費者向けの役務の提供による仕入税額は、税額控除できない。
 ※ただし、取引相手が登録国外事業者であれば、仕入税額控除可能

3. 国外事業者による芸能等の役務の提供に係る課税方法の見直し
 ⇒ 役務の提供を受ける事業者に納税義務(リバースチャージ)
 ※海外芸能人によるコンサート等

4. 外国人旅行者向け消費税免税制度
税務署の許可を得た事業者が、免税対象を判定し、免税手続きを実施
⇒ 特定商業施設内の免税手続カウンターで、免税手続代理業者が手続きを実施
⇒ 免税対象の判定も、複数の店舗(事業者)から購入した物品等を合算して判定。
※特定商業施設 … ショッピングセンター等など
※免税対象   … 通常の生活の用に供されるもの + 一定金額以上のもの
※一定金額とは … 物品なら購入総額(税抜)1万円以上。消耗品なら5千円以上等


11.資産除去債務の割引前将来キャッシュ・フローおよび除去時期の見積りの変更

■復習
 (1) 将来の除去時点の原状回復に要するキャッシュ・フローを見積もり、
 (2) 現時点までディスカウント
 (3) 割引後の値を資産と負債に両建て計上
 (4) 資産に上乗せした除去費用は減価償却を通じて費用化、負債側は毎期利息相当額を調整

■割引前将来キャッシュ・フローの見積りの変更
 資産除去債務 = 見積項目 = 変更は将来に向かって修正する
 ※発生時に合理的に見積もることができなかった除去債務について合理的に見積もることができるようになった場合も同様に処理

■除去時期の見積りの変更
 見直し前後の差額が異常な原因により生じたものである場合…特別損益として処理それ以外、
 (1) 割引率を変更し、変更時点以降の資産除去債務の調整額を算定する方法
 (2) 変更後の除去時期を前提とした資産除去債務を計上する方法
    1.当初計上時の割引率を用いる方法
    2.見積変更時の利子率を用いる方法


12.外国子会社配当益金不算入制度※の見直しによる連結上の税効果会計

※国際的二重課税を排除する為、外国子会社から日本の親法人に支払われる配当の95%は親会社の益金に算入しない制度(外国子会社の所在地国で配当が損金算入されていても)

【見直し内容】
平成27年度税制改正により、外国子会社の所在地国で配当の損金算入が認められる場合は益金に算入することとなった(平成28年度41日以後開始事業年度より)。

【連結上の税効果会計への影響】
・見直し前:DTL=配当等の額の5%×親会社の実効税率+配当等の額に係る外国源泉所得税額
 見直し後:DTL=上記△親会社の税負担が軽減されると見積もられる税額


13.社外取締役の意義

コーポレートガバナンス・コードは、経営陣が多数のボードメンバーを占め、そこに少数の社外取締役を参加させる
(マネジングボード)から、経営の監督を指名とする(モニタリングボード)への転換を促している。
→業務執行と一定の距離を置く取締役の活用
→社外取締役2名を原則

(1) コーポレートガバナンス・コードが社外取締役2名を原則とした背景
 ・よほどの実力者で無い限り社外から孤立無援で取締役に単身参加したのではなかなか発言しずらい
 ・社外取締役だけの定期会合の開催も、社外取締役全体のチームとしての機能を強化するに資する

(2) 投資家の視点
 ・自分に代わって企業内部から経営をきちんとモニタリングしてくれるものを欲し、必要としている。


14.持ち合い株解消 銀行は足踏み

・コーポレート・ガバナンスコードでは、持ち合い株について合理的な説明を求め、解消を促している。
・大手銀行の保有株式は、90年台後半のピーク時39兆円、今は16兆円と、ピーク時から6割減。
・ただ、ここに来て解消ペースが鈍っている。⇒「お付き合い」から「ビジネス」へ
・持ち合い株のある相手先とは、「企業間決済」「従業員向け金融サービス」などビジネス上のチャンスが広がりやすい

・持ち合い株の平均配当利回りは3%強、大企業向け長期貸出金利1%を大幅に上回る。










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2015年7月11日土曜日

7/10 勉強会:繰越欠損金控除制限の特例について 他

1.外国株式報酬の源泉義務の有無で判決

■論点
・個人(居住者)が株式報酬制度により無償取得した外国親会社株式に関してその個人の勤務先である内国法人に源泉徴収義務があったかどうか。

■裁判所の判断
・源泉徴収義務者とは、その支払について法律上の債権債務の関係に立つ債務者又はこれに準ずるような特別の関係にある者をいう。
・内国法人がその支払の委託を受けていたら、内国法人には源泉徴収義務が生じる。
・今回はA社(外国法人)が支払の委託を受けており、かつ、端株以外の外国親会社の株式は、個人の証券会社の口座に分配されているので内国法人がその支払をしたという事情がない。
・よって、内国法人は源泉徴収義務を負わないと判断。


2.修正国際基準は平成283月期から適用可能

■企業会計基準委員会(ASBJ)は630日に「修正国際基準」を公表した。
・適用時期
⇒平成28331日以後終了する連結会計年度に係る連結財務諸表から適用できる。
⇒四半期連結財務諸表に関しては、平成2841日以後開始する連結会計年度に係る四半期連結財務諸表から適用できる。

IFRSからの修正事項
⇒のれんの非償却(償却期間は20年を上限)
OCIのリサイクリング及び当期純利益に関する項目(一部事項について、ノンリサイクリングからリサイクリングへ修正)

以上より日本では、「日本基準」、「米国基準」、「IFRS」、「修正国際基準」の4つの基準が並列することになる。


3.利益連動給与の損金算入制度見直しも

■政府が6/22に「日本再興戦略」の素案を公表
・コーポレートガバナンスの強化策の1つとして、「業績に連動した報酬等の柔軟な活用を可能とするための仕組みの整理」という項目が織り込まれた。

⇒・税制については特に触れていない
 ・ただインセンティブ型の役員報酬制度が広く採用されるためには税制の整備が不可欠
 ※現状の利益連動給与はそこまで広がっていない


4.DTAの回収可能性に関する適用指針(案)(以下、適用指針案)の公表について

■平成27/5/26に企業会計基準委員会が適用指針案を公表

■適用指針案の背景
 DTAの回収可能性について定めた「監査委員会報告第66号」(以下、66)について、
(1)税制改正(繰越欠損金の繰越期間延長)に対応していない
(2)形式的な適用がなされている
 などの指摘があった

■適用指針案の内容
(1)基本的に、66号の内容を踏襲する
(2)会社分類(2号・3)の要件の変更
 「経常的な利益」ベース⇒「課税所得」ベース
(3)分類234号の内容の変更
 (a)分類2
  スケジューリング不能差異も将来、いずれかの時点で回収できることを合理的に説明できれば、DTAの計上可。
  (66号では、スケジューリング不能差異は、一律にDTAの計上不可)
 (b)分類4
  「分類4」の要件(1)を満たす企業であっても、一定の場合(2)
  「分類2or「分類3」における取扱いが容認される。
(1)過去3年又は当期において金額的に多額の欠損金等が生じている
(2)今後、5年超に渡って(「分類2)、もしくは、3年~5年程度(「分類3)
   課税所得が安定的に生じることが合理的に説明できる

■適用時期(3月決算を前提とすると)
 連単ともに平成293月期より適用
 (ただし、平成283月期より早期適用可)

■適用前(公表日後~適用初年度前年の決算期)の取扱い
 未適用の会計基準等に関する注記として、適用による影響を注記

■適用初年度の取扱い
(1)適用年度の期首時点において適用指針に基づいて算定したDTADTLと前期末のDTADTLの差額を適用初年度の期首利益剰余金残高に加減

(2)会計方針の変更による影響額を注記
 会計基準等の改正に伴う「会計方針の変更」として取扱う
 (会計処理を定めた66号の内容を変更するものであるため)


5.モニタリングモデルとは

取締役会に業務執行者の監督を担わせる仕組みのこと
⇒執行役が会社の業務執行を担い、取締役会はその業務執行者を監督(モニタリング)する。

現状、日本においては「業務執行」と「監督」が明確に区分されていない。
モニタリングモデルを導入し、社外取締役が締める取締役会においては、業務執行者の監督者として、より具体的なパフォーマンス評価者としての役割が求められる。


6.メール調査に対する企業の対応

【税務調査における権利】
・国税通則法上、税務当局はメールを閲覧する権利あり。

【近年の税務調査の傾向】
・メールが否認の端緒となることが少なくない。
 (削除されたメールを調査官が復元することもある)

【重加算税対象】
・メールの削除が発覚し、隠蔽行為として重加算税を課されるケースも多い。
※項目別重課事例の上位にランクイン

【どこまでメールを見せるべきか】
・通常、調査官はメールへのフルアクセスを求めてくる。
・過去の裁判から質問検査の範囲は、「質問検査の必要があり、社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられている」とある。

【閲覧制限】
・社外とのメールには、取引先とNDAを結んだ案件に係るものも多数含まれる。
※開示には取引先の了解が必要となり、無視すればNDA違反となる。
・現実に、税務調査の都度、取引先に情報開示の了解を得ることは困難。
 ⇒メールの閲覧制限をする理由の1つになりうる。

※正当な理由を示したうえで、「社会通念上相当な限度」について、調査官と認識を合わせる必要あり。


7.消費税:電気通信利用役務の提供と輸出免税

∇輸出免税
・国内取引に該当すること
(イメージ)役務の提供が国境をまたいで行われること
・課税資産の譲渡等であること(非課税取引に該当しないこと)
を満たす場合に適用がある。

■輸出免税になるか?
(例)日本法人の外国支店が国内企業に対し電気通信利用役務の提供を行った場合

・役務の提供を受ける者は国内企業か⇒○:国内取引 
・役務の提供が国境をまたぐか⇒○
・課税資産の譲渡等であるか⇒× ※

※改正により、事業者むけ電気通信利用役務の提供が「課税資産の譲渡等」の範囲から除かれているため

よって輸出免税の適用はない。


8.地方税:法人住民税 均等割の改正を法人税割に反映する自治体も

■均等割の基準の改正(地方税法、H27年度改正)
法人住民税均等割の税率区分の基準である「資本金等の額」が「資本金と資本準備金の合計額」を下回る場合,「資本金と資本準備金の合計額」を基準とすることになった。

■法人税割の不均一課税について(各自治体の条例)
 “法人税割の不均一課税”の基準となる「資本金等の額」について定めた条例に,上記地方税法の改正を反映させている地方自治体がある。

⇒自治体によって税率判定のフローが異なるため、法人税割の税率を間違えないように要チェック!


9.実効税率

H29.3期以降に適用となる東京都の事業税の超過税率
 ⇒7/1に公布された
 ⇒実効税率 32.26%

H28.3期1Qにおける取り扱い
 ⇒32.3032.262パターンあり


10.繰越欠損金控除制限の特例について

1. 原則
H27.4.1H29.3.31の間に開始する事業年度
 ⇒ 所得の65%までしか控除できない
H29.4.1以降開始する事業年度
 ⇒ 所得の50%までしか控除できない

2. 特例
以下の要件を満たす場合は、所得の100%まで控除可能
 (1) 中小法人 … 資本金1億円以下等
 (2) 経営再建中の法人 … 更正手続開始の決定があった等
 (3) 新設法人 … 設立7年以内の法人

3. 新設法人の範囲
⇒ 設立7年以内の会社をいうが、下記に該当する場合は新設法人とならない。
 (1) 中小法人
 (2) 資本金5億円以上の大会社等に発行済株式の100%を保有されている法人

4. 留意点
・新設法人に該当しても、上場した日以後に終了する事業年度以降は、特例が適用できない。
・組織再編により、設立日が被合併法人等の設立日に置き換えられる場合がある。
 ⇒ 組織再編により、新設法人に該当しなくなるケースがある。


11.「工事進行基準等の適用に関する監査上の取扱い」の解説

■実務指針公表の背景
 ・会計上の見積の介入の余地が大きい
 ・判断を誤るのみならず、意図的な原価の付け替えなどによる会計操作が可能

■何か重要か
 ⇒内部統制の構築(見る側としては理解すること)
  1.全社的な内部統制
   ・人事ローテーションなど
     なれ合いや癒着等 ⇒ 横領、粉飾などが行われる可能性

  2.業務プロセスに係る内部統制
   工事原価の計算過程の各要素が適切に見積り・決定されるプロセスを構築しているか?
   (1) 工事契約に係る認識の単位の決定
   (2) 工事収益総額の見積り
   (3) 工事原価総額の見積り
   (4) 決算日における工事進捗度の見積り
   (5) 工事損失引当金の計上


12.土地評価損計上の可否

資産の評価損は原則、損金算入できない。
一定の場合に損金算入が認められる。
 ・災害による著しい損傷による場合
 ・物損等の事実、法的整理の事実が生じた場合
 ・更生計画や再生計画の認可の決定があった場合


13.社外取締役の8つの心構え

(1) 会社を良く知る
 ・会社の戦略、製品、組織等について十分な知識を持つ

(2) 取締役会には誦分な準備をもって臨み、存在感を発揮する
 ・企業価値の向上や一般株主の利益の観点からの質問をすることが重要
  ・議事録に異議を留めなめれば賛成と推定

(3) 専門家は専門分野で力を発揮する
 ・専門性に関連する事柄については責任が重くなる可能性がある
 
(4) 株主総会での注目度も上がるものと心得る
 
(5) 情報の取り扱いに気を付ける
 ・同業他社の社外取締役になった場合は、守秘義務や目的外利用禁止に反しないように注意

(6) 責任限定契約、会社役員賠償責任保険(D&O保険)を忘れずに
 
(7) 万一に備えて資料は保管
 ・会社に返還、適切に処分、保管の場合は10年程度
 
(8) 監査等委員会設置会社における同委員会委員である社外取締役
 ・監査等委員会でない取締役の選任等・報酬等について監査等委員会の意見形成、総会での質疑対応の準備


14.東芝不適切会計 総額は?

・報道で、営業損益ベース1,500億円減益、とのニュースあり
・東芝は「現時点ではあくまで500億円」と否定。
(1)工事進行基準に係る処理
(2)映像事業の経費計上に係る処理(費用化すべきところ、一部資産計上?)
(3)半導体事業における在庫評価
(4)パソコン事業における部品取引に係る処理











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