2020年1月10日金曜日

10/4 勉強会:新収益基準~経理部門と事業部門の連携の必要性~ 他

1.財産評価基本通達における非経常的な利益とは?

・財産評価基本通達では、類似会社比準価額における評価会社の「1株当たり利益金額」の算定に当たり、
 法人税の課税所得金額から「固定資産売却益、保険差益等の非経常的な利益」を除くとある。

■論点
クレーン事業を営む会社がクレーン車を毎期継続的に売却する場合の固定資産売却益は、法人税の課税所得金額から除けるのか?

■結論
クレーン車の売却益は評価会社の経常的収益力を構成し、非経常的な利益には該当しない。
⇒非経常的な利益に該当するかどうかは固定資産売却益又は保険差益に該当するか否かのみによって判断されるべきではない。
 評価会社の事業の内容、利益の発生原因、その行為の反復性又は臨時偶発性等を考慮して実質的に判断するのが相当。



2.図解 新・時価評価課税&欠損金持込制限

■グループ通算制度(連結納税制度の新名称・予定)
・組織再編税制との整合性を配慮した結果、時価評価課税・欠損金持込制限は現行制度よりも拡大
・分類
(1) 時価評価課税の対象となる法人(=繰越欠損金の利用が制限される法人)
(2) 時価評価課税の対象外となる法人
a. 含み損益の実現時に利用制限があるもの
b. 含み損益の実現時に利用制限がないもの(全額欠損金を持込可能)



3.「外形要件の優先」vs.「消費税の実質判定」

課税仕入れへの該当性争う事案の控訴審で商品売買仲介業者(A)が主張を変更

■事案
商品売買仲介をめぐり消費税の課税仕入れに該当するか否かが争点となっている税務訴訟で、契約書の有無を含めた仕入取引の実態判断により「Aの課税仕入ではない」と判断が示されていた。
それに対し、Aは取引の実態判断ではなく、外形要件の優先させるべきであり、
輸出許可書等の記載により取引の当事者が判断されるインボイス形式などの書類への記載(外形)が実務上の判断基準もあるタックスアンサーの記載を援用し、Aは輸出免税の適用者であると主張。

■国の主張
Aは取引の当事者でない以上、この取引についてのAの課税仕入れと認めれらる余地はない。消費税の免税を受けるためには一定の事項を記載した輸出許可書が必要であると、国税庁が公表するタックスサンサーでは説明しているものにすぎない。Aは自己に都合よく曲解していているものに過ぎないと反論。

■判決
11月6日に判決言渡しが行われる予定。



4.軽減税率、税込同一価格採用も申告は別

・軽減税率制度導入に伴い、経営判断として税込同一価格とするところが出ている。
・税込同一価格にすることでこれまでと同様にスムーズに飲食料品を販売することが出来る。
⇒しかし、事業者は税込同一価格を採用したとしても店内飲食か持ち帰りかの判断は必要。
 税務申告においては、軽減税率か標準税率かを区分した上で帳簿を作成しなければならない。




5.税トレ:会計上の見積りの開示など、新会計基準の公開草案が公表へ

■概要
ASBJは「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」及び「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(案)」を10月に公開予定。
適用時期については、2021年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表からとする方針。

■「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」の主な内容
会計上の見積のうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目を識別した上で、識別した項目のそれぞれについて、会計上の見積りの内容を表す項目名などを注記。
あくまで翌年度の財務諸表への影響に着目している点に注意。

■「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の主な内容
「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続」に関する注記事項の充実を図るもの。
関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続については、それらが重要な会計方針に含まれることが明記されている。




6.10/1付で変更があった税目の税率

2019/10/1付で以下税目につき税率の変更あり
また特別法人事業税が新たに創設された。

■消費税
現行:10%
ただし軽減税率対象となる場合は8%

■地方法人税
10/1以後開始する事業年度以降 ⇒ 10.3%

■法人事業税 ※東京都
10/1以後開始する事業年度より変更
所得割の標準税率
・所得400万以下 ⇒ 3.5%
・所得800万以下 ⇒ 5.3%
・所得800万超下 ⇒ 7.0%(軽減税率不適用法人含む)

所得割の超過税率
・所得400万以下 ⇒ 3.75%
・所得800万以下 ⇒ 5.665%
・所得800万超下 ⇒ 7.48%(軽減税率不適用法人含む)

■特別法人事業税
従前の地方法人特別税が廃止され、新たに創設
・外形対象法人以外 ⇒ 37%
・外形対象法人    ⇒ 260%

法人事業税の税率については、市区町村ごとに異なるためHP等で必ず確認をすること


7.のれん

■日本

・のれんで税効果を認識すると同額ののれんが変動する結果となるため、税効果を認識しない。
(子会社株式等の取得に伴い、連結上認識したのれんも同様)。

・非適格合併等における税務上の資産調整勘定は、一時差異とみて繰延税金資産を計上し、その上で配分残余としてののれんを算定する。

■米国

・のれんに関する費用を損金算入できる場合、のれんに対する税効果を認識すべきとしている。

・具体的には、
(1)いずれか小さい方を一時差異として繰延税金資産・負債とする
(2)その残額については以下とする。
税務上ののれんが会計上ののれんを上回る場合は一時差異として繰延税金資産を認識する。
会計上ののれんが税務上ののれんを上回る場合は繰延税金負債を認識しない。

■計算例

仮に実効税率を30%として
税務上ののれん(日本でいう資産調整勘定)100、会計上ののれん160の場合、

日本基準 100×30% =30(繰延税金資産計上)
米国基準  100<160 小さい100が一時差異 
     ただし当初認識時点では一致しているので税効果を認識しない
     期末には税務上ののれん償却(5年償却として20)×30%=6 繰延税金負債を認識




8.収益認識会計基準の早期適用、合計36社

・前回7/10時点で28社⇒9/23時点で36社と8社増加(すべて日本基準)。

・8社の会計方針の変更の注記では、影響額だけでなく、どのように収益認識を変えたか、という記載あり。
例)住友林業
①代理人取引に係る収益認識
②工事契約に係る収益認識
③保証サービスに係る収益認識
⇒②について、履行義務を充足するにつれて、一定の期間に渡り収益を認識する。

・8社すべて84項ただ書きを適用
⇒適用初年度は、原則遡及適用だが、累積的影響額を期首の利益剰余金に加減することもできる。




第1章 事業部門との連携が重要な理由と連携のコツ

・新収益認識基準は会計処理や業務プロセスだけではなく、業績評価、営業活動実務、契約実務等にも大きく影響
⇒導入及び運用には事業部門との連携が不可欠
⇒内容は事業部門による基準の理解、差異の影響度分析にとどまらず、契約書ひな形の変更等もある
・履行義務への取引価格の配分によっては、収益認識時期が後ろ倒しになったり、部門間で収益が移動したりする等、業績評価にも影響を与える可能性がある
⇒各事業部門の業績評価についての影響(期間帰属・部門間をまたぐ取引価格の配分)を丁寧に説明することが肝要
・事業現場の実務を熟知した事業部門、特に営業部門の人員にもPJチームに参画してもらうことが必要



10.新収益基準~経理部門と事業部門の連携の必要性~

■ステップ1(契約の識別)
同一顧客と「同時又はほぼ同時に」(1)締結した「一定要件」(2)を満たす複数の契約を結合
(1)「同時又はほぼ同時に」をいつにするか
⇒基準には指標は無い
⇒1カ月や3カ月といった期間を予め事業部間で協議し、会計処理の安定性と事業部成績の予測可能性を確保

(2)「同一の商業的目的を有するものとして交渉されたか」をどう判断するか
⇒1つの商業的パッケージか否かを契約書のみから読み解くのは不可能
⇒商談開始から契約の結合までの考慮が必要であることから、特に営業部との連携が重要

■ステップ2(履行義務の識別)
顧客に約束した財又はサービスは、一点要件を満たす場合は、「別個のもの」(3)とする
(3)別個の履行義務をどう識別するか
⇒個別取引から判断する他ないが、ビジネスモデルにより類型化ができることが多い
⇒法務部と連携し、契約書から類型化した履行義務を明確に識別できるようにしておく

■ステップ4(履行義務への取引価格の配分)
取引価格を配分する場合は、取引開始日の「独立販売価格」(4)をもとに行う
(4)独立販売価格をどう見積もるか
⇒調整した市場評価アプローチ(顧客が支払うと見込まれる価格を見積もる)
⇒予想コストに利益相当額を加算するアプローチ(コストに適切な利益相当額を加算)
⇒各種価格の見積もりには、営業、経営企画等部門との連携が必要



11.経営者・CFO・経理担当者のKAM対応のポイント

・■監査報告書の違いを実感しておく
⇒監査報告書にKAMが記載されることで、会社の経営方針や会計方針で重要なものが記載されるようになる。
⇒KAM以外の文言も大幅に変わる予定であるため、どのような内容が記載されるようになるかを事前に把握しておくことが重要
■監査人との深いコミュニケーション
⇒監査報告書を通じて会社の経営方針等が外部に公表されるため、監査人とのより深いコミュニケーションをとり、監査人の理解を促すことが重要。



12.退職給付信託の設定に関する留意事項

■退職給付信託とは
・退職一時金制度および退職年金制度における退職給付債務の積立不足額を積み立て、将来の退職給付に充当するために設定した信託。
⇒退職年金制度の場合には、退職給付債務と既存の年金資産の差額、
退職一時金制度の場合に退職給付債務の全額が信託設定可能な額と考えられる。

・一定の要件(参考に記載)を全て満たす場合に、年金資産に該当するものとして会計処理を行う。
⇒資産の信託拠出時に、退職給付信託財産およびその他の年金資産の時価の合計額が、
 対応する退職給付債務を超える場合には、年金資産として認められない点に留意。

■退職給付信託に拠出できる資産
・一般に上場有価証券など、時価の算定が客観的かつ容易であり、換金性の高い資産であることが必要。
・土地などの有形固定資産は、通常、拠出対象資産とすることは適当でないと考えられる。

■設定時期
・設定時期の制度は設けられていない。
・要件を満たしていれば、いつ時点でも退職給付信託の設定また追加設定が可能。

■未認識数理計算上の差異や未認識過去勤務費用の計算
・退職給付信託を設定する場合であっても、償却計算を継続する必要があることに留意。

■参考:退職給付信託が年金資産に該当するための要件(下記を全て満たす必要がある)
(1) 当該信託が退職給付に充てられるものであることが退職金規程等により確認できること
(2) 当該信託は信託財産を退職給付に充てることに限定した他益信託であること
(3) 当該信託は事業主から法的に分離されており、信託財産の事業主への返還および事業主による受益者に対する詐害的な行為が禁止されていること
(4) 信託財産の管理・運用・処分については、受託者が信託契約に基づいて行うこと




13.決算・開示体制

・取引所審査項目の中で、対象会社の決算・開示体制がしっかり整っているかを確認
・確認方法としては、対象会社だけではなく、監査法人へのヒアリングも実施
・近年、この体制については、厳しく見られている傾向にあるとのこと
・年度決算による監査修正項目のボリュームや質的影響も加味される
・このようなことからも、申請期ではなく、直前期に監査法人による監査を受けて、
体制ができていることを証明する必要があると考える
・体制としては、1.チェック体制、2.提示開示のための正確性と迅速性などがあげられる


14.IFRSと日本基準の差異_連結

■連結の範囲
日本基準
・議決権比率の具体的な数値基準あり
・潜在的議決権は考慮外
・一時的な支配の場合は連結対象外とできる

IFRS
・過半数にみたに場合の議決権比率の数値基準なし
・支配の判定時に潜在的議決権を考慮する

■子会社決算日
日本基準:3ヶ月内の決算月ズレであればそのまま連結することができる
IFRS:実務上不可能な場合を除き、決算日を統一する



15.消費税率引上げを「またぐ」取引に留意

■税率の確認が困難な場合は自己処理に基づき控除
売手と買手で計上基準が異なる場合の適用税率について、商品の出荷が9月30日で納品日が10月1日の取引の場合
・売手側が8%で請求していても、買手側は10%で仕入税額控除ができるのか否か
・請求書等で消費税率が「明らかな場合」
⇒買手側はその税率で仕入税額控除の計算をするため、旧税率を適用
・税込価額で請求されていて、適用された税率が「明らかでない場合」
⇒以下の順で仕入税額控除の税率を判断

【税込価額で請求されていて、適用された税率が明らかでない場合】
相手方に税率を確認する
② 相手方への確認が困難な場合には、検収基準等による自己の会計処理により算出した仕入税額を基礎として仕入税額控除をする




















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