2015年9月20日日曜日

9/18 勉強会:ポイント交換の買物券、支払金は課税仕入れできず 他

1.金融庁、事業体課税の改正を要望

■デラウェアLSPを巡る最高最判決
・最高裁の法人への該当性の判断の検討方法
 (1)外国事業体が外国法令で日本法上の法人に相当する法的地位を付与されている、されていない、が疑義がない程度に明白であるかを検討

 (2)(1)の検討が出来ない場合は
  外国事業体が権利義務の帰属主体であると認められるかどうかを検討

⇒企業や実務家の間では、パートナーシップに対する課税が増えるではないかとの懸念が広がる

⇒金融庁、平成28年度税制改正要望において
 『海外の組織体(パートナーシップ等)を通じた投資の円滑化に資するための措置』を要望している。


2.「分類4」から「分類2」「分類3」に該当するケースの留意点

ASBJが検討している適用指針では、「分類4」に該当する企業でも一定の場合に「分類2」または「分類3」に該当するとの取り扱いを認めている。

■留意点
・翌期及び翌々期の2年間のみ一時差異加減算前課税所得が生じることが見込まれていても3年目以降に見込まれない
⇒「分類4」から「分類3」へ変更不可
・「分類4」の企業を「分類3」として取り扱った場合、適用指針案24条の規定は適用できない


3.ポイント交換の買物券、支払金は課税仕入れできず

・判決事例紹介
■前提条件()
S社はSポイントを発行している
・加盟店であるY商店で買い物をするとSポイントが付与される
・貯まったSポイントは加盟店で使えるお買物券と交換出来る

■事例
・消費者がお買物券を使用してY商店で買い物をした
Y商店はお買物券分の代金をS社に請求
S社はお買物券分の代金をY商店に支払う
 …この支払いが課税取引か不課税取引か争われた事例

■論点と判決
S社側はY商店への支払いは、加盟店に対する商品交換業務の委託料と主張
・審判所はS社のY商店への支払いは、顧客が負担しなかった支払債務を精算する行為又は物品切手等の発行に係る対価を支払う行為であり、対価性が無いと判断し不課税取引と判断した。

※注意
・非課税取引となる「物品切手等の譲渡」とは異なる
・消費税基本通達6-4-5
「物品切手等の発行に係る金品の収受は資産の譲渡等に該当しない」


4.修正国際基準と日本基準との差異を開示

■連結財規改正
(1)平成27630日に公表された修正国際会計基準を踏まえたもの
(2)平成28331日以後終了する連結会計年度より適用可
(3)修正国際会計基準を適用できる会社について規定
 ⇒IFRSを任意適用できる会社と同様
(4)修正国際会計基準を適用した場合
・適用した理由などを注記
・主要な項目の差異()に関する事項を記載 ⇒ 会計監査人の監査の対象外
 ()修正国際会計基準を適用した場合と日本基準を適用した場合の差異

■修正国際会計基準
・「のれん非償却」と「OCIのリサイクリング及び当期純利益に関する項目」について、国際会計基準を修正
・平成28331日以後終了する連結会計年度より適用可


5.国外転出者への公示送達を適法と判断

■事例
・税金滞納者が海外に移転した
・地方公共団体は督促状を「公示送達」により送付。その後差押さえ。
・税金滞納者は公示送達による督促は違法と主張

「公示送達」とは、住居所不明等により書類の送達ができない場合に、交付する旨を地方公共団体の掲示板に掲示すること。
掲示日から7日経過後に送達があったものとみなされる。

■地方公共団体が公示送達した理由
・住民票の転出先が海外である
・納税管理人が選任されていない
⇒税金滞納者の住所が明らかでないと判断し公示送達した

■税金滞納者の主張
・転出届に記載した携帯番号への電話
・納税者の親族への住所地照会
・選挙管理委員会が保有する在外選挙人名簿の調査
⇒海外の住所を確認することが可能と主張

■裁判所の見解
国外転出した者に対し、税金滞納者が主張する調査方法は、通常必要とされる調査でないと指摘

⇒公示送達による督促状の送付は適法と判断した


6.インサイダー取引の包括的適用除外規定のポイント

・インサイダー取引規制の一部が改定
・「知る前契約」「知る前計画」に係る包括的な適用除外規定が創設された
 ※従来は、13類型のみがインサイダー取引の適用除外であり、包括的な規定はなかった

【適用除外の要件】
(1)上場会社に係る重要事実を知る前に締結された株式売買契約or 決定された売買計画
(2)売買の具体的内容(売買日、金額、数 等)が事前に特定されているor事前に定められた計算式等で機械的に決定される
(3)契約 or 計画に従って売買が執行されるすべての要件が揃っている
 ⇒重要事実を知った後に売買を行ってもインサイダーにならない

※注意※ 契約書、計画書には確定日付を付すること等が必須

【例】
1/1  X社の取締役Aが、Bとの間でX株の売買を契約(1/15付)
1/10  Aは、X社が海外事業から撤退する事実を知った(重要事実)
1/15  Aは、上記撤退事実を伏せたまま、1/1の契約通りBX株を売った
 ⇒Aは、重要事実を知る前の契約を履行しただけであり、インサイダーにはならない


7.D&O保険料に関する課税関係

D&O保険とは
役員が取引先等の第三者や株主から損害賠償請求訴訟を提起された場合に争訟費用や損害賠償金を補償する保険。但し、株主代表訴訟で役員が敗訴した場合の損害賠償金については基本契約でカバーされず特約を付す必要がある。

∇特約保険料の取り扱い
■会社法上
・会社法解釈上の争いがあり、慣行的に役員個人が負担することが一般的。

・経産省が公表した「法的論点に関する解釈指針」では取締役会の承認など一定要件をみたせば会社が保険料を負担することは(会社法上)適法とされている(7月公表)。

■税務上
「特約保険料を会社負担とした場合には、役員に対して経済的利益の供与があったものとして給与課税する」こととされているため、源泉徴収の対象となる。
⇒経産省が給与課税しないよう強く要望している


8.付加価値割:自販機設置手数料の取り扱い

事業者が敷地内に自販機を設置する場合には、自販機業者との間で下記のいずれかの契約を結ぶことが多い。
 ①設置場所に係る賃貸借契約
  ⇒地代家賃収入が発生
 ②売上に応じて手数料をもらう契約
  ⇒手数料収入が発生

付加価値割の純支払賃借料の計算上、①だけではなく②の手数料収入も受取賃借料に該当し、支払賃借料から控除することが出来る。


9.種類株式の会計処理

例1
・市場取引なし
・当初は優先配当2%、6年目以降は7%
・6年目以降、発行会社が発行価額で償還できる
⇒形式的には株式でも実質的に債権であればBS計上は債権として扱う
 「債権と同様の性格」と判断されるかどうかは「確実に償還されることが見込まれるかどうか」

例2
・普通株式への転換請求権ありの種類株

⇒転換請求権ありの場合には「確実に償還されることが見込まれる場合」に該当せず、債権とは扱えない。時価の評価はオプション評価モデルを利用する
⇒転換請求期間到来後は普通株式の時価にもとづいて種類株の評価を行ってOK


10.工事契約に係る会計処理

1. 会計処理の分類
(1) 工事進行基準
 ⇒ 進捗に応じて売上計上
(2) 工事完成基準
 ⇒ 完成時に全額売上計上

2. 工事進行基準適用の要件
(1) 工事収益の総額が合理的に見積もれる。
(2) 工事原価の総額が合理的に見積もれる。
(3) 工事の進捗が合理的に見積もれる。

3. 工事契約に係る会計処理の留意点
(1) 従来
 ⇒ 短期(1年未満)の工事については、工事完成基準のみ
(2) 変更後
 ⇒ 短期のものでも、工事進行基準適用の要件を満たす場合は工事進行基準

4. その他の留意点(工事損失引当金の計上)
  ⇒ 工事完了時に、損失が見込まれる場合
 ⇒ 将来の損失について工事損失引当金を計上する必要がある。


11.タックスヘイブン対策税制の改正

■制度趣旨
 日本に比べて軽課税である国や地域(タックスヘイブン)を利用した租税回避の防止

■対象(対象となる外国法人を「特定外国子会社等」という)
 (1) 地域
   ・法人の所得に対して課される税が存在しない国等
   ・同税率が20%未満である外国関係会社
   ※平成27年度改正の前は20%「以下」となっていた。

 (2) 外国関係会社の定義
   ・直接又は間接保有の割合が50%超の外国法人

■課税
 ・対象となる場合、外国関係会社の所得のうち出資比等に応じた金額を内国法人の所得に合算して課税される

■適用除外基準
 ・一定の要件を満たす場合には、適用対象から除外する
 (1) 事業基準
   特定外国子会社等の主な事業が、次のいずれにも該当しないこと
 ・株式または債券の保有
 ・工業所有権その他技術による生産方式及びこれに準ずるものもしくは著作権の提供
 ・船舶、航空機の貸付(裸用船契約に基づくものに限る)

 (2) 実体基準
 ・特定外国子会社等が本店所在地国に主な事業を行うために必要な事務所等の固定施設を有していること

 (3) 管理支配基準
 ・特定外国子会社等が本店所在地国において、その事業の管理、支配を自ら行っていること

 (4) 非関連者基準又は所在地国基準
 ・非関連者基準
  非関連者との取引金額が全体の50%超であること(卸売、銀行、金融商品取引業などが該当)
 ・所在地国基準
  非関連者基準が適用される事業以外の事業の場合、こちらで判定
  主として本店所在地国においてその事業を行っていること

■申告
 ・適用除外基準の適用を受けるためには、適用除外基準を満たす旨を記載した書面を確定申告書に添付する必要あり


12.平成273月期「有報」分析

1.税制改正関連
 ・税率変更の注記の開示状況
  ⇒連結ベースでは分析対象会社のすべてが注記を行っていた。
   大半が税率変更の影響額まで開示していた。

 ・法定実効税率と税効果会計適用後の法人税等負担率との差異の注記の開示状況
  ⇒税率差注記を開示している大半の会社が税率変更に関する項目の記載を行っていた
  (科目名としては、税率変更による期末繰延税金資産の減額修正、税率変更による影響など)

2.企業結合会計基準等改正関連
 ※改正後企業結合会計基準等は原則として平成2741日以後開始事業年度の期首から適用
  (一定の場合には平成2641日以後開始事業年度の期首から適用可)
 ※主な改正内容
  ①子会社への支配が継続している場合の親会社の持分変動による差額は資本剰余金に計上
  ②取得関連費用は発生時の費用として処理(連結上)
  ③少数株主持分から非支配株主持分へ名称変更
 
 ・早期適用した会社
  ⇒2.8%のみ


13.有報分析 平成273月期

■有報提出日
・定時株主総会前の提出:18社(0.8%)
・定時株主総会後3日以内に提出:2,316社(95.4%


→定時株主総会前の提出はかなり限定的






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2015年9月11日金曜日

9/11 勉強会:消費税:第六種事業に該当する不動産取引 他

1.所得税の買換特例をめぐる最近の訴訟トラブル

■争点
・「居住用財産を買い換えた場合の譲渡損失等の特例」について、税理士の誤った説明により納税者が更正処分を受けることになったかどうか

■結論
・確定申告は納税者が自ら行うことになっている
・税理士と納税者の間に税務相談に関する報酬の定めがないなど
⇒本件における税理士の義務は納税者から得た情報を前提に特例の有無を検討するにとどまる
 (情報の正確性までを検討する義務は負っていない)


2.国外転出時課税制度の概要と問題点

■制度概要
・有価証券等を1億円以上を有する居住者に下記事由が発生した場合、みなし譲渡課税が課税。
①国外転出時課税、②国外転出贈与時課税、③国外転出相続時課税
・上記事由前10年以内に5年超住所を有していた場合に対象。
・いずれの場合も、居住者本人、非居住者=受贈者、非居住者全員が各事由の日以後5年以内に帰国すれば更正の請求により取消。

①&③ 期限内に納税管理人届出をした場合にのみ、担保提供等により納税猶予が選択可
② 担保提供等により納税猶予が選択可
※納税猶予の場合、原則5年以内、延長して10年以内に帰国
⇒更正の請求により取消し
 納税猶予未選択に場合、5年以内の帰国は当然取消し

■主な問題点
・国外転出相続時みなし譲渡課税の申告期限が4か月では短すぎる。
・準確定申告時に未分割であって、その後に分割が確定した場合の規定がないため、このケースにおいて分割確定時に更正の請求ができるのか不明。
・帰国による取消し規定が、非居住者相続人全員の帰国が必要となっている。


ハイブリッド型年金制度

 …確定給付型年金と確定拠出年金の2つを組み合わせたもの

 ・確定給付型年金
  予め給付額が決まっており、広く取り入れられていたもの。
  運用状況によって積立不足が発生した場合は、事業主が不足部分を補わなければいけない。(景気悪化の影響を受ける)

 ・確定拠出年金型
  拠出額のみが決まっており、給付額は運用次第となる。
  よって運用状況によっては年金額が減少するが、事業主の追加負担は生じない。(景気変動の影響を受けない)

 …この2つを組み合わせることによって、景気変動を考慮した運用が可能となっている。


4.「分類4」から「分類2」「分類3」に該当するケースの留意点

■繰延税金資金の回収可能性に関する適用指針(案)では、重要な欠損金等が生じた場合(「分類4」)であっても、
1)将来においても5年超にわたり課税所得が安定的に生じることが合理的に説明できる場合
 ⇒「分類2」として取扱い可

2)将来においておおむね3年から5年程度は(一時差異等加減算前)課税所得が生じることが合理的に説明できる場合
 ⇒「分類3」として取扱い可

■留意点
1)翌期及び翌々期において将来において(一時差異等加減算前)課税所得が見込まれているものの、3年目以降に見込まれない場合
 ⇒「分類3」として取扱い不可

2)「分類4」の企業を「分類3」として取り扱った場合、
 ⇒5年を超えて課税所得の見積りは出来ない


5.工事の収益認識が遅れる可能性も

■現行の日本基準
・収益総額、原価総額、進捗度が見積もれる⇒工事進行基準
・上記以外 ⇒工事完成基準

IFRS15
・一定の要件を満たす⇒一定期間にわたり履行義務を充足して収益認識
・一定の要件を満たさない⇒完成して顧客に引渡した時点で収益認識

IFRS15号とは
 「顧客との契約から生じる収益」を収益認識会計基準とすること。

※一定の要件とは
 契約の履行によって資産を増価させ、顧客がその資産の増価につれて支払すること
 

■収益認識のズレ
 IFRSを導入した場合に上記要件を満たさない工事は、工事完成時点で収益認識をするため、工事進行基準と比較し収益認識の時期がズレが生じる

■運用時期
 当初より1年延期して、201811日以降開始する事業年度より適用


6.医師の接待交際費で更正処分一部取消し

【審判所事例】
A医師が複数の病院へ勤務 + 自身の診療所を経営
・下記接待交際費が、診療所に係る事業所得の必要経費になるか?

(1)予防接種実施先である学校法人に対する贈答品の購入費
 ※診療所で予防接種を受託
 ⇒必要経費になる

(2)勤務する病院に対する贈答品の購入費
 ⇒必要経費にはならない

【判断ポイント】
・診療所の事業と直接関係しているか
・事業の遂行上必要なものであったと認められるか


7.所得税:国外居住親族の扶養控除等申告書

∇提出のルールが改正(2811日以後支給分給与から)
(1)その年最初の給与等の支払日の前日までに<国外居住親族用>の扶養控除等申告書を提出

(2)その年最後の給与等の支払日の前日までに<生計が一である事実等を記載した>扶養控除等申告書を提出※
※(1)に追記する

(3)(2)と同時に<送金関係書類>を提出

∇送金関係書類
・クレジットカードの利用明細書など
・原則として送金先名義人のみが扶養控除の対象となる
⇒たとえば父に送金し、父経由で兄弟に分配されたとしても、扶養控除の対象は父のみとなる。つまり個人別に銀行口座を作成する必要がある。


8.消費税:第六種事業に該当する不動産取引

H27.4.1以降に開始する課税期間から、不動産業は第六種事業に区分される。
不動産関連の事業に適用されるみなし仕入率は下記のとおり。

・不動産賃貸業
 ⇒ 第六種(40% 不動産業)

・不動産賃貸業者による賃貸用物件の売却
 ⇒ 第四種(60% その他)

・不動産を購入し、そのまま他の業者に売却した場合
 ⇒ 第一種(90% 卸売業)

・消費者等に売却した場合
 ⇒ 第二種(80% 小売業)


9.取得関連費用

・企業結合を行う際に外部アドバイザー等に支払う報酬や手数料
FADDVA、鑑定評価に対する報酬など
H27.4.1以降開始する会計年度から改正あり

 改正前:対価性あり⇒取得原価  なし⇒発生時費用
 改正後:すべて発生時の費用

・ただ、個別財務諸表においては改正前同様、取得原価に入れる。
 ※個別財務諸表では金融商品会計基準が適用されるため。


10.棚卸資産の評価方法

1. 棚卸資産の評価の考え方
 ⇒ 将来の損失を繰り延べず、分かった時点で費用計上する。

2. 評価方法
(1) 原則
 ⇒ 帳簿価額 vs  正味売却価額
※正味売却価額 … 評価時点でいくらで売れるか

(2) 容認
 ⇒ 帳簿価額 vs  再調達原価

【要件】
・製品と材料の価格がほぼ連動する場合
・正味売却価額より金額が低い事

※再調達原価 … 評価時点で、同じ資産を購入したらいくらか

3. 棚卸資産の価額に標準原価を使えるケース
 ⇒ 四半期特有のルールで、年間を通じたら原価差異が解消される見込み
 ⇒ 四半期では売上原価と棚卸資産に原価差異を配賦せず繰り延べる処理も容認されている。
 ⇒ この場合は、標準原価を棚卸資産の価額とすることも出来る。


11.『これから始めるマイナンバー対応』~これだけは知っておきたい実務ポイント10~

■「意図しない取得」には要注意
 Ex. 個人事業主から送付sれてきた請求書等に、自主的にマイナンバーが書き込まれている 等
  ⇒ 法が定める利用目的の範囲外に当たることから、そのまま受理して保管しておくことは×
    不要な記載があれば当該書類を返却するか、マイナンバーの部分を完全にマスキングするような手順を確立しておく必要がある

■従業員の家族の本人確認は誰が実施するのか
 ・原則従業員自身が行う
 ・ただし、年収が130万円未満の配偶者(国民年金第3号被保険者)は原則事業者が本人確認する
   ・従業員が配偶者の代理人となって事業者からの本人確認を受ける
   ・事業者が各従業員に本人確認手続を委託するなどの方法による確認が可能

■誤ったマイナンバーを書類に記載し、そのまま行政機関に提出するとどうなるか
 ・罰則規定は法律上定められていない
 ・行政機関から間違っている旨の指摘がかえってくることが想定

■本人確認が終わった後の確認書類はどうするか
 ・保管の要否については、ガイドライン上特段の取り決めなし。事業者の判断に委ねられている。
 ・保管/廃棄のメリットデメリットを比較衡量のうえ、方針を定めておく必要がある

■グループ会社間での人事異動時は要注意
 ・事業者間でのマイナンバーの直接のやりとりは原則禁止。グループ会社間の転籍もこれに該当。
  (たとえ本人の同意があったとしても×)
 ・原則、転籍先であらためてマイナンバーを提出、再度本人確認を受ける必要あり
 ・ただし、以下のような場合は再提出不要
   ・グループ間で同一の人事給与システムを使用
   ・従業員情報について共通のデータベースで管理
   ・従業員が自らの意志によってマイナンバーを移し替えることができるような権限を有しているような場合

■マイナンバーは一生変わらないのか
 ・生涯変わらない
 ・ただし、漏洩して不正に用いられるおそれがあると認められる場合に限っては変更可

■不要になった特定個人情報等はできるだけ「速やかに廃棄」
 ・廃棄の際は基本的に復元不可能な状態で確実な処理が求められる
 ・かつ、廃棄の記録も残す必要がある
 ・半期に一度、年に一度など、廃棄のタイミング・廃棄すべき情報を適切に特定抽出できるような管理方法・社内ルールをあらかじめ構築しておくことが求められる

■「マイナンバーは提供しません」と拒否されてしまったら
 ・マイナンバーの必要性について対象者本人に説明、理解をもとめる
 ・そのための説明文書などをあらかじめ準備、拒絶された場合の対応をルール化しておく
 ・提供を求めた経過等を記録、保存することによって、事業者としての責務を果たしていることを明確にしておくべき旨が記載されている(国税庁、国税分野におけるFAQ「Q2-10

■事務作業スペースは隔離しないといけないか
 ・特定個人情報ファイルを取り扱う情報システムを管理する区域(管理区域)
   ⇒ICカードなどを使った入退室管理のように厳格な安全管理が求められている
 ・事務作業区画(取扱区域)
   ⇒部外者が出入りすることができないような部屋を別途用意できなくても、
    パーテーションで間仕切りするなど無関係の従業員が覗き見できない座席の配置やパソコンの覗き見防止フィルターの設置などの工夫で一定のセキュリティレベルを保つことが可能

■事業者自体にも番号が付与されるのか
 ・13ケタの法人番号が付与される(10月以降に国税庁より通知)
 ・利用範囲についての制約はない(各種取引を法人番号で一元管理するといった方法も可能)
 ・秘匿性はない(国税庁の専用WEBSITEを通じて一般公表が予定されている)
 ・税分野での取り扱いは個人番号と同様(付番が必要な取引先からの収集・管理も検討しておくべき)


12.スキャナ保存制度の実務対応上の留意点

H27930日以後の承認申請対応分から適用
・スキャナ保存の対象となる国税関係書類の範囲が拡充
  改正前:契約書・領収書等については3万円未満のもの
  改正後:すべての契約書・領収書等
・スキャナ保存の保存要件が緩和
  改正前:一定の場合、電子帳簿保存法の承認を受ける必要があった
  改正後:廃止
・電子署名要件の廃止
  改正前:スキャナで読み取る際、電子署名を行ったうえでタイムスタンプを付す必要があった
  改正後:電子署名は不要(タイムスタンプは必要)
・適正事務処理要件の新設
  内部統制の整備を行っている企業は基本的には特段の対応不要。
中小企業は社内規程等で整備し事務処理を行うことで要件を満たす。
       相互けんせい
⇒スキャナで読み取った画像が紙の記載事項等と同等であるかを別の者がチェック
       定期チェック
⇒事務処理手続きのチェックや検査を最低限1年に1回は行う
       再発防止
⇒問題点があった場合に社内幹部に速やかに報告がなされ、必要に応じて再発防止委員会を設置することが必要


13.2段階TOBについて

2段階TOBとは
1つの企業買収において、TOB2回に分けて行うこと
1段階目で大株主から市場外でTOBを行い、2段階目で他の少数株主から譲り受ける

※類似用語
2段階買収:1段階目でTOBで一定程度集めたうえで(=前述の2段階TOB)、全部取得条項付付種類株式等の制度を利用して少数株主をスクイーズアウトすることで完全子会社化する手法

2段階TOBをやる理由
1段階目と2段階目で買い取り価格を変えたい
→大株主との取引では市場価格に対して低廉のプレミアムとし、
買収を確実なものとするため、2段階目ではそれなりのプレミアムを付して少数株主から買い取るため。


14.消費税還付 世帯で合算

・消費税を10%に引き上げる際、「酒を除く飲食費」については、「2%分」「上
限1人年4,000円まで」還付されるようになる。
・利用には、「買い物時のマイナンバーカード認証」が必要。
・購入品目などの個人情報はシステムに残らず、ポイント情報だけが蓄積される。
・事業者は読取機の設置負担が発生。

・還付は年に数回受けられる仕組みに。(⇒銀行口座に振込)






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2015年9月4日金曜日

9/4 勉強会:マイナンバーにおける実務上の留意点(Ⅲ) 他

1.マイナンバーにおける実務上の留意点(Ⅲ)

■マイナンバーの記載を誤った場合の罰則はあるのか
 ⇒各行政機関の指示に従って処理すればいい。罰則はない。

■取引先がマイナンバーを提供してくれないときの対応
 ⇒法令上の義務ということで説得する。
  提供がないからと言って「取引を中止する」「税務調査が入る」等の脅し文句や嘘を言ってはいけない。
 ⇒偽りその他不正手段により個人カードを取得した場合
  …6月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる。

■源泉徴収票にはいつから記載するか
 ⇒平成291月に発行する分より記載が必要。
  退職する社員の源泉徴収票については平成28年中でも記載する。

■従業員の配偶者のマイナンバーの取得が必要な場合の取得方法
 ⇒扶養控除申告書に記載してもらうのが一般的な方法。
  事業主が本人確認をする場合は、従業員が配偶者の代理人として事業主にマイナンバーを提供することになるので従業員は配偶者からの委任状を受けるなどの対応が必要になる。

■情報提供ネットワークはいつからスタートするか
 ⇒地方公共団体 …平成297月から稼働予定
  上記以外の団体…平成291月から稼働予定
 ⇒民間事業者や個人は利用できない。



2.非居住者によるネット通販で国内の倉庫等をPE認定

■米国在住の非居住者が営むネット通販において、日本国内にあるアパート・倉庫がPE(恒久的施設)に該当するか否か。
⇒裁判所はPEに該当すると判断した。・・・非居住者に日本の所得税が課税される。

理由は・・・
・日本国内のアパート・倉庫を販売拠点として販売活動を行い、かつ国内のパート従業員が重要な業務(商品の保管・梱包・発送、返品対応など)を行っていたため。
 以上より、アパート・倉庫が商品の保管・引渡しのみのために使用する場所とはできない。

※参考
(米国における業務)
・市場動向の調査、仕入、支払業務、ウェブサイト管理、メールによる顧客とのやり取り、日本語取説の作成業務

(日本における業務)
・商品の受取り・保管業務、商品の梱包・発送業務、返品された商品の受取り・代替商品の発送業務


3.経産省、役員給与税制の見直しを要望

■平成28年度税制改正に向け検討中
(1)役員給与税制の見直し
 ・利益連動給与の損金算入制度はハードルが高い
  以下の内容は現在損金算入出来ないができるように要望提出
  …複数事業年度の利益をベースにした役員報酬
  …株式報酬等

(2)グリーン投資減税
 ・太陽光が除外となる(節税策として多く見られたため)
 ・地熱・バイオマスが追加となる見込み

(3)交際費
 ・中小企業の800万円まで全額損金算入可能…期限延長見込み
 ・大法人の接待飲食費50%の損金算入…廃止が確実


4.今週の専門用語~株式報酬~

■株式で支給される報酬
■海外では
(1)中長期的な業績目標の達成度合いに応じて株式が交付されたり(PerformanceShare)
(2)交付される株式に一定期間の譲渡制限が付されていたりする(Restricted Stock)

■日本では
(1)信託を活用した、株式報酬制度を信託銀行が販売している他、
(2)「金銭報酬債権※を会社に現物出資し、その対価として会社が役員に株式を発行する仕組み」を経済産業省などが検討中である
※役員が職務執行の対価として報酬を得る権利
⇒ただし、いずれも現行の利益連動給与税制上、損金不算入


5.公社債の150%基準は全利払期間を通して必要

■事例
・請求人である個人が公社債(私募債)を譲渡した。
・約5,000万円超の譲渡損が発生。
・「総合課税」の譲渡所得として確定申告した。(損益通算により他の所得に充当)
・原処分庁は「非課税」と主張し、損益通算を認めなかった。

■公社債の譲渡に係る課税関係
・原則⇒非課税
・特例⇒課税対象(総合課税)
     主にゼロクーポン債、150%基準を満たした債券の譲渡が該当する。

150%基準とは、
  譲渡した公社債の利子の利率について、最も高い利率から最も低い利率を割った割合が150%以上である場合は、 「総合課税」の対象とする規定。

■争点
譲渡をした公社債が「非課税」となるか、「総合課税」となるか。
150%未満⇒非課税 
150%以上⇒総合課税

■判断基準
発行時点で定められた利率をもとに判断する
 ⇒譲渡した債券は、発行時点から半年後までの期間の利率のみ定められている。
   以降の期間の利率は、発行時点で定められていない。
 ⇒利払期間中の利率は固定利率と変動利率が重なりあっており、全利払期間を通して150%基準を満たさない可能性が大。

以上の点より、
譲渡した債券は「非課税」扱いとされ、請求人は側の主張は棄却された


6.消費税法上の事業めぐり全部取消し裁決

【事例】
Aが、その子B、子Cとともに貨物船内の荷役作業を行っていた
・依頼主(X社)は、Aに対して3人分の日当を渡していた
Aは事業者に該当するか?

【原処分庁】
Aは、X社から業務を請け負う事業者に該当し、子B、子CAの使用人である
 ⇒消費税の納税義務有り

【審判所】
Aは、下記3点を満たし、X社からの日当は給与
 -X社の仕事につき、事前に作業者が契約で定められていることから、Aの代替がきかない
 -作業中、X社の従業員が責任者として参加し、Aは指揮監督を受けていた
 -作業に関する材料や道具などの大部分をX社が供給していた
 
Aは日雇い労働者に該当し、消費税の納税義務なし


7.所得税額控除(公社債の利子)の改正

∇所得税額控除
(原則法)
元本所有期間に応じた月数按分により計算

(簡便法)
元本を、「株式出資」「受益証券」「公社債の利子」に区分し、各区分ごとに簡便計算(期中増加分は期央取得と仮定して計算)

∇「公社債の利子」について改正あり
■改正前
原則法or簡便法で計算し有利選択

■改正後
H28.1.1以後支払を受けるものについては全額を控除できる


8.税務:少人数私募債と同族会社

■概要
・税制改正により少人数私募債を用いた節税がH28.1.1以降は出来なくなる。
・過去に起債した少人数私募債についても、同様。

■少人数私募債を用いた節税策
・会社が社長に対して少人数私募債を起債する。
・役員報酬で支給する金額の一部を、少人数私募債の利子として社長に支払う。
・少人数私募債の利子は分離課税(15%)されるため、総合課税の限界税率が高い社長の節税に寄与する。

■改正の内容
・同族会社が発行した少人数私募債の利子でH28.1.1以降に支払われるものにかかる所得は、総合課税される。


9.税率差異

・税効果会計の適用が前提
・理論上の法人実効税率と、実際の法人税等の負担率との間に差異(税率差異)が生じる。

■原因
・会計・税務間の制度上の違い
  永久差異(交際費や受取配当金)
  税率の変更
  住民税均等割
 など。

・税率差異の主な項目別の内訳(注記)が必要となる。


10.多重代表訴訟 ポイントまとめ

・多重代表訴訟とは、「親会社の株主が子会社の取締役を訴えることが出来る」制度。
・対象は「100%出資」「株式の帳簿価額が親会社の総資産額の20%」両方を満たす子会社に限る。
⇒つまり、「重要な完全子会社」のみ。
HDの傘下にある事業子会社、のイメージ。
実質的に事業を行っている会社を訴えられる道を残した、ということ。)
・訴える株主は、親会社の議決権1%以上保有が必要。
・直ちに直接提訴は出来ない。
⇒まず、子会社監査役に提訴を請求。
60日以内に訴えを起こさない場合、直接提訴が可能。

(訴訟の乱発を防ぐ。親会社役員を訴える時と同じ。)






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