1.超富裕層への専担調査、全国波及も視野
・平成26年事務年度から情報収集機能を一段と強化することを目的として超富裕層をターゲットにした専門チームを東京、名古屋、大阪の3つの国税局に立ち上げている
・国税庁では、超富裕層の選定基準、管理の区分などを内容とした試行通達を策定する
・平成27年事務年度からこの通達の内容に関する取組を試行した上で3つの国税局で実施されている超富裕層に対する専門の調査体制を全国的な取り組みにつなげていく方針
2.税務スタッフによる機密漏洩、就業規則違反も損害発生認めず
■裁判事例
・税理士法人が元従業員が業務上の機密(※)を第三者に漏洩したとして、労働契約上の機密保持義務違反による債務不履行に基づく損害賠償を請求した。
※税理士法人の従業員に関する勤務データ
・元従業員は勤務データを利用し、未払い残業代の請求訴訟に利用
・税理士法人は情報漏えいに関して、調査を行ったため本来の営業活動に従事できなくなったとして損害賠償を請求
■裁判所の判断
税理士法人の訴えを棄却
⇒機密保持義務違反による債務不履行行為であるが、具体的な因果関係をもって営業活動への損害額が認められない。
3.監査役の適正給与算出に取締役給与を考慮できず
■裁判事例
・質屋業を行う法人
・常勤監査役1名に役員給与として給与を支給
・役員給与支給額が「不相当に高額な部分の金額」に該当するか否か
■請求人の主張
・監査役だけれども実質取締役の職責を担っていた
・本件給与は取締役の給与として判断されるべき
⇒だが「不相当に高額な部分の金額」であると判断された
■判断箇所
・監査役としての業務は何もしていない
・売上、粗利、営業利益と比べてその給与の割合が高い
・類似会社の平均額と比較しても高額である
・会社法上、監査役が取締役と兼任することは禁止されている
…取締役業務を担っていたとしても、会社法の趣旨を考慮すると監査役の職責のみから判断するべき
4.繰延税金資産、分類2への変更は限定的
■平成27/5/26に企業会計基準委員会が「DTAの回収可能性に関する適用指針(案)」を公表
■適用指針案の大きな改正点の一つ
「分類4」の要件(※1)を満たす企業であっても、一定の場合(※2)、
「分類2」or「分類3」における取扱いが容認される。
(※1)過去3年又は当期において金額的に多額の欠損金等が生じている
(※2)今後、
・5年超に渡って(「分類2」の場合)
・3年~5年程度は(「分類3」の場合)
課税所得が安定的に生じることが合理的に説明できる
■ただし、「分類4」⇒「分類2」への変更はかなり限定的
(「分類4」⇒「分類3」への変更と比べ、)
ex.過去に「分類2」の要件を満たしていたが、災害等により金額的に多額な税務上の欠損金等が生じたケース
5.用語解説
■機密保持義務とは
労働契約上の信義則に基づく誠実義務として、労働者が業務上知り得た企業の機密をみだりに開示してはいけない義務
⇒労働者が職務中に得た機密を他に漏洩してはならないこと
■機密とは
少なくとも以下の要件を満たしているものをいう
・企業が機密として管理・取扱いをしている
・機密としての重要性・価値がある
・公然のものとなっていない
■機密保持義務違反として懲戒解雇が認められた事例
・顧客データを持ち出し、競合会社の設立に企図した
・重要機密事項である再建計画を社内外に漏らした
・発注先情報を管理するシステムデータを無断で複写・消去した等
企業秘密等は人を介して漏洩するケースが多いため、日頃から機密情報に関する意識を高くもつ必要がある
6.国外事業者のための電子商取引に係る消費税
(1)内外判定基準の見直し
・H27/10/1以降、「電気通信利用役務の提供」を「受ける者」の本店住所等で判定
・日本企業の外国支店が、外国企業から受けるもの
⇒日本企業の本店住所が国内であるため課税
・日本人が外国旅行中に、外国企業から受けるもの
⇒住所が国内であるため課税
(2)「電気通信利用役務の提供」に該当しない取引
・通信そのもの
・他の取引の付随行為である取引
例)国外資産の運用等の報告メール、完成したソフトウェアのメール送信
(3)「事業者向け」取引
・リバースチャージ方式を採用、国内事業者が申告・納税
・国外事業者は、「リバースチャージ方式に該当」の旨を、規約や見積書等に明示しなければならない。
(4)「消費者向け」取引
・国外事業者が申告・納税
・免税点制度の適用あり(消費者向け取引の課税売上で1000万円判定)
(5)登録国外事業者
・国外事業者から受けた「消費者向け」役務提供は、仕入税額控除できない
・ただし、国外事業者が「登録国外事業者」であれば可能
・「登録」かどうかは、国税庁HPに記載させる
・「登録」申請は、7月1日から可能に
7.受配 控除負債利子原則法の留意点
∇算式
負債利子×前期末&当期末の関係(関連)法人株式等の帳簿価額合計/前期末&当期末の総資産合計
∇改正点
■原則法の分子
(改正前)「関係法人株式等(25%以上保有)」の前期末・当期末の帳簿価額合計
↓
(改正後)「関連法人株式等(33.3以上保有)」の前期末・当期末の帳簿価額合計
■その他有価証券評価差額金
(改正前)加算減算調整必要
↓
(改正後)調整不要
∇留意点
改正は28.3月期からであるが、前期末分の計算も改正後の規定で行うため注意が必要
8.所得税:税制適格ストック・オプションと出向者
■「出向者」は税制適格ストック・オプションの付与対象者か?
⇒「使用人」と同様に付与対象者に含まれる。
■法令には出向者についての定め無し
「取締役,執行役,使用人,取締役等の相続人,発行済株式の50%超を保有する法人の取締役等」(措法29の2①)
■通達にも定め無し
■判断根拠
出向者は
・(出向契約を介して間接的に)雇用契約がある
・出向先の指揮命令に服する
⇒「使用人」と類似しているため、同様に取り扱うのが相当。
9.事業税超過税率
・H27年度改正により、法人事業税率が段階的に引き下げられた
・外形標準課税適用法人の超過税率について、各自治体が条例を改正した
・大阪府以外の自治体は
H27.4.1以降開始事業年度 ⇒ 決定済
H28.4.1以降開始事業年度 ⇒ 先送りにしていた
・東京都の改正案は2.14%。可決すれば実効税率は32.26%になる。
・年800万円超の所得に係る所得割の標準税率(地方法人特別税額は除く)
標準税率 H27年度:3.1%、H28年度:1.9%
・大阪府の超過税率(H27.3.31に公布)
超過税率(大阪府) H27年度:3.4%、H28年度:2.14%
【備忘】
・実効税率(東京、資本金1億円超)
2015/3期決算時/2016/3期:33.10%、2017/3期以降:32.34%
2016/3期決算時/2016/3期:33.06%、2017/3期以降:32.30%
10.子会社の業績悪化時の会計上の検討事項
子会社の業績が著しく悪化した場合、下記事項を会計上検討する必要がある。
1. 子会社株式の減損、のれんの償却
・個別FS上、子会社株式について減損処理(子会社株式の帳簿価額を落とす)が必要かどうかを検討
※ただし、業績悪化が一時的で、回復が見込まれる場合には減損不要。
・個別上で減損を実施した場合、連結FS上、子会社についてのれんが生じている場
合には、のれんの未償却残高を全額償却しなければならない。
2. 子会社への貸付金の回収可能性
⇒ 業績悪化により、支払能力があるかどうかを検討
⇒ 必要に応じて貸倒引当金を計上・追加する必要がある。
3. 債務保証損失引当金の計上
⇒ 子会社の債務を親会社が保証
⇒ 子会社に支払能力がなく、親会社が代わりに支払う可能性が高い場合
⇒ 将来の損失・費用に対する、債務保証引当金を計上しなければならない。
以上より、子会社の業績が悪化することにより、親会社は、子会社株式の減損だけでなく、様々な費用・損失を計上をしなければならない可能性がでてくる。
11.子会社の業績悪化に伴う繰延税金資産の回収可能性の検討
■概要
ビジネス環境の変化に伴って子会社の業績が悪化している状況
⇒区分の見直しにより、繰延税金資産の一部を取り崩す場合がある
区分を慎重に検討する必要
■判断要件
(1) 収益力に基づく課税所得の十分性
(2) タックスプランニングの存在
(3) 将来加算一時差異の十分性
■大前提
回収可能性の検討のためには将来の業績予測の作成が必要不可欠である
■留意事項
・取締役会や常務会等の会議体の承認を得たものであることが必要となる
⇒会社としてオーソライズされている必要がある
・会社の現状の収益力や経営環境を勘案した合理的で説明可能なものでなければならない
12.財務DDの留意点
・売掛金は年齢表により長期滞留債権の有無を調査
・棚卸資産は収益性低下や長期滞留在庫の有無を把握
・固定資産は減損の適用や減価償却の適正性を調査
・多額の設備投資を要する業種の場合は、更新設備の有無や大規模修繕の有無を把握
・時価のない有価証券は実質価額を発行会社の直近決算書による数値をもとに算定
・訴訟の有無を把握し、引当金の計上等を検討
13.役員退職慰労金廃止に関する会計処理について
(1) 役員退職慰労金制度の廃止の決議と同時に支払承認決議
・支給額の確定:制度廃止時点で確定
・支給時期:退任時
・科目:未払金(長期未払金)
・科目の性質:退任時点に支払う条件付き債務
(2) 役員退職慰労金制度の廃止の決議のみ(支払承認決議は退任時)
・支給額の確定:退任時における株主総会まで未確定
・支給時期:退任時
・科目:退職慰労引当金
・科目の性質:株主総会決議を得ていないため未確定債務
14.農地の固定資産税
・「農地」の固定資産税は10アール1,000円。
・同じ広さでも、「宅地」の場合全国平均で18万円。
・土地の有効活用を促すため、昨年「耕作放棄地」については固定資産税を増やす改正を検討中。
・一方で、仮に改正を行ったとしても、そもそも「農地」が耕作放棄地か否か、自治体はほとんど実態調査せず、何年も放置している。
→「種目を変えることには納税者の反発が強い」
→「証明をすることが大変」
→「職員の数が足りない」
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