2019年2月25日月曜日

2/22 勉強会:税制改正と税効果会計 他

1.上場株式のクロス取引、法基通の適用可否で採決

■事案
・審査請求人が、保有する上場有価証券の売却及び再購入を行った。
・法人税の確定申告に際し、売却のうち当該再購入に係る部分については
法基通の適用によりその売却がなかったものとして取り扱い、当該部分の売却に係る有価証券売却益を
所得の計算上、益金の額に算入しなかった。
・原処分庁が当該売却益を所得の金額の計算上、益金の額に算入すべきであるとして更正処分を行った。
・請求人が、原処分の全部の取消しを求めた。

■事実
・本件売却及び本件購入に係る各委託契約について、クロス取引ではなく、別個独立の契約として取り扱っており、
請求人も、そのことを知ってたと認められる。
・よって、同時の契約がなかったと認められるから、本件売却について、通達規定本文の適用はない。

■裁決
・有価証券売却益は、売却をした日の属する本件事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入すべきである。





2.在外子会社等の会計処理「リース」は修正項目とならず

■子会社のFSの修正
・在外子会社の財務諸表の取扱い
⇒基本的にはそのまま連結
⇒ただし、基準で限定列挙した項目(のれんなど)は日本基準に修正して連結

■リースの取扱い(IFRS16号)
・IFRS16号「リース」…3月決算の会社では2019年6月の1Qより適用開始
・日本基準と大きく異なる(使用権資産として処理する点、FL・OLという区分が原則ない点など)
・が、今回の基準改正にあたって、リースは修正対象項目とはならなかった。

■影響
・業種業態によっては財務数値が大きく変わる可能性のある企業あり





3.仕入税額控除問題で別の回答文書が存在

・平成7年と9年に課税当局が同種事案で全額仕入税額控除を認めている文書あり
・平成12年付けでも同様の文書が存在することが判明

■内容
・A社は分譲用マンションを購入
・分譲完了までに数年を見込み、それまでの間は賃貸に供する
・宅建免許取得までは固定資産として計上し、免許取得後に棚卸資産に振替(必ず販売するので減価償却はしない)

■課税当局の回答
・課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れでOK
⇒分譲目的で仕入れているため、課税資産の譲渡等にのみ要するものに該当





4.山林の固定資産税評価を巡り納税者敗訴

・土地の形態などから判断、一般山林ではなく介在山林

■東京地裁判決(平成30年5月)
平成26年までは一般山林と評価されていたにも関わらず、27年には介在山林と評価され、納税者が不服として、固定資産税の評価審査請求を行う。※一般山林と評価された場合、介在山林に比べ評価額が大幅に下がる。

■納税者と課税局の主張
・納税者の主張
宅地に隣接している部分はあるものの、山肌に自生する山林として管理されており、介在山林には当たらない
・課税局の主張
・宅地に隣接している部分は神社が存在し、宅地も存在している。山林として機能している部分の方が少ない。

■判決:納税者側の敗訴
・一般、介在山林は、位置や形態・利用状況・価格事情及び宅地化の度合いなどで総合的に判断
①当該山林の3分の2は市街化区域に属しており、②実質的には三方を宅地に囲まれている。
③過去に立木伐採が行われ、介在山林とされた年は若干の幼木があるのみだった。

※一般山林と介在山林
・一般山林:一般的に山肌に自生する山林であり山林として生産力があるものとして評価されるもの。
・介在山林:一般山林の評価の方法によることが適当でないとされるもの。
⇒周辺一体が宅地および農地等で、立地条件等からみて単に林地としての形態をとどめているもの。





5.所得税・消費税の審理事例をチェック

【申告・更生の請求等】
Q相続人が準確申告書を提出した後に相続放棄した場合の取り扱い
・H28年4月28日 被相続人A死亡
・H28年8月26日 X及びYが、本件各準確定申告書を提出
・H28年9月1日 家裁は相続放棄の申請を受理

A準確定申告書は無効、納税もなし
⇒相続の開始があったことを知った日の4月を経過した日の前日までに、確定申告書を提出しなければならいが、放棄した者は、相続開始の時から相続人でなかったものとみなされる。

Q e-Taxにより更生の請求書を提出した場合における源泉徴収票の義務

A e-Taxにより所定の事項を入力し送信した場合は源泉徴収票を提出する義務はないが、税務署長等から提出を求められたら提出をしなければならない。

Q名義貸しをした者から提出された過去7年分の更生の請求書の取り扱い
・歯科医業を営むAは甲及び乙診療所から生ずる利益があった
・乙診療所から生じた利益をBに申告させ不正課税を免れていた
・政務調査で「偽りその他の不正の行為」に該当するとして、H23~29年分(7年分)の更生処分を行った。
・Bは過去7年間分の減額更正を行うこととなるのか。

A過去5年分の減額更正を行う
⇒更生決定等の期間制限の特例の対象に該当しない




6.今週の専門用語

■山林の固定資産税評価
・一般山林は、状況が類似する標準山林の時価を元に算定される。
・介在山林は、その山林付近の宅地等の価額に比準して算定される。

■株式交付信託
・株式報酬制度の一種。自社株式の取得資金を信託銀行に拠出し、信託銀行がこの資金を原資に、株式市場や企業から株式取得、業績に応じて取締役等に付与する。
・法人税法上、利益連動給与の要件満たせば損金算入可能




7.QRコードによる納付

本年1月4日より,“QRコード”を利用したコンビニ納付がスタートした
⇒コンビニの端末で納付書を出力すれば,その場で所得税等を納付できる

■QRコード発行方法
(1){確定申告書等作成コーナー」を利用して作成
(2) 国税庁ホームページの「コンビニ納付用QRコード作成専用画面」で作成

■対象税目
すべての国税に対応。ただし、源泉所得税は納付期限が過ぎて納税告知を受けたものに限る。
また、地方税は対象外

■限度額
30万円まで(現金納付に限る)




8.軽減税率 店内飲食の一部持ち帰りの判断方法

2019年10月1日より消費税が10%へ
飲食料品等の販売は、
・店内飲食(外食) ⇒ 標準税率の10%
・自宅に持ち帰る ⇒ 軽減税率8%

■適用税率の判断基準は
一取引ごとに判断する。
例1 A,B,Cを個別に販売 ⇒ 個々で適用税率を判定
例2 A,B,Cをセットで販売 ⇒ 全体で適用税率を判定

■軽減税率導入に伴い飲食店業がやるべきこと
顧客に対し、「店内飲食」か「持ち帰り」か確認する
・店内飲食を目的で購入したが持ち帰った ⇒ 10%
・持ち帰り目的で購入も一部を店内で食べた ⇒ 8%

なおQ&Aが国税庁のHPに掲載中






税制改正と税効果会計

・税効果会計に用いる法定実効税率は、「成立日」基準で決まる。
・平成31年度税制改正が、3月31日までに国会で成立すれば、3月決算の会社の実効税率計算に採用される。
・31年度税制改正で、関係する改正は下記の通り。
 → 地方法人税が上がり、法人住民税が下がる(財源が自治体から国に移る。結果、東京都など大都市を擁する自治体の収入は下がり、交付税によって地方の自体の収入は上がる見込み)。
 → 地方法人特別税が廃止、特別法人事業税の復元、事業税(所得割)が増加。
・上記の改正で、トータルでは実効税率への影響なし。
・ただし、連結納税適用の場合は、国税の法定実効税率と地方税の法定実効税率を分けて計算するため要変更。

・決算時点で、法律は改正したものの、条例が未改正の場合、地方税の超過税率の計算方法は下記2通りが認められている(税効果会計に係る会計基準の適用指針49項)。

(前提)
改正直前の地方税法等の標準税率 3.6%
決算日において成立している条例に規程されている超過課税による税率 3.78%
改正地方税法等に規定されている標準税率 1.0%

(認められている計算方法)
①1.0%+(3.78-3.6%)=1.18%
②1.0%✕3.78%÷3.6%=1.05%





10.改正税効果基準の早期適用事例

・改正税効果基準が2018年4月以降開始する事業年度で強制適用。
例)3月決算⇒2018年3月末は早期適用可、2018年4月以降強制適用
12月決算⇒2018年12月末は早期適用可、2019年1月以降強制適用

・早期適用を採用した場合の主な理由
 ⇒表示の簡素化、財務諸表利用者の明瞭性、管理上の簡便性等

・適用初年度においては、「表示方法の変更」として取り扱う。





11.第1章 在外子会社を連結する際の基本論点

・在外子会社が採用の会計基準及び会計処理を確認し、親会社と異なる会計処理の場合は、連結修正の可否を検討
・親会社と決算日が異なる場合、いつの財務諸表を取り込むのかあらかじめ決定しておく
・個別財務諸表の円換算(支配獲得時のレート等を確認しておく)
・のれんの発生額は株式取得日の為替レートで換算、償却額はAR、期末残高はCR

「第2章 在外子会社の個別財務諸表換算ポイント」
・収益及び費用=AR
・資産及び負債=CR
・株主資本=株式取得日レート及び発生日のレート
・その他包括利益累計額=CR
・換算差額=為替換算調整勘定






12新収益基準の考察~ステップ5~

■一時に収益認識できない業種を考慮している
・企業は~~履行義務を充足した時に又は「充足するにつれて」収益を認識
⇒(一時に収益認識を基本とする)支配の概念を、サービスや建設業に適用することが難しい
⇒履行義務が一定の期間に渡り充足されるか、一旦ステップを置くこととした

■交換取引の原則も取り入れている
・次の要件のいずれも満たせば、一定期間に渡り収益認識可
①企業が~~義務を履行することにより、別の用途に転用できない資産が生じる
②企業が~義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有す
⇒①だけでは支配の要件として十分でないので②を追加した
⇒一般的な交換取引における、顧客が支配を獲得(①)すると、顧客が支払義務を負う(=②)ことに整合






13.在外子会社との連結のポイント

■在外子会社の資本連結・修正仕訳のポイント
・株式取得日の資本は取得日レートで換算する。
・投資と資本の消去で生じたのれんは外貨で把握する。
・非支配株主が存在する場合、他の資本項目と同様に「為替換算調整勘定」も親会社持分以外を非支配株主に按分する。
・期中平均レートで換算し、期末残高は決算日レートで換算する。
・外貨建のれんの換算差額は「為替換算調整勘定」で調整する。

■在外子会社の連結消去・修正仕訳のポイント
・内部取引の換算レートの違いによる差額は「為替差損益」で調整する。
・在外子会社との間で生じた未実現損益は、原則は発生日または取得日レートで換算する。



14.持分法適用会社が欠損(債務超過)となった場合の会計処理

■一般的な処理順序
①投資勘定をゼロになるまで減額
②持分法適用会社に対して貸付金がある場合にはこれを減額
③投資会社が負担すべき損失額がその投資勘定の金額および貸付金等の金額を超える場合、超過部分について「持分法適用に伴う負債」等の適切な勘定科目をもって負債の部に計上する

■債務超過の持分法適用会社が関連会社である場合
(1)損失分担契約が存在しない場合
 持分法適用関連会社の欠損を負担する責任は、投資額の範囲に限られる。
⇒投資会社は、持分法による投資価額がゼロとなるところまで負担し、それ以上の欠損は負担しない。

(2)損失分担契約が存在する場合
 次の場合には投資者がその投資額の範囲を超えて損失を負担することとなる。
①その他の株主との間で損失分担契約がある場合
②持分法適用関連会社に対して貸付金がある場合
③持分法適用関連会社に対して契約上または事実上の債務保証がある場合
⇒事実上負担することになると考えられる割合に相当する金額や貸付金等の金額のうち回収不能と見込まれる金額について、投資会社の損失として、投資会社の持ち分に負担させる必要がある。

■債務超過の持分法適用会社が非連結子会社である場合
 親会社である投資会社は、
・原則、その損失の全額を負担する。
・例外として、株主間での損失負担割合が契約書等で明らかとなっている場合、その他の株主が負担する金額を除いた金額のみを負担する。






15監査役監査(主幹事が野村證券を前提)

・中間審査(N-1期)では、常勤監査役による監査が一通り終わっている状況を示す必要あり
・そのため、監査開始から最低でも3ヶ月程度の実績が必要
・選任が遅れた場合はその月数だけ中間審査の開始が遅れる
・複数名での監査役監査も開始する必要があり、少なくとも中間審査開始までに選任する必要あり。



















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2019年2月17日日曜日

2/15 勉強会:確定申告で誤りが多い税務署の要確認事項 他

1.金融商品会計、優先的に減損の検討を

企業会計基準委員会は「金融商品に関する会計基準の改正についての意見募集」
に対して寄せられたコメントについての検討を開始した。

■多かったコメント
・金融資産の減損や、金融商品の分類および測定に関しては、
国際的な会計基準との差異が大きいとして優先して検討すべきという意見が多かった。
・ヘッジ会計に関しては、優先順位は低いとする意見が多かった。






2.無形資産として資産化される開発費

■開発費の無形資産計上(IFRS)=以下のすべてを立証できる場合に限る
a. 使用又は売却できるように無形資産を完成させることの技術上の実行可能性
b. 無形資産を完成させ、さらにそれを使用又は売却するという企業の意図
c. 無形資産を使用又は売却できる能力
d. 市場が存在するor内部で使って企業の事業に役に立つことの立証
e. 使用又は売却のために必要となる適切な技術上、財務上及びその他の資源の利用可能性
f. 開発期間中の無形資産に起因する支出を信頼性をもって測定できる能力

■多額の開発費を無形資産として計上しているIFRS任意適用日本企業
⇒IFRS任意適用日本企業158社のうち、30社で無形資産として開発費を計上
(30社の総額:1兆305億円)
【主な会社】
・社名/開発費の無形資産残高/資産化率(無形資産計上額/研究開発費)
・本田技研工業/5985億円/18.2%
・住友化学/1539億円/3.1%
・JVCケンウッド/571億円/34.6%
・リコー/456億円/34.6%
・オリンパス/324億円/11.4%
・テルモ/291億円/6.4%
⇒この点、欧州企業は自動車関連業種が計上額上位を占める。

■結論
・資産計上マストではない(安易に資産計上すべきではないのは日本基準と同様)
・計上しない場合(費用処理)の根拠は不要
・各社に判断の余地あり






3.小規模宅地特例適用で納税猶予面積減少

■個人版事業承継税制
個人事業者の事業用土地や事業用建物等の承継に係る相続税、贈与税が全額納税猶予される制度
<納税猶予される特定事業用資産>
・宅地等(上限面積は400㎡)
・建物(上限床面積は800㎡)
・自動車など一定の減価償却資産
※平成31年1月1日~平成40年12月31日までの取得が条件

■小規模宅地等の特例
被相続人が自宅・店舗・事務所などとして使っていた宅地を取得する場合、宅地の価格を400㎡までは最大80%減額して評価する制度

■ポイント
・個人版事業承継税制と小規模宅地特例は選択制
・個人版事業承継税制の適用を受ける場合も、被相続人が居住に使用していた宅地等は小規模宅地特例を適用できる
・両方適用する場合、小規模宅地特例の適用面積は、個人版事業承継税制で納税猶予の対象となる宅地の対象面積から減額される




4.外国銀行の日本支店、利子控除制限の対象に

■利子控除制限
・海外にあるグループ会社から借入れを行い、当該グループ会社に日本から利子を支払った場合
⇒日本では利益から利子が控除され、法人税の課税所得を圧縮
⇒一方で海外グループ会社は受取利子を収益として税額を計算して申告
上記の海外グループ会社が日本より低税率国であれば所得を移転している事になる

■31年度改正にて
・借入に関しては、適用対象となる利子等からは日本の課税所得となる利子等が除外。
新たに適用対象に含まれるのは、グループ外の外国法人、非居住者からの借入に対する支払利子等。
 ⇒外国銀行の日本支店が対象となる
・更なる問題点
基準割合の引下げ:利払前所得50%を超える部分の損金不算入 → 20%を超える部分の~に改正されるため。
 これにより外国銀行の日本支店が国内銀行よりも課税上不利な扱いを受ける可能性が出ている。






5.会計帳簿等の閲覧謄写請求をめぐる最近の裁判事例

【事例】
・原告株主(被告会社の元代表取締役)は保有する被告会社発行株式の全部の売却を検討
・最新の情報をもとに被告会社発行株式の評価額を把握したい
・会計帳簿又はこれに関する資料として税務申告書等を含めた経理の状況を示す一切の帳簿資料を閲覧謄写請求。

■対象
⇒総勘定元帳、日記帳、仕訳帳及び補助簿等
「これに関する資料」とは会計の帳簿を作成する材料となった書類その他会計の帳簿を実質的に補充する書類。伝票、受取証、契約書、信書など

■対象外
⇒税務申告書及び月次試算表
損益計算書や会計の帳簿を材料にして作成される書類であるため、「会計帳簿」には含まれない。





6.遺留分に関する民法特例、個人事業者にも拡大

■個人事業者を対象とした事業承継税制
平成31年度税制改正で注目される改正のひとつ。
・10年間の時限措置で既存の事業用小規模宅地特例と選択適用。
・法人の事業承継税制と同様に承継計画を作成して中小企業経営承継円滑化法の認定を受ける仕組み。

■遺留分の民法特例
個人事業者についても事業承継税制が適用されることを踏まえ、中小企業庁は税制以外の法整備も必要と判断、遺留分の民法特例の対象に個人事業者を追加するなど見直しを行う意向。
・遺留分の民法特例は中小企業経営承継円滑化法で措置されている。
・現行の特例は、経営者から後継者へ贈与された自社株を、遺留分算定基礎財産から除外又は遺留分算定基礎財産に算入する価額を合意時の時価に固定。
⇒今回の中小企業承継円滑化法見直しでは、相続人全員の合意により簡便な手続きで後継者に生前贈与された事業用資産について、遺留分算定するための財産から除外できるようにする。





7.家事関連費と必要経費

家事関連費については「業務上必要な部分の金額を明らかにできる」金額については必要経費算入可

<過去裁決事例>
■通信費
インターネット通信料:業務上必要な部分の金額があきらかにできないとして全額否認された事例あり

■車両費
車両減価償却費:分母を365、分子を業務使用のみの日で按分した事例あり

■交際費
接待交際費:証拠書類なしのため0円認定した交際費を、裁判所が納税者の主張する金額の
50%相当額である24万円と認定した事例あり

⇒いずれも他論点に付随してオマケ的に指摘されたものであり、家事関連費の否認を目的としたものではない。
 ※通常は家事関連費を必要経費に入れても否認リスクは低い



8.確定申告で誤りが多い税務署の要確認事項

■申告不要の配当等を申告すると更正の請求は不可
Q確定申告しなくてもよい配当等について、配当控除を受けるために確定申告したが、
その後所得金額が増加し配当控除を受けないほうが有利であるため、更正の請求を行った
A申告後に配当等を申告しないものとする更正の請求はできない。(修正申告も×)
 修正申告等を行うための事由に該当しないから

■申告分離課税から総合課税への変更は不可
Q上場株式の配当等につき申告分離にて確定申告したが、
総合課税の方が有利とわかり更正の請求を行った
A変更することは不可。更正の請求を行うための自由に該当しないため。
ただし、期限内申告であれば、総合課税としたうえで確定申告することは可能。

■FXなどの損失繰越は連続で確定申告が必須
Q2年前にFXで損失が発生し確定申告を行った。
前年は特に申告をせず、本年分に2年前の損失を充当したい申告したい。
A充当できない。
過去の損失を充当する場合、損失発生時か連続して申告書を提出しなければならない。
なお本年分の申告をする前に、前年分の申告の更正の請求(損失の繰越)を行えば、本年分において控除可能

■開業2か月以内の青色申請
Q不動産貸付業(白色申告)を行っていたが別の事業を開始した際に青色申告を提出。
開始年分より青色申告が可能か
A新規事業を開始した年分は白色。翌年分より青色。
 
■妻の年金から天引きの社会保険料は夫の所得から控除不可
Q妻の年金から天引きされた社会保険料は夫の所得から控除できるか
A実際に支払った人の保険料のみ控除が可能なため控除できない。夫が支払っていれば控除可能





基準が明らかでない場合の会計処理に重要性がある場合は、重要な会計方針として注記

・ASBJが審議
・会計基準の定めが特に存在しない、業界固有の会計処理など、これまでは開示されていなかった会計方針について、重要性が高い場合は会計方針として開示することを求める方向に。
・「重要性」の判断基準は特に記述しない予定







10.収益認識基準に対応した法人税基本通達のポイント

■役務提供に係る収益の帰属の時期
・通則的な部分(2-1-21の2~6)⇒対象は「収益認識基準の適用対象となる取引」
・具体的な取扱部分(2-1-21の7~11)⇒対象は限定なし。従来の通達の取り扱いを維持。

・請負に係る収益の帰属の時期(2-1-21の7)
⇒履行義務が一定期間に渡り充足されるものについても
原則、「目的物の全部を完成して相手方に引渡した日」or「役務の全部を完了した日」を「役務の提供の日」とした上で、進捗に応じた収益の認識を「認める」としている。

■使用料等に係る収益の帰属の時期
・具体的な取扱部分(2-1-29~30の5)⇒対象は限定なし。

・賃貸借に基づく使用料等の収益の帰属時期(2-1-29)
⇒原則、収益認識基準。許容、従前の改正前通達。

・知的財産のライセンス供与等に係る収益の帰属時期(2-1-30)
⇒一定の要件のもとでは、履行義務が一時点で充足されるものとする。




11.「耐用年数」をめぐる会計上の実務論点Ⅰ~Ⅲ

■耐用年数の決定に係る会計基準のポイント
・税務上=法定耐用年数(画一的)
・会計上=経済的耐用年数
 ※法定耐用年数が企業の状況に照らして不合理でなければ、会計監査上妥当なものとして取り扱い可能

■耐用年数に係る実務上の留意点
・減損損失認識時に(計上の有無は関係なし)耐用年数の変更が必要なケース有り
⇒将来キャッシュ・フロー見積り時の見積り期間と耐用年数が密接な関係
・定借契約の場合やオペレーティングリース取引により使用している資産の資本的支出はその賃借期間で償却





12ポイントプログラムとデジタルサービス

■共通ポイントの取扱い
「共通ポイント」とは、ポイントサービスの加盟店で共通に利用できるポイントであり、当該共通ポイントに係る消費税法上の取扱いについては、現状当局の確立した見解は公表されていない。また実務上の処理も統一されていないが、税務調査で否認される事例が見受けられる。
・共通ポイントの運営会社は、ポイントプログラムの設計段階で消費税の取扱いをよく検討したうえで、慎重にその取扱いを決定する必要があり、以下は消費税の解釈例である。
・役務提供対価⇒課税取引
・物品切手等⇒不課税取引(発行時)、非課税取引(流通時)
・支払手段⇒不課税取引(発行時)、非課税取引(流通時)
・預り金的性質⇒不課税取引





13.研究開発税制における控除税額の上限に係る改正概要

研究開発支出のインセンティブ付与を目的として、各種優遇措置が追加。
2019年4月1日以降開始する事業年度から原則適用されることになる。
※従来あった「高度水準型」部分は、期限到来をもって廃止される

■総額型
 総額型とは、試験研究費の増額割合に応じて、当期の試験研究費の総額に対して一定割合を法人税から控除できるもの。
 改正後の税額控除率は以下のとおり。

(1)大企業の場合
・控除額の上限は法人税額の25%(一定のベンチャー企業の場合は40%)
・試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合には、更に控除率・控除上限が上乗せされる時限措置がある

(2)中小企業の場合
・控除額の上限額は、法人税額の25%ですが、増減試験研究費割合が8%超の場合は35%(時限措置)。
・試験研究費の額が平均売上金額の10%超の場合には、控除率が上乗せされる2年間の時限措置がある。

■オープンイノベーション型の改正点
・控除上限が5%から10%に拡大
・支援対象の研究開発の範囲が拡大

上記改正により、法人税の控除上限が現行の40%から45%(ベンチャーの場合は最大60%)に引き上げられる。




14.サンバイオ株の大崩れ

・創薬ベンチャー
・2015年4月マザーズ上場
・公開株数は 400 万株、公開価格は 2,000 円、公開時の時価総額は 872 億円
・IPO後の 2 年間は認知度も低く、他の創薬ベンチャーが人気化する中で鳴かず飛ばずの株価推移が見られたが、
一昨年後半あたりから上昇トレンドが始まった。
・結果として昨年 6 月 25 日の株価 2,421 円は本年 1 月 26 日の高値 12,730 円まで 5.3 倍にまで急騰
・創薬ベンチャー全体相場が不調な中で、個人投資家の過度な米国での臨床試験結果に期待が集まり過ぎた結果、
株価は時価総額6300 億円台という異常な水準まで跳ね上がってしまった。
・結局、治験の結果は有効性を確認できず、投資家の期待は一気に失望に変わった。
・翌 1 月 30 日から大量の売りが出され、2 月 4 日まで 4 日連続のストップ安(2,400円程度)となった。






15不動産リースの判定

■リースの定義
リースとは資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約または契約の一部であること
→資産の特定、経済的便益の享受、資産を自由に使える権利の3点から判断していく

■不動産リースの場合
不動産リースには土地および建物、オフィススペース、小売スペース(テナント)等が挙げられる。
不動産賃貸借契約がリースに該当するかどうかは明確に判断できることが多い
・資産の特定
→契約で住所やモール内のどの店舗を貸し出すか明記
・経済的便益の享受
→単独で使用する権利を有している場合は条件をみたす。サブリース時も当該要件を満たす
・資産を自由に使う権利
→通常、賃借資産をどのように使用するかの意思決定権を有している。
→たとえば、ホテル用途として使用すると契約書に記載がある場合、借手がホテルとして使用する範囲内であれば、どのように使用するかの意思決定妨げるものではない

■オフィススペースのリース
・契約前提
→オフィスビルの2フロアをリース、借手がフロアを単独で使用し、フロア内の営業時間等をコントロールしている
・判定
→契約でフロアと明確に特定されている、借手が自己使用で経済的便益のほとんどすべてを享受、借手が賃借スペースの使用方法を決定している
・結論
→リースに該当























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