2015年10月30日金曜日

10/30 勉強会:法人税:工期途中で長期大規模工事に該当することとなった場合 他

1.役員解任や計算書類等の交付請求、会社法をめぐる最近の訴訟トラブル

■事例1
・会社の株主である創業家が意向に沿わない経営をした創業家以外の出身である代表取締役を解任した事例

・ポイント
 会社法では会社は役員を株主総会の決議によりいつでも解任できるがその解任には「正当な理由」が必要となる
 ⇒正当な理由がない場合:解任された役員は会社に対して損害賠償請求ができる

・本事例では、創業家の意向に沿わないということだけでは解任のための正当な理由とはならなかったため、前代表取締役の損害賠償請求が認められた

■事例2
・会社は作成していない計算書類についても、株主からの交付請求に応じる必要があるかどうかが争われた事例

・ポイント
 会社法では会社は計算書類等を5年間、本店に備え置くとされ、また株主、債権者は計算書類等の謄本交付を会社に請求できるとされている
 ⇒交付請求できるのは、「計算書類等が書面をもって作成されているとき」とあるので作成していないものについての作成請求ができるわけではない

・本事例では、作成していない計算書類の交付請求はできないものとして株主からの交付請求を斥けた


2.158社が監査等委員会設置会社に移行

158社が改正会社法で創設された監査等委員会設置会社に移行
⇒全上場会社の4.5

※監査等委員会設置会社とは?
取締役3人以上で構成され、そのうち過半数は社外取締役から構成される制度。
指名委員会等設置会社にある報酬委員会や指名委員会は義務付けられていない
⇒ただし任意の指名・報酬委員会を設置している場合も見受けられる


3.詐害意志は第二次納税要件義務にならず

■詐害意志
 …詐害行為意志の有無は、国税徴収法上の第二次納税義務の成立要件を満たさない

■事例
 ・Aが滞納者(Aの夫)から土地の持ち分の贈与を受けた
 ・無償譲渡等の処分に該当するかどうか?

 ⇒A 「離婚後の生活のために夫から譲り受けた。詐害意志はなかった。」
 ⇒審「詐害の意志は関係ない。処分は違法ではない」

■参考
 ・財産を差押えをしても納税が確保できないような場合、
滞納処分を停止することがある

 ・詐害行為
  …財産を他の人へ無償/低額で譲渡し、滞納処分を免れようとする行為

 ・第二次納税義務
  …納税義務者と「一定の関係のある第三者」に納税義務を負わすことができる
  …滞納者が無償/低額で資産を譲渡した場合、
   譲渡で利益を受けたものに対して第二次納税義務を負わすことができる


4.繰延税金資産、分類3定義を一部見直し

66号における、分類3の定義を変更
 (66) 経常的な損益が大きく増減 ⇒ (適用指針案) 課税所得が大きく増減
 ⇒「損益」ではなく、「課税所得」を判断要件とした

■適用指針案における、分類3の定義を見直し
 (見直し前) 課税所得が大きく増減 ⇒ (見直し後) 課税所得、又は、欠損金が大きく増減
 ∴「課税所得」はプラスの概念、マイナスの場合は「欠損金」


5.住民税の特別徴収税額通知の際も個人番号不要に

各市町村別の住民税の特別徴収税額通知
⇒当初案:H29年度通知分よりマイナンバー記載。
  変更案:マイナンバーは記載されずに通知される予定
     (H27/10/30現在、決定事項ではない)

:横浜市参照
H28年度分(H285月通知) ⇒制度導入前のため不要
H29年度分(H295月通知) ⇒記載不要

その他マイナンバーの記載が不要となる書類(H27/10/30現在)
⇒「受給者用」の給与所得の源泉徴収票
 
「税務署提出用」はマイナンバーを記載する必要あり。
 書式は同一であるが「受給者用」のみ空欄とすればよい


6.平成2841日から国税不服申立制度が変わる

以下、改正内容
・原処分庁へ「異議申立て」しなくても、直接国税不服審判所へ「審査請求」できる
 ⇒事実認定ではなく法的解釈を争いたい場面で活用できる
・「異議申立て」が「再調査の請求」へと名称変更(内容変更なし)
・異議申立て(再調査の請求)可能期間が1ヶ月伸びる
・請求人は、原処分庁が提出した書類以外に、国税審判官が独自に収集した証拠書類を閲覧できるようになる
 ⇒審理の透明性向上


7.法人税:工期途中で長期大規模工事に該当することとなった場合

■長期大規模工事の要件
・着工から引き渡しまで1年以上
・請負対価10億円以上
・対価の1/2以上が引き渡しから1年以上経過後に支払われるものでないこと
⇒要件を満たす場合、工事進行基準が強制適用される

■工期の途中で長期大規模工事に該当することとなった場合の処理
・資材の高騰により請負対価が当初9億⇒10億に変更された場合などが該当

(原則)
・該当することとなった事業年度において既往事業年度分も含めて進捗割合を計算
 ・前期進捗 10% 
 ・当期進捗 20
⇒進捗割合30%で当期の収益費用を計上

(特例)
・既往事業年度分は完成時に計上する。
⇒当期は進捗20%として収益費用を計上

<参考>
消費税は
・完成時に一括計上
・上記(原則)
・上記(特例)
のいずれで計算してもよい


8.所得税:福利厚生で従業員に支給する"食事券"に源泉徴収は必要か

社員食堂がない法人などが従業員らの福利厚生を目的として支給する,特定の飲食店のみで使用できる“食事券”について。

■原則的な取り扱い
食事券(または食事)の支給は経済的利益の供与なので、源泉徴収が必要。

■食事の支給にかかる特例 ( 所基通36382
(1)従業員らが食事の半額以上を負担していること
(2)法人の負担額が月額3,500円以下であること
2点を満たす場合には、源泉徴収が不要とされる。

■食事券の支給にも『所基通36382 』は適用可能か
基本的には可能。
ただし、換金が可能であるケース、アルコールが購入できるケースなど、一般的な食事の支給と同一視出来ない制度である場合には適用が否認される可能性もある。
食事券の制度を設計するうえで、留意を要する。


9.ポイント引当金

・付与したポイントの未使用残高に対し、「ポイント引当金」を計上する
IFRSと日本基準とで異なる

日本基準:ポイント付与時に費用として引当金計上
IFRS:ポイント付与時に売上のマイナス
     ポイント利用時に売上がプラスになる


10.贈賄の手口と早期発見するための実務上のポイント

1. 処罰対象の贈賄とは
 ⇒ 国営企業や政府関係者等に対し、不正に便宜を図ってもらうことに対する支払
2. 贈賄の発見が困難な要因
(1) 支払行為の対価性
 ⇒ 贈賄の事実を明確に記録されることはない
(2) 内部統制の限界
 ⇒ 証憑等を改ざんされる可能性がある
(3) 間接取引の存在
 ⇒ 第三者を通して取引され、取引の実態が見えづらくなる

3. 主な手口
・間接取引での贈賄
・海外旅行への招待や贈答品の授与による贈賄

4. 発見の端緒
(1) 会計記録における端緒
・外注費、業務委託費、支払報酬、雑費などの勘定科目に留意
・発注書や請求書等の証憑のない取引について留意
(2) 取引マスターにおける端緒
・取引先相手に国営企業や、政府関係者等がいないかに留意
・同一の取引先に対し複数の支払口座が登録されていないかに留意
(3) 契約書おける端緒
・契約書に記載された内容が不明瞭であったり、記載内容が不十分でないかに留意


11.決算期の異なる会社に新たに投資して関連会社とした場合の持分法の適用方法

■前提
 A社:
  3月決算
  5月末にB社株式を20%取得して関連会社に
  4月にIR

 B社:
  9月決算

■決算日の取扱い
 連結対象会社の場合:
  原則、決算日を合わせる
  連結決算日と連結子会社の決算日の相違が、3か月を超えない場合は連結子会社の決算を正として連結することが可能(ただし、その3か月間に重要な取引があった場合は反映)

 持分法適用会社の場合:
  親会社の支配が及ばないため、上記のような取扱いはない。
  =直近決算の財務諸表を使用する
  ただし、関連会社の直近決算から連結決算までに重要な取引があった場合には反映させる必要あり

■みなし取得日の取扱い(株式取得が子会社・関連会社の決算日以外の日の場合)
 連結対象会社の場合:
  支配獲得日前後いずれかの子会社の決算日(四半期決算日を含む)に取得したものとして処理

 持分法適用会社の場合:
  上記の方法を踏襲
  ただし、原則的には主要条件が同意されて公表された日よりも後の日をみなし取得日とする
  投資の日から関連会社の決算日の期間の利益又は損失のみ、一行連結に反映させる。
  (あてはめ)
    5月取得のため、みなし取得日候補は、3月と6月となるが、
    IRが4月のため、3月は×。みなし取得日は6月となる。
    関連会社決算日は9月のため、
    翌年3月末のA社連結財務諸表上のB社株式及び持分法投資損益には7月~9月のB社利益のみ反映させる。


12.189回通常国会で成立した主な法律と実務への影響

1.金商法の一部を改正する法律
 ・施行日:201563日から一年以内
 ・概要: 適格機関投資家等特例業務の規制が強化
 ⇒高齢者などの一般投資家に対するファンド販売等により投資被害が発生している為、届出の記載事項や添付書類の追加拡充等が行われた
    
2.不正競争防止法の一部を改正する法律
 ・施行日:201573日から6ヶ月以内
 ・概要: 営業秘密侵害行為を刑事・民事両面で抑止
  ⇒企業情報の流出事案が相次ぎ発生している為、罰金額の引き上げ等の措置が講じられた

3.特許法等の一部を改正する法律
 ・施行日:201573日から1年以内
 ・概要: 職務発明制度の見直し
  ⇒知的財産権の適切な保護及び活用を実現する為、契約等であらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めた時は、使用者等に特許を帰属させることが認められた

4.女性の職業生活における活躍の推進に関する法律
 ・施行日:201594
 ・概要: ⇒事業主行動計画の策定等
女性の活躍加速化の為、(常時雇用する労働者が300人超の事業主について)女性の職業生活における活躍の推進に関する取組計画を策定し、労働局への届出、社内外への通知等を行うことが義務化された


13.シェアードサービスの具体的な検討手法

※シェアードサービスとは、複数の会社・拠点で分散して実施している同様の業務を1箇所に集約・集中化する経営手法

「集約して効果があるのか」「本当に集約できるのか」の2点から各業務を評価

(1)「業務量調査」
・集約化することで効果を生む業務の効果試算・判別
→業務量が多く、コスト負荷が高い業務を判別=集約化対象とし集約では効果は不十分
→業務の標準化も合わせてやることがポイント

(2)「業務インタビュー」
・会社の特性等を確認し、集約可能な業務の特定、業務プロセスの改善の余地を検討
→期待できる効果と実現性を天秤にかけて、基準をもって優先順位をつけ、集約化対象業務を整理


14.民泊の規制

Airbnbの成長と共に広がる民泊だが、日本ではまだまだ規制が厳しい。
・【大阪府】条例で「7日以上利用」「旅券確認」を条件に認める。
・【東京都大田区】12月に議会に提出すべくルールを策定中。
・全国での解禁は2017年か


15.2015114日に郵政3社(日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険)の3社が上場

・3IPO総額は約1.4兆円の見込み
1987年のNTT上場以来、最大の民営化と言われている。
3社のPER(※)は日本郵政16.4倍、ゆうちょ銀行17倍、かんぽ生命15.7

(※)PER(株価収益率)=時価総額(株価×発行済株式数)÷純利益=株価÷1株当たり利益

・今週の新規上場会社
上場・公開日   社名                  銘柄コード      市場    公募価格(円)
1028     バルニバービ            3418              マザ    2500

1027     パートナーエージェント 6181              マザ    1260






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  









2015年10月23日金曜日

10/23 勉強会:国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A(3) 他

1.非常勤役員への日当を損金不算入と判断

・定額の役員報酬を受けている非常勤役員へ支払った会議日当が、定期同額給与に該当しないため損金不算入と判断された事例

■審判所の判断
・定期同額給与とは
 予定された支給基準に基づき、毎日、毎週、毎月のように1か月以下の期間を単位として、規則的に反復または継続支給される。
 各支給日ごとの支給額が同額である給与。

・非常勤役員への会議日当の支給方法、支給回数
 理事会出席に関するもの:当日払い
 監査業務に関するもの :数日分まとめ払い
 各月の支給回数    :0回から5
 ⇒支給期間の単位がまちまちで、規則的に反復しているとは言い難いため定期同額給与に該当せず損金不算入と結論付けた。

※出張日当について
 会社の出張旅費規程などの規定に基づき役員に支払われる出張日当は?
 ⇒旅費として処理できる(給与ではない)
 根拠:所得税法の規定で、非課税とされる旅費の範囲というものがあるため。
    支給額が適当かどうかの判定は別途必要。
    出張旅費規程のない会社が出張日当を支払った場合は、給与となる。


2.超富裕層の管理体制を強化、国税当局の対応が明らかに

■超富裕層に関する管理・調査体制の強化を図るために国税庁が策定した試行通達の内容が明らかに
・見込保有資産総額(国外財産調書や財産債務調書などにより把握)などの判断基準により指定される
⇒「形式基準」と「実質基準」あり

・その個人だけでなくその個人の主宰法人や関連する個人・法人を含めた名簿が作成・管理される

・対象者は3つの区分(A・B・C)に分けられる
⇒A区分=課税上の問題が想定され調査企画の着手が相当と認められ、資料情報等を集約・分析後、調査が企画される
⇒B区分=Aには該当しないものの多額な保有資産の異動が見受けられるなど継続的な注視が必要と認められる
⇒C区分=A/B区分以外で経過観察が相当と認められるもの

・平成27年事務年度においては東京・大阪・名古屋の局で実施

・全国的な展開は平成28事務年度以降において検討


3.動き出した消費税の軽減税率

・平成294月の消費税率10%引き上げと同時に軽減税率の導入を検討している
・議論が進められているが、行方がいまだ不透明なままとなっている

■当初案(税率は10%単一方式)
・レジ等において「マイナンバーカード」を提示することで
 消費税2%分相当をポイント還元。
 消費者はパソコン等で還付申請
 ⇒事業者への負担が軽いが、消費者への負担が重く、特に高齢者が対応できるかが問題

■公明党案(請求書等保存方式)
・請求書に10%と8%の両方の記載がされている方式
・請求書の交付/保存をしていることで仕入税額控除が取れる仕組み
・免税事業者/課税事業者ともに今までと基本的に変わりはない
・ゆくゆくはインボイス方式への切り替えを検討

EU方式(インボイス方式)
・登録事業者が消費税を記載したインボイスを発行する
・事業者番号の記載があるインボイスの保存が仕入税額控除の要件
 インボイスに記載された消費税額を基礎として消費税を計算
・免税事業者である売り手は税額を記載したインボイスを交付できない
 (仕入税額控除が取れない。課税事業者選択で仕入税額控除可能)
・買い手も免税事業者からの仕入は仕入税額控除の対象外


4.今週の専門用語~審査請求~

【国税不服申立制度】
■現行
 納税者は、処分に不服がある場合、原則として国税不服審判所長に対して審査請求できない
 (事前に原処分庁に対して異議申し立てをし、異議決定を経る必要がある。)
 なお、審査請求期間は処分があったことを知った日の翌日から「60日以内」

■改正後(平成2841日以降)
 納税者は、処分に不服がある場合、国税不服審判所長に対して審査請求できる
 (事前に原処分庁に対して異議申し立てをし、異議決定を経る必要はない。)
 なお、審査請求期間は処分があったことを知った日の翌日から「3ヶ月以内」

⇒改正により、
 ・納税者の選択により、直接審査請求できるようになった。
 ・審査請求期間が延長した。


5.年金機構のマイナンバー制限で実務は?

マイナンバー法の改正により、日本年金機構は一定期間、マイナンバーの利用ができなくなった。
5月末に発生した個人情報流出に伴い、年金機構側の情報管理に不安があるため。

H2911日以降に提出する書類への影響は?
⇒従来通り、マイナンバーを記載して年金機構に提出する。
 ただし、厚労省は年金機構にマイナンバーを知らせない仕組みを検討中で、今後、実務的な対応を定める予定。


6.国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQA(3)

(1)リバースチャージ方式とは?
 ・国外事業者から「事業者向け電子通信利用役務の提供」を受ける国内事業者が、国外事業者の代わりに消費税を納税する方式。
 ・(例)Google AdWordsを利用し、リスティング広告代1000円支払った。
   -Googleへの支払は1000円のまま変わりなし。
   -消費税申告時、1000円に対する消費税80円を納付する義務あり。
    ※ただし、1000円分は仕入税額控除の対象となる。
   -仕訳
    広告宣伝費 1000 / 預金    1000
    仮払消費税    80 / 仮受消費税   80
 ・リバースチャージ方式の対象となる支払を、「特定課税仕入れ」といい、帳簿に「特定」などと記載する必要あり。

(2)リバースチャージ方式の対象者
 ・免税事業者、簡易適用者、課税売上割合95%以上の事業者はリバースチャージ方式の納税義務なし。
  ※今までどおり、国外企業からの広告サービス等は課税対象外。

 ⇒一般課税 かつ 課税売上割合95%未満 の場合のみ考慮する必要あり!

(3)「事業者向け電気通信利用役務の提供」の判断
 ・個別契約などで、明確に事業者向けであることが必要
 ・個人も利用できるサービスを、法人が申し込んだ場合などは該当しない
 ・該当取引は、請求書に「リバースチャージ方式対象」である旨が記載されている
  ※請求書を発行する国外事業者に記載義務あり
  ※ただし、該当取引にも関わらず国外事業者が記載を怠ったとしても、納税義務はなくならないので注意


7.子会社間における無対価合併の適格判定など

■無対価合併
被合併法人の株主である法人に、合併法人の株式その他の資産が交付されない合併をいう。100%子会社間の合併など。

親会社A
100 ↓100
B   C

BCを合併した場合に親会社AB社株式が交付されない場合には無対価合併となる。

■完全支配関係がある無対価合併の適格要件
 その合併前に次のイからニまでのいずれかの関係があること
イ 合併法人が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係
ロ 一の者が被合併法人及び合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係
ハ 合併法人及びその合併法人の発行済株式等の全部を保有する者が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係
ニ 被合併法人及びその被合併法人の発行済株式等の全部を保有する者が合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係

■親会社Aの仕訳
B株式/C株式
⇒被合併法人株式の帳簿価額と同額だけ合併法人株式の帳簿価額を増加させる


8.所得税:海外出張にかかるコストの給与課税について

会社が負担する海外出張にかかるコストのうち事業との関連性が乏しいものについては、給与課税の要否に留意が必要。

例えば海外出張期間中の休日にプライベートのレジャーに興じるケースでは要検討。

渡航費用についての考え方
渡航の主要目的、工程の大半がビジネスであれば、旅行工程にレジャーが含まれていても全額を旅費として取り扱うことが可能。
(給与課税不要。按分等は必要ない)

出張手当、実費精算についての考え方
 ※出張手当の性質
  ・出張にかかるコストの補填
  ・遠隔地での生活や業務による心身への負担の見合
実費精算が行われるケースにおいて休日に私用のゴルフをする場合、休日分の出張手当を会社が負担する合理性は低い。
コストの補填の性質は無い筈であるし、遊んでいるので有れば心身の負担の見合いも無さそうだから。
(休日分の手当も支給されている場合には給与課税の検討が必要)


9.監理銘柄

・上場廃止基準に該当するおそれがある場合、東証が指定する。

要件例
・有報等の虚偽記載の影響が重大である
・監査報告書における不適正意見や意見を表明しない旨が記載されその影響が重大であるなど

・通常通り売買は可能
・上場廃止基準に抵触しないと判断された場合には指定も解除される
・現状9社

監理銘柄⇒整理銘柄⇒上場廃止


10.国外財産調書 2014年分

・海外に財産5,000万超の個人が対象。
2013年は5,600名弱 ⇒ 2014年は8,200弱が届け出。
・総額3.1兆円のうち、1.7兆円が有価証券、0.5兆円が預貯金、0.3兆円が建物

・故意の不提出や虚偽記載は、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  








2015年10月17日土曜日

10/16 勉強会:国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A(2) 他

1.有利発行に伴う受贈益課税事件の全容

■まとめ
・有利発行かどうかの規程 法人税法基本通達2-3-7
・課税のベースとなる株式の取得価額の判断の規程 法人税法基本通達2-3-9
・有利発行かどうかとその課税のベースとなる取得価額において評価方法を変えることができる?


2.減損の遊休資産でもスケジューリング可

ASBJが「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」にて検討中
・減損損失を計上した償却資産に係るスケジューリング
(事業の用に供している場合)
減価償却計算を通じてスケジューリング可能

(遊休状態の場合)
減価償却計算を通じて減算することはできないものの法人税法基本通達9-1-16により評価減ができるケースあり。
よって、売却等に係る意思決定がない場合等でも、スケジューリング不能な一時差異として取り扱うことは適切ではない。


3.給与所得控除の見直しが論点に浮上も

・政府税制調査会で上がっている意見
(1)個人所得課税の見直し
 ・日本の給与所得控除の割合が他国と比べて高い
 ・過去の税制改正で給与所得控除が拡充されていた背景

(2)海外で導入している税制の導入
 ・消失型の所得控除…所得が高いほど控除額が逓減・消失
 ・ゼロ税率…一定の収入金額まで所得税率をゼロ


4.税効果会計の適用税率は税制改正法案の"国会成立日"

■現状、税効果会計の適用税率は、期末日現在で「公布」(1)されている税法規定に基づいて算定
 ⇒3月決算の場合、3月末までに改正税法が公布されていれば、改正後の税率を適用して算定

■ただし、以下のような問題あり
 ・税制改正法案が国会で成立しても、法律の公布が決算日間際までされないことが多い
 ・法律が公布されても各地方自治体の改正条例が3月末までに公布されない
 ・IFRSや米国会計基準と取扱いが異なる

■今後、税効果会計の適用税率は、期末日現在で国会で「成立」(2)されている税法規定に基づいて算定する方向へ
 (平成283月期から適用できるよう、「税効果会計に適用される税率に関する適用指針(仮称)」を開発中)
 ⇒3月決算の場合、改正税法の公布日が41日になったとしても、3月末までに税制改正法案が国会で成立していれば、改正後の税率を適用して算定

(1) 国民が知り得る状態にすること ex.官報に掲載
(2) 法案が可決されること


5.源泉徴収票等への個人番号の記載

10/2付の所得税法施行規則等の改正により、本人へ交付する源泉徴収票等に個人番号の記載が不要とされた。

改正前
⇒すべての源泉徴収票及び支払調書に記載する。

改正後
⇒税務署提出用の源泉徴収票及び支払調書にのみ記載する
  受給者に渡す源泉徴収票、報酬等を支払った者へ送付する支払調書には記載不要。


6.国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQA(2)

※下記、すべてH27101日以後の取引前提
Q1.国内事業者が、国外に住所ある人に電気通信利用役務の提供を行った場合の内外判定は?
A1.国外取引(役務の提供を受ける者の住所地で判定)

Q2.国内に旅行に来ている外国人旅行者に電子書籍の提供を行った場合の内外判定は?
A2.国外取引(旅行者の住所が国外だから)

Q3.日本企業の海外支店に電気通信利用役務の提供を行った場合の内外判定は?
A3.国内取引(役務の提供を受ける法人の本店所在地で判定)

※下記、国外事業者が国内企業等へ電気通信利用役務の提供(国内取引)を行った場合
 (国外事業者に納税義務が発生する場合)
Q4.国外事業者であっても免税点制度は適用されるか?
A4.適応される。

Q5.国外事業者の免税点判定に使用する売上は?
A5.国内「消費者」向け電気通信利用役務の提供にかかる売上で判定
 ※国内『事業者』向けは、リバースチャージ方式により、役務の提供を受ける国内事業者に納税義務あり

 (源泉税イメージ)
Q6.H27101日を含む課税期間の免税点判定はどうするか?
A6.旧法で計算した結果免税事業者となる場合は、新法を適用して計算し直す。
  ⇒新法で計算し直した結果、課税事業者となる場合は、H27101日以後の取引のみ課税対象となる。


7.国外転出時課税:分割確定時の更正の請求は不可

■国外転出時課税の対象
 (1)1億円以上の有価証券等を保有する者が国外転出する場合
   ⇒5年以内に帰国する場合等は更正の請求可

 (2)非居住者に贈与や相続で有価証券を国外移転させた場合
   ⇒分割協議が確定し相続しないこととなった場合でも更正の請求不可

■(2)の具体例
 ・被相続人A4億円の有価証券を保有
 ・相続人は居住者Bと非居住者C1/2ずつ
  ⇒申告期限までに分割協議が整わない場合、法定相続分で相続したとみなされる。
  ⇒みなし譲渡益課税の対象となる(国外移転ありとみなされる)

 ・その後分割協議が整い、有価証券は居住者Aがすべて相続することとなった。
  ⇒更正の請求対象とされていないため、実際は国外移転が行われていないのにみなし譲渡益課税されてしまう。

 金融庁が28年改正で是正を要望


8.法人税:内定者の囲い込み費用

内定者に対して支出した費用は,支出した金額や目的等によって交際費となる場合とならない場合がある。

ケース1
会社の印象を良くして内定者の入社意欲を高めることを目的に食事や旅行に連れて行った場合
→外部の者に対する『接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為 』である為、交際費に該当する。

ケース2
入社前に仕事内容を具体的に知ってもらうための工場見学等に際し、昼食として弁当や飲み物を出すような場合
→通常必要な費用であって,接待の意味合いが少ないため、会議費等として扱う事が可能。


9.税効果の回収可能性 5分類に該当しない場合

・委員会報告の66号に示される5分類に当てはめるときにいずれの要件も満たさないケースがある
・過去3年で2期は課税所得が将来減算一時差異を十分に上回っているが、1期は十分には上回っていない場合、分類1と2の間になる。
 ⇒実務上は保守的に下の分類(この場合、分類2)として扱っていた

新ルールでは、
 ①過去推移
 ②当期の見込
 ③将来の見込
等を総合的に勘案し、
「各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類する」と変更された。


10.会計方針の変更と会計上の見積の変更の相違点

1. 会計方針の変更
⇒ 会計基準上認められている他の会計処理への変更
⇒ 過去の数値も、遡って修正することが必要

【例】
棚卸資産の評価を先入先出から、総平均法へ変更など

※ただし、正当な理由がある(利益操作でない)ことが変更できる要件

2. 会計上の見積りの変更
⇒ 新しい情報を入手したことにより、より正確な見積りへと変更すること
⇒ 過去の数値を遡って修正する必要はない。

※新しい情報によりもたらされる変更であることを理由に、遡及修正は求められていない。

【例】
引当金の算出方法について、より正確な算出が出来るようになったため、算出方法を変更など


11.H28年度税制改正による交際費の取り扱い

1. 現在
(1) 大企業(資本金1億超)
⇒ 接待飲食費の50%を損金算入可能

(2) 中小企業
⇒ 交際費の額が800万まで損金算入可能 or  接待飲食費の50%まで損金算入可能

 ※1,600万超の接待飲食費がある場合には、接待飲食費の50%損金算入の方が有利

2. 改正後
⇒ 接待飲食費の50%まで損金算入できる特例はH27年度末をもって廃止の見込み
⇒ 800万までの損金算入可能とする制度は2年間延長。

※大企業は全額損金不算入となる。


12.クロスボーダーM&Aの財務DDの実務~貸借対照表項目に関するDDのポイント

■資産
 (1) 売上債権
 ※新興国では貸倒リスクが高くなるため、現金回収を行うケースが多くなる
 ・納税意識の低い経営者によって現金取引による売上が簿外処理される事例あり
 ・現金回収のケースでの従業員、回収代行会社による着服リスク高め
 ・M&Aを前提としている場合、架空計上などによって多額の売上債権が発生していることもある
 (2) 棚卸資産
 ・原価計算の適切性(在庫残高の計算)
 ・滞留在庫の評価(在庫の年齢表が作成されていないケースも多い)
 ・在庫数量の正確な把握(実地棚卸が行われていない場合アリ)
 (3) 有形固定資産
 ・減価償却(償却方法が設備の使用状況を適切に把握したものか、など)
 ・減損会計
 ・鑑定評価の必要性検討

■負債
 (1) 仕入債務
 ・租税回避を目的とした架空仕入等、不正の可能性
 ・購買担当者による不正→社内の承認プロセス要確認
  (担当者が仕入先と結託しリベートを入手することによって対象会社にとって通常価格よりも高い価格で仕入を行う可能性)

 (2) 有利子負債
 ⇒M&A実行後、何を引き継ぐか
 ・役員、親族からの借り入れの取扱い
 ・金利や担保の条件等の確認

 (3) 引当金
 ・労務関係(退職給付、賞与)などについては現地の慣行に留意する。
  タイ:定年退職は会社都合の回顧として解釈されている。
     定年退職の際の解雇金の支払額は勤務期間に応じた額が法定されている。
     解雇金見込額について、退職給付引当金の計上が必要である。
  フィリピン:
     13ヶ月手当というクリスマス賞与の支給が法律で義務付けられている
  シンガポール:
     法定されてはいないが慣行あり(基本給1月分を旧正月の前までに支給)

 (4) 税金
  還付の場合、ほぼ確実に税務調査が行われる国もあり
  ⇒還付額を超える追徴のリスクがあるため、還付請求しないケースも。
  ⇒過去の会社の動向をみて、将来還付手続する/しないの可能性を見極める必要あり

■その他
 ・オフバランス項目(社会保険料の計上漏れ等)
 ・税効果(税効果会計が適切に行われていないところも多い)


13.【クロスボーダーM&Aの財務DD】 P/L項目に関するDDのポイント

・売上高
 -収益認識基準の把握
物品販売取引
:リスクと経済価値が移転しているかの観点から収益が実現しているかを検討

役務提供取引
:役務提供の進捗に応じて収益認識をしているか、役務提供完了時にしているか等を確認
現地会計基準に従った取扱いか、実態に即しているかの観点から検討
 -主要顧客との契約内容
  債権回収期間、返品条項、保証義務、M&A実行後の取引継続可否等について検討
 -セグメント別分析
  製品別、地域別、顧客別の売上高を把握し粗利率の分析を行うことが望ましい

・売上原価
 -原価構造の把握
  商品原価:適切な単価・数量把握と現品管理がなされているかを確認
  製造原価:材料費は価格トレンドや為替変動が与える営業を感度分析
   労務費は契約形態に注目(一般的には固定費だが日雇い労働者は変動費)
   経費は設備のDEPや水道光熱費といったインフラ費用の分析が重要
 -その他
  原価差額の分析、歩留率・返品率・手待ち時間等の非財務管理資料の分析により、対象会社の強みや問題点、原価削減の可能性に関する情報が得られる場合がある

・販管費
 費目と金額を把握し、今後の取扱いに留意しながら正常収益力分析を行う

・営業外・特別損益
 内容を把握し、経常的項目か否かを理解することが必要

・関連当事者取引
 取引の実在性、経済的合理性、価格等の取引条件の合理性などを検討


14.決算早期化の課題(連結売上500億・食品メーカー)

「強い経理部」を構築するのためには、
・説得ではなく、納得
・時には強いリーダーシップ
・取組には1年半程度

(1)決算資料の全面見直し
・単年度の残高・損益しか記載のない決算資料を全廃し、
 四半期毎の残高・損益の推移が分かる資料に変更
→財務分析のレベルUP+エラー防止
→分析精度が高まることで課題も詳細に見え、対策が具体的に

(2)連結決算のエクセル化
・連結システムが自動仕訳を切ってくれるメリットがある反面、当該仕訳を
 理解するために時間を要するデメリット→ブラックボックス化
 ※子会社数や親子間の取引内容・量によっては連結システムが有効な事も多々あると想定される
・各社から収集する資料の書式を統一化
→連結PKGから連結精算表への転記ミス防止
→連結仕訳の内容やエラーが一目でわかるため、チェックも容易

(3)その他
・有報作成の為の注記資料も35四半期の資料を一つにまとめる
→過去データ参照の手間が省ける


15.今年のノーベル経済学賞はアンガス・ディートン氏

・プリンストン大学教授。
・福祉政策、課税政策が貧困層の行動・生活にどのような影響を及ぼすかを実績を元に分析
 ⇒途上国を中心に公共政策に影響。
・収入と幸福度の相関関係を分析。
 ⇒年収が75千ドルまでは収入に応じて幸福度が増加、その後は伸びが鈍化する。

 ⇒アメリカの某決済ベンチャーで、CEOが自らの年収を100万ドルから7万ドルに減俸し、従業員の最低年収を7万ドルに。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供