1.役員解任や計算書類等の交付請求、会社法をめぐる最近の訴訟トラブル
■事例1
・会社の株主である創業家が意向に沿わない経営をした創業家以外の出身である代表取締役を解任した事例
・ポイント
会社法では会社は役員を株主総会の決議によりいつでも解任できるがその解任には「正当な理由」が必要となる
⇒正当な理由がない場合:解任された役員は会社に対して損害賠償請求ができる
・本事例では、創業家の意向に沿わないということだけでは解任のための正当な理由とはならなかったため、前代表取締役の損害賠償請求が認められた
■事例2
・会社は作成していない計算書類についても、株主からの交付請求に応じる必要があるかどうかが争われた事例
・ポイント
会社法では会社は計算書類等を5年間、本店に備え置くとされ、また株主、債権者は計算書類等の謄本交付を会社に請求できるとされている
⇒交付請求できるのは、「計算書類等が書面をもって作成されているとき」とあるので作成していないものについての作成請求ができるわけではない
・本事例では、作成していない計算書類の交付請求はできないものとして株主からの交付請求を斥けた
2.158社が監査等委員会設置会社に移行
・158社が改正会社法で創設された監査等委員会設置会社に移行
⇒全上場会社の4.5%
※監査等委員会設置会社とは?
取締役3人以上で構成され、そのうち過半数は社外取締役から構成される制度。
指名委員会等設置会社にある報酬委員会や指名委員会は義務付けられていない
指名委員会等設置会社にある報酬委員会や指名委員会は義務付けられていない
⇒ただし任意の指名・報酬委員会を設置している場合も見受けられる
3.詐害意志は第二次納税要件義務にならず
■詐害意志
…詐害行為意志の有無は、国税徴収法上の第二次納税義務の成立要件を満たさない
■事例
・Aが滞納者(Aの夫)から土地の持ち分の贈与を受けた
・無償譲渡等の処分に該当するかどうか?
⇒A 「離婚後の生活のために夫から譲り受けた。詐害意志はなかった。」
⇒審「詐害の意志は関係ない。処分は違法ではない」
■参考
・財産を差押えをしても納税が確保できないような場合、
滞納処分を停止することがある
・詐害行為
…財産を他の人へ無償/低額で譲渡し、滞納処分を免れようとする行為
・第二次納税義務
…納税義務者と「一定の関係のある第三者」に納税義務を負わすことができる
…滞納者が無償/低額で資産を譲渡した場合、
譲渡で利益を受けたものに対して第二次納税義務を負わすことができる
4.繰延税金資産、分類3定義を一部見直し
■66号における、分類3の定義を変更
(66号) 経常的な損益が大きく増減 ⇒
(適用指針案) 課税所得が大きく増減
⇒「損益」ではなく、「課税所得」を判断要件とした
■適用指針案における、分類3の定義を見直し
(見直し前) 課税所得が大きく増減 ⇒
(見直し後) 課税所得、又は、欠損金が大きく増減
∴「課税所得」はプラスの概念、マイナスの場合は「欠損金」
5.住民税の特別徴収税額通知の際も個人番号不要に
各市町村別の住民税の特別徴収税額通知
⇒当初案:H29年度通知分よりマイナンバー記載。
変更案:マイナンバーは記載されずに通知される予定
(H27/10/30現在、決定事項ではない)
例:横浜市参照
H28年度分(H28年5月通知) ⇒制度導入前のため不要
H29年度分(H29年5月通知) ⇒記載不要
その他マイナンバーの記載が不要となる書類(H27/10/30現在)
⇒「受給者用」の給与所得の源泉徴収票
「税務署提出用」はマイナンバーを記載する必要あり。
書式は同一であるが「受給者用」のみ空欄とすればよい
6.平成28年4月1日から国税不服申立制度が変わる
以下、改正内容
・原処分庁へ「異議申立て」しなくても、直接国税不服審判所へ「審査請求」できる
⇒事実認定ではなく法的解釈を争いたい場面で活用できる
・「異議申立て」が「再調査の請求」へと名称変更(内容変更なし)
・異議申立て(再調査の請求)可能期間が1ヶ月伸びる
・請求人は、原処分庁が提出した書類以外に、国税審判官が独自に収集した証拠書類を閲覧できるようになる
⇒審理の透明性向上
7.法人税:工期途中で長期大規模工事に該当することとなった場合
■長期大規模工事の要件
・着工から引き渡しまで1年以上
・請負対価10億円以上
・対価の1/2以上が引き渡しから1年以上経過後に支払われるものでないこと
⇒要件を満たす場合、工事進行基準が強制適用される
■工期の途中で長期大規模工事に該当することとなった場合の処理
・資材の高騰により請負対価が当初9億⇒10億に変更された場合などが該当
(原則)
・該当することとなった事業年度において既往事業年度分も含めて進捗割合を計算
・前期進捗 10%
・当期進捗 20%
⇒進捗割合30%で当期の収益費用を計上
(特例)
・既往事業年度分は完成時に計上する。
⇒当期は進捗20%として収益費用を計上
<参考>
消費税は
・完成時に一括計上
・上記(原則)
・上記(特例)
のいずれで計算してもよい
8.所得税:福利厚生で従業員に支給する"食事券"に源泉徴収は必要か
社員食堂がない法人などが従業員らの福利厚生を目的として支給する,特定の飲食店のみで使用できる“食事券”について。
■原則的な取り扱い
食事券(または食事)の支給は経済的利益の供与なので、源泉徴収が必要。
■食事の支給にかかる特例 (
所基通36-38の2 )
(1)従業員らが食事の半額以上を負担していること
(2)法人の負担額が月額3,500円以下であること
の2点を満たす場合には、源泉徴収が不要とされる。
■食事券の支給にも『所基通36-38の2 』は適用可能か
基本的には可能。
ただし、換金が可能であるケース、アルコールが購入できるケースなど、一般的な食事の支給と同一視出来ない制度である場合には適用が否認される可能性もある。
食事券の制度を設計するうえで、留意を要する。
9.ポイント引当金
・付与したポイントの未使用残高に対し、「ポイント引当金」を計上する
・IFRSと日本基準とで異なる
日本基準:ポイント付与時に費用として引当金計上
IFRS:ポイント付与時に売上のマイナス
ポイント利用時に売上がプラスになる
10.贈賄の手口と早期発見するための実務上のポイント
1. 処罰対象の贈賄とは
⇒ 国営企業や政府関係者等に対し、不正に便宜を図ってもらうことに対する支払
2. 贈賄の発見が困難な要因
(1) 支払行為の対価性
⇒ 贈賄の事実を明確に記録されることはない
(2) 内部統制の限界
⇒ 証憑等を改ざんされる可能性がある
(3) 間接取引の存在
⇒ 第三者を通して取引され、取引の実態が見えづらくなる
3. 主な手口
・間接取引での贈賄
・海外旅行への招待や贈答品の授与による贈賄
4. 発見の端緒
(1) 会計記録における端緒
・外注費、業務委託費、支払報酬、雑費などの勘定科目に留意
・発注書や請求書等の証憑のない取引について留意
(2) 取引マスターにおける端緒
・取引先相手に国営企業や、政府関係者等がいないかに留意
・同一の取引先に対し複数の支払口座が登録されていないかに留意
(3) 契約書おける端緒
・契約書に記載された内容が不明瞭であったり、記載内容が不十分でないかに留意
11.決算期の異なる会社に新たに投資して関連会社とした場合の持分法の適用方法
■前提
A社:
3月決算
5月末にB社株式を20%取得して関連会社に
4月にIR
B社:
9月決算
■決算日の取扱い
連結対象会社の場合:
原則、決算日を合わせる
連結決算日と連結子会社の決算日の相違が、3か月を超えない場合は連結子会社の決算を正として連結することが可能(ただし、その3か月間に重要な取引があった場合は反映)
持分法適用会社の場合:
親会社の支配が及ばないため、上記のような取扱いはない。
=直近決算の財務諸表を使用する
ただし、関連会社の直近決算から連結決算までに重要な取引があった場合には反映させる必要あり
■みなし取得日の取扱い(株式取得が子会社・関連会社の決算日以外の日の場合)
連結対象会社の場合:
支配獲得日前後いずれかの子会社の決算日(四半期決算日を含む)に取得したものとして処理
持分法適用会社の場合:
上記の方法を踏襲
ただし、原則的には主要条件が同意されて公表された日よりも後の日をみなし取得日とする
投資の日から関連会社の決算日の期間の利益又は損失のみ、一行連結に反映させる。
(あてはめ)
5月取得のため、みなし取得日候補は、3月と6月となるが、
IRが4月のため、3月は×。みなし取得日は6月となる。
関連会社決算日は9月のため、
翌年3月末のA社連結財務諸表上のB社株式及び持分法投資損益には7月~9月のB社利益のみ反映させる。
12.第189回通常国会で成立した主な法律と実務への影響
1.金商法の一部を改正する法律
・施行日:2015年6月3日から一年以内
・概要: 適格機関投資家等特例業務の規制が強化
⇒高齢者などの一般投資家に対するファンド販売等により投資被害が発生している為、届出の記載事項や添付書類の追加拡充等が行われた
2.不正競争防止法の一部を改正する法律
・施行日:2015年7月3日から6ヶ月以内
・概要: 営業秘密侵害行為を刑事・民事両面で抑止
⇒企業情報の流出事案が相次ぎ発生している為、罰金額の引き上げ等の措置が講じられた
3.特許法等の一部を改正する法律
・施行日:2015年7月3日から1年以内
・概要: 職務発明制度の見直し
⇒知的財産権の適切な保護及び活用を実現する為、契約等であらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めた時は、使用者等に特許を帰属させることが認められた
4.女性の職業生活における活躍の推進に関する法律
・施行日:2015年9月4日
・概要: ⇒事業主行動計画の策定等
女性の活躍加速化の為、(常時雇用する労働者が300人超の事業主について)女性の職業生活における活躍の推進に関する取組計画を策定し、労働局への届出、社内外への通知等を行うことが義務化された
13.シェアードサービスの具体的な検討手法
※シェアードサービスとは、複数の会社・拠点で分散して実施している同様の業務を1箇所に集約・集中化する経営手法
「集約して効果があるのか」「本当に集約できるのか」の2点から各業務を評価
(1)「業務量調査」
・集約化することで効果を生む業務の効果試算・判別
→業務量が多く、コスト負荷が高い業務を判別=集約化対象とし集約では効果は不十分
→業務の標準化も合わせてやることがポイント
(2)「業務インタビュー」
・会社の特性等を確認し、集約可能な業務の特定、業務プロセスの改善の余地を検討
→期待できる効果と実現性を天秤にかけて、基準をもって優先順位をつけ、集約化対象業務を整理
14.民泊の規制
・Airbnbの成長と共に広がる民泊だが、日本ではまだまだ規制が厳しい。
・【大阪府】条例で「7日以上利用」「旅券確認」を条件に認める。
・【東京都大田区】12月に議会に提出すべくルールを策定中。
・全国での解禁は2017年か
15.2015年11月4日に郵政3社(日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険)の3社が上場
・3社IPO総額は約1.4兆円の見込み
・1987年のNTT上場以来、最大の民営化と言われている。
・3社のPER(※)は日本郵政16.4倍、ゆうちょ銀行17倍、かんぽ生命15.7倍
(※)PER(株価収益率)=時価総額(株価×発行済株式数)÷純利益=株価÷1株当たり利益
・今週の新規上場会社
上場・公開日 社名 銘柄コード 市場 公募価格(円)
10月28日 バルニバービ 3418 マザ 2500
10月27日 パートナーエージェント 6181 マザ 1260
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決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
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