2017年10月28日土曜日

10/27 勉強会:条件付取得対価、返還される場合の処理明確化へ/企業結合基準の改正 他

1.PEの定義規定、30年度改正で見直し検討

BEPS行動7の最終報告では下記のPEの定義規定の見直しがあるが、契約期間の規定以外は受け入れる方針
⇒30年税制改正ではこれに沿った国内法の見直しへ
・従属代理人PEの範囲拡大
・独立代理人の要件厳格化
・準備的・補助的活動の実質判定
・活動の細分化によるPE回避防止規定
・契約期間の分割によるPE回避防止規定

(用語説明)
■PE(=恒久的施設)=一般に事業を行う一定の場所等のこと
PEの有無は、企業の海外での事業所得が進出国の税務当局の課税権に服するか否かを決定する重要な指標となる。
例:非居住者および外国法人が日本国内で事業を行っていても、日本国内にPEがなければ日本で課税されない

■BEPS(=税源浸食と利益移転)
現地税制や国際課税原則の観点からは合法ではあるが、法人税収を著しく減少させる国際的税務プランニングのこと。


2.監査部会、KAM導入に課題は山積み

・現行の、日本の監査報告書では、監査人の見解に関する記載は限定的
※主として、F/Sが適正と認められるか否かについての記載

・企業会計審議会の監査部会が「監査上の主要な事項(KAM)を監査報告書に記載する」制度の導入について検討を開始(監査報告書の透明化)
⇒英国・EU・米国では、上記同様の制度が導入済み(予定)

・監査上の主要な事項(KAM)とは、当期の会計監査において最も重要と判断した事項
⇒ex. 監査人が着目した虚偽表示リスク

・今年10月に1回目の監査部会が開催
⇒制度導入に概ね賛成する意見が多かったが、KAMの記載内容や対象企業・対象法律等、導入までの課題は山積み


3.条件付取得対価返還の会計処理を明確化

企業結合会計基準における条件付取得対価
⇒企業結合日後に追加的に交付又は引渡しされる取得対価とされる

では返還された時は?
・現状、条件付取得対価の会計処理に返還を想定したものは明記されていない。
・交付時と同様に返還時も買手と売手間にリスク分担が設定されるため、
交付時の会計処理と異なる性質はないと判断
⇒対価の交付と同様の会計処理を行う方向となる。


4.仮想通貨のP/L表示は純額表示に

■仮想通貨交換業者のP/L表示
・売却収入から売却原価を控除した純額を売上高に表示
・売却損益と評価損益は一括で表示することは不可
・活発な市場が存在するかどうかは関係なく、どの仮想通貨についても同様の処理を行う
⇒トレーディング目的で保有する棚卸資産の会計処理と類似した処理

■仮想通貨交換業者とは
・金融庁に登録の業者はマネーパートナーズ、bitFlyerなど11社(9/29時点)
・他17社が審査中


5.専門用語解説―資本連結実務指針32項

■のれんの価値に2つの評価尺度が存在
 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針では、減損の兆候の有無、認識の判定、測定を行うというプロセスを経て、のれんの価値を算定する
 一方、連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針では、上記の実務指針とは別に子会社株式の減損処理をした場合、のれんも合わせて償却するとなっている。
 どちらの評価でも間違ってはいないが、のれんの価値について2つの評価尺度がある状態となっているため改善が必要であり、資本連結実務指針32項を削除すべきと企業会計基準を設定する基準諮問会議でも提言されている。


6.永年勤続者表彰記念品と課否判定

■課税されない場合
下記(1)(2)を満たす場合には課税されない
(1) 当該役員又は使用人の勤続期間等に照らし,社会通念上相当と認められること
(2) おおむね10年以上の勤務年数の者を対象とし,かつ,2回以上表彰を受ける者については,おおむね5年以上の間隔をおいて行われるものであること

■課税上注意すべき点
上記を満たす場合であっても次の点に注意が必要
・社会通念上、相当な金額以内であること
・旅行券については①支給後1年以内に旅行が実施されること②旅行に行かなかった場合には会社に返却すること
・カタログギフトについては選択できる範囲が極めて限定的な場合を除き、原則課税となる
・商品券は給与課税となる
・現金は給与課税となる


7.東京高裁 分掌変更に伴い支給した退職給与を巡り納税者敗訴

■事案
代表取締役A⇒取締役(相談役)に再任、報酬月額205万円⇒月額70万円
営業部長B⇒代表取締役に選任、報酬月額85万円
Aには退職慰労金約5,600万円支給⇒損金算入可能か

■法人税基本通達9-2-32
分掌変更後の役員給与が激減(おおむね50%以上減少)している等、その役員としての地位又は職務の内容が激変し実質的に退職したと同様の事情にあると認められる場合、役員退職給与として損金算入が認められる

■争点と結論
退職と同様の事情にあると認められるかが争点となり、認められなかった
以下が事実認定
・AはBのサポート(経営に関与して指導や助言)で引き続き2年間は常勤
・Bは案件ごとにAに確認を求め、その助言に従って業務を実施、席も隣同士で共同経営に当たる執務環境があった
・Aは幹部が集まる代表者会議に引き続き出席、出席しない会議も議事録の回付により経営の内容の報告を受けて確認、助言・指導を行う等、個別案件の経営判断にも影響を及ぼし得る地位にあった
・Aは会社の資金繰りに関する窓口役を務め、主要な取引先銀行から実権を有する役員と認識されていた、また、外出で不在の多いBに代わって来客応対を行うなど対外的な関係においても経営上主要な地位を占めていた

■役員給与が激減について
法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者は判定から除かれる(通達の括弧書き部分)


8.条件付取得対価、返還される場合の処理明確化へ/企業結合基準の改正

・条件付取得対価:契約締結後の特定の事象等により追加的に交付される取得対価
会計処理
・条件付取得対価の交付が確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、 「支払対価を取得原価に追加」「のれん又は負ののれんを追加認識」する。
 追加的に認識するのれん又は負ののれんは企業結合日時点で認識されたものと仮定して計算する

現行基準では対価が追加される場合のみ記載があり、返還される場合(業績未達で返還する場合等)については記載なし。
⇒追加の場合と同様にすべき、との方向で審議中


9.役員報酬額の分析

■業種別報酬分析
・売上高に対する役員報酬の比率が大きい企業
⇒売上高に対して付加価値が大きい業種…情報通信業、サービス業
・売上高に対する役員報酬の比率が小さい企業
⇒売上高に対して付加価値が相対的に小さいと考えられる業種…卸売業、小売業等
・成長段階の新規上場企業は売上高に対する役員報酬の比率が高い
⇒創薬ベンチャー等、成長性に期待される企業


10.財務諸表の分析

■役員向け株式交付信託に係る財務諸表本表の開示状況
・調査対象の約半数が「株式給付引当金」または「役員株式給付引当金」の科目名で開示
・残りの半数は引当金として開示なし
 ⇒役員向け株式交付信託を導入して間もなく、財務諸表への影響が限定的なため

■役員向け株式交付信託に係る会計方針および追記情報の開示状況
・引当金として開示している会社の多くは重要な会計方針を開示
・引当金として開示していない会社であっても、大半の会社が取引の概要等を追加情報として開示


11.タイの外資規制

■外国人事業法に基づく外資規制(3種類43業種)、外国企業(外国資本50%以上)の参入を規制
(1)9業種
外国企業の参入が禁止されている業種
(ex新聞発行・ラジオ・テレビ放送事業)
(2) 13業種※例外あり
国家安全保障または文化、伝統、地場工芸、天然資源・環境に影響を及ぼす業種として外国企業の参入が禁止されている業種
(ex国内陸上・海上・航空運輸および国内航空事業)
(3) 21業種※例外あり
外国人に対して競争力が不十分な業種であるとして外国企業の参入が禁止されている業種
(ex精米・製粉、漁業(養殖))

■外資規制の回避スキーム
(1)「外国人」(参考)ではなく、友好的な株主(実際は日系企業がコントロール)から一部の出資を受けるスキーム
・タイ国内の日系コンサルティング会社や会計事務所
(2)種類株を使うスキーム
・1株当たりの議決権数の異なる種類株式を利用して、実質的に外国企業が議決権の過半数を取得

(参考)
(1) タイ国籍を有しない個人
(2) 外国の法律で設立された法人
(3) 資本の半分以上を(1)または(2)が所有するタイの法律で設立された法人
(4) 資本の半分以上を(1)または(2)または(3)が所有するタイの法律で設立された法人
⇒「資本の半分以上が外資の会社は外国人事業法上の外国人である」


12.市場別の役員報酬制度の事例分析

■東証
⇒基本固定報酬+短期業績連動型報酬、SO、株式交付信託※の組合せが多い
⇒金銭と株式を組み合わせ、投資家を意識した中長期型インセン

■マザーズ
⇒基本固定報酬+SOが多い
⇒現金支出や費用が発生せず、上場による売却益を狙えるSOが人気

※株式交付信託
会社が取得資金を拠出したうえで、信託銀行が株式を市場から取得管理し、後に給付する
在任中に受給権が確定するもの(在任型)と退職時に確定するもの(退職型)の2種
29年改正により、(インセンをより高める)在任型の権利確定時の損金算入が認められ、今後増加か


13.非財務情報の分析

・コーポレート・ガバナンスの状況に関する分析
平成27年から適用されたコーポレートガバナンス・コードで役員報酬を決定する方針と手続の開示が求められる。

日経300採用会社のうち、97%超の会社が役員報酬の算定方法の決定に関する方針等を定めている。
報酬限度額を記載する会社が多く、具体的な算定方法を明示している会社は少ない

・ストック・オプション制度の内容に関する分析
コーポレートガバナンス・コードで経営者の報酬については、企業価値の向上につながるインセンティブを与えることが
求められてきている。

日経300採用会社は株式報酬型のストックオプションを採用する会社が多く、マザーズ上場会社は通常型のストックオプションを採用する会社が多い。


14.役員報酬をめぐる動向

■役員報酬に係る近年の動き
(1)日本の現状
中長期の業績連動報酬を導入している会社が少なく、固定報酬が中心であり、株式報酬や業績連合報酬の割合が低いため、企業の持続的な業績向上に繋がりにくいという問題点がある。
これに対し、平成27年から適用された、コーポレートガバナンス・コードでは、業績連動報酬の割合や現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきとの記載がある。

(2)上記の問題に対する日本の対応
・政府
役員に付与する株式報酬に係る法解釈を明確にし、株式報酬導入の手続きを整理。
・税務面
平成28年度の改正で特定譲渡制限付株式を事前確定届出給与として損金算入が認められた。
更に、平成29年度の改正で改正前に利益連動給与として規定されていた役員給与を新たに業績連動給与という定義を設けることにより、指標の選択肢及び支給対象範囲、支給手段の拡大がされ、中長期の指標に連動させることが可能。

⇒結果、従来採用していた役員報酬制度の見直しや、新たな役員報酬制度を導入する会社が増加している。


15.改正民法(債権法)成立

・平成29年6月2日に公布。平成32年前半に施行の見込。
・短期消滅時効(医師3年、弁護士2年など)をなくし、時効は一律で「権利行使出来ることをしってから5年、権利を行使できる時から10年」で消滅。
・法定利率を現行民法5%から3%に引き下げ、かつ変動利率制を導入。
・極度額のない個人根保証は無効。


16.ベンチャーの失敗事例(その2)

1.ストックオプションの発行でミスる
・役職員に発行する場合には、適格ストックオプションの要件を満たすことは必須。
・適格と非適格では、場合によっては、多額に税額が変わってしまうため。
・上場時において、発行済み株式数の10%に留まっていることが好ましいとされている。
・上記数値を超えたからと言って直ちに上場できなくなるわけではないが、上場できたとしても、希釈化されるリスクがあるものとして時価には悪影響を与えることとなる。

2.議事録類をなくす
・会社法上も保管義務があり、IPO審査、M&A、資金調達のデューディリジェンスの際には議事録の写しを提出することが要請される。
・なくす原因としては、登記の際には議事録の原本を提出する必要があるところ、原本還付手続を行っていないため、そのまま法務局に原本が保管されてしまうなど。

3.商標を取っていない
・IPOが近くなった時点で、自社のメインサービスの商標が他社に取られていたことが明らかになったりした場合には最悪









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2017年10月22日日曜日

10/20 勉強会:ペーパー会社の譲渡益を合算対象外に 他

1.ペーパー会社の譲渡益を合算対象外に

■H30年度税制改正
・CFC税制(外国子会社合算税制)において「外国関係会社が保有する株式に係る譲渡益の取り扱い等の見直し」を検討
⇒外国関係会社はペーパーカンパニーを想定
・H29年度税制改正では、ペーパーカンパニー等の「特定外国関係会社」については単純に税負担割合が「30%未満」=全所得が合算対象
 当然、ペーパーカンパニーで生じた譲渡益も合算対象
⇒ただ、例えば買収した外国会社グループの中にあるペーパーカンパニー保有の実業会社の株式をグループ内の別会社に移すことがある
 この際に生じる譲渡益を合算対象外とすることを求めている
⇒買収されるまで外国会社グループの中にあったペーパーカンパニーが行った株式の譲渡益に日本の課税ベースに属する利益が含まれているとは考えにくいため
⇒要望が満たされることでペーパーカンパニー下の実業会社の株式の移転をスムーズにできる


2.譲渡制限特約付き債権の譲渡で民法改正も実務上の懸念

■今年6月に「民法の一部を改正する法律」が公布
⇒債権の譲渡制限特約が付されている場合であっても、債権譲渡は有効であると見直し
⇒中小企業による売上債権を担保とした資金調達が可能になると期待
⇒一方、中小企業が特約違反に基づく契約解除を恐れ、改正民法が想定する上記資金調達が進まない懸念もあり
⇒政策的な対応として、独禁法ガイドラインの見直し、等を検討中


3.悪意重過失とは

悪意 ⇒ 法律上は「ある意味を知っていた」ということ
重過失⇒ 結果を予見できるにも関わらず、注意欠如の状態で見逃すこと

意味は同じである。
当初の民法においては「悪意又は重大な過失」としていたが、改正に伴い、意味をわかりやすくするために「悪意重過失」と文言が見直しされた。


4.活発な市場は仮想通貨の流動性で判断

■期末評価の取扱い
・活発な市場が存在する場合は時価評価
⇒活発な市場とは、仮想通貨が売買・換金を行うことが可能な程度に十分な流動性を有しているかで判断
⇒時価は自己の取引実績のもっとも大きい仮想通貨取引所or販売所の価格を使用

11月頃に「仮想通貨に係る会計上の取扱い」の実務対応報告の公開草案が公表される予定


5.役員給与の過大認定、審判所の着眼点

法人税法34条2項や法人税法施行令70条において「不相当に高額」な役員給与を損金に算入しないとしている。では、どういったプロセスを経て不相当に高額とするのか?裁決事例と共に紹介。
○納税者は海外を中心に中古車販売業を営む法人であり、代表取締役は中古車の主たる輸出先の国で職務を行っていた。役員給与は定時株主総会で決議された金額を代表者に支給していた。この支給額を損金として計上した申告書を期限内に提出していた。

■税務署側の判断となった要因
①代表者の職務内容 ②納税者の収益状況 ③納税者の使用人への給与支給状況 ④納税者の同業類似法人の代表者に対する役員給与の支給状況(平均額や最高額で比較した)から総合判断すると本件代表者は極めて高い役員給与のであるして法人税の更正処分を行った。

■審判所の判断プロセス
 結果:更正処分を一部取消し
① そもそも「不相当に高額」か?を検討 
② 税務署側の④の抽出法人は合理的かどうか?(このうち1社は類似性がないとして除外した)
③ 税務署側の判断となった要因①~③を検討して本件の役員給与の額には不相当に高額があると判断
④ 同業類似法人の売上・粗利・営業利益の推移にも着目、業界的に若干の減少があった事から、減額されることはあっても増額される要因はないとして、同業類似法人の役員給与の最高額を役員給与相当額である審判所が認定(税務署側が認定した相当額とは少し異なった)
 ⇒これにより、審判所が認定した金額を超える支給額は認め難いとされた。


6.研究開発税制:サービス開発について

■研究開発税制の見直し
平成29年度改正により「サービス開発」が試験研究費の範囲に含まれることになった
「観測」「分析」「設計」「適用」のプロセスを経たものが対象
⇒主にサービス開発に係る人件費が対象となる

■サービス開発の具体例
自然開発予測サービス
⇒ドローンによる地形の観測や気象状況の収集・分析サービス
ヘルスケアサービス
⇒ウェアラブルデバイスによる健康状態の分析サービス

その他:農業支援サービスや観光サービスなど

■「専ら従事」要件あり
原則としてこれらのサービス開発研究に「専ら従事する者」の人件費が対象となる。
一定の研究プロジェクトチームに在籍しているなどの記録・証明が必要


7.グループ子法人が留意すべき法人課税実務<平成29年度税制改正による影響

■中小法人等・中小企業者等に対する優遇措置の改正
所得基準が追加
・過去3年の平均所得金額が15億円を超える場合には、租税特別措置法に規定されている一部の優遇措置について適用無しとなる
⇒中小法人等に対する優遇措置へは、租税特別措置法に規定されているものは一部影響
(EX)
・年800万円以下の所得についての軽減税率の適用⇒所得基準対象
・貸引の法定繰入率の使用⇒所得基準対象
・交際費等の損金不算入制度における定額控除制度⇒所得基準対象外
⇒中小企業者等への主な優遇措置は全て影響する
・適用は平成31年4月1日以後に開始する事業年度
■ご参考
中小法人等
・資本金の額が1億円以下である普通法人
ただし、期末において以下の状態の法人を除く
・大法人との間に当該大法人による完全支配関係がある法人
・完全支配関係のある複数の大法人に発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されている法人
中小企業者等
・資本金の額が1億円以下である普通法人
ただし、次に該当する法人は除きます。
・同一の大規模法人に発行済株式等の2分の1以上を所有されている法人
・2以上の大規模法人に発行済株式等の3分の2以上を所有されている法人


8.請求済未出荷契約

・顧客に対価を請求したが、買手に商品を移転するまで売手が物理的占有を保持する契約
・買手に商品の置き場が無いことをなどを理由に採用される
・現行の日本基準では一般的な定めなし
・請求時に収益認識、物品の引渡し時に収益認識等が採用されている

収益認識基準案
・物品を移転するという「履行義務をいつ充足」したのかがポイント
・「顧客が物品の支配をいつ獲得したのか」という観点から検討する
収益計上には、下記をすべて満たす必要あり。
①当該契約を締結した合理的な理由があること
②物品が、顧客に属するものとして区分して識別されていること
③顧客に対して物理的に移転する準備が整っていること
④物品を使用したり他の顧客に振り向けることができないこと


9.「収益認識に関する会計基準(案)」

・連結財務諸表と個別財務諸表で同一の会計処理を定める。
 → 中小規模の上場企業や連結子会社における負担が懸念されるため、重要性等に応じて代替的な取り扱いを定める。

・同一の顧客等と同時期に締結した複数の契約について、実態を判断して単一の契約とみなして処理することがある。

・収益の認識は、顧客が資産に対する支配を獲得した時(検収基準など)。


10.ベンチャーの失敗事例(その1)

1.設立時の発行株式数が少なすぎ
・ベンチャー企業は成長するに当たって、株式を発行することによる資金調達をしたり、ストックオプション発行をしたりする。
・しかし設立時に少数株しか発行していないと、VCの持株比率を細かく設定できなかったり、従業員に発行済株式総数の1%分以上でしかストックオプションが付与できなくなるといった事態に陥いる。

2.創業者間の持株比率の設定でミスる
・全創業者が同じだけの株式を持つと、意思決定がスムーズに行なわれないとの事態が考えられる。
・代表は投資契約等の当事者となり、通常は株式を売却することができず、また様々な制約も課されるため、代表がその義務に見合うだけの多くの株式を持つことは不公平とは言えないと思われる。
・また、一般的には代表者は株式を売却することは難しく、上場等との関係での安全株主対策の面からも、代表に株式を集中させておいた方が好ましい。
・創業者の持株比率は大きいため、誰か一人が抜けた場合に株式を置いていってもらえるよう創業者株主間契約を締結しておくこともあり。

3.最初の資金調達の際に条件交渉をしっかりしない
・投資契約等は基本的に経営者に対し様々な義務を課す内容となっていることから、弁護士にリーガルチェックを依頼するべきだが、最初の資金調達の際の投資契約等についてはリーガルチェックなしで資金調達が行なわれている例も少なくない。
・VCや事業会社等は投資契約書等のひな型を有しているのが通常であり、資金調達の際にはひな型がそのまま提示されることも少なくないが、自社としてそれをそのまま受け入れて良いかについては慎重に検討する必要があり。








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2017年10月14日土曜日

10/13 勉強会:業績連動給与~一定の同族会社が支給する場合~ 他

1.法人税の収益の帰属者で一部取消し裁決

■裁判事例
取引先から請求人(法人)の元代表者に支払われた金員が請求人(法人)に帰属するかどうかが争われた

■概要
・元代表者は、全額を出資して法人(土木建築事業)を設立
・設立以前から個人で土木建築事業を営んでいた
・元代表者はH8年に代表取締役退任、その後取締役に再度就任したがH21年に辞任(株式保有ゼロ)
・法人はH23年10月、法人はA社と金属スクラップ等の買受契約を締結、またこれをB社へ売り渡す契約を締結
 その後、B社の担当者は元代表者から金属スクラップの中に希少金属が含まれていることを理由に金銭の支払いを求められた
 担当者が経営するC社名義で元代表者へ代金(本件金員)を支払った

■原処分庁
法人が金属スクラップ等の売買により得た収入を故意に計上しなかったと認定
⇒法人税及び重加算税の課税処分

■審判所の判断
以下から法人には帰属しないとした
・元代表者は当時、法人とは独立の個人事業を営んでいたこと
・元代表者は法人が受注した工事にあくまで仲介人としての関与にとどまること
・担当者個人が法人を経ずに支払ったものであること


2.税効果、評価性引当額の定義行わず

・企業会計基準委員会は、現在、税効果会計基準の一部改正(案)等に対するコメントについて検討中

・「評価性引当額を定義すべき」とのコメントに対しては、税効果会計基準の一部改正案等の内容から判断可能である為、定義は行わない方向

・「税務上の繰越欠損金を定義すべき」とのコメントに対しても、現状、実務上の問題が生じていない為、定義は行わない方向


3.実務判断に役立つ相続税の取扱い

Q1.特別養護老人ホーム入居中に相続した宅地と「小規模宅地等の特例」
A1.小規模宅地等の特例に該当する。
原則、相続開始の直前に居住していた宅地等のみ該当するが、要介護認定等を受けていて介護老人保健施設等に入居していた場合、その入居前に居住していた宅地等も「小規模宅地等の特例」の対象となる。

また入居前に被相続人の居住の用に供されていたため、「居住の用に供されていた宅地等」の特例にも該当する。

Q2.障害者控除額の残額を控除できる扶養義務者の範囲
A2.配偶者、兄弟姉妹、家裁の審判を受けて扶養義務者となった3親等内の親族が該当


4.株式報酬、業績連動報酬に関するQ&A

・損金算入が可能な役員給与は?
⇒特定譲渡制限付株式(RS)、★株式交付信託、ストックオプション(SO)、★パフォーマンス・シェア(PS)、パフォーマンス・キャッシュ、★ファントム・ストック、★ストック・アプリシエーション・ライト(SAR)、退職給与
※★は29年度改正で可能になったもの(一定の要件あり)

・役員給与に関する改正の適用はいつから?
⇒原則29年4月1日以後に支給、交付する給与から適用。退職給与、特定譲渡制限付株式、新株予約権に係る改正は29年10月1日以後から適用

・事前確定届出給与の対象となる株式報酬は?
⇒特定譲渡制限付株式(役務の提供期間に応じて無償取得されるもののみ)、株式交付信託(業績連動がないもの)など

・事前確定届出給与として損金算入が可能となる特定譲渡制限付株式の要件とは?
(1)一定期間の譲渡制限がある株式
(2)役務の提供期間に応じて無償取得できる旨定められていること
(3)役務提供の対価として交付される株式等であること
(4)報酬決定時点で市場価格があり、役務提供を受ける法人またはその関係法人の株式であること
※(2)改正前は無償取得事由が企業の業績や勤務状況によるものも認められていた
※(4)改正前は市場価格のある株式の要件はなかったが、役務提供を受ける法人か完全親法人に限られていた

・特定譲渡制限付株式の損金算入の時期は?
⇒所得税:譲渡制限解除日
⇒法人税:給与等課税額が生ずることが確定した日の属する事業年度

・海外在住の役員等に特定譲渡制限付株式による給与を支給しても損金算入可能?
⇒H29年度改正により役員が非居住者でも損金算入可能に


5.合併に絡む資本割の計算方法の見直し検討

■期中に合併が行われた場合の資本割の計算の見直し
 被合併法人は期首から合併時点までの資本割が月割りで課税対象になる。
 合併法人は期末は合併後である為、資本金等の額が「合併法人+被合併法人」に対しての資本割が、期首から期末まで1年分まるまる課税対象となる。つまり被合併法人の月割りの資本割が二重課税となってしまう状態が続いているため、この部分は控除されるよう見直しが求められている。

■無償増資、無償減資が行われた場合の資本割の計算の見直し
 資本割の課税標準である「資本金等の額」は法人税法上の規定となるのが原則。
しかし、無償で増減資を行った場合、事業税の課税標準の計算の際に、無償で行った増減資の金額を加算または控除した金額で計算する特例が設けられている。この特例を受けた法人が合併されたとき、 合併法人はこの特例を適用できない。これは地方税法において資本金等の調整に係る額の継承に関する規定がない為であるが、会社法上は消滅する会社の権利義務のすべてを存続会社に継承させる規定がある。
 会社法と地方税法においてズレが生じている状態なので改正が求められている。


6.民泊の固定資産税特例を巡り棄却裁決

■住宅用地の固定資産税特例
専ら人の居住の用に供する家屋」又は「一部を人の居住の用に供する家屋」の敷地の用に供されている土地(住宅用地)が対象。その土地の固定資産税の課税標準額を3分の1,又は6分の1に減額する。

■概要
・Aは土地Bに建物を建設し居住用賃貸物件として貸付を行い、固定資産税特例を受けていた。
・近年は「民泊サイト」に民泊物件として登録していた
・民泊サイトをみた京都市からお尋ねがあり、「居住用物件」にあたらないとして過去5年に遡って減税額の返納を求められた。
⇒裁判となり京都市勝訴

■裁決要旨
・固定資産税特例の適用対象は「専ら人の居住の用に供する家屋」の敷地
・総務省通知(平成9年4月1日/自治固第)によれば、「専ら人の居住の用に供する家屋」とは「特定の者」が継続して居住の用に供することをいう、とされている
・民泊は不特定多数に対する短期賃貸であるため上記にあたらない
・よって適用対象外のため、固定資産税減税の適用はない
⇒民泊サイトに登録されている物件で特例を受けている場合には同様の指摘を受ける可能性が高い


7.業績連動給与~一定の同族会社が支給する場合~

■改正内容
改正前⇒損金算入可は、非同族会が支給する給与のみに限定
改正後⇒同族会社のうち同族会社以外の法人との間に完全支配関係がある法人も追加
⇒親会社(非同族)-子会社(同族)-孫会社(同族) 各社100%保有関係
このケースでは、孫会社も対象 (※あくまで親会社との完全支配関係となるため)

■同族会社のケース-各要件の検討
・算定指標⇒親会社の指標を利用、有価証券報告書等に開示必要
・手続き⇒親会社の報酬委員会等での決議が必要
・完全支配関係の判定時期⇒親会社の報酬委員会等での手続き終了の日
・株式を交付する場合⇒親会社の株式を使用(交付日まで50%保有されている関係が必要)


8.出荷基準の取り扱い

・日本の現行基準:商製品の販売に関する収益認識基準は出荷基準、引渡基準、検収基準等。
・収益認識基準公開草案では
 「一定の期間にわたり充足されるものではない場合は、一時点で充足される履行義務として、資産に対する支配を顧客に移転することにより履行義務が充足される時に収益認識する」とされた。
・「支配の移転」は一定の指標(物理的占有権の獲得や検収の完了など)を考慮して決定する
・「代替的な取り扱い」も定めている
・商製品の国内販売で、出荷時から支配移転までが通常の期間である場合には、出荷時や着荷時に収益認識OK
・「通常の期間」は数日間


9.M&A時にマネジメントが考えること・決めること

■プレ段階
(1) ターゲットの選定
・買収対象として適切か?
⇒ターゲットが有する経営資源は何か
⇒期待されるシナジー効果は何か

(2) 財務インパクト
・いくらまでなら出せるか?
⇒のれんはどの程度計上されるか
⇒買収後の自社の利益は向上するか(絶対額&一株当たり)

■実行段階
(1) DD、価値評価
・適切な専門家の選定
⇒専門家の特性を把握
・Go or No-Go
・最終的な買収提案額
⇒ターゲットのリスク情報把握
⇒ターゲットの価値、本件でのシナジー効果等を考慮

(2) 契約交渉
・価格と価格以外の条項との交渉戦略
⇒リスクへの対応策、契約書への反映方法を検討


10.平成29年度税制改正 役員給与税制上の取扱いと実務ポイント

■役員給与税制の体系の見直し
・業績連動型の役員退職金についても、役員給与税制の範疇に組み込み
・支給形態による取扱いの不整合の解消(SO、金銭、株式)
■普通株式の交付についても、一定要件のもと、損金算入が可能に
 (事前確定届出給与または業績連動給与に該当する場合)
・株数ではなく支給金額を確定して、その金額に相当する株式を交付する場合も損金算入が可能に
■利益連動給与の見直し(業績連動給与へ名称変更)
・株価や売上高に連動した指標の採用(売上高は単独での使用不可)
・複数年度での業績連動指標の採用
■制度対象範囲の拡大(損金算入範囲の拡大)
・事前確定届出給与(譲渡制限付株式):50%超の子会社への適用が可能に
・業績連動給与:持株会社の100%子会社への適用が可能に
・非居住者に対する譲渡制限付株式、SO:損金算入が可能に


11.役員報酬制度見直しのポイント

・現金、株式、新株予約権(SO)、リストリクテッドストック(RS)、パフォーマンスシェア(PS)等、多種な手段
⇒手段ありきではなく、個々の会社における報酬の目的に応じてどう組み合わせるか、を考える時代に

■最近の報酬制度の潮流と背景
⇒中長期業績に連動させることを目的とした、株式を用いた報酬制度
・コーポレートガバナンスコード:中長期的な会社業績と連動させるべき
・機関投資家の声:日本の会社役員の自社株の保有率を上げるべき
・優秀人材の獲得・引き止めの観点:欧米レベルに報酬水準を上げるべき
・税制改正:RSやPSの導入による選択肢の拡充

■見直しの始点
どのタイプにするか:会社業績に対し固定か連動か、会社業績は短期とするか中長期とするか
⇒4分類:短期固定、中長期固定、短期連動、中長期連動

■例:中長期業績連動報酬の見直しをしたい
⇒リスクとリターンの関係から業績へのモチベーションをどうコントロールするか
方法(1):現状報酬+PS⇒業績不調でも前と同額報酬
方法(2):固定給を引下げ+PS多め⇒(1)に比して業績好調と業績低調時の振れ幅大

■例:短期業績連動報酬の見直しをしたい
・4つのポイントを整理
⇒業績指標の見直し、業績指標の下限と上限、業績への報酬反映率、報酬反映率の傾斜配分

■例:優秀人材の獲得引き止めを図りたい
・獲得目的:PSが有効(インセンティブ性〇、ただし安定性×)
・獲得+引き止め:RSが有効(インセンティブ性△、安定性〇)


12.のれんの償却期間

■のれん
被取得企業の継続事業としての価値や期待されるシナジーなどの超過収益力と考えられている。

■連結財務諸表での取扱
・のれん
効果の発言する期間を見積り、計上後20年以内の期間で償却(販管費)する。
・負ののれん
計上時に特別利益に計上

■のれんの償却期間
のれんの効果が及ぶ期間は高度な見積りを要する
償却期間を長期化した場合、毎期の負担額は減少するが、見積りの不確実性が高まり、償却期間決定の整理は困難となる。
※長期間の事業計画を策定し、当該計画通りに運営することは難しい

償却期間を画一的に決定できる取決めはないため、案件ごとにのれんの効果が及ぶ期間を検討し、合理的な償却期間を決定する必要がある。


13.東芝、特設注意市場銘柄の指定解除及び監理銘柄(審査中)の指定解除

・10/12付で指定解除。
・内部管理体制確認書を再提出し、「内部管理体制に問題があるとは認められない」ため。
・ただし引き続き、債務超過に関わる上場廃止基準の猶予期間中。
 → 2018年3月末時点で債務超過が解消されず、上場廃止基準に該当した場合、上場廃止となる。


14.東芝ひとまず上場維持

・2015年に発覚した不正会計を受け、同年9月に東芝株は「特設注意市場銘柄(※)」に指定
・2017年10月12日、東証は特設注意市場銘柄を解除
・東芝が2017年3月に再提出した再発防止策や幹部への聴取などから、
「内部管理体制について相応の改善がなされた」と判断

ただし、

・東芝は2017年3月末で5,529億円の債務超過
・2018年3月末までに解消できなければ、今回の判断にかかわらず、東証基準に従い上場廃止となる。

(※)有価証券報告書に虚偽記載などを行った企業の株式について、取引所が投資家に注意喚起するため指定する。
取引所は内部管理体制の改善を求め、企業の対応を審査。
改善したと判断した場合は指定を解除する。
取引所が審査の結果、内部管理体制の改善の見込みがなくなったと認めた場合や、
指定から1年6カ月後の再審査でも問題があると認められた場合は上場廃止になる。










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2017年10月8日日曜日

10/6 勉強会:自社株対価TOB、会社法上の規制緩和へ 他

1.平成29年3月期における会計方針の変更

■固定資産の減価償却の方法を定率法から定額法へ変更 38社
■(事例)会計方針の変更に関する注記の強調事項
・北日本紡績/太陽
有償支給材料に係る代金を純額表示へ
⇒取引実態を適切に反映するため

・ニコン/トーマツ
FPD露光装置の海外向け販売について、船積基準ないし顧客指定場所引渡し基準から据付完了基準へ
⇒当該装置の据付は長期化および高度化が見込まれるため

・ハリマ共和物産/トーマツ
仕入代金の現金決済時に受け取る対価を「営業外収益の仕入割引」から「売上原価の仕入割引」へ
⇒従来は現金決済による金利の性格があったが、近年は取引条件の取り決め時に仕入価格の調整項目となっているため

・ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング/あずさ
委託研究機関からの助成金の対象となる費用について、委託研究完了まで資産計上する方法へ


2.自社株対価TOB、会社法上の規制緩和へ

■自社株対価TOB
現行会社法上、被買収企業の株式を現物出資財産とする買収企業の株式の引き受けの募集に該当し、通常の新株発行と同様、同法199条に基づく募集手続を行う必要あり
⇒その場合、現物出資財産に対する検査役の調査が求められるとともに(同法207条)、被買収企業の株主等及び買収企業の取締役は財産価額補填責任を負う可能性あり(同法213条)

■産業競争力強化法上の取り扱い
産業競争力強化法に基づく事業再編計画について国の認定を受けた場合、会社法上の有利発行・現物出資規制を適用せず、株式交換と類似の規律を適用する旨の特例あり
⇒株主への課税(譲渡所得)がネックとなり、特例の適用事例は1件も出ていない

■会社法の改正検討
法務省の会社法制部会は、同法199条に基づく募集手続を不要とする(株式交換と同様の会社法上の規律を適用する)ことを検討
⇒経済産業省に、「株主に生じる譲渡所得への課税を繰り延べる仕組みを租税特別措置法ではなく法人税法本法で組織再編税制の一部として措置したい」意向がある為、会社法改正が実現すれば、法人税法本法での課税繰延措置導入にも追い風となる



3.サービス研究全委託も親会社で税額控除可

平成29年度税制改正で研究開発税制の見直しあり。

ビッグデータや人工知能(AI)等を活用した新たなビジネス開発を想定。
これらを利用して「観測」、「分析」、「設計」、「適用」のプロセスを得た研究開発費は、すべて税額控除の対象となる。

■親会社が子会社に4プロセスをすべて委託した場合
最終的に親会社が新たな役務提供をするのであれば、税額控除の対象。

■4プロセスを子会社4社で分業した場合
分業であっても、サービス研究開発の成果が各社に共有されるのであれば、税額控除の対象。
ただし1社のみ独占して成果を得る場合は対象外。


4.固定資産税の農地評価

土地の価格はその土地から得られる収益性で判断される
⇒農地は転用規制があり、宅地と比べて収益性が低いため、土地の評価額が低くなる
⇒農地の固定資産税は安くなる

■評価および課税方法
(1)一般農地(いわゆる農村部の農地)
・農地評価:農地利用を目的とした売買実例価格を基準として評価する方法
・固定資産税は300坪で平均1,000円程度

(2)市街地区域農地(既に市街化されているか、概ね10年以内に市街化が図られる地域)
・宅地並み評価:宅地の売買実例価格を基準として評価した価格から、宅地化するための仮想的な造成費を控除する評価方法
・固定資産税は300坪で平均6万円程度
・ただし市街化区域農地のうち生産緑地地区は、営農の継続が条件であるため、農地評価を行う


5.個人事業主の接待交際費、否認されるも審査請求にて必要経費と認められた事例

■納税者は紹介事業(玄関マットのレンタルや事務用品販売業者へ顧客を紹介する事業)を営んでいた。
・税務署側は、交際費は事業をするうえでの必要経費と認めず納税者側は不服として審査請求を行っていた。
⇒結果:交際費の一部は必要経費として認められた。
◎認められた部分(以下3つ)
・顧客先が参加したゴルフコンペにかかる費用、ディナーショーにかかる経費、顧客先の開店祝いの花代
⇒ゴルフコンペは契約先担当者やその上長が参加していたことで関係強化が目的と認定、ディナーショーはショーにおいて取扱商品が紹介された事から新規開拓目的等であると認定、開店祝いの花代も顧客先との関係強化が目的と認定された。
 上記の共通点「客観的にみて、事業に直接関連し業務遂行上必要な費用であると認められた」点
●認められなかった部分(以下4つ)
・取引先との懇親会参加費、顧客先との飲食費、前職へOBとして参加した際の飲食費、顧客先の子供が通う学校へ寄贈した制服
⇒懇親会費は領収書の提出がなく支払の事実がないので否認、飲食費は業務遂行上必要で必要経費の部分を明確にできないので否認、制服代金も同様に否認された。


6.配偶者控除、配偶者特別控除の29年度改正

(注)適用は平成30年度分から

■配偶者控除 
改正前は居住者の合計所得金額に関わらず一律38万円の控除であったが平成30年度分より下記の通り改正となった。
(1)合計所得金額が1,000万円を超える居住者⇒適用なし
(2)合計所得金額900万円超~950万円以下の居住者⇒26万円の控除(2/3に減額)
(3)合計所得金額950万円超~1,000万円以下の居住者⇒13万円の控除(1/3に減額)

■配偶者特別控除(配偶者の合計所得金額が38万円を超える場合の控除制度)
改正前:38万円の特別控除を受けられる配偶者の合計所得金額⇒40万円未満(給与収入105万円未満)
改正後:同⇒85万円未満(給与収入150万円未満)
なお、居住者の合計所得金額が900万円を超える場合には配偶者控除同様、一定の減額調整がされる

(まとめ)
配偶者の給与収入が150万円未満であれば配偶者控除または配偶者特別控除のいずれかで38万円の控除を受けることが可能。ただし、居住者の合計所得金額が900万円を超えると一定の減額調整がされ、1,000万円を超えると控除額は0(適用なし)となる。

(参考)
合計所得金額900万円=給与収入1,120万円
合計所得金額1,000万円=給与収入1,220万円


7.仮想通貨の不正送金と雑損控除

・仮想通貨の売買取引等で得た利益⇒原則として雑所得に該当
・不正送金で損害を受けたケースは基本的には雑損控除の対象
⇒所得税法上、震災等の災害や盗難、横領等で損害を受けた場合、一定金額の所得控除を受けられる
ただし、別荘などの生活に通常必要でない資産等は対象外⇒本制度の適否を巡りよく争点になる
・本件の考え方
インターネットバンキングの不正送金の損害も盗難に該当
資産は金銭であるため「生活に通常必要でない資産」には該当しない
⇒よって仮想通貨も同様と考えられる
・雑損控除の対象となる損害金額
不正送金時の日本円レートで換算
業者により損失補てんされた場合には、その金額は損害金額から控除


8.本人か代理人か

・収益認識基準案では、履行義務を識別する際(ステップ2)、商品やサービスが顧客に提供される前に、当該商品やサービスを企業が支配しているかどうかが論点になる
・自らの商品を売る「本人(当事者)」なのか第三者の商品を売る「代理人」なのかによって収益の表示が変わる
  本人 ⇒総額表示
  代理人⇒純額表示
・本人か代理人かの判断の指標
 ①契約履行の主たる責任
 ②在庫リスク
 ③価格設定の裁量権
※一時的な法的所有権の移転等ではなく、販売した商品などに対する責任を有しているかどうかで決まる
⇒百貨店の消化仕入(売上計上時に同時に仕入計上)などに影響あり


9.経理・財務面でのPMIのポイント

■買い手側の要対応事項の例(主なもの)
・組織・ガバナンス
(1) 窓口や報告ラインの明確化
(2) アウトソースする業務の選別・委託先の決定
(3) 内部統制の整備(J-SOX対応)

・決算スケジュール
(1) 月次・四半期・年次決算スケジュールの調整
(2) 連結グループ会社間債権債務等調整プロセスの導入
(3) 対象会社内における締め処理日変更要否の検討

・制度会計
(1) 制度会計数値に対する責任者の明確化
(2) 連結財務報告に必要な情報とその定義の明確化
(3) 会計方針・会計処理の変更要否の決定

・その他
(1) 管理会計制度の整備・変更
(2) 事業計画・予算策定
(3) 連結システムの調整
(4) 指定銀行口座の開設
(5) CMSの導入検討 等


10.関係会社株式の追加取得

■子会社株式の追加取得
【借方】
非支配株主持分:追加取得した株式に対応する持分)
資本剰余金:差額
【貸方】
関係会社株式:追加投資額

■関係会社株式の追加取得(関係会社のまま)
【借方】
持分法損益:のれん(追加投資額△追加取得した株式に対応する持分)÷のれん償却期間
【貸方】
関係会社株式:同額

⇒負ののれんの場合は発生した事業年度の利益


11.海外子会社PMIの事例

■A社の事例(ソフト面重視型)
買収企業の被買収企業への尊重というもとに信頼感を集めた
・早くから20もの作業分科会を立ち上げ、クロージングを待たずして何度も足を運んだ
・海外子会社と日本語での挨拶を日常化し、共通言語を持つという結束を深めた
・トラブルが発生した際に、優先順位は犯人捜しでもなく、生産計画の遅延でもなく、従業員の安全
■B社の事例(ハード面重視型)
強力なリーダーシップを発揮する事で信頼を集めた
・B社は何度もMAの経験があり
・統一に向けたPMIプロセスを体系化したマニュアルを作成
・効率がいい一方で反発を食らう可能性もある


12.新収益基準に対応したシステム構築

■ポイント
「履行義務」を基にした処理が必要のため、債権管理と請求管理が連動しないケースが生じる
現行システムは債権管理と請求管理が連動する前提であり、その機能に限界あり
⇒2つのシステムの具備が必要
(1)請求管理用のシステム⇒これまでと同じでOK
(2)債権管理用のシステム⇒新たに構築する必要あり

■業務プロセスの見直し
従来:契約単位での収益管理⇒今後:細分化した「履行義務」単位の管理が必要に
従来:収益の「単位」が変わる⇒今後:原価の「単位」も変わるため、原価管理体制を見直し

■システム構築上のポイント※会社にが大きな負荷がかかることを認識しておく
(1)単一仕訳にする(貸方と借方を1対1)⇒自動仕訳にできるものを洗い出しやすい。

(2)仕訳パターンを揃える⇒勘定の相手勘定を決め、自動仕訳のパターンを少なくする
例:入金時には履行義務別に消込を行う必要があるため、預金の相手勘定は(債権ではなく)負債とする。

(3)履行義務単位で債権管理



13.新収益基準案にみる現行実務へのインパクト

新収益認識基準では管理面からパラレルアカウンティング(2つの会計基準に基づいて帳簿作成)が必要となる。

■新収益認識基準の特徴
以下の5ステップを経て収益認識する
①契約の識別
②履行義務の識別
③取引価格の算定
④履行義務への取引価格の配分
⑤収益の認識

■会計上/契約上の債権管理
・会計上の債権管理
履行義務の単位で売上認識/売掛金や契約資産を計上
・契約上の債権管理
契約単位で売上/売掛金を計上
⇒「単位」「金額」「タイミング」が異なってくる。

■設例①
・前提
1つの契約(100円)に2つの履行義務(財の販売A(80円)とその後のサービスB(20円))が含まれている。
Aの販売は4月30日に完了し、Bは2ヶ月後の6月30日に提供完了。
現行実務では4月30日に請求/売上計上。
売上代金100円は5月31日に入金。

・会計上の債権管理
4月30日
⇒売掛金80円を計上(Aの履行義務提供による売上)
5月31日
⇒売掛金10円を計上(Bの履行義務提供(1/2ヶ月)による売上)
⇒売掛金90円消込、契約負債10円を計上(代金入金による消込)
6月30日
⇒売掛金10円を計上(Bの履行義務提供(1/2ヶ月)による売上)
⇒売掛金10円と契約負債10円を相殺(入金済み分と売掛金の相殺)
※契約負債=財やサービス提供前に代金を受け取った場合に生じる(≒前受金)

・契約上の管理
4月30日
⇒売上代金の請求
5月31日
⇒売上代金の回収
6月30日
⇒特になし

■設例②
・前提
1つの契約(100円)に2つの履行義務(財の販売A(80円)とその後のサービスB(20円))が含まれている。
Aの販売は4月30日に完了し、Bは2ヶ月後の6月30日に提供完了(設例①と同様)
現行実務では6月30日売上計上
売上代金100円は7月31日入金。

・会計上の債権管理
4月30日
⇒契約資産80円を計上(Aの履行義務提供による売上)
※契約資産=期限到来以外に回収するための条件が付いている債権。当該設例の場合、Bの提供完了がその他条件に該当。
5月31日
⇒契約資産10円を計上(Bの履行義務提供(1/2ヶ月)による売上)
6月30日
⇒契約資産10円を計上(Bの履行義務提供(1/2ヶ月)による売上)
⇒契約資産100円を取崩し、売掛金100円を計上(期限到来すれば債権が回収できる状態になったため、売掛金に振替)
7月31日
⇒売掛金100円の取崩

・契約上の管理
4月30日
⇒特になし
5月31日
⇒特になし
6月30日
⇒売上代金の請求
7月31日
⇒売上代金の回収



14.太陽監査法人と優成監査法人が合併

・監査先の上場企業数は約200社、抱える公認会計士は500人超。
・来年7月をめどに合併。
・存続会社及び社名は太陽監査法人。
・上場企業の監査数で太陽は144社(6月末時点)と既にあらた(122社)を抜き業界4位。

以下、太陽・山田総括代表社員と優成・小松統括代表社員へのインタビューより

・売上高は5年後をめどに合併時の90億円強から150億円を目指す。
・海外拠点は現在の約20拠点から倍増させたい。中南米やアフリカも視野に入っている。
・企業側に四大法人以外の選択肢を提供できるようにしたい。会計士の数は5年後をめどに800人規模に増やしたい。
・売上高2兆円以上の企業も監査できる体制を目指す。
・(東芝の監査について)東芝側から接触があり、前向きに検討した。ただ人員の問題などから難しいと判断した。
・東芝は(四大法人とは利害関係が多く)変更できない状況に陥っていた。企業側の選択肢を広げることが社会にとって有益だ。
・(さらなる中堅監査法人の合併や再編について)門戸は常に開いている。志が同じであればいつでも歓迎だ
・一定の規模は拡大するものの、四大法人並みになろうとは考えてはいない


15.日本企業の海外進出

海外において、国内のみで事業展開している時には想定できないリスクが発生することがある。
このようなカントリーリスクは企業努力では回避できない。
上場会社は有報の「事業等のリスク」で当該リスクの詳細を開示

(1)上場審査上のポイント
・事業計画において、カントリーリスクが実際に生じた場合に備えての対応策を明確しておくことが必要。
Ex:工場建設の地域分散化
・海外展開によりグループ売上増加を計画している会社は、事業継続性を検討し、想定通りにならなかった場合に備えたリスクヘッジ手段を説明できるようにする必要あり。
・連結グループ経営の観点から、親会社から海外子会社の情報が適時に入手できるような管理体制を構築する必要あり。

(2)海外進出のメリット
・企業の知名度の向上
・現地通貨での資金調達

(3)海外進出のデメリット
・異なる会計基準かつ日本語以外の言語でFSを作成










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