1.IDCF事件・高裁判決
■まとめ
・IDCF事件を通して、専門家が試されている
租税回避というものをどのように考えているか?
・国税局の事前照会で「大丈夫」という回答をもらっていてもその後の税務調査でひっくり返ることがある
⇒事前照会は専門家の総合的な本当の力量が問われる極めて高度な業務
・法人税法132条の2は組織再編の濫用防止規定
⇒濫用があるかないかが適用判断の基準
・個別規定の文面に当てはめて○となる行為でも、×としなければならないものがあるからその行為を×とするために132条の2が設けられいる
2.診療情報提供書に係る診療情報提供料の自己負担額の医療費控除の取扱いについて
・上記について、事前照会をしたもの
■事前照会内容(抜粋)
・けがをした際、当初診療を行った病院から紹介状を受取り、別の病院で治療を継続した。
・紹介状の作成料として、健康保険適用の文書料を支払った。
⇒この文書料は医療費控除の対象となるのか?
■結果
・本件のケースにおいては医療費控除の対象となる。
⇒別の病院で治療を受けるために直接必要な費用と考えられるため、
また治療を受けるために通常必要な費用と考えられるため、
健康保険適用の文書料であるため
※参考
通常、診断書などの文書料は医療費控除の対象外となる
3.財産債務調書、資産少額なら提出不要に
■27年度改正で見直された財産債務調書の件
※財産債務調書(27年度改正により財産債務明細書から名称変更)
個人の12/31時点における財産と債務の一覧を記載したもの
■提出基準
・現在 … 所得が2千万円超
・変更後 … 所得が2千万円超 かつ
保有財産の価値が3億円以上または出国時課税対象資産1億円以上
(例)所得1千万円、保有財産の価値が10億円の人は?
⇒提出不要
4.消費税率引上げ延期で経過措置はこうなる!
(経過措置)
⇒指定日前に契約を締結するなど一定条件のもとに、消費税率引上げ以降も増税前の税率(8%)の適用が認められる措置
⇒経過措置が認められる取引は限定され、また、条件は取引ごとに異なる
(指定日)
平成28年10月1日
(消費税率の引上げ時期延期(H27年10月1日⇒H29年4月1日)に伴い、
指定日も変更(H27年4月1日⇒H28年10月1日)
(経過措置が認められる取引とその条件)
(1)工事の請負
(平成25年10月1日~)H28年9月30日までに契約していること
(ただし、H28年10月1日以降、対価を増額した場合、増額部分は10%を適用)
(2)資産の貸付け(ex.リース取引)
H28年9月30日までに契約・貸付していること
(3)書籍等の予約販売
(平成25年10月1日~)H28年9月30日までに契約し、H29年3月31日までに対価を受領していること、
(なお、対価の受領は一部でもOK)
(4)通信販売
H28年9月30日までに条件を提示(または提示する準備を完了)し、
H29年3月31日までに申し込みを受けること
(なお、当該提示条件に基づいて販売する必要あり)
など
5.負債利子の額を当年度実績での計算によることが相当
■事例
・更正処分により受贈益と認定された
・確定申告済みの受取配当の益金不算入額の算定にあたり、負債の利子の額を当年度実績により確定申告している。
・受贈益認定に伴い帳簿価額が増加した
■請求人の主張
・受贈益がないことを前提に「当年度実績」を基に算定をした。
・受贈益認定されたのであれば、再計算する際は「基準年度実績」を基に算定したいと主張
(益金不算入額が減少し納税者有利となるため)
※負債の利子の額は、「当年度実績」又は「基準年度実績」のいずれかの算定方法を選択することが可能。
■判決
・算定方法は法人の選択に委ねれてはいるが、更正処分の再計算をする場合の算定方法について法令の定めはない。
つまり一度確定申告した分の修正申告等については、申告した算定方法に基づき算定する必要がある。
6.実務家のための贈与税の審理上の留意点に係るQ&A
【テーマ(1)】住宅ローンの内容に異動が生じた場合の贈与税
・共働きの夫婦が共同で住宅を取得し、連帯債務によるローンを組んでいた。
(A)妻が退職したため、夫が妻の債務を返済した場合
⇒妻:夫に返済してもらった債務相当に贈与税が課税
(B)ローンを借り換え、夫が妻の債務を肩代わりした場合
⇒妻:夫に肩代わりしてもらった債務相当に贈与税が課税
(C)住宅の名義を共有から夫単独所有へ変更し、ローンを夫が引き受けた場合
⇒夫:『住宅価格 - 妻から引き受けたローン金額』に贈与税が課税
【テーマ(2)】教育資金管理契約に係る口座からの払い出し時期
・教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税非課税特例を受けている大学生Aが、H27.10.7に研修旅行費を支払い、大学から領収書をもらった。
(A)教育資金を支払った後に、領収書と引き換えに非課税口座から払い出す方法を選択している場合
⇒H28.10.7までに、領収書を銀行へ提出し、教育資金相当額を払い出す必要あり
※支払いから1年以内に、銀行から払い出さなくてはならない
(B)非課税口座からの払い出し時には領収書を必要とせず、1年分の領収書を翌年3月15日までに提出する方法を選択している場合
⇒H27.1.1~H27.12.31までに銀行から教育資金相当額を払い出し、
⇒H28.3.15までに領収書を銀行へ提出する必要あり
※支払いした年と同じ年に、銀行から払い出さなくてはならない
※払い出すタイミングは、支払いの前後どちらでもOK
7.自動車の損失と雑損控除
■雑損控除の対象
「生活に通常必要な動産」について、「災害・盗難・横領」により損失が生じた場合が対象
■自動車の損失について
・「通勤用」、「交通の便が特に悪い」場合は「生活に通常必要」な資産となる
①自損事故…「災害・盗難・横領」にあたらないので適用なし
②当て逃げ…「災害・盗難・横領」にあたらないので適用なし
※「災害」には人為による異常な災害が含まれるが、天災と同視すべき劇的な事象をいうと解するのが妥当とされている。従って当て逃げやいたずらなどは災害に含まれない。
(参考)
「人為」による異常な災害の例⇒耐震偽装によりマンションが傾いたケース
③盗まれた場合…盗難に該当し適用あり
8.消費税:内外判定基準の内国法人への影響
KindleやApp Storeへの課税のため、電気通信役務の提供の内外判定基準の改正が行われた。
この改正は国内企業にも影響がある。
■改正内容
判定基準が、[役務提供を行う者の事務所等の所在地]から[役務提供を受ける者の事務所等所在地]に変わった。
■国内企業への影響
国内企業が海外の顧客に配信する事業は従来は国内取引の[輸出免税]とされていた。
改正後は[国外取引]となるため消費税の対象外となり、課税売上割合が低下する。
9.子会社売却と税効果
・子会社売却を「決定」したことにより繰延税金負債(DTL)を計上するケースあり
(※根拠:連結税効果実務指針34項、38項)
(※根拠:連結税効果実務指針34項、38項)
・連結加入後に子会社が獲得した留保利益は連結上オンバランス、
親会社の単体決算上はオフバランス(子会社株式は取得原価のままなので)
⇒一時差異発生
・DTL認識は子会社売却の「意思決定」時
10.M&Aの最終契約書の補償条項について
1.補償条項設定の目的と役割(効果)
(1)買主サイド
・目的
⇒ 売主より知らされていない事実による損失に対して賠償請求したい。
・役割(効果)
⇒ 売主の故意・過失なくても損害賠償請求可能となる。
※民法の債務不履行責任は相手方の故意・過失があることが要件となる。
(2) 売主サイド
・目的
⇒ 買主から損害賠償請求される金額や期間等を制限したい。
・役割(効果)
⇒ 補償条項の内容により、損害賠償請求を最小化することが可能
2.補償条項の制限事項の例示と留意事項
・金額による制限
※補償金額の上限を定める。相手の損失が一定額を超えたら超過分を補償するなど。
・時間による制限
※補償請求できる期間を定めるなど
・当事者の認識による制限
※買主が相手方の違反を認識していた場合は補償請求できないとするなど
⇒ 補償条項の制限は様々な内容で定めることが可能
⇒ 売主、買主それぞれ、どのようにリスクを負担するのかに留意し、制限事項を設定することが重要と考えられる。
11.子会社株式追加取得・一部売却の会計実務
(主な改正点)
1.のれんの処理
(1) 追加取得時
・従来、株式の追加取得価額と獲得した持分の差額はのれんとしていた
⇒差額は資本剰余金で処理することに。
(2) 売却時
・従来、減少する持株割合にみあった額だけのれん未償却額を減額していた
⇒減額しないことに。
・従来、連結上の子会社株式売却益は利益としていた。
⇒改正基準では資本剰余金に振り替えることに。
2.取得関連費用の取り扱い
(1) PL上の取扱い
・従来、取得原価に含めて計上できる結果、
のれんとして数年間にわたり費用化できた
のれんとして数年間にわたり費用化できた
⇒発生した事業年度で一括費用処理
(2) CF上の取扱い
・投資CF ⇒ 営業CF
(適用時期)
平成27年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から
⇒初年度の取り扱い:下記、選択可能
・過去の期間のすべてに改正後の連結会計基準を適用&累積的影響額を期首残高に反映する方法
・改正後の連結会計基準等を適用初年度の期首から将来にわたって適用する方法
12.無形固定資産の取得原価の配分
・日本基準で認識される無形資産の例
①法律上の権利
Ex.特許権、実用新案権、商標権、意匠権、著作権、商号、営業上の機密事項等
②分離して譲渡可能な無形資産
Ex.ソフトウェア、顧客リスト、特許外の技術、データベース、研究開発活動の途中段階の成果等
・IFRSで認識される無形資産の例
IFRSでは設例を設けて例示列挙している。
Ex.商標権、顧客関係、著作権、コンテンツタイトル、リース契約、ライセン
ス、特許権、技術資産
13.普通株式(上場)への転換可能な優先株式(非上場)の会計処理
(1)優先株式とは
・剰余金の配当、残余財産の分配、またはその両方について普通株式に比べて優先的に受け取ることが出来る株式
(2)転換請求期間開始前
・市場価格の無い種類株式に該当
⇒取得価額で計上し、実質価額が著しく低下すれば減損を検討
※実質価額の算定が要注意
⇒@純資産ではなく、オプション価格モデルで評価
(3)転換請求期間開始後(イン・ザ・マネー=転換すれば利益が得られる状態)
・市場取引なくても(=転換していなくても)、市場価格のある株式に該当(転換できるから)
⇒通常の上場株式と同様の評価
(4)転換請求期間開始後(アウト・オブ・ザ・マネー=転換しても利益が得られない状態)
・市場価格のある株式に該当しない(転換しないから)
⇒(2)転換請求期間開始前の評価方法による
14.それって「調査」?
「調査」で税金が増えた場合
⇒ 延滞税に加えて、過少申告加算税が課される
「行政指導」で税金が増えた場合
⇒ 延滞税のみが課される
【手続通達1-2】⇒「調査」と「行政指導」の区別を定義
下記の行為は調査に該当しない(=行政指導)
・書類の添付漏れを連絡し、自発的な提出を要請
・計算ミス、記載ミスを伝え、自発的な再提出を要請
・税法の適用誤りがありそうな場合、自発的な情報提供、あるいは再提出を要請
・申告義務があるにも関わらず申告していないと思われる者に自発的な提出を要請等
【事務運営指針 第2章1】
調査又は行政指導を行う場合は、納税義務者等にどちらであるかを明示する。
(対面、電話、書面いずれでも)
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決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
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